スーパーロボット大戦OG Time Dive Fighters   作:舟太郎

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2話 特装機動隊ジェイスワット

新西暦50年、世界が[混乱の時代]と呼ばれた頃。

 

極東に、制御体連合国家と呼ばれる奇妙な国があった。この国を支配しているものは人間ではなく、神や悪魔でもなかった。

 

都市のあらゆる情報を結んだ巨大ネットワークシステムと、それらを統括するスーパーコンピュータ。制御体と呼ばれるそれがこの国の支配者であった。

 

制御体の監視の目は都市のあらゆる部位に及び、どんな些細なことも見逃すことはなかった。こと犯罪の抑止という点においてはこのシステムはほぼ完ぺきかと思われていた。

 

しかし近年になってこの制御体の目に感知されない者、ゴーストと呼ばれる者たちが現れ始めたのである。政府は多発するゴースト犯罪に対抗する為の特殊警察機構ゴーストチェイサーを設立した。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「つまりゴーストと言うのは特殊な犯罪者の総称のようなものなのね・・・」

 

「そうよ、人間はもちろん、それに操られた機械や生物兵器、それらすべてのゴーストを取り締まるのが私たち幽霊課の役割なの。ただ、最近では組織だって行動するゴーストも増えてるみたいだけど・・・」

 

ヴィレッタが幽霊課のオフィスでバイオロイドの少女、衣世から話を聞いている。

 

「そんなことも知らないなんて、本当に記憶が曖昧なのね。制御体のデータベースにはTDFのヴィレッタ・バディム少尉の存在がちゃんとあったみたいだけど・・・連邦軍とか訳わかんない名前言っちゃうし・・・」

 

(私の存在がデータベースに・・・いったいどういう事だ?・・・何気に降格されているし・・・)

 

この時代の情勢が解らないヴィレッタは適当に誤魔化しながら情報収集に徹している。そんなヴィレッタに対し衣世が容赦なく物申す。

 

「それにしても随分と優秀なコンピュータなのね、制御体というのは・・・。確か巨大隕石の落下の影響で地球のネットワーク技術は衰退したはずだけど・・・」

 

地球人ではないヴィレッタだがメテオ3に由来するダブルインパクトの事は当然把握している。

 

「そういう歴史は覚えてるのね。私は産まれて5年しかたってないから知らないけど。」

 

「・・・そうみたいね、自分でも解らないわ。なんというか完全に記憶が欠落しているというより、靄がかかったようにぼんやりしている感覚かしら。」

 

衣世の意外なツッコミにヴィレッタは戸惑いながらそう誤魔化す。

 

「基礎知識には関係ないのかもしれないな。言語や計算も問題ないようだし、歴史や地理もそこに含まれるんだろう・・・。」

 

部屋の隅で拳銃の手入れをしている魔魁元聖がそうフォローする。

 

「けれど残念ながら、あなた達に有益な情報は出せそうにないわね。」

 

「そうでもないさ、東亜錬金技研のロバート・ゴードン。そしてそいつに協力する武装船団国家ナガー。そこから調べてみる価値はある・・・。」

 

魔魁は拳を握りながらつぶやく。日々発生するのゴースト事件の捜査に明け暮れているわけではなく、どうやら彼には明確な“敵”と呼べる存在がいるようだ。

 

「なんならうちで働いてくれてもいいんだよ。」

 

「揃っているか諸君、仕事だ。B5地区のショッピングモールで立てこもり事件が発生した。魔魁、至急現場に向かってくれ。」

 

モニターから魔魁の上司らしき中年の男、特殊警察機構長官の近藤が話しかけてくる。

 

「了解」

 

「ショッピングモールか~、ちょっと楽しみだな~。」

 

「衣世、お前は留守番だ。」

 

「えええ~!?なんでよ!」

 

「今はもう生物兵器の開発は禁止されているんだ。バイオロイドのお前が人前に出れば、民間人は皆驚くだろう・・・。」

 

確かに衣世の長い耳や尾は街中では目立つだだろう。

 

「新設部署とは言え、この人手不足は深刻だな。」

 

近藤がわざとらしく頭を抱える。

 

「アイツはまだ使えないのか?」

 

「まだ調整中だそうだ。」

 

別のメンバーの存在が示唆されるが、どうやらまだ合流は出来ない様子だ。

 

「ヴィレッタ、魔魁を手伝ってくれない?」

 

衣世がヴィレッタにそう提案し、ヴィレッタは近藤の方を見る。

 

「制御体からもそのプランは出ている。ヴィレッタ、キミさえよければ魔魁と協力し事件の解決に当たってもらいたい。」

 

責任者である近藤も衣世の提案に賛同する。

 

「できればR-GUNは人目にさらしたくはないし、私はあなた達のようには戦えないわよ。」

 

「後方支援と情報収集だけでも十分だ。」

 

そう言いながら魔魁は出動の準備を始めている。

 

「・・・了解したわ。」

 

「キミが我々に協力してくれることが、今後我々とTDFとの関係を強めてくれるだろう。」

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

現地では物々しい雰囲気の中、特殊な装備を整えた警官隊らしきチームが警戒態勢に入っていた。

 

「見たところ警官の特殊部隊のようだけれど、随分と風変りな銃器を装備しているわね。」

 

「特装機動隊J.S.W.A.T.・・・。」

 

警官隊を見て魔魁がそうつぶやく。

 

「ジェイスワット?」

 

ヴィレッタがその名を繰り返すように尋ねる。

 

「日本警察における対銃器犯罪のスペシャルチームだ。」

 

「銃器犯罪対策チーム・・・この日本で?」

 

「ああ、以前起こった[シルバーアロー号事件]を皮切りに、今この日本では[オリジナル]と呼ばれる銃器が大量に出回っている。それによる凶悪犯罪への対処のために作られた組織がジェイスワットだ。」

 

そこへジェイスワットの隊長らしき人物が近づいてくる。

 

「ゴースト課の人間が何の用だ、魔魁元聖捜査官。今施設を占拠しているのははサイボーグでも生体兵器でもない、キミの出番はないぞ。」

 

隊長はサングラスで表情が見えないが、明らかに悪態をついてくる。

 

「こちらも仕事で来てるんだ。それぞれ事の対処に当たろう。」

 

「そうはいかない、敵は人質を取って立てこもっているんだ。こちらはただ暴れるだけのキミとは違い、綿密にプランを練って行動している。場を乱されるのは好ましくないな、大人しく見ていてもらおうか。」

 

「やれやれ、完全に邪魔者扱いだな・・・」

 

「・・・・」

 

魔魁が頭をかきながらぼやく。「ただ暴れるだけ」という意見をヴィレッタは特に否定する気にはなれなかった。

 

「警察官としては貴方の方が異質だと思うけれどね、魔魁。・・・それはさておき、このまま彼らに任せるのか?」

 

「・・・実力は確かだが、まさか同じ現場で出くわすとは・・・管轄が違う連中とはやりづらいな。」

 

魔魁はヘンな所で警官らしい一面を見せる。

 

「部署なんて関係なく協力して事に当れればいいのだろうが、それは無理そうね。私から見ても融通の利かないエリート部隊って感じだしね。」

 

エリート部隊はプライドが高く、仲間以外への協調性が薄くなりがちである。

 

「いや、彼らならどんな状況にも冷静に対応できるだろう。俺にとって面倒なだけだ。」

 

協調性が無いのはこちらだった。

そこへ別の隊員が状況を報告しに来る。

 

「大変です、隊長!」

 

「何があった!?」

 

「中で人質になっていた少年の一人が暴れだし、犯人たちが混乱しているようです!」

 

「くそっ!いったい何処の馬鹿だ!?各員は直ちに突入!人質の安全が最優先だ!」

 

意外にも隊長は状況の変化に臨機応変に対応しようとする。

 

「俺たちも行こう。ヴィレッタ、これを・・・」

 

魔魁はヴィレッタに特徴的な形状の拳銃を手渡す。

 

「変わった銃ね。」

 

「90式自動拳銃[ビーグル]、型落ちだが扱いやすい銃だ。」

 

ヴィレッタはそれを受け取り、魔魁と共に施設内へと入っていった。

 

 

▽▽

 

 

施設内部のフロアにて人質になっていた青年の一人が犯人を殴り飛ばす。

 

「さあ!次はどいつだ?」

 

「ちくしょう、なんなんだよ、てめえ!!?」

 

「一宮流、朧・・・」

 

犯人の一人が青年に銃口を向けるも、青年は一瞬で距離を詰め相手に打撃を加えていく。

 

「おい、大人しくしろ!他の人質が見えねえのか!?」

 

別の犯人が他の人質に銃口を向ける。

 

「ちょっと圭、好き勝手に暴れるのはやめてくれる?こっちがピンチなんだけど?」

 

「そのくらい自分で何とかしろよ、こういう状況に対処するのもいい修行になるぞ、ちあき。」

 

そんなやり取りを経て、銃を向けられた女性が片目をつぶりながら呆れたようにため息をついた。

次の瞬間、自分に向けられていた拳銃を蹴り上げ、そのまま犯人を蹴り飛ばす。

 

「圭、ちあきは父さんやアンタと違ってもうそういう事には興味無いんだけど?」

 

女性は自分のことを[ちあき]と名前で呼び、[圭]と呼ぶ男に文句を漏らす。

 

「岩瀬圭と一宮ちあきだ!」

 

「まさかあの二年前に開催された格闘技大会、[P.O.S.(パワーオブソリッド)]に出場していた格闘家か!!?」

 

岩瀬圭と一宮ちあき、他の人質たちの中から犯人と戦う二人をそう呼ぶ声が聞こえた。

 

「なにが格闘家だ!銃にかなうと思ってんのか!」

 

残った犯人たちがちあきに銃口を向ける。

 

「孔気砲!」

 

一宮ちあきが掌から気の弾を繰り出し、銃を持った相手を攻撃する。

 

「遠距離攻撃!?格闘家はそんなこともできるのか!?」

 

「俺は出来ないけどな!」

 

慌てふためく最後の一人に岩瀬圭が距離を詰め、一撃で悶絶させた。

犯人たちが全滅し、他の人質たちが安堵し歓喜する。

 

「騒がしいと思ってきてみたら、何のつもりだ貴様ら!」

 

しかし、そこへ今度は大量のゴースト犯罪者がフロアに集まってくる。

 

「ふん、我らゴーストの戦力増強のためにチンピラ共に銃を与え手下に加えようと思ったが、まさか丸腰相手に負けるとはな。」

 

ゴースト犯罪者が倒れた犯人たちをつまらなそうに見る。

 

「・・・どうするの、圭。」

 

「凶悪なゴースト犯罪者、是非とも手合わせ願いたい相手だ!」

 

「この数じゃ他の人達を守りながら戦うのは無理よ・・・。」

 

圭とちあきがゴースト犯罪者たちと戦闘を続ける。

更にそこへジェイスワット部隊が突入してきた。

 

「各員、早急に人質を確保せよ!」

 

ジェイスワットの各隊員が6式自動拳銃[パワーガロック]で牽制しながら人質に駆け寄っていく。

 

「そんな玩具が通用するか!」

 

撃たれたゴースト犯罪者はダメージを受けるも決定打にはならず、すぐに起き上がってくる。

しかし起き上がったゴーストを別方向からの弾丸が直撃する。その射線の先には巨大な銃身の回転式拳銃を構えた魔魁が立っていた。

 

「あれは8式拳銃甲型[ノーチラス]!あんなものを片手で操るとは、流石は最強のサイボーグ電人魔魁ということか・・・」

 

ジェイスワットの隊員は魔魁の銃を見て感嘆する。

しかしゴーストはそれでも再び起き上がってくる。

 

「タフな連中ね。」

 

一足遅れてやってきたヴィレッタがそうつぶやきながらビーグルを構える。

 

「・・・直接叩く、援護を頼む。トルネードバスター!ジェットアッパー!」

 

続けざまに魔魁は次々とゴーストを制圧していく。

 

「あの刑事・・・かなりの使い手だな。」

 

「あれのどこが刑事なのよ?というか今のあの技、一宮流の霞と零に近いわよね。」

 

「そうか?結構よくある技だろ?・・・それよりも、俺たちも負けてられないぜ!」

 

魔魁に触発されて圭とちあきもゴーストを倒していく。

 

「人質確保!各員、装備変更!」

 

その隙をついて人質を確保したジェイスワットはそれを守るように陣形を組み直し、47式自動小銃[レッドアイ]構え、一斉に撃ち始める。

仕留めそこなったゴーストに魔魁、圭、ちあきがとどめを刺していく。

ヴィレッタもまた半壊したゴーストサイボーグに銃口を向ける。

 

その時、目の前のゴーストサイボーグに夢に見た青年の姿が重なって見える。

 

「・・・!!?」

 

その隙をついてヴィレッタに襲い掛かるゴースト。

 

「連環風断脚!」

 

寸前で一宮ちあきがゴーストに華麗な蹴り技を叩きこみ、ヴィレッタをフォローした。

 

「・・・済まない。助かったわ、ありがとう。」

 

(なんだ今のビジョンは・・・虚億のフラッシュバックだとでもいうのか?)

 

「しっかりしてよね、刑事さん。」

 

(別に刑事ではないのだけれど・・・)

 

そうこうしているうちに残っていたゴーストサイボーグが機能を停止していく。

 

「いかん!できる限り多くゴーストを破壊しろ!」

 

ジェイスワットの隊長がその場の全員にそう指示を出す。

 

「言われるまでもない!」

 

魔魁もひたすらゴーストを破壊し続け、事情の分からないヴィレッタ、それに圭やちあきも呆気に取られていた。

 

 

▽▽

 

 

「どういうことなの?」

 

騒動を終えた後、ヴィレッタは機能を停止したサイボーグを徹底的に破壊していた理由を魔魁に問う。

 

「奴らのようなゴースト犯罪者はあくまでもサイボーグ義体に乗り移って活動している。そしていざとなったらその依り代を捨て独自のネットワーク空間に逃亡する。」

 

「ネットワーク・インフェルノによって電子ネットワークは衰退してるはずでは?」

 

「何十年前の話だと思ってるんだ?確かに一度ネットワークは衰退したが、その後は数々の大学や企業が新たなネットワークを構築しようとするのは必然だろう?」

 

確かにそれが人の性か・・・。自分たちの手であらためて電子ネットワークを生み出す、何なら一種の巨大なビジネスチャンスである。ショックドクトリンを企む企業は後を絶たなかった事だろう。

 

「しかしそれでは・・・」

 

「そう、電子ネットワークの類は大量に作られた。だがそれらは旧時代のように一本化されずに混在することになる、そのうえ作られて採用されなかったネットワークまでこの先誰にも知られずに永遠に存在し続ける事になる。おかげでゴースト共はあちこちのネットワークに逃げ放題という訳だ。」

 

だからこそ、ネットワーク上に逃亡する前に、ゴーストがサイボーグの身体に存在しているときに破壊するしかない、という事か・・・。

 

「大変な仕事なのね。」

 

「世の中に大変じゃない仕事なんて無いさ。」

 

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

 

「何がオリジナルだ・・・とんだガラクタを掴ませてくれたな、大統領?」

 

東亜錬金技研社長、ロバート・ゴードンが身なりの良い壮年の男性に不愉快そうに食って掛かる。

 

「運用方法が悪いのだよ、社長。オリジナルはあくまでもただの銃器でしかないのは解っていたはずだが?それにしてもいい仕上がりですな、岩瀬圭は。」

 

大統領と呼ばれた男は、大陸風の衣装に身を包む老人に話しかける。

 

「悪くはないが、やはりただ銃を持たせただけの人間やゴーストサイボーグ程度では相手になりませんね。候補としては申し分ありませんが。・・・それに一緒にいた娘の方もなかなかの逸材だ、流石は一宮鋼の娘と言ったところでしょうか・・・。お二人にはスカラベのブローチをお送りしましょう。」

 

老人は岩瀬圭、そして一宮ちあきの戦闘を移した映像を無機質な目で見ながら賛辞を口にする。

 

「電人魔魁の方はいかがです?」

 

「知っているでしょう、大統領。私はサイボーグなどと言ったガラクタには興味がありません。」

 

「・・・・!」

 

その言葉にロバート・ゴードンは激昂しそうになるが、老人に逆らうそぶりは見せない。

 

「真の強者を見出すには、やはり世界に混乱が必要不可欠です。これからも頼りにしていますよ、大統領」

 

「お任せください、総帥。」

 




【キャラクター出典紹介】

近藤   [電人魔傀(AC)・ゴーストチェイサー電精(SFC)]

岩瀬圭(CV:森川智之)    [幻影闘技(PS)][クリティカル・ブロウPS]
一宮ちあき(CV:椎名へきる) [幻影闘技(PS)][クリティカル・ブロウPS]

ジェイスワットの隊長、隊員 [特装機動隊ジェイスワット(SS)]


【ゲーム概要】

[幻影闘技][クリティカル・ブロウ]
プレイステーションのいわゆる3D格ゲーです。1996年に発売された幻影闘技が一作目、翌年の1997年に発売されたクリティカルブロウが続編という事になるのですが、格ゲーとしての仕様は結構変更されてます。

幻影闘技は参加スタッフの名前がふざけすぎててよくわかりませんが、クリティカルブロウの方には森住総一郎さんの名前を確認出来ました。ムゲフロのアイテムの中にはこっそり「クリティカルB(ブロウ)」という装備品があったりします。

キャラクターデザインは漫画家の皆川亮二先生が担当されてます。


[特装機動隊ジェイスワット]
1996年にセガサターンから発売されたガンアクションゲームです。ステージ間のシナリオは前編実写ドラマで進行する、一風変わった作りになっています。

こちらには寺田貴信さんが参加されていたようです。



【ちょっと語らせて】

いやロボット出せよ!
という訳で警察関係者と格闘家しか登場しませんでした。

魔魁の技であるトルネードバスターとジェットアッパー、圭の技である一宮流の霞と零、ぶっちゃけどちらも竜巻旋風脚と昇竜拳です。

銃の名称はジェイスワットに登場するものです。

「バンプレストにそんなゲームあったんだ」と思ってくれれば幸いです。
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