ペルソナ 神器になった少年   作:織田

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十二話 ストレガにおける日常

新たな地獄で始まった生活でのショウタを含む被検体の役割は主に2つだった。

一つは単純に人体実験。先代の研究所の残骸に残っていたペルソナ覚醒の錠剤を利用した人工ペルソナ使いだが、不完全な錠剤であった為なのか原因が分からないが被検体の一部は既に自らのペルソナに命を奪われてしまい、研究に関して進展が無いというのが現状であった。被検体の命を最低限配慮するのは、子供を実験に使う過程で良心を痛めたというよりも、調達が困難であるという理由だけである。

 

その沈滞した状況を打破すべき希望となったのが、状態が安定した形でペルソナを召喚できるショウタの存在である。ペルソナ召喚時における脳波測定をする事で、他の人工ペルソナ使いが安定した状態でペルソナを使える事を可能にする召喚機、制御剤を開発していた。

 

ピッ、ピッ、ピッ、とショウタの脳波の音を測定する音が室内に響き渡る。

研究員のほとんどはデータを取ることに夢中になり、無言でコンピューターに見入る。他の人工ペルソナ使いとは比べるまでもない程の安定した数値の測定、素晴らしい、と歓喜に満ちているようでもある。そして、実験が終わると口火を切るかのように扉間がショウタに近づいた。

 

「いやはや、これ程とは……いいデータが取れましたよ。ショウタ君」

 

「………」

 

扉間は眼を輝かせて、ショウタを褒める。それに対してショウタは冷たい視線を投げかけるだけで、無言で返す。

 

「おや、ご機嫌斜めみたいですね。自分から実験に協力したはずなのに」

 

「ッ!……」

 

扉間の言葉に怒りが一瞬湧き上がる。けれど、感情を制御して反論を決してショウタは口には出さなかった。

 

自分が協力している、というのは紛れもない事実なのだから。

 

そもそもショウタが本気になれば、脱走ぐらい簡単に出来るのだ。影時間でなくても召喚機無しでペルソナ召喚できるショウタなら、研究員に止める術は無い。銃による攻撃は貫通反射のペルソナで跳ね返せば良い訳だし、研究員ばかり居るこの場所にそれ程腕の立つ達人が居る訳でもない。

 

そんなショウタが未だにエルゴ研究所に留まり、あまつさえストレガで行われている人体実験に協力しているのは、他の人工ペルソナ使いの子供達の存在があった。

桐条鴻悦の実験では、生きるのに必死だったし自分以外の命を気に掛ける余裕もなかった。その為特段一人生き残ってしまった事に、後ろめたさがある訳ではない。

 

けれど、……今更他の人工ペルソナ使いを全員見捨てて生き残るなんて出きる筈もなかった。

 

ヒカルが残した「前を向いて生きろ」という言葉。その意味は今はまだ分からないけれど、見捨てて生き残る事が違うという事が分かる。何故なら自分はヒカルに見捨てられずに助けられたのだから。

 

研究員がショウタのそんな思惑を知らずに上機嫌でデータを取っているのは、使い勝手のいい道具と認識しているからだろう。ショウタが協力的である為、ショウタを抑制する処置は幸いにして取られていない。その事を、研究者達は後々後悔することになるのだが。

 

ショウタに行われる人体実験の御蔭で実際に余命を縮めかねない代物であるが、制御剤の開発に成功していて日々改良が行われているのである。

 

「さーて。ではそろそろ影時間ですが、……今日は休みますか?」

 

「行くよ!僕が行かないと…」

 

もう一つの役割が、タルタロス探索であった。爆発事故以降残る事になったタルタロスの内部にはシャドウがウヨウヨ出没していてペルソナ使いしか探索する事は出来ない。その為ショウタを含めて、人工ペルソナ使いである3人を加えた4人パーティで探索が行われる。

 

「ゲッ……」

 

「ほう…」

 

「………」

 

3人の人工ペルソナ使いが、ショウタが訪れるのを見て其々反応を示す。

今日の面子も中々濃い面子である。

 

「……随分な挨拶だな、今日はヨロシクな。ジン、タカヤ、チドリ」

 

自分を不審げな目で見る眼鏡を掛けた生え際の厳しい少年である、ジン。

支給された服があるはずなのに、ほとんど上半身が露出している少年である、タカヤ。

感情の起伏の薄い様子でボンヤリと見つめている少女である、チドリ。

と、三人とも一癖も二癖もありそうな面子である。

 

「フフッ、貴方の力が見られるとは、幸運ですね」

 

「相変わらずみたいだな、タカヤは」

 

タカヤは興味深そうな視線を自分に投げかけてくる。ショウタが目覚めて以降、タルタロス探索で一緒になった際に、ペルソナを見せてからと言うもの関心を寄せてくるのが、タカヤだった。

強力なペルソナを持つ内面は、どんなモノなのか?、と一方的ではあるが気に入られているようである。

 

「なあ、ショウタ。チョット聞いてもいいか」

 

対して自分に対して胡乱な目を向けるジンは、ショウタを研究員に聞こえない声音で招き寄せる。

 

「自分、何でこの研究に参加してるん」

 

「?何でって、研究に参加するしかないだろ」

 

「せやかて、自分。毎日タルタロス探索に参加してるやろ。何か裏があると思うが普通やないか」

 

「それは……」

 

ショウタは、ジンの向けていた自分への胡散臭い視線の意味を理解する。

自分は、人体実験やタルタロス探索を他の人工ペルソナ使いが死なない為に確かに積極的に参加している。だからこそ、理解できないのだろう。こんな人体実験が行われている地獄で、自分が負荷を掛け続ける事が。そして仮にその理由があるとするならば、それは

 

「……疑っているのか?」

 

「仕方ないやろ。正直あのクソ研究員に協力するなんて、正気沙汰やないで」

 

ジンを始め一部の人工ペルソナ使いとは、距離があるのを感じていた。だが、自分が疑われていた、とは考えていなかった。ショウタは茫然とした。

 

「まあ、ええで。協力してようが、どうだろうが、……頼りになるのは事実やからな」

 

ジンは、自分の言いたい事は言った、とでもいう風に小声で話す為に近づいていた状態から離れていく。その背中にショウタは、声を掛けようとしてやめた。

 

(別に、理解されたいわけじゃない)

 

自分に言い聞かせるように、溜め込んだ感情を制御する。

 

「………」

 

そんなショウタの様子を、ボンヤリと無気力な視線を投げるチドリであったがすぐに興味を無くしたのか、視線を外す。チドリのように人体実験という悲惨な現実に、心が折られ無気力になるという症状も人工ペルソナ使いの中に見られる傾向である。

 

「さあ、皆さん。タルタロス探索、お願いします」

 

扉間の言葉と共に、ショウタを含めたジン、タカヤ、チドリなど人工ペルソナ使いはタルタロス探索に駆り出される事になる。

 

これが、ストレガにおける日常であった。

 

 

 

 

 

 

 

 




クロスのキャラとして考えているキャラとして

CODE BREAKERのキャラを登場させたいのだけれど
超能力いれても大丈夫かな。

まとめきれるか?
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