死にたくないので百合の間に全力で挟まりにいこうと思います 作:散髪どっこいしょ野郎
絶対、絶対にロクなことにならないと思う。だけど上からの命令には逆らえないのが兵士というもので。
「ハァ……」
「……ため息多くない?」
「そりゃそうだろ。賭けてもいい。絶対ロクなことにならねぇぞ」
今回の任務は俺とハルの二人きり。捕獲なんて討伐の何倍も難しいのだからもっと人員を寄こしてほしいのだが……。
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作戦としては一匹のオーディルムを再生限界まで斬り、特殊な檻に閉じ込めるというものだがこれがまーーーーーー大変だった。
オーディルムは一匹でも見つかるとすぐに仲間を呼び出すため、当初は捕獲のホの字も出ないくらい戦う羽目になり。
血反吐を吐く思いでなんとか捕らえ、研究班に引き渡した。再生限界まで殺さないように斬るのも地味に大変だった。
「ってことがあったんだよ」
「そうか。それは大変だったな」
というわけで俺はそんな愚痴を葦火にこぼしていた。本来作戦のことは国家機密だが、まあバレなきゃ大丈夫だろう。
それにしても疲れた。マジでクソ疲れた。
葦火が作ってくれた味噌汁に舌鼓を打ちつつ床に体を投げ出す。どうせ明日も訓練だ。ちくしょうが。
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「葦火ー?来たよー、って、向日葵寝てる……」
「静かにしてやってくれ。とても疲れているようだったからな。……そういえば、キミも捕獲作戦に参加したのだったか?」
「うん……しばらく休みたいくらい疲れた……」
「そうか。お疲れだったな。味噌汁を作ってある。キミも飲むといい」
「ありがとう。いただきます」
……美味しい。前々から思ってたけど葦火は料理が上手い。
「そういえば、料理はどこで習ったの?」
「……そういえば……そうだな。どこで習ったのだろう……気がついたらできていた……」
葦火は記憶喪失だ。これが少しでも何か思い出す鍵になればいいと思う。
……葦火は、どんな人だったんだろう。どんな友達がいて、どんな家族だったんだろう。
いつか分かったら、いいな。
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「ふっ、はっ……!」
相も変わらず戦闘訓練に精を出す毎日。俺の休みはいつ取れるんだ。
俺たちが捕獲したオーディルムがどうなってるかは聞かされていない。どうせ拷問だの実験だのをしてるだろう。
そういえば近々秋田県を取り戻す作戦が開始されるらしい。恐らく俺とハルはマストで部隊入りだ。
……そういえば戦果はそれなりに出してるのにどうして俺たちは同じ部隊のままなのだろう。いや離れられたら困るからありがたいのだが。
疑問に思って上層部に問い合わせてみたところ、ハルのメンタルヘルス上同じ部隊にしているとのこと。俺がいないとアイツは精神的に不安定な状態になっているらしい。
ハルは間違いなく最強だ。ただメンタルが安定しなければ上からすれば使い物にならないのだろう。
俺は転生者だからまだしも、アイツは本来なら普通の高校一年生。精神が戦うのに向いていないのだ。
……そうか。そういや俺は転生者だった。前世の記憶は殆ど無い。『蒼の創鉄』に関する情報もここから先は当てにならない。
俺はなんのために戦っているのだろう。恩を返したかった両親はもうこの世にいないのに。
生き残りたい。なんのために?
後、唯一分かっていることはこの世界は鬱エンドを迎えるということ。
……今日の訓練が終わったら葦火んとこ行くか。
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例の作戦通り秋田県に踏み入ったが……全くオーディルムの気配がない。
今回のメンバーは俺とハルと別部隊の二人、計四人だ。最近俺たちに無茶振りされることが多い気がする。
……それにしても静かだ。オーディルムどころか、生物の気配がまるでない。
疑問に思いながら足を運んでいくと、大きなクレーターのような穴が見えた。
なんの躊躇いもなくそこに入っていくと、気づいた。これははめられていると。
「っ、退避ッ!罠だ──!」
声を上げると同時におびただしい数の敵が辺りを埋め尽くす。そこには退避する隙間すらなく、完全に包囲されていた。
「チイッ、総員、戦闘準備!」
俺が言うまでもなく全員が武器を構える。
流石に今回は死ぬかもしれない。汗が頬を伝うのを感じながら、俺はそんなことを思っていた。
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これまで無作為に襲うことしかしてこなかったオーディルムが、策を講じている。なんとしても本部に持ち帰りたい情報だが、ご丁寧に無線への妨害電波まで出ている。
この状況を打破するためには、この場にいる敵を全員殺すしかない。
だが厄介なことに今までとは違いオーディルムの動きに統率が取れている。ヒットアンドアウェイでじわじわと削るように攻撃されている。
一応倒せないことはないが今まで以上に相手が強くなったことに変わりはない。
──使うか?オーバーブーストモードを。
いや、長期戦になると逆効果だ。反動で動けなくなったところを畳まれて終了になる。
集中力を切らすな。焦ったらたちまち飲み込まれる。
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「はぁ、はぁ、はぁ……」
戦闘開始からもう十二時間は経過している。本部はとっくに異常に気づいているだろうに、応援部隊すら来ない。恐らく向こうは向こうで足止めを食らっているのだろう。
ハルはともかく別部隊の二人は疲労困憊といった様子だ。絶えず浴びせ続けられる攻撃によって負傷もしている。
「……お前ら、聞け。このままだと俺たちは死ぬ」
もうなりふり構ってはいられない。この場を突破する唯一の方法は。
「全員で来た道の方角へ突撃する。もうそれしかない」
間違いなく攻撃は受けるだろう。だが、これ以上ジリ貧におかれては死ぬのを待つだけだ。
「オーバーブーストモードを使用する。いいな」
「……うん」
別部隊の二人も頷く。腹をくくれ。ここが正念場だ。
パスコードを入力する。
「グッ、ア゛……!」
やはりこの感覚は慣れない。しかしそんなことに意識を割いているようでは生き残るなんて夢のまた夢。
「行くぞ……!」
合図と共に、俺たちは敵の元へ飛び込んだ。
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心電図の規則正しい音が聞こえる。
あれから一人が死に、向日葵は片腕を失った。
あたしが弱いから。あたしがみんなを守りきれるくらい強かったら、こんなことにはならなかったのに。
……でも、これで向日葵は戦えなくなる。
だから……今度は、今度こそはあたしが守りぬいてみせる。
「行ってくるね」
眠ったままの向日葵にそう呟き、立ち上がった。
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目が覚めるとまたもや病室内だった。
左腕を上げようとして──その腕が無いことに気づく。
これで俺は戦えなくなった。ということは、原作にこれ以上介入できないということ。
条件は不明だがこのままでは鬱エンドになること確定だ。なんとかして戦線復帰をしなければ……と思いつつ、ナースコールを押した。
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珍しく上層部から嬉しい知らせが届いた。
どうやら亡くした左腕の代わりに、義腕を付けてもらえるそうだ。
性能はメルヒュノン同期型と聞いている。これまでとの違和感なく扱えるらしい。
さっそく付けてみると、話に聞いた通り普通の腕と同じ感覚で動かせる。これなら戦闘にも耐えうるだろう。
聞くところによるとこの義腕は捕獲したオーディルムの組織を組み込む形で作られたものらしく、神経に障ることなく繋げるものだとか。
ということで再び戦えることになるとハルに伝えたところ、アイツはものすごい虚ろな顔をしていた。また自分を追いつめているのだろう。
いくら親友とはいえ俺のできることには限りがある。葦火に上手いことフォローしてもらわなければ。
「と、いうわけだから後はよろしく」
「……キミも中々無茶振りをするな」