死にたくないので百合の間に全力で挟まりにいこうと思います   作:散髪どっこいしょ野郎

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熾烈

「オラァッ!」

 

 

脚部にワイヤーブレードを巻き付け、こそぎとるように斬る。しかし傷が浅いのか、転倒すらしない。

 

幸い向こうの攻撃速度は遅い。スラスターをふかすだけで簡単に避けられる。

 

 

「シッ……!」

 

 

佐々木春馬が加速しながら刃を突き立てる。軽く刺さってはいるものの致命傷にはほど遠い。

 

 

「クソッ、コイツ本当に倒せるのか!?」

 

「刃が通るんなら殺せない道理は無いっすよ」

 

 

弱点は、恐らく目。目標は小さく狙いづらいが、突破口はそこしかない。

 

ワイヤーブレードで何度も足を斬り付ける。小さな傷も数が増えれば大きくなる。攻略はできる筈だ。

 

 

「今だ、函青!」

 

「オォオオオオオッッ!!」

 

 

目にブレードを突き刺す。オーディルムは暴れるがしばらくすると大人しくなった。

 

 

「フゥー……急いでBブロックの援護に向かわないと」

 

「いや、待て。まだだ」

 

 

顔を上げると、今倒したのと同じような個体が数匹いた。

 

 

「……ったく、勘弁してくれよ」

 

 

 

 

 

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

 

 

 

 

 

「向日葵、そっちは大丈夫!?」

 

『なんとかな』

 

 

よかった。無線が繋がったってことは、向こうの状況はそれなりに安定してるってことだ。

 

ただこっちは違う。避難してきた非戦闘員の人たちめがけてオーディルムが次々とやってきている。

 

 

「やああああぁっ!」

 

 

斬る。斬って斬って斬りまくる。

 

避難が済むまでの時間稼ぎになればいい。並みのオーディルムに今更負ける気はない。

 

──だけど。

 

 

「うわああああ!」

 

「助けて……助──」

 

 

人手が足りない。できるだけ多くの敵を倒しても隙間を縫うように殺されていく。

 

自衛隊の人たちも応戦してるとはいえ、圧倒的な物量に押されがちだ。

 

何かが必要だ。この状況をひっくり返せる何かが。

 

 

 

 

 

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

 

 

 

 

 

装着型と肉体変化型の違いは何か。

 

答えは敏しょう性と出力と防御力、要は全てにおいて装着型が下位互換である。

 

本来、肉体変化型は素手でも奴らを屠れる程強い。ただ奴らの外殻が脆いためにブレードを使用しているだけであって、本来であれば徒手空拳(ステゴロ)の方が攻撃力は高い。

 

これはどうやっても埋められない差だ……これまでは。

 

今は違う。装着型でもハルたちと同じように戦える方法がある。

 

反動は大きい。だが、この局面でそれを使用しない理由にはならない。俺はなにがあっても生き残ってみせる。

 

 

「佐々木さん……アレを使います」

 

「……本気か?」

 

「はい」

 

 

腕部にセットされた端末を開きパスコードを入力する。

 

 

「がぁ……!く、ぎ、ぃ……!」

 

 

体中が燃えるように熱い。心臓は今にも飛び出してきそうなほどうるさく、血液が沸騰するような感覚に襲われる。

 

 

「──オ、オオオオォオォォォッッ!!」

 

 

叫ぶ。激痛が走るのを感じながら、俺は大型オーディルムに飛びかかっていった。

 

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

 

オーバーブーストモード。

 

そんなセンスもへったくれもないような名前がこの機能の名称だ。

 

クソデカい反動の代わりに、一時的だが肉体変化型と同じような出力を出せる。

 

 

「ウオオオォォォオッ!!」

 

 

大型オーディルムの口元を掴み一気に引き裂く。これなら手早く片付けられる。Bブロックの援護にもすぐ行けるだろう。

 

タイムリミットは一時間。それまでにコイツらを殺す。

 

 

 

 

 

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 

一向に敵の数が減らない。別部隊から応援が来たものの、今回は第二次侵攻の時より敵が多い。

 

 

「オォォォオアアアアアッッ!!」

 

 

叫び声が聞こえる。この声は……

 

 

「……向日葵?」

 

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

 

あれから、駆けつけた応援部隊と向日葵の活躍もあって事態はなんとか沈静化した。

 

……あたしにとってはそれよりも、あたしの不手際のせいで亡くなった人たちに対しての申し訳なさが激しくて。

 

向日葵が眠る病室の前で、俯くことしかできなかった。

 

 

「ここにいたか」

 

「……葦火」

 

 

 

 

 

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めると病室内だった。

 

我ながら無茶をしたと思う。オーバーブーストモードの反動がここまで強いとは思わなかった。

 

なにはともあれ護りきれたなら上々。未来的に考えて生き残る為にはあれが最善手だったのだろう……と、とりあえず自分に言い聞かせてみる。

 

ノックの音がした。ハルか、葦火か……

 

 

「よかった。目が覚めたようだな」

 

「……向日葵……」

 

 

両方だった。

 

 

「ごめん……あたしが弱いから、だからあんな無茶をしちゃったんだよね。本当にごめ──」

 

「オイオイオイオイ何言ってんだお前。あれは俺が横着したくなかったからやっただけだよ」

 

「ほら、やはりキミのせいで無理をしたわけではないんだぞ、ハル」

 

 

ハルは思い込みやすい性格だ。今回の件も自分の無能故のものだと考えているのだろう。

 

 

「ハァ……分かったよ。もうあんなことはしない。……多分」

 

「……うん」

 

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

 

『なにか欲しい武装はあるか?』

 

「はい?」

 

 

ある日、研究室にて新しい武器を試していたら、そんなことを聞かれた。

 

 

「そうですね……今回の奴みたいに外殻が硬い敵にも効く武器が欲しいです」

 

『そうか。ではこれならどうだ』

 

「これは……」

 

 

杭打ち機のような……いやまんま杭打ち機(パイルバンカー)だ。

 

メルヒュノンを展開し、腕に装着。杭を思い切り振り絞って放つと……

 

 

「……すげえなこれ」

 

 

特別な素材で作られている研究室の壁にヒビが入った。腕も軽く痺れている。

 

以降、このパイルバンカーは新しい武装として追加されることになった。ちなみに研究室の壁を壊したことについてはコッテリと絞られた。理不尽。

 

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

 

「よっ」

 

「……ああ、キミか。向日葵」

 

 

暇ができたので葦火の元に顔を出す。てか休日は殆ど葦火の所に来てる気がする。

 

 

「あれ、ハルはいないのか?」

 

「今日は丸一日訓練らしい」

 

 

あれからハルは更に訓練に打ち込むようになった。一人で背負いがちなアイツのことだ。もっと強くならないと、とでも思っているのだろう。

 

 

「……なあ、向日葵」

 

「ん?」

 

「私は……キミたちの安らぎになれているだろうか」

 

「安らぎ?」

 

「ああ。ハルもキミも、私の知らない所で苦しんでいる。なにより私はキミたちのように戦えない」

 

「お前が待っているから俺たちは戦えてるんだぞ」

 

 

多分これはハルに聞いても同じように返ってくるだろう。

 

 

「お前は俺たちにとって必要不可欠の存在だ。ハルもそう言うだろうよ」

 

「……そうか。なら、よかった」

 

「……あー。面と向かって言うことでもねぇな、コレ。あー恥っず」

 

「ふふふ……それはすまない」

 

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

 

「人語を解するオーディルム?」

 

「はい。恐らくは」

 

 

お偉いさんから呼び出されたと思えばいきなり事情聴取を喰らった。

 

オーディルムが人間の言葉を学習し、さらにこれまでとは違う大型の個体もいたことから奴らは独自に進化しているのではないか、というのが研究班の見立てだった。

 

 

「……では、君に次の任務を任せよう。難しいことだが君ならできると確信しているよ」

 

「任務?いったいどんな──」

 

「オーディルムの捕獲だ」

 

 

……はい?

 

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