死にたくないので百合の間に全力で挟まりにいこうと思います 作:散髪どっこいしょ野郎
「よっ」
「……向日葵か。ちょうどいい。話しておきたいことがあったんだ」
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「で、なんだよ話って」
「私の死後についてだ」
「あ?」
いきなり呼び出されたかと思えば、そんな突拍子もない話をさせられた。
「ハルは……彼女は、私に依存している節がある」
「そうだな」
それには気づいていた。気づいていながら放置していた。
「私がいなくなった後、傍で支えられるのはキミしかいない。だから、頼む」
「……まあ頼まれたけどよ、どっちかって言えば俺の方が死に近くないか?」
「そうだな。それでも、頼む」
あまりにも唐突なお願いに頼まれたこっちが面食らう。死期でも悟りだしたのか?
──コイツは死なせない。ハルの為にも、俺の為にも。
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サイレンが鳴る。
……おかしい。前回の侵攻からそれまで日が経っていないというのに、またしても奴らは襲撃してきた。本気で人類を滅ぼすつもりなのか。
今回は前回ほど人員を割けないので生き残った精鋭たちで集中的に居住区を護ることになった。
「や、ちょっとぶりだね函青向日葵」
「……マジで来やがったな」
例の人型オーディルムもいる。今回の侵攻は過去最大の規模になりそうだ。
こちらはブレードを、あちらは触手を構え──両者一斉に弾け飛んだ。
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「よっと」
「フッ……!」
ブレードと触手がぶつかり合い火花が散る。
俺とコイツの力量はおよそ五分五分。勝敗を分けるのは外的要因と────
「アッハッハッハ!楽しいねぇ函青向日葵ィ!」
「……!」
────戦闘センスの差。
ワイヤーブレードを薙ぎ距離をとる。だがそれを読んでいたのか回避されながら近づかれる。
パイルバンカーの準備はできている。近づかれたところを待ち構えカウンターめいた一撃を喰らわす──つもりだった。
「おっ、なにそれヤバそうだね!」
「チッ──!」
わざと吹っ飛んで威力を殺された。もうカウンター戦法は使えない。
「そらそらそら!」
「クッ、てめぇ……!」
ブレードで打つ、打つ、打つ。互角となると徐々にお互い隙が生まれるもので。
「ハァッ!」
「シッ──!」
両者共に切り傷ができる。これでハッキリした。俺はコイツを倒せないがコイツも俺を倒せない。
ハルが加勢に来てくれれば勝てる。だが向こうは向こうで相手がいるのだろう。
対してコイツには大量の仲間がいる。打ち合っているところに入られたら俺とて致命傷は避けられないだろう。
──つまり、このままではマズい。
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「ハァ、ハァ、ハァ……!」
「そろそろ死んでくれないかなぁ」
「慌てなさんな。相手は人類最強だぞ」
早く向日葵の援護に行きたいのに、目の前の二人が自由に動かせてくれない……!
強い。間違いなく今まで戦った中で最強の敵だ。
──落ち着け、あたし。今、何を最優先にすべきか考えろ。あたしの後ろには守るべき人たちが、葦火がいるんだから。
勝つ。死んでも勝つ。
「ッ!」
「おいおい突っ込んできたよ」
「焦ってんね~ハルちゃん」
目の前に迫る触手。要は当たらない程度に弾けばいい。
「うおっ、マジか、速──」
片方の頭に刃を通し、もう片方に狙いを振り絞る。
「ッだあッ!!」
「な、嘘、だろ──」
……決まった。肉体変化型の速さとパイルバンカーの重みで無理やりゴリ押しした。
「ハァ、ハァ……!」
早く。急いでみんなの援護に向かわないと。
「あの二人が負けるなんてねぇ。やっぱ侮れないね、人類最強」
「疲れているようだな。楽にしてやろう」
……嘘、でしょ。
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「ゼェ……ゼェ……」
「粘るねぇ。だけど、そろそろ限界なんじゃない?」
悔しいが、奴の言うとおり限界が近い。
目の前のコイツに加え他の雑魚共も連携して襲いかかってくる。防戦一方になるのは必死だった。
無線から聞いても各部隊追い詰められているらしい。ジリジリと後退させられ、気づけば居住区のすぐ近くまで迫っていた。
──それでも。
「ゼェ……ハァ……まだ、まだだ……!」
負けられない。俺はどうしても生き残りたい。
一度死を経験したからだろうか。俺の中で生きろと何かが訴え続けている。
俺は生きる。なんとしてでも、生き残ってみせる。
「オ、オオオオォォォッッ!!」
オーバーブーストモードを発動。一時的にだが、奴を上回る力が手に入った。
逃しはしない。今ここで、ケリをつける。
「おおっ、速くなった!」
「ウオオオオオッッッッ!!」
斬る。斬る斬る斬る斬る……!
手を緩めるな、ここを逃したらもう後が無い!
『向日葵!そろそろそっちに行けるから、あと少しだけ耐えて!』
ハルからの無線を聞き、奴の顔が今日初めて歪んだ。
「ウソだろ……あんだけ寄こしたのに勝つとか、八戸ハル化け物すぎない……!?」
「逃がすかぁッッ!」
雑魚の攻撃力は油断ならない。ただ、言ってしまえばそれだけである。弾いて返しの一太刀を入れればすぐに殺せる。
「クソッ、みんな来てー!」
奴の号令に従いオーディルムの群れが襲い来る。持てる武装の全てを活用し突破口を切り開いた。
「えっ──」
「オラアアァアァアアアァッッッ!!!」
行ける。奴に、ブレードが食い込み──
「────は?あ、ぐぁっ!」
一瞬出来た隙を突かれ蹴り飛ばされる。いや、そんなことは問題じゃない。なんでお前が、葦火がここに──
「葦火!?な、なんでここに──」
横から聞こえてくるのはハルの声。無事到着したようだ。
「…………分からない。何故、私はここにいる……?」
「いやー助かったよ
「が、あっ、ま、待て──」
必死に手を伸ばすも届かない。奴の手が葦火に触れる時────
「──そうか。私は、オーディルムだったのか」
「……え?」
「は?」
最悪の審判が、下された。
▫▫▫▫▫
……何、言ってるの?
「あ、葦火、何を言って……」
「……言葉の通りだ。私は、オーディルムだ」
情報が頭に入ってこない。だって、葦火がオーディルムだなんて、そんなこと。
「……裏切っていたのか?」
向日葵の声。
「いや、裏切っていたのとは違うよ。葦火は、人間たちへのスパイ役で記憶を消されていただけなんだからね」
人型オーディルムの声。
「おい……おい、葦火!なんとか言えよ!あの日々は、全部嘘だったのか!?」
叫ぶ向日葵。
「……私は、人を殺しているんだ。この体も心も、この体の持ち主を殺して得ただけにすぎない。──私に、キミたちといる資格は無い」
「そ。僕たちがこうして人型になれたのは、人間を食い殺したからなんだ」
頭痛がする。呼吸は乱れ、動悸が始まる。
「それじゃ僕たちは一旦帰るよ。じゃあねー」
「……待て。最後に一つ、キミたちに言っておきたいことがある」
葦火があたしたちに振り向く。
「選ぶのは二つに一つだ、八戸ハル。函青向日葵。人々を護りたいのであれば、私を殺せ」
葦火が去っていく。あたしは、何もできずに──