死にたくないので百合の間に全力で挟まりにいこうと思います 作:散髪どっこいしょ野郎
自分が転生者であることは五歳になってから知った。
というのも、隣に出来た家に住んでいるのがこの世界の主人公だったからだ。
「ねえねえ、あなたなんてなまえなの?あっ、あたしは
「……
……とまあ最悪な顔合わせだったが、お隣さんともなれば関わる機会も次第に増えていくもので。
気がつけば、俺たちは親友となっていた。
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一言で言えば、この世界は終わっている。
俺が前世に読んだラノベ『蒼の創鉄』。その舞台となっているのがこの世界だからだ。
ハッキリ言ってそこまでの知識量は無い。俺の知識は友人のを借りて読んだらけっこうハマり一巻から二巻まで買って、数年後に気になって調べたら最終話でプチ炎上したことを知った程度だ。
書籍化されるぐらいには人気のラノベだったが引っ張った割には唐突な鬱エンドでブーイングが殺到。
元々細かい粗も多く突っ込みどころ満載だったが好きな人は好きなタイプ。それが『蒼の創鉄』。
この作品は基本的に主人公周りが話の中心となる。いずれやってくる『大災害』。それらを無事に切り抜けるには──やはり主人公にひっつくぐらいしか選択肢はないもので。
「向日葵ー?向日葵……って、また筋トレしてる」
「なんだよハル」
「なんだよじゃなくて、部活、今日もサボったでしょ」
「ああ……そういえばそうだな」
「部長カンカンに怒ってたよ?次来なかったら一発ぶん殴るぞ~って」
「ハッ、返り討ちにしてやるよ」
「……ああもう、そういうことじゃなくて」
部活には気が乗った時にしか行かない。そもそも学校もサボりがち。そんな俺を見捨てようとしないのはコイツの長所であり短所だ。
……俺だけが、その生活も無駄だと知っている。あと数年の内に訪れることになる『大災害』。この世界に明確な『敵』が現れる重大イベント。
俺はそれに向けてひたすらに体を鍛えていた。何事も命あっての物種。生き残る確率は少しでも上げとかなければならない。
「とにかく!明日こそはちゃんと来てね!」
「考えとく」
「絶対来ないタイプだコレ……」
ハルが出て行くのを見送り、筋トレを再開した。
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あたしには幼馴染みがいる。女の子よりも女の子みたいな顔をしてて、腹筋がバキバキの。
そしてあたしの、大切な親友。
向日葵は今日も部活に来なかった。いくら昔からの親友といっても流石に看過できない。
お互い十四歳になったのに、未だに向日葵は不真面目なままだ。
一応授業には最低限出ているみたいだけどテストの点もそこまでよくなさそうだし心配になる。
「なんでそんなに鍛えてるの?」
「いずれ分かる」
返答はいつもコレだった。
その言葉の意味を、あたしは身を以て知ることになる。
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「来たか」
地鳴りと共に確信する。間違いない。今日が『大災害』の日だ。
寝ている両親──休日ということで二人とも昼間から眠っていた──をたたき起こし外に出ると、
「……やべえな」
空を覆う異形、異形、異形。
奴らの名前は『オーディルム』。この世界の敵だ。
「ハル!ハル!いるか!」
隣の家の戸を叩く。そう間もなくハルはドアを開けた。
「すごかったね地鳴り……って、なに、あれ」
「逃げるぞ」
「逃げるって……どこに?」
アテは無い。ただ一刻も早くこの場を離れなければ死ぬ。
現状の目的はとにかく第一波を乗り越えること。自衛隊が来るのをおずおずと待っている暇は無い。
避難先は地下シェルターがある家が望ましいが、そんな家が都合よく近所にあるはずもなく。
ハルとその両親を連れて、俺は走り出した。
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そこら中から悲鳴が聞こえる。
「なに、なんなの……?」
見知らぬナニカに食われている人。込み上げた吐き気が恐怖に飲まれていく。
お父さんもお母さんも向日葵の親御さんも困惑している中、向日葵だけが迷うことなく進んでいく。
あたしは──あたしたちは、それに縋るようについていくしかなかった。
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どこに行けばいいのか分からない。
地獄のような光景だった。町は焼け、そこら中で人が殺され、貪られている。
原作では避難したとの結果しか書かれていない。故に、どこに向かえばいいか舵を切るのは俺にしかできなかった。
「おい、そこの!助かりたかったらこっちに来い!」
声をかけられた方向に目をやると、そこそこ頑丈そうな建物に複数人の武装した警官が見られた。
オーディルム相手に拳銃では心もとないが、それでもこのままアテもなく走り続けるよりはマシだろう。
「ハァッ、ハァッ……お、終わった……?」
ようやく息をつける。だがハルの問いは否だ。終わりではない。本当の地獄はこれからだ。
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あれから二年の時が経った。
世界中に現れたオーディルムにより地球の人口は約二分の一に。
目的も、発生源も不明。ただただ理不尽な暴力がそこにあった。
一つ分かったことは奴らは地殻から現れるということ。
そして、政府は対オーディルムに向けて奴らの死体を流用した
俺とハルは現在それぞれの適性検査を行っている。
メルヒュノンは大きく分けて二種類。肉体変化型と装着型。肉体変化型は適性持ちが遥かに希少であるが装着型より高い能力を発揮できる。
「向日葵はどうだった?」
「俺は装着型。お前は?」
「あー……うん。あたしは肉体変化型」
ある程度の未来を知っている俺からすると、ハルは人類の切り札だ。
肝心なのはこれからだ。どうにかして
俺は何があっても死にたくない。だからハルと同じ部隊に入る為に訓練時はそこそこ手を抜くつもりだ。中途半端に有能っぷりを見せつけても部隊長になるだけなので。
サラッと流していたが対オーディルム特務部隊に入るのは適性持ちなら強制だ。そのため、まだ若い俺たちも問答無用で国の為に戦わされる。それもこの世界のクソたる所以だ。
バックアップには米軍と自衛隊がいるが俺たちは使い捨てのように扱われる。理不尽。
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つまらない鍛錬の日々が続く。『大災害』こと第一次侵攻で世界人口の半分が殺されたこともあり、次なる第二次侵攻に向けてひたすらに鍛えさせられる。
今のところオーディルムたちは大人しくしているが、いつ二年前のようにやって来るのかは誰にも分からない。
俺は以前から自力で訓練していたため余裕だが、ハルはキツいしごきに音をあげていた。
だがやはり、アイツには素質がある。教えられた戦闘技能をスポンジのように吸収して、自分の力と変えている。伸びしろで言うのなら間違いなくアイツがトップだろう。
「つ、疲れたあ~……」
「お疲れ。ほらお前も食えよ肉。貴重品だぞ」
オーディルムは人間以外の動物にも無差別に襲いかかる。このご時世、動物の肉は高級品だ。
「食べる気力もないぃ~……」
「それでも食え。体を作る為にはそれが一番いい」
肉体変化型のメルヒュノンを使っているのであれば尚更だ。鍛えれば鍛えるほど食えば食うほどハルは強くなる。
「……ねえ、向日葵。次の襲撃はいつだと思う?」
「さあな」
そうとぼけてみせたが、原作の知識がある俺なら分かる。初の実戦は今年中のいつかにある。
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サイレンがけたたましく鳴り響く。ということは、オーディルムが現れたということ。
急いで戦闘服に着替え発射口に向かう。
周りにはあたしたちと同年代の人や年上の人がいる。
「死にたくない……」
「お母さん……お母さん……」
メルヒュノンを起動させると同時に、そんな言葉が小さく響いた。
分かる。あたしだって死にたくない。戦うのは怖い。
……手が、震える。思い出されるのはあの時の光景。
「ハル」
「……!な、なに?」
「大丈夫だ。俺がいる」
「……うん」
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さて、鬼が出るか蛇が出るか。
原作の鬼門となるのが今回の第二次侵攻。なにせハルを除いて部隊は全滅するのだから。
飛行ユニットを展開し射出と同時にスラスターをふかす。
オーディルムは外殻自体は大したことはない。ライフルでもあれば余裕で殺せる。
ただ問題なのはその攻撃力。ガチガチに固められた鎧も呆気なく貫く。
だからなるべく遠距離から戦いたいのだが、初期のメルヒュノンの武装は一本のブレードしかない。なんで?
任務は一つ。民間人の居住地を護りながら敵を殲滅すること。
「──来た」
接敵。黒い異形が俺たちめがけて飛翔する。
「はあっ!」
吶喊と共に一閃。それだけでオーディルムは倒れ伏した。だが厄介なのはその数。
敵味方入り混じっての混戦となるのは必死だった。
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戦闘は七時間半に及んだ。敵を斬って、斬って、斬り伏せて。味方はほぼ壊滅状態だった。
残っているのは俺とハルのみ。やはりアイツの潜在能力は計り知れない。
『ご苦労、帰投してくれ』
上層部からのごく短い無線。なにがご苦労じゃと言い返したくなる気持ちを抑えつつ、ハルの元へ向かう。
「ちょ、ちょっと待ってください!生存者一名!」
……来た。この生存者は物語のキーとなる。
「あなた、名前は?」
「……
廃墟と化した街で奇跡的に生き残った彼女。
稲船葦火。今作のメインヒロインである。