ペルソナ 神器になった少年   作:織田

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オリジナルストーリーが長くなっている気がします。
桐条鴻悦の経緯に関しては自分の想像が入ってます。普通に考えてアイギスやタルタロスをあの時代に作るなんて人知を超えた存在の介入があったとしか思えないので。


二話 木下ヒカル

木下ヒカル。

有名大学を主席で卒業して未来を約束された彼女であり、その能力を高く買われ桐条グループに就職。その後、能力を買われた彼女はシャドウという未知の力に関する研究を勧める為に、危険な実験に関与させられて、暗部に属するエルゴ研究所第二部門への転勤を余儀なくされた。絶望の未来に堕ちる彼女であったが、当面の問題は子育てであった。

 

「こうしてAさんはB男さんの愛を勝ち取るのでした。めでたし、めでたし」

 

「・・・ヒカルぅ」

 

ヒカルと呼ばれたメガネを掛けた女性は、少年に本を読んで挙げていた。先日の実験で生き残った自分の罪の象徴ともいえるであろう少年を研究所内で引き取る事になり子育てをすることになったのだ。4歳くらいの少年の面倒を見ることになった彼女であるが、子育ての経験の無い彼女は手探りで試みるしかない為まずは情操教育の一環として本を読んであげることにした。

 

「どうしたの?ちょっと話難しかったかな」

 

ヒカルは少し苦笑しながらも優し気な顔で少年に笑いかける。その顔の表情はしょうがないなぁ、といいたげな顔である。

 

「うん。えっとね、まずAさんがけっこんしたのは」

 

「C子ね」

 

「B男のせいべつって」

 

「男に決まっているじゃない」

 

「・・・・・・・・」

 

訂正すると彼女の教育にかなり問題があるようだった。

 

「・・・・・じゃあ、あいってなに?」

 

「愛ってのはね。例え性別を越えていようと、年齢が違っていようと関係ないパトスよ、パトス」

 

「じゃあ、ヒカルはぼくのことあいしてる?」

 

「それはない」

 

「・・・・・・・」

 

無垢な少年の思いを真顔で一刀両断する当たり、彼女の正直さが表れている気がする。でもあえていうなら天然外道であるこの女。

 

「大体考えて見てよ。別に君のことが嫌いってわけじゃないけど、それでも会って8日しかないショタを愛してるとはいえないよ。愛ってのはねそんな軽い言葉じゃないの」

 

「ショータ?」

 

「そ、君の事」

 

「ぼくのなまえ?」

 

「え?」

 

「え?」

 

ヒカルはショタを小さい男の子という意味で採用したのだが、少年は自分の名前をショウタとして呼ばれていると誤解したのだときずく。同時に少年に名前がなく他の研究員からは特異点である25号としか認識されていないことを。

ヒカルにとって少年は自分の罪であり、始めはただの罪悪感からの責任それだけだった。けれど悪意や狂気に満ちた研究所内での生活のなかで、少年と気楽に過ごす時間は8日しかたっていないにも関わらず貴重なものになっていたのだ。ヒカル自身の優しい性分から少年との触れ合いは気持ちが動いてしまうのに十分なものでした。だが、問題があった。

 

(馴れ合うつもりは、あまり無かったんだけどなぁ)

 

少年はエルゴ研究所第二部門において唯一シャドウを体内に取り込ませることのできる成功例として注目されていた。いくらヒカルが優秀な科学者で手を出さないでと嘆願していても、所詮一人の科学者に過ぎず限度があるのだ。肩入れしすぎてしまうとヒカル自身が危ない。その為か今まで君としか呼んでなかった気がする。だからといって他の研究員と同じく25号なんて呼ぶのも躊躇われる。名前を付けてしまえば確実に自分にとって特別な存在なるだろう。馴れ合うことは破滅に進んでしまうというのに。

 

「ヒカル?」

 

不思議そうな顔で自分の顔を見る少年を見ているとその絆を断ち切りたくないという気持ちになる。決して自分はショタではないが。

 

「・・・しょうがないなぁ。うん君の名前はショウタだ。私が決めたよ、ありがたく頂戴しなさい」

 

「ショウタ・・・。うん、ぼくのなまえだよ」

 

微笑ましい二人のやり取りの中、少年は自分の名前が付いたことに喜び手を振り、全身で表現する。ただ、自分の名前がショタという小さい男の子を愛する嗜好から勘違いでついたという事実さえなければ完全にいい話だろう。そんな微笑ましい時間も空気を読めない声で終わる。

 

「25号!時間だ。さっさと準備をしろ」

 

研究員がヒカルの私室にノックもせずに入ってきた。シャドウを少年の体内に取り込ませる実験をするつもりなのだろう。大量のシャドウを少年に取り込ませることを通じて、少年を「神器」に仕立て上げるつもりなのだ。少年は他の被験者と違い一番幼いことから十分なペルソナが形成されていない。それでもシャドウという負の力を少年が取り込むことのできる理由として、挙げられるものとしてはペルソナ使いとしての高い適正という先天的な才能、そしてもう一つ後天的な才能として少年が他者と優れている点として挙げれるのが、驚くほどの精神性である。

 

「じゃあ、ヒカルまた遊んでね」

 

ショウタは実験で苦痛を伴い死ぬかもしれないという事を理解しながら研究員のそばにいく。戦争がある国で生まれた子供と平和な国で生まれた国の価値観は違う。例えば、今の平和とされる日本の中で国の為戦うなどという大和魂を持った若者がどれだけいるだろうか。平和というぬるま湯につかり多くの若者は怠惰や傲慢に占められ、覚悟の持たないものが大半のはずだ。

ならばショウタはどうだろうか、多分死ぬことが恐怖であることは知っている。明日死ぬかもしれないという状況で他の実験体と共に生活して死ぬという意味を理解しているはずだ。ただ物心つくころから、人間の負の部分を知り、死ぬかもしれない状況に置かれたショウタの精神性は多分ヒカルのものとは大分違うはずだ。

 

(多分負の部分を知りながら持ちえないのは、優しさを知らないからだ)

 

ヒカルはショウタを憐れみつつも覚悟を決める。

 

「ほら木下、さっさと準備にかかれ」

 

「・・・・・・・分かっているわよ」

 

自分の役割はショウタが死なないように実験の調整をすることだ。実験を成功させることがショウタを生き延びさせることに繋がるのなら今の困難ぐらい乗り越えて見せる。結果ヒカルは実験に自分の能力を費やすことになる。「神器」を完成させる為ではなくショウタを生き延びさせる為に前を向いて生きてほしい為に。

 

ショウタとヒカルの時間は実験の些細な合間にとられ、二人にとって掛け替えのない大切な時間となっていた。

 

けれど事態は急変していく桐条鴻悦を唆した「研究者」が彼のもとから急遽行方をくらまかしたのだ。第一部門、第二部門ともに「神器」の完成がまだ不完成である状態に残したまま。優秀な「研究者」を失い「神器」の完成がほぼ不可能と断定されるようになると、狂気に飲み込まれていた桐条鴻悦や研究者達は、世界への破滅を願うようになる。自分達の犯した罪を直視できないが故に世界を終わらせることで解決しようとしたのだ。

 

 

 

 




原作が遠い・・・・・
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