ペルソナ 神器になった少年 作:織田
ショウタのチート説明回でもあります。
其処に満ちているのは、確かな死の気配だった。
岳羽詠一郎のもとシャドウの結合は不完全な形で行われることになり、大きな爆発のもと多くの命が死んだ。
けれど、それだけではない。
それだけではない。
こんなにも死の気配を感じるのは、
「ねぇ、ヒカル。なんでいまのおと、なに?」
ヒカルは爆発音が聞こえるや否や、即座にショウタを担ぎ上げて個室から全速力で走り出した。通常、貴重なサンプルとして認識されているショウタが勝手な行動を取らないように発信機となる首輪が付けられているし、廊下の監視カメラから所在が常に分るように厳重体制をとっている。その為、ヒカルの行動は通常時なら、逃亡であることがすぐに認識され、止められてしまうだろう。
だが、今は違う
「ハァ、ハァ、黙ってなさい、只でさえ、運動不足なんだから」
体を動かすより、頭脳を動かす方が得意という根っからの文科系女子であるヒカルの足はそれほど速くない。体力もない。けれど彼女を捉えようとする追手がいない。監視カメラが働いていない。研究所内の多くの研究員が、生きていないはずなのだ。
(岳羽先輩・・・・・)
爆発音が聞こえたのは、寄宿舎がある場所から一番遠いメインの実験場。事前の打ち合わせ通りに事が進んだとなると、彼は生きてはいないのだろう。彼の死を無駄にはしたくない。
ならば、自分の成すべき事を成すだけだ。
運動不足の自分の体を呪いつつ、エルゴ研究所の正面玄関につくと流石に今まで目につかなかったといえども研究員と警備員の姿が確認された。ただ救いとなっているのは、今さっき研究所に起きた爆発音やその後に生じた火災に気取られて、自分達の姿を確認していないという事だろう。外に出るには正面玄関を通る必要がある為、人だかりを迂回することはできない、という訳で手札の一つを切ることにした。
「ショウタ、《悪戯(トッリクオアトリート)》を使ってあいつらと私達を入れ替われる?」
「うん?・・だいじょうぶだよ」
ヒカルはショウタに小声で確認をとる。そして遠くの物陰からショウタを連れ出した姿で、壁を背後にしたまま堂々と姿を現し大声で呼んだ。
「おーい、コッチよ、コッチを見なさい」
ヒカルは研究員と警備員が気づくように気を引く。と、焦燥にかられている連中はその声の方角を見る。
「何だ、今忙しいんだ・・・!?貴様どうしてそのサンプルを連れ歩いている! まさか!?」
緊急事態に焦りを隠せない様子の研究員達はヒカルの方を見て、少年を担いでいるのを確認すると事態を把握する。少年が逃げてしまうことは、エルゴ研究所にとって大損失となりかねないのだ。この緊急事態に更なる損失は避けたいと焦りが増していく。
「まさかも何も、逃亡するに決まっているでしょ」
ヒカルはその様子を確認すると、ニヤリと挑発するように叫ぶ。と研究員達は、少年の力を知るが故に、銃を携帯した警備員達に焦った声で告げる。
「アレを持ち出されたら、終わりだ!お前達、急いでアレを捕えろ!!生きたままでなくてもよい、撃て撃て、殺してしまえ」
「今だ、ショウタ」
警備員達が銃を持ち出しヒカル達の方向に銃口を向けようとする。ヒカルは狙い通りの反応を示してくれたことを確認しショウタに合図を送る。
「ぺ・る・そ・な。あらわれろ、ジャックランタン」
ショウタは今はまだ影時間ではないのにも関わらず、また召喚機を使う訳でもなくペルソナを召喚する。ショウタはエルゴ研究所の実験の過程でペルソナ使いとしての能力を十二分に体得したのだ。そして元々ショウタがシャドウの力をペルソナの力で持って再現するという研究機関で作られた為、通常のペルソナ能力と異なる部分がある。それは。
「撃て、アレを逃がすな」
と、掛け声とともに銃を撃とうとした警備員や研究員は。
「《悪戯(トッリクオアトリート)》」
「!?うああぁぁああ、あぁぁ」
目の前の壁に跳弾した弾を正面から受けて負傷して倒れた。
丁度ヒカルとショウタが自分達の背にしていた壁である。対して、ショウタとヒカルは今まで警備員と研究員がいた位置にいた。まるで自分達の位置が入れ替わったかのように。
シャドウの力をペルソナの力で持って再現する。それはペルソナの力で空間や時間に作用するような特別な力を顕現することである。数年後、実際に風花というペルソナ使いがエスケープロードという能力でタルタロスの何処にいても自分の所に仲間を呼び込む能力を使うことができるように、ペルソナ能力で空間に作用する力などシャドウの力を使うことが出来るようのは不可能ではない。
ただショウタが通常のペルソナ能力とは違う点とはその特別な力を顕現することを複数のペルソナごとに可能にしていることである。ペルソナ能力は神話の神や悪魔、精霊などを模したアバターを顕現するのだが、神話で語られた存在には権能のような特別な力を持つ。ショウタはその権能を自分のアバターを通して発動させることができるのだ。
実際、先ほどのジャックランタンの権能として発現させたのは《悪戯(トッリクオアトリート)》という能力で、自分と他者の位置を入れ替わるということを可能にする能力である。
「行くわよ、ショウタ」
ヒカルは入れ替かるや否や振り返ることなく、正面玄関をくぐり急いで車を確保しようとする。幸い先程玄関に集まっていた警備員や研究員が入り口にいた全員みたいで遮るものなど何もなく車にたどり着く。
これで、やっと逃げ切れる。影時間になるにはまだ一時間以上残っている。これから車で逃げ切れば桐条グループの追手から逃げ切れる。そんな希望を抱いて車の扉を開けた時。
影時間が訪れた
「!?ウッソ・・・まだ時間は」
ヒカルが影時間の訪れに驚き、呆然とする。
「ぎゃああああああああ■■■■」
「!?」
先程研究員や警備員と入れ替えた地点から、叫び声が聞こえる。銃の跳弾を受けたとはいえ死んではいないはずだった。だが、声からは確かに死に行く者の声を聞いた。
(何が、起こっているの?)
と疑問を抱いているとヒカルは背筋が凍る感覚を覚えた。
濃密に漂うのは死の気配
振り返ると
研究所から
死を顕現したシャドウ 「デス」がいた
ペルソナ
ジャックランタン
権能《悪戯(トッリクオアトリート)》
自分と他者の位置を入れ替えるというトリッキーな能力。
空間を入れ替えている訳ではない為、空間移動ではない。
相手のアクションに対して反応して発動。
「お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ」という風に相手が自分のアクションを妨げるアクションを取った時に発動することが出来る。