番外戦士になりたい蜘蛛騎士くん   作:熊0803

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引き続きお送りします。

楽しんでいただけると嬉しいです。


新峪市の蜘蛛騎士(掲示板回)

 

 

 

 いきなり見ず知らずのヒーローが謎の組織と戦ってる場面でわけが分からないって?OK、じゃあ改めて説明するね!

 

 僕の名前は小原理人(おはら りひと)。説明するとアニメ2話分くらい複雑な経緯の末、この『プロトチェンジャーType-S』を託されてから2年、この世でたった1人のHEROだ。

いや、正確に言えばヒーローは僕以外にも何人か居るんだけど。それは一旦置いておこう。

 

 蜘蛛の生態を機能に落とし込んだ強化スーツ『プロトエス』に適合した僕は、人類の絶滅を目論む恐るべき怪人たちと戦うことになる……はずだったんだけど、色々あってその役割は別のヒーローに任せる事にした。黒騎士って呼ばれてる方ね。

 

 いつの間にか政府公認の戦隊ヒーロー……ジャスティスクルセイダーって子達も現れて、黒騎士と一緒に怪人をぶっ倒し続けて、なんやかんやで怪人たちのボスとの戦いが終わっていた。

 

 僕には僕の使命があったし、大した手助けは出来なかった。そこはすっごく惜しいけど、それでも平和は取り戻された。

オメガ倒した後にちょっとゴタゴタしてたけど、最後まで誰一人欠けなかったし、僕も大好きなハッピーエンドだ。

 

 ただ、彼らの戦いの裏で暗躍している連中がいた。きっと彼らは知らないだろう。

 

 黒騎士やジャスクルが倒した怪人たちの体組織や血液、通称『ゲノム』と呼ばれるものを回収し、利用しようとする不埒な輩。遭遇したのはたまたまだったけど、怪人たちと戦う彼らに対して、僕の相手はそういった連中になっていった。

 

 黒騎士やジャスクルが戦った現場へ、KANEZAKIコーポや自衛隊の事後処理班の目を盗んでコソコソと入り込み、ゲノムを回収してはトンズラ。

怪しげな地下研究施設でゴポゴポ培養して、何やら悪事を企むハイエナの群れ。

 

 KANEZAKIコーポもその存在に勘づいて潰しにかかってるみたいだけど、そういう組織が一つや二つじゃないもんだから手を焼いてるみたいだ。

 世間には公表できない、この世の闇だね。

 

 そして先日。久方ぶりの怪人出現、しかも幹部級という大物を狙って奴らが動くのを察知した僕らは……まあ、あとは知っての通り。

 

 色々端折ったけど、僕の事情はこんな感じだ。

 

 ……で、埠頭での一件から2日ほど経った通学路。

 謎のコウモリ男とタコマスクの行方は掴めないまま、マグマ怪人のゲノムも奪われっぱなしの僕は絶賛凹み中ってワケ。

 

「はぁ……どこ行ったんだよあのコスプレコンビ……」

『申し訳ありません。あらゆるネットワークを駆使して捜索したのですが……』

「ルナは悪くないよ。アイツらが相当の手練ってだけで……そんな奴らにマグマ怪人のゲノム奪われちゃったの、かなりヤバいよね……」

『KROの新兵器なのか、それとも別の勢力なのか。あらゆる面で情報が不足しています。バディ、落ち込んでいる場合ではありませんよ』

「またKROの施設を虱潰しかぁ……。うう、どんどん非公認の手には負えない所まで来てる気がする……」

 

 こういう時、組織のバックアップがついてるヒーローが羨ましくなる。そういう地道で大変な活動も人手と財力で解決できちゃうから、ヒーローは戦うだけでいい。

正直、ルナが居なかったらもっと大変だったのは想像にかたくないよね……。いつもありがと、ホント頼りにしてる。

 

「よぉリヒト!どうした、酷い顔だぞ?」

「おはよ、ネイト。ちょっとプレッシャーに負けそうになってるとこ」

「おぉう……そいつは強敵だな」

 

 声をかけるなり肩を組んでくる、ちょっとメタボ気味な同級生。彼の名前は網島寧人(あみしま ねいと)

高校に入学して初めてできた友人で、僕の秘密を共有する数少ない人間だ。

 

「そんなお前に……はいこれ」

「なにこれ?」

「蜘蛛騎士、掲示板で地味に話題になってたぞ」

「……は?」

 

 一瞬の硬直。慌ててネイトのスマホを覗き込むと、そこには『“新峪(しんよく)市の黒騎士”って知ってる?』というタイトルでスレが立っていた。

 レス数は少ないようだが、ざっと流し読みする。

 

────────────────────────

001:ヒーローと名無しさん

新峪市の黒騎士って都市伝説知ってる?

 

002:ヒーローと名無しさん

釣り乙

 

003:ヒーローと名無しさん

はえーよホセw

せめて話くらいは聞いてやれやw

 

004:ヒーローと名無しさん

>>002

釣りじゃねーし

地元のトレンドだし

 

黒騎士くんが実はもう1人いるんじゃないかって話

新峪市での目撃情報がちょくちょくあるのよ

 

005:ヒーローと名無しさん

新峪ってKANEZAKI本社の隣町じゃん

別に2人いる事にはならなくね?

 

006:ヒーローと名無しさん

街の名前ついてるからか、ローカル感すごいな

 

007:ヒーローと名無しさん

>>006

わかるw

なんかパチモンっぽいw

 

008:ヒーローと名無しさん

確かに隣町ってのが根拠として弱く聞こえるかもしれない

ただ、直近の目撃情報を並べると面白くてさ

 

黒騎士くんがジャスクルに捕まった後なんだよね

 

009:ヒーローと名無しさん

おっとぉ?

 

010:ヒーローと名無しさん

流れ変わったな?

 

011:ヒーローと名無しさん

見間違いじゃなくて?

 

012:ヒーローと名無しさん

そういや一時期話題になってた気がするな

黒騎士くんが戦ってるのと別の場所で黒騎士くん見かけたって話

 

013:ヒーローと名無しさん

釣りだと思われてもいいけど、俺も見てるんだよ

ビルを飛び移る人影が月に照らされてる所

 

写真撮るの忘れたのが今でも後悔

 

014:ヒーローと名無しさん

まあ、黒騎士くんも最初は都市伝説扱いだったしね

ワンチャンあるかもしれない

 

有り得るのはクローン説かな?

 

015:ヒーローと名無しさん

>>014

闇が深すぎるんよ

俺は同型機派。プロトスーツは「2つ」あったッ!

 

016:ヒーローと名無しさん

>>014

黒騎士くんに闇は付き物だよね!

これでオチが隣町に足伸ばした本人だったらウケる

 

017:ヒーローと名無しさん

これでガチなら公式発表あるだろうしガセっしょ

 

────────────────────────

 

 

 

「だってよスパイダー」

「だってよ、ってなんだよ」

 

 掲示板を見せながら小突いてくる悪友は、含みのある言い方で笑う。

 

「そろそろ隠れられなくなってきたんじゃね?って思うんだけど」

「ネイト、何度も言ってるだろ。僕は目立っちゃいけない立場なんだって」

「いや無理でしょ」

「即答かよ」

「だって隠れ蓑だった黒騎士がジャスクルん所に捕まってるんだぜ?それで活動してたらそりゃバレるって」

 

 ぐうの音も出ないド正論。いや、別に隠れ蓑にしてるつもりはなかったし、むしろ勘違いされる度に訂正すらしていたくらいだけどさ。

 

「ジャスクルの3人はSNSもめっちゃ見てるらしいし、認知されるのも時間の問題かもな~。そっから黒騎士にも伝わるんじゃね?」

「それだけは絶対に避けたいんだよ……」

「なんでだよ。公認様に認知されるって名誉じゃないのか?」

「推しに認知されたくないんだよ!!」

 

 周囲の視線が僕らの方に集まり、僕は慌てて両手で口を覆った。つい反射的に叫んじゃったじゃん……ネイトめ、なんてことを。

 

「確かに僕も彼らに対して憧れはあるよ。同じ力を持ったんだから、並んでみたいし顔合わせて話してみたりしたくないわけがない。なんなら一緒に戦って欲しいって思った事なんか何度もある」

「そこまで言っといて、なんで認知はされたくないんだよ?」

「だって恐れ多いじゃん……」

「限界オタクかよお前」

 

 だって向こうは公認様。世間的な立場も強いし、もはや国民的アイドルにも近しい存在だ。アングラな立場にあった黒騎士も人気は上の上だったし、公式にお墨付き貰った今では実質一番人気のメンバーなわけで……。

 

「正直ぽっと出の自警団(ヴィジランテ)が並んでいいはず、ないじゃん?」

「めんどくさっ!理屈がいちいちめんどくさいオタクのそれじゃん!?」

「ってか、何でネイトは嬉しそうなのさ」

「だってそりゃ、俺はナイトスパイダーのファン第1号だぜ?お前が世間に認知されりゃ嬉しいに決まってるじゃん」

「僕は気が気じゃないよ。このスレをきっかけに金崎さんが僕の存在に辿り着いて、帰ってきたらおばさんとお茶しながら待ち構えてる所まで来てたら完全に詰みだ……」

「いいじゃんそれで。そのままスカウト受けちゃいなよBOY~」

「訴えられる可能性の方が高いんだけど!?」

 

 むしろこの1年近く、何事もなく戦い続けてこられた事の方が奇跡だと思う。特殊部隊にしょっぴかれたKROの連中が尋問で口を割らなかったのか?

 

 それとも、実は既に存在を把握されてて、敢えて見逃されている、とか?

 

想像しただけで背筋が寒くなってきたぞ……。

 

「なんだっけ……そのお前が追っかけてるヤバめの組織。カシオだっけ?」

KRO(ケリオ)ね。怪人研究機構、略してKRO」

「そいつらの悪事を散々食い止めてきたんだろ?功績としては十分じゃね?」

「よしんばそれで無罪放免になれたとしても、事情聴取が待ってるじゃん」

「正直に話せばいいじゃん。後ろめたい事でもあんの?」

「そういうわけじゃないけど……」

 

 色々と複雑なんだよ。色々と。

 

『ところでネイト様、一つよろしいでしょうか?』

「ん?どったのルナちゃん」

『このスレ立てたの、あなたですよね?』

「ギクッっ!?……な、なんのことでござるかルナ殿ぉ~」

「ネイトお前ぇぇぇッ!?」

「ゆ、許してくれよぉ!俺はただファン1号としてお前の事を密やかに語りたいだけで……」

「足がつくからやめろって言ってるんだよバカーっ!!」

 

 口を滑らせかねない悪友にチョークスリーパーを決める。

まったく、こんな口の緩いやつが協力者だなんて……。ホント、僕は運がいいみたいだ。

 

 

 





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