楽しんでいただけると嬉しいです。
「オジサンではない!! 私は永遠の24歳だッ!!!!」
次の瞬間、マグマンの口がガバッと開く。
そこから濁流のようにマグマが吐き出された。
「防火マントッ!!!!」
押し寄せるマグマを防火マントで防ぐ。弾かれて散った溶岩。後方から壁の表面が溶解していく音が聞こえた。こっっっっわ……本当にアースの完全再現じゃん……。
黒騎士くんやジャスティスレッドなら、拳圧や斬撃でこの程度は真っ二つにして突っ込んでいくだろう。
けど僕にそんな力技は使えない。避ける、流すまでで精一杯だ。
「やはり彼らのように理不尽な力技は使えないようだねぇ!!」
既に向こうも気付いているらしい。
着地した時、マグマンは全身を肥大化させ、身に纏う溶岩の鎧を大型化させていた。ついでに全身を絡めとっていたウェブも全部千切れている。アニメとかでよく筋肉キャラが筋肉を隆起させて服が弾け飛ぶやつを思い出す光景だ。
「そんなヘナチョコのオンボロスーツで、この私に勝てるとでも!!」
丸太のような剛腕で殴りかかってくるマグマン。
受け止めるか? いや、避けよう。
殴打が空を切るより早く跳躍し、的を外した剛腕は大地を穿った。
「アンタの経歴は調べた。会社を始めた頃は慈善事業を中心に行っていたはずだ。それは今でも止めていない。表彰も受けた筈だ。なのにどうして、こんな悪事に手を染めた!!」
「勘違いしないでくれ。確かに始まりは知的好奇心だったが、さっきも言った通り怪人共の器官には人類の夢が凝縮されている。私はそれを有効に使いたいの、さッ!! 」
跳躍の勢いを乗せて繰り出したパンチは、マグマンが纏う溶岩の鎧に阻まれる。同時にマグマンが手のひらをこっちに向けた。うげ、あれはマズいなぁ!!
マントの裾を掴んで防御の姿勢に入った次の瞬間、マグマンの手のひらから数発の火炎弾が放たれた。
「例えばナメクジ怪人……いや、電食怪人ナマコデンキの蓄電器官はほぼ無限と言える容量を持ったバッテリーだ! 他者の技能を一目見ただけで完全に模倣する技巧怪人テクニカの脳細胞を研究すれば、本物の学習装置が開発できるだろう! 私が今使っている惑星怪人アースのコアは、新エネルギー開発のパラダイムシフトを起こす事だってできる! 素晴らしい研究材料だとは思わないかね!!」
「まさか、その怪人スーツはゲノムの実験を行うための……!?」
「Excellent!! やはり君は頭が良い。だがこのスーツの名は怪人スーツではない、機改人スーツだ!! 怪人の力を機械的に複製し、人類の力として改めるためのスーツなのだよッ!!」
放たれる火炎弾をマントで弾きながら移動する。
火炎弾の威力は昼間の戦いよりも更に増している。これがマグマンのフルスペック……無駄に時間をかければ、確実に押し切られる!
「誰も手を出さない禁忌の領域に誰より先に踏み込み、未来を切り拓く。これこそまさに偉業! 人類の歴史に残る新たな一歩だよ!!」
「じゃあ、昼間のあの人は? アンタの理念は“人類のため”なんだろ。それならどうしてあんな真似を!?」
「どうしてかって? どうしようもない社会のクズに、人類発展の礎になるチャンスをくれてやったのさ」
「ッ……!! お前……!!」
「他責思考でしか生きられないクセして、周囲に害を振りまくゴミはこの世から消えるべきだ。しかしそんな人間でも弱者である限りは社会の庇護対象になる。だからスーツの被験者に選んだ。それだけさ!!」
ブツン、と何かが切れた。気づけば拳を突き出していた。
眼前に迫っていた火炎弾が進路を変え、それはそのままマグマンの方へと跳ね返った。
マグマンの顔をギリギリ横切り、火炎弾は爆発する。マグマンは直立したままお見事、と手を叩いた。
「それにドク達との取引でね。機改人スーツは元々彼らの持ち込みだったんだが、兵器としての運用するためのデータが欲しかったらしい。ゲノム研究に行き詰まりかけていた私にとって、この出会いは幸運だったよ」
「ふざけんなあああああああッ!!!!!!!」
喉が痛くなるくらいの絶叫と共に、僕は再び拳を振るう。向かってきていた火炎弾が拳に砕かれ、今度は軌道を変える前に消し飛んだ。
マグマンは態度を変えず、薄ら笑いの混じる声で喋り続ける。
「我々が回収したもの以上のゲノムとスーツを提供する代わりに、KROは彼等の人体実験に協力する事になった。たとえ非道と謗られようと、私は止まることはない!!」
「そんな理屈は通らない!! 絶対に!!」
「いいや、押し通すさ。私は人類を導く男になるのだからッ!!!!!!」
眼前に迫る火炎弾を裏拳で弾き返したその時、マグマンの背部からいくつもの溶岩が発射される。
溶岩は放物線を描きながら、蜘蛛騎士へ向かって雨のように降り注いだ。
「そらなら……アンタが人類を導く英雄だってんなら……そんな身勝手な幻想は僕が跡形もなくブッ壊す!! ルナ、アタッチメントF!!」
『アタッチメントF“FireFighter”を転送します』
右腕に装着されたハイドロキャノンから放たれる水弾が、飛来する溶岩を相殺する。地面を蹴り、僕は再びマグマンへと接近した。
「幻想だと? これは夢などではない、私が叶える
マグマンは握った拳を勢いよく地面へと叩きつける。
──刹那、僕の視界をプラズマのような予感が駆け抜ける。
跳躍と共にハイドロキャノンを真横に放ち、その反動で左に飛ぶ。
次の瞬間だ。マグマンが拳で叩いた地点から真っ直ぐに、土砂を散らしながらマグマが吹き上がった。
「今のも避けるか!! いい加減一発くらいは当たってくれよ!!」
「うぉぉぉぉぉぉッ!!!!!!」
喉が掠れるほどの絶叫と共にウェブを飛ばす。目標はマグマンの足だ。左右2つのウェブは寸分違わず目標に命中し、僕はウェブを強く引っ張った。
「なぁッ!?」
『分厚い鎧を着込んだ分、足元を崩されれば弱くなる。お見事です、バディ』
マグマンが大きく体勢を崩した。そこへ間髪入れずにハイドロキャノンを……ではなく、右腕に装着された新たなアタッチメントを向けた。
「サウンドフリーザー、発動!!」
本来アタッチメントFの右腕側に装備されるサイクロンブロアーは、煙やガスに対処するためのアタッチメント。アースの能力はあくまでマグマや溶岩を使ったものであるため、サイクロンブロアーは使い所がない。
そこでアタッチメントFに搭載されていた第三の装備を、レイマさんに調整してもらったのがこの『サウンドフリーザー』だ。
「新兵器!? パイプ型の……音響兵器か!?」
「兵器じゃない! これはこう使うんだ!!」
『♪ ~~~♪♪ ~~~~~!!』
ラッパ状のパーツから、ビリビリ感じるほどの轟音が放たれる。そして轟音と共に、転倒したマグマンの全身が凍結を始めた。
「なんだ、私の体が凍って……それはまさか、熱音響冷却!?」
流石は社長。一目でこれが何か理解できる辺り、頭の良さは本物みたいだ。
「その通り。さっきからマグマをバカスカ撃ってきたからね。利用させてもらったよ」
「小癪なッ!! なんでそんなもの用意してるんだ!?」
「プロトエスは、あらゆる災害に対処するためのスーツだからね。兵器とは違うんだよ」
熱音響冷却。パイプの中で熱を音に変換し、更にその音を熱へと再変換する事で温度が低下する仕組みを利用した冷却システム。身近な例だと冷蔵庫なんかに使われてるものだ。それを組み込んだのがこの消火用アタッチメントってわけ。
「ぐっ……だが! この程度の氷など、海面に浮上したクジラの如く湧き上がるこのマグマパワーの前では簡単に──」
拘束を破ろうと四肢に力を入れるマグマン。
だが、氷の枷は割れも砕けもしない。それどころか溶ける様子すらない。手足を抜くことも、溶岩鎧をパージして弾け飛ばす事も叶わなかった。
「かん、たん、に……ッ! 割れない!? 何故だ、さっきまでは泥細工のようにあっさり砕けたはず!?」
「無駄だよ。もうアンタにその拘束を解くことはできない」
「蜘蛛騎士、お前何をした!?」
マグマンの声に動揺が滲む。
ようやく、待ちに待った瞬間が訪れた。アタッチメントの砲門を向けながら、僕はマグマンへと近づいていく。
「僕は何も。そっちがガス欠しただけさ」
「ガス欠……? バカな、アースの能力は無限のエネルギー供給だぞ!? この大地に足を付けている限り、この地球から無限にエネルギーを吸い上げ利用できる最強の能力のはず……!!」
スーツ越しでもマグマン、いや浜田の表情が驚愕に染まるのが分かる。さっきまでの調子は何処へやら、動揺した声と共に僕を見上げた。
「そ、大地に足を付けている限りはね。周りをよく見たら?」
「なに?」
拘束されたまま、マグマンは周囲を見回し……やがてそれに気が付いた。
「地面に白いものが……アレは……蜘蛛の糸が地面を覆っている!? まさか!?」
「戦ってる最中に足裏なんか見る暇ないよね」
マグマンの視線の先には地面を覆う蜘蛛糸と、その真ん中にくっきりと残った足跡があった。
今、マグマンの足裏はガムを踏んずけたようにウェブが固まっている。粘着する物質が層を作ってるから、剥がすのは大変だろうな。
「最初に投げたグレネードからずっと、狙いは私のエネルギー供給を断つことだったのか!!」
「
「ぐぎぎぎぎ……!! 調子に乗るなよ少年! この程度の拘束などに……!!」
「負けるよ。これでチェックメイトだ」
そして僕は両掌を開くと、ルナに呼びかけた。
「シャットダウンプログラム、起動!」
『イニシエイト・クラック・シークエンス発動、シャットダウンを開始します』
───────────────────────────
幼い頃、私は神童と呼ばれていた。
他人より頭が良かった。他人より覚えが早かった。他人よりも手先が器用で、他人よりも顔が良かった。
恵まれていたという自覚はある。同年代や歳上から羨望や嫉妬を向けられる事にも慣れていた。だがそれも、私に対する評価の高さを裏付けるものだと受け入れてたし、むしろ自信が付いた。
だが、私には足りなかったものがある。
学校のテストでどれだけいい点を取っても、スポーツや芸事で表彰されても、私の両親は私を褒めてはくれなかった。
もっと上の賞を、もっと優れた結果のみを求められた。賞状もトロフィーも棚が埋まるくらい貰った。でも、一番欲しいものは与えられなかった。
いつしか私は思うようになった。両親が絶対に私を褒めてくれる結果とは何か。
それはきっと、世界に名を残すこと。誰も成し得ないような偉業によって世界に認められれば、お父さんもお母さんもきっと
だってそれ以上の結果なんて、存在し得ないだろう?
だから、私は……こんな所で立ち止まるわけにはいかない!!
もっと力を、もっともっと強い力を!! 黒騎士モドキの、ジャスティスクルセイダーの成り損ないごときに、負けてたまるか!!
──アァス……
「ッ!? な……なんだ、今のは?」
なにか声が……いや、聴覚で認識したものではない。
今のは私の頭に直接聞こえて来たような……。
──ぐロ、キ、シ……クロき、し……コロス
「お、お前は、まさか……!?」
後頭部を大きな手で掴まれるような感覚。
直後、何かが私の中に入り込もうとしてくるのを感じた。
「や、やめろ! 嫌だ!!」
「往生際が悪いよ。痛みは無いと思うから、じっとして……」
「違う! 君じゃない!!」
思わず蜘蛛騎士に訴えてしまった。いや、手足が凍ってさえいなければ私は彼に縋り付いていただろう。
ああクソ、私も実験体というわけか!!
「ドク!! き、貴様何を仕掛けt……うぅっ!?」
「浜田社長……?」
『あぁ……やはり、フルチャージともなると意識が浮上しやすくなるか。流石は幹部級のコアだ』
「浜田社長!? 一体どうしたんだ!?」
まるでこうなる事を見越していたかのように、ドクは淡々と呟く。背中を開かれ、私という身体に袖を通そうとしてくるような気持ち悪さに顔を顰めながら、私はドクが立つ観測室の大窓を見上げた。
『ああナイトスパイダー、君には教えてあげよう。機改人スーツに使われている怪人コアから力を引き出すと、その怪人の意識が顕在化してくるんだよ。引き出そうとすればするほど、それはより強まる傾向が見られる』
「え……?」
「貴様……まサか最初かラ……!」
『機改人スーツの目指す先は人間と怪人の融合した新人類。より強く在るためには、怪人に意識を塗り潰されるような軟弱者ではいけないのです。浜田社長、誠に残念だが貴方に新人類の資格は無かったようだ』
『おのれドク……謀ったな、このわだしを……!』
「はて、“わたし”とは誰のことでしょうか? 今の貴方は……惑星怪人、でしょう?」
「……ッ!!」
しらばっくれるようなドクの言葉に、私はマスクを両手で抑える。気持ち悪さはどんどん大きくなっていく。やがて体を内側から焦がすような熱が、全身へと広がっていた。
すぐにでもスーツを脱がなければ……いや、ダメだ。無理に脱ごうとすればスーツの素材となっているナノマシンが、私の全身をズタズタにして殺す。なんならコントロールの権限はドクが握っている。
クソッ!! クソクソクソクソクソッ!! どうしてこんな……こんな事になったんだ……!!
「嫌だ……消えたくない!!」
情けない声だ。恐怖に呑まれている。
それでも私にはもうそれしか出来ることがない。最後の足掻きだ。
オォオオ…………
声が、聞こえた。唸るような声が。
「浜田社長!!」
「た、助けてくれ……助けて、蜘蛛騎士!!」
どの口で言うんだ、とは自分でも分かっている。
でもこのままじゃ私が、僕が、塗り潰されてしまう!! そんなのは嫌だ!!
「怪人にナんテ、なりタクなイ! 消えたクナい……!」
「ッ……!!」
今になってやっと後悔した。禁忌になんて手を出さなければよかった。
ゲノムの培養も、人体実験も、悪魔に魂を売るような取引も、全部間違いだった。今更気づくなんて遅すぎる!!
「私ハ、わだじ、は、ただ……褒メラれたかッタだけなのニ……」
「浜田社長……」
オオォォ…………!
声は、どこから?
アァァァス……。
邪悪は、地の底から。
アァァァス……!
意識が闇に呑まれていく。身体が自由を奪われていく。自分自身が塗りつぶされて、視界が遠くなっていく。
それはまるで、
或いは、私の方が
薄れゆく意識の中、私は最後の言葉を振り絞った。
「助ケて……ナイ、ト……スパイダー……」
──言い終えるか終わらないか、私の意識は黒く塗りつぶされた。
「ウオオオオオオオオオオオオオオオ!!! アァァァァァァァス!!!!」
そして、彼の最後の言葉を押し流すように、
───────────────────────
『ぐううううっ!?』
「リヒトくん!!」
凄まじい衝撃波が蜘蛛騎士を吹き飛ばし、カメラにも一瞬ノイズが走る。試験場全体が炎の海となり、砕けた氷塊が転がって溶けていくのも映っている。
今のでリヒトくん、後方に大きく吹き飛ばされ……いや、どうやら地面に放り出される直前に受身を取り、そのまま着地したようだ。あの状況から即座に受身を取れるとは、凄まじい反射神経だな……。
っと、感心してる場合じゃない。ドクと呼ばれる男の口ぶりからして、どうやら事態は最悪の方向へと転がっているようだ。
怪人コアの副作用……エネルギーをより引き出すと、コアの主である怪人の意識が顕在化するだと?
まさか、機改スーツとやらの設計は、私が開発したスーツに近いとでもいうのか!?
だとすれば奴らのスーツの性能は、私が思っていた以上の脅威になる。設計者はいったい何者だ? どうやってその技術を?
不明点が多過ぎる……。だが、それ以上に今考えなければならないのは、現場で戦うリヒトくんの事だ。
『アァス……』
『その……声は……』
通信機越しに聞こえてくるリヒトくんの声が、震えているのが分かった。
リヒトくんだけではない。司令室でモニタリングしていた社員達も、思わず椅子から立ち上がっていた。
「社長……今の声は!?」
「聞き間違いであって欲しかったが……クソッ、どうやら現実のようだ」
最悪だ。煙の向こうで立ち上がり、こちらをゆっくりと振り向いたそのシルエットを、我々はよく知っていた。
『お、お前は……お前は!!』
『アァァァァァス!!!!!!』
『惑星怪人……アース……!!』
リヒトくんの声が酷く震えていた。加えてモニターに表示される彼のバイタルに変化が生じる。
心拍数が上がった。通信から聞こえる呼吸もかなり乱れている。このデータは、リヒトくんはマグマ怪人に対して恐怖を抱いている事を示すものだ。
「ルナ、リヒトくんの状況を!!」
『PTSDによるフラッシュバックです。以前、マグマ怪人に敗北した際の記憶が蘇っているものと思われます』
やはり、無理をしていたか……。無茶と無理は別だと言うが、気付けなかったのは私の落ち度だ。最悪のタイミングで暴発するとは!!
『バディ!! 気を確かに、バディ!!』
『な、なんで……なんで、お前が…………うっぷ……!!』
『バディ!!』
身体が硬直し、吐き気まで催しているようだ。これ以上の戦闘は不可能だろう。
私は手に握っていた端末を手に取り、回線を開く。
これはジャスティスクルセイダーへの通信回線だ。ワンタップすれば3人の元に召集命令が届く。
万が一に備え、3人には理由を伏せた上で基地内へ集まってもらっている。今頃カツミくんの部屋でゲームでもしているだろう。3人を呼べばカツミくんも付いてくる、というわけだ。
現場にはワープで向かってもらう。チェンジャーをチェックした時、プロトエスにはヤクモが開発していた転送機が組み込まれているのが分かったからだ。
あいつの構想では、スーツ装着者をあらゆる場所へ瞬時に派遣する計画だった。だが、転送先に予めビーコンを設置しなければならず、事前に設置したビーコンは怪人が暴れた際に破壊される可能性が高かったために計画は頓挫。代わりにジャスティスビークルが開発されたわけだが……。
転送機自体はどこかで活用する機会を見越して、解体せずに残してあった。今がその使い時だ。それにビーコンの方は、リヒトくんのチェンジャーに組み込まれたアタッチメント転送用のものが使える。
これ以上は彼自身も、研究所の外に待機している我が社の社員達や捕らえた研究員達も、そして世界も危険だ。一人でやり遂げると宣言したリヒトくんには悪いが、ここからは彼らに頼るとしよう──
「レイマ、何してんだ?」
「かっ、かかかカツミくゥン!?」
突然の声、予想外の人物の登場に思わず声が裏返る。
私の背後に、彼はいつの間にか立っていた。
地球最強の戦士。私の最高傑作と呼ぶべきスーツ、プロトゼロを纏う少年。黒騎士、穂村克己くんが。
「君こそ、どうしてここに!?」
「いや、なんでだろ……ちょっと外の空気吸いに行こうと思ったらここに着いてたんだよな……」
「迷い猫か何かかね君は!?」
普段は独房から出てこようとはしない彼にしては珍しいが、独房から司令室まではエレベーターを通るはず。よく辿り着けたものだ……。
『アァァァァァス!!!!!!』
「ッ!? マグマ怪人! なんであいつが!?」
アースの声を聞き、カツミくんの目線がスクリーンに移る。まさか呼ぶ前に来るとは思わなかったが、手間が省けた。
「カツミくん、よく聞いてくれ。マグマ怪人が復活した」
「ッ!?」
「今、とある少年が奴と戦ってくれているが、戦況は芳しくない。頼む、レッド達を連れてすぐに彼の救援に向かって……」
『お断りだ!!』
私の言葉に被せるような叫び。
思わず私とカツミくんはスクリーンを見上げる。
そこには、フラつきながらも立ち上がる蜘蛛騎士が映し出されていた。
読んでいただき、ありがとうございます。
後半へ続く。