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「地熱研究所!?そんな所にあったのか!!」
KANEZAKIコーポの社長室に来てから30分ほど。ルナが仕掛けた発信機が示した場所を見て、レイマさんは驚いていた。
KROの本拠地、地下にあるのは想像ついてたけど、もっと海沿いとか工場の下だと思ってたから僕も驚いてる。
『おそらく、マグマ怪人の能力で実験を行うための立地でしょう。最も効率的にエネルギーを供給できる土地を選んだものと推測します』
「社長、管理元の情報も掴めました。どうやら浜田工業が保有している研究所のようです」
「浜田工業か……慈善事業で評判を集める反面、労働環境に関して後暗い噂の絶えない会社だな。まさか、怪人ゲノムに手を出していたとは……」
「これで奴らの拠点は割れました。あとは突入するだけです」
「その口ぶり、何かプランがあるの?」
幸屋さんの質問に首肯で返すと、僕はスクリーンにスライドを表示させる。
「あの時フレイダーに付けた発振器は、小型ドローンに変形し、ルナの操作で動かせます。そのままシステムに侵入して、研究所内を混乱させつつセキュリティを落とす。これが第一段階です」
「ヤクモらしい機能だ。あいつは変形大好きだったからな。それで、次は?」
「第二段階は内部へ侵入。こっちは僕らの得意分野です。火災報知器を誤作動させ、混乱した職員達を外に誘き出すので、皆さんは外へ出てきた奴らを一網打尽にしてください。」
「リヒト君、まさか君一人で行くつもりかね?」
「そこはこの1年、あなた方に足取りを掴ませなかった僕とルナを信頼していただければなと。ああ、生意気言ってすみません!つまりそれだけ自信があるというわけで……」
「いや、分かっているとも。私もヤクモのスーツの性能は評価している。それが君の自信に繋がるものであると言うのなら、私もそれを信じよう」
自分で言うのもなんだけど、この1年は常に
最初はレスキュー用なのにどうしてステルスを?と疑問に思ったけど、戦闘を前提に置かない分、隠れて行動するための機能が充実している……という事らしい。
ヤクモ先生は、怪人達の拠点に対しての特殊工作も視野に入れて設計していたようだ。
「ただ、それでも不安はある。幾ら1年実地経験を積んでいるとはいえ、君はプロフェッショナルというわけじゃない。この任務、もし失敗すれば大きな被害をもたらすかもしれん。その危険性は分かっているね?」
「お言葉、ご尤もです。ですが……」
向こうには少なくとも2人、怪人スーツの装着者がいる。それを鑑みると、僕以外の誰かを連れ歩くのは危険のほうが大きいのでは?
そう提言しようとした僕より先に、ルナが口を開いた。
『バディ、ここは素直に頼っておくべきです』
「ルナ……」
『1人より2人、といいます。今回はこれまでと違い、作戦参加人数は貴方1人ではありません。それを活かすべきかと』
「でも、向こうには怪人スーツを着た奴らがまだ2人も……」
『だからこそ、ですよ。KANEZAKIの特殊部隊は、対怪人用の訓練を積んだエキスパート集団です。ジャスティスクルセイダー程の力はなくても、貴方をマグマンスーツの元へ辿り着かせるだけの実力を持っている』
つまり、とルナはここで一旦言葉を区切る。
『今回、貴方は1人ではありません。その事を忘れないで』
「……そっか。今回は僕だけの作戦じゃない、か」
ルナの言葉を反芻する。改めて言葉にされると、なんだかいつもより肩が軽くなった気がする。
今まではルナのサポートもあるとはいえ、1人で全部やらなくちゃいけなかった。侵入経路のルート確認、警備システムの突破、各種データの奪取と破壊活動、場合によっては戦闘して、脱出してから通報。
1人で実行できる事には当然限りがあったけど、誰も巻き込むわけにはいかなかった。ネイトが手伝うって言い出した時も、後ろ盾のない僕じゃ何かあった時に守りきれないからって断った。
でも、今回はレイマさんが手を貸してくれる。僕とルナだけじゃ足りなかったものを、補ってくれる頼もしい人が。
だったら頼るべきだ。1人で何でもできると自惚れるほど、僕は強くないんだから。
(そういや、マグマ怪人はあの黒騎士くんでも単独撃破には至れなかったんだよな……)
ふと、このタイミングで思い出す。
いいや、思い出したんじゃない。あまり意識したくなくて、その事実を思考の外に追いやっていただけだ。
マグマ怪人。正式名称『惑星怪人アース』。1年前の戦いでは戦闘不能になるまで体力を削って海に沈め、先日の戦いでジャスティスクルセイダーズの3人と力を合わせて協力し、ようやくトドメを刺すことができた強敵。
そのゲノムを利用して作られた紛い物が、マグマンのスーツだ。紛い物とはいえ、完成すればオリジナルに何処まで近づくか分からない。あの時勝てたのは、装着者がスーツの性能を活かしきれていなかったからだ。まぐれで勝ったと言ってもいい。
……黒騎士くんもアースと戦った時、こんな気持ちになったんだろうか?
これまでにない圧倒的な強さを持つ強敵を相手にする緊張。負けられないという重圧。そして今の僕が体感している、1人ではなく多くの人に支えられて戦える事への安心感……。
(いや……無いな。怪人と戦う時、彼が何かを小難しく考えたり、ナーバスになっている姿は想像できない。きっと何も考えず、無心で拳を叩きつけているんだろう)
無心、というにはあまりにも殺意が強い気はするけども。少なくとも恐怖にかられたりはしないし、目の前の敵を倒す事だけを考えているはずだ。……彼は、僕とは違う。
(でも、仲間がいる事に対する安心感だけは、僕と同じだといいな……。うん、きっとそうだ。彼、悪ぶってるけどいい子だし)
1人じゃないなら、いつもみたいに気張る必要はない。目的が“撃破”ではなく“奪取”である以上、正面から戦う必要もないからね。
深く息を吸い込んで、僕は肺の中の二酸化炭素と共に、湧き上がった不安を吐き出した。
『金崎社長、私から提言が』
「ふむ、何かね?」
『付き添いで1人、職員に変装して扇動する役割の人員が欲しいのです。警報に加えて、人の声で扇動すれば、作戦成功率はより高まるかと』
僕が物思いに耽っている間に、ルナは作戦のブラッシュアップを図っていた。
相変わらず有能すぎるでしょ、うちの
「フッ、いいだろう。うちのナンバーワンエージェントを君に付けようじゃないか」
「本当ですか!?」
「ああ、特に優秀なのをな。というわけで幸屋くん、頼むぞ」
「久し振りの潜入任務ですね?心が踊ります」
「え、幸屋さんエージェントなんですか!?」
「そうね。秘書はあくまで副業みたいなものよ」
そう言って幸屋さんは不敵な笑みを浮かべている。
今のめっちゃ凄腕エージェントっぽい顔だった……実在するんだ、敏腕秘書エージェント……!!
『バディ、プランの発表はまだ途中ですよ?』
「ああ、そうだった。コホン……第三段階、これはマグマンスーツの奪取になりますね。回収した後、シャットダウンプログラムをインストールします」
咳払いして思考を切り替える。
第三段階、これが今回の作戦における一番重要な部分だ。
シャットダウンプログラムは10秒あればインストールが完了し、スーツのシステムを全てこちらで掌握できるようになる。これでスーツを脱がせられるし、無理やり脱がせてしまう事による自爆も回避できるだろう。
「ルナの走査結果によれば、代表をナノマシンで覆うことで構成されたスーツで間違いないようです。シャットダウンさえできれば、完全に無力化できるかと」
「だが、万が一戦闘になった場合はどうする?わざわざ地熱研究所の地下に設置された施設だ。マグマンの能力を最大限に引き出せる立地と言っていい。本当に、カツミ君達の力を借りなくても大丈夫と言えるのかね?」
レイマさんからの疑問は当然だ。
しかし、僕だって無策じゃない。
「戦えないなりに、対策は考えてあるつもりです。ですが、実行するにはレイマさんにプロトエスを診てもらう必要があります。お願いできますか?」
「作戦ギリギリまでやってみせるさ。だが、無茶だけはしてくれるなよ?口にレモンが出来るまで言うぞ」
「耳にタコができる、と口酸っぱく言う、をマザルアップさせて新語作らないでください」
「ほんのジョークだ。間違えたわけじゃないぞ」
本当にジョークなのかはさておき、レイマさんが調整してくれるなら問題なく実行に移せるだろう。
戦闘向きでは無いとはいえ、今まで倒されてきた怪人達をプロトエスの機能とアタッチメントでどこまで対策できるか、暇さえあればシミュレーションしてきた。まさか実行できる日が来るとは思わなかったけど、レイマさんに話が聞けるなら机上の空論でもなくなるかもしれない。
……仮にシミュレーション通りに行かなかったら、最後の手段を使うしかないけど。あまり使う機会は来て欲しくはないかな。
さて、いよいよ決戦だ。KROには今日こそ事業を畳んでもらおう。
「作戦決行は20分後だ。ヘリで降下させるが、構わんな?」
「え?ヘリから降下出来るんですか!?あれ、一度やってみたかったんですよ!!」
『バディ……遊びじゃないんですよ?』
「だって、アベンジャーズとかデッドプールでよく見るアレできるんでしょ?爆アゲじゃん!」
「ルナ……この子、いつもこんな感じなの……?」
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