ペルソナ 神器になった少年   作:織田

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九話 始まりのエピローグ

心の中に占めていた憎しみから僅かながらも正気を取り戻したのは、車から投げ出された少女の顔を見た時だった。まるで、鏡を見たかのように悲しい気持ちが伝わってくる。

当然だろう。今、少女の家族が「デス」に殺されたのだから。

 

「っく!」

 

ショウタはかろうじて正気を取り戻すと、急いで車から投げ出された少女を避難させようとスサノオの手を展開して確保する。「デス」が研究所で研究員を手当たり次第に遅いエネルギーを摂取していたように、少女を次の獲物にするのは明白であった。本能で動く今の「デス」に、幼子だからといって掛ける義理があるはずがない。

 

「ぁぁぁああ、お母さん、お父さん・・・」

 

少女は異形のスサノオに掴まれ引き寄せられるという非常事態においても、悲しみが勝ってか反応が見られない。

 

(僕の責任だ……)

 

ショウタは自分が、意図的ではないとはいえ少女の親を奪ってしまったことに自責の念を抱く。自分が憎しみの余り、「デス」に手当たり次第攻撃して橋の方角にぶっ飛ばさなければ、こんな事にはならなかっただろう。罪悪感を少女に感じるも、ショウタは落ち着いてきた頭脳で次になすべき事を考え行動する。スサノオの手から、少女を下ろし「デス」に再び向き合う。

 

一人ではない。

 

「協力が必要であります。25号」

 

「……25号じゃない。ショウタだ。」

 

ショウタが対峙するのに並んでアイギスが、「デス」に向かい合う。

 

「了解であります。ショウタさん」

 

返事と共に火蓋は切られた。

 

アイギスは「デス」に向かって銃撃を浴びせる事で、牽制する。その隙にスサノオの骸骨の手を伸ばし逃がさないとばかりに「デス」を捕える。本能で動く「デス」に防御や回避の思考は無い、ただニュクス降臨の為のエネルギーを摂取しようとするだけだ。反撃とばかりに「デス」は黒い槍状に形を変形して攻撃するもショウタのスサノオが展開されていて本体に攻撃は届かない。

 

あっけない程に短い戦闘ではあるが、「デス」を確保できたように見えた。

 

「アイギス。「デス」を確保できたが、殺せないのか」

 

今まで中級雷魔法ジオンガ、アイギスの銃による貫通攻撃、スサノオによる打撃攻撃を繰り返し行っていたが、とてもじゃないが殺すことが出来ない存在だということが分析できた。だからこそ、対処をアイギスに確認を取る。

 

「殲滅手段が現手段では困難と判断されるであります。その為、封印がベストかと思われるであります」

 

「そうか……」

 

自分の仇であり、少女の両親を奪った「デス」を忌々しいとばかりに睨めつけながら返答する。殺すことが出来ない、その行き場の無い怒りは憎しみとして沸き立ってくる。

 

スサノオの力は憎しみを糧に強くなり、青いオーラは力を増す。

 

それなのに、……どうして黒い槍がショウタに近づいてくるのだろう。

 

「っ!」

 

捕えたはずの「デス」の攻撃の威力が明らかに増してきている。スサノオの力は増してきているはずなのに。

 

(ニュクス降臨の為のエネルギーを補給していたはずだ・・・。さっきの行動から分かる通り人の命をエネルギー変換して獲得していた。そして今の「デス」にエネルギーに獲得手段はない。なら……何故「デス」の力は増してきている?)

 

ショウタは今の「デス」の状態を冷静に分析しようと、先程自分に流れ込んできたヒカルの記憶を辿る。

 

先程ヒカルがショウタをに生命力として自分のペルソナを与えたことは、三つの恩恵をショウタに対してもたらしていた。

一つ目は、ショウタの短くなっていた寿命を延ばすという生命力の向上。ヒカルが自分の命が途絶える事を悟り、せめて本当に潰える前に恩恵を与えようとしてもたらしたものである。

二つ目は、ヒカルのペルソナを受け継いだことによる経験の承継。精神エネルギーであるペルソナを完全に譲渡されたことで、ショウタはヒカルが持っていた演算能力、洞察力、知識を憑依経験として自分のものにすることが出来たのである。

 

(……「デス」はタルタロスにニュクスを降臨させる為の働きを持つ。ならば、「デス」とタルタロスには何らかの繋がりが……)

 

シャドウ研究者であったヒカルの知識は、解答を出すのに十分であった。一方で「デス」の力は時間と共に増していき、スサノオの手から…逃れる事に成功する。

 

「GYAAAA■■■」

 

「デス」の力は増し、先程よりも鋭い攻撃がショウタのスサノオに触れてそのまま吹き飛ばされる。衝撃を必死に殺しつつも態勢を整えて、アイギスの横にいく。

 

「アイギス、「デス」の対処法が分かった。それは、……」

 

 

 

 

 

 

 

その後の戦いで、アイギスとショウタは満身創痍になりながらも「デス」の封印に成功する。けれど、それは望まぬ形でその場にいた少女に封印するという方法でしかなかった。

 

それと同時にショウタは「神器」としての力を手に入れる。

 

けれど、その時の記憶は誰も今は覚えていないままである。真実は誰も知らない。

 

一度地獄から自由を取り戻した少年もその戦いで気を失い、起きた時に見たのは更なる地獄の再現であった。ストレガという研究所へと軌跡は続いていく。

 

 




難産でした。
取敢えず、序章は終わりということで次には設定集を挙げる予定です。
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