ペルソナ 神器になった少年   作:織田

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六話 「デス」

死神のアルカナを持つシャドウ、「デス」の誕生。

それはニュクスを現実世界に影響を与えられる領域に呼び込む目的に必要な要素であり、エルゴ研究所にとって実験の最終段階で行われていた実験のはずだった。だが、先程鳴り響いた爆発音が示すように、実験は失敗に終わったはずだった。では目の前にいる存在はなんなのだろう。

 

(・・・実験は失敗したのは、間違いない。だとしたら、目の前の「デス」は不完全な失敗作?けど・・・どうしてここにいるの?)

 

ヒカルは目の前の状況を必死に確認しようと、必死に頭を動かす。この場における思考停止が死に繋がることが、肌に伝わる寒気から分かる。後ずさりしながら、必死に距離をとろうとする。が、相手は黒い霧のような体から、黒いロープのような触手をヒカル達に対して伸ばす。

 

「ッ!?不味い!」

 

「《悪戯(トッリクオアトリート)》」

 

が、ショウタの《悪戯(トッリクオアトリート)》を発動して位置が入れ替わり、黒い触手は入れ替わる前にヒカルとショウタがいた位置にあった車を貫いた。

 

(コチラを狙ってきた?何故、意志はなく本能のみで行動しているはずなのに・・・!?まさかコイツ、足りない分の力を補うつもりか)

 

「デス」は、位置を入れ替わってもまるで獲物の位置が分かっているというかのようにコチラ側にいるショウタの位置を補足する。

ショウタは「デス」の顕現に必要な12のアルカナのシャドウを体内に宿らせする事で複数のペルソナ能力を使う事を可能にしたペルソナ使いである。その為、「デス」にとって、シャドウとペルソナが根本的には同じ力である為にショウタの中に宿るペルソナで完全体になろうとしているのだ。

 

「デス」は今度は黒い触手を伸ばしてくるのではなく、今度は本体が迫ってくる。決して早くはないが、それでも着実にヒカルとショウタの近くによって来る。《悪戯(トッリクオアトリート)》は自分と他者の位置を入れ替えるという能力であるため、迫ってくる相手に対して能力を使用しようが距離を空けることができないという弱点がある。その為能力を使用しても意味がない。けれど手札は複数あるのがワイルドの特性である。

 

「ぺ・る・そ・な。アルプ!《透明な帽子(インヴィジブル・ハット)》」

 

ショウタは、ジャックランタンからペルソナチェンジで入れ替えると、北欧神話の妖精の国アールヴヘイムに住む光の妖精アルヴと同一視されるペルソナであるアルプを召喚する。寝そべった小悪魔を思わせる容貌のペルソナはショウタの命令のもと《透明な帽子(インヴィジブル・ハット)》を発動させる。

 

元々アルプが持っていたとされる透明になれる帽子を再現する能力である《透明な帽子(インヴィジブル・ハット)》は視覚的に姿を消すことができるのみだけではなく一時的にペルソナ能力の感知を妨げる効果があるのだ。

 

その為、ヒカルとショウタのもとに迫ってきていた「デス」も標的を見失い突如、動きを止める。本能で動いているが故に感知できなければ、自発的に行動することはないのである。

 

(とはいえ、ショウタが発動を継続するにも限りある・・・急いで離れないと)

 

ヒカルは「デス」が視覚や聴覚ではなく力の感知で持って場所を特定していることを見抜くと、物音をたててしまうのも気にせずエルゴ研究所から脱出しようと外に出て、人工島「辰巳ポートアイランド」から本島へと繋がる橋へと向かおうとする。

 

(一刻も早くこの場から離れないと、私達だけではなく世界が終ってしまう!)

 

このままショウタの中の力を取り込んでしまえば「デス」は完全体になってしまうだろう。それだけは避けなくてはならない。死んだ先輩の為にも。とは言え、今どうするという選択肢がない以上急いでこの場からの離脱を試みる。取りあえず遠くに逃げなくではならない。《透明な帽子(インヴィジブル・ハット)》の効果は確かであることから逃げ切れることに希望を抱く。

 

だが、その希望は打ち砕かれる。

 

「デス」から50メートルぐらい距離を取れたと思った時、突如影時間から色の付いた元の現実世界に戻ったのだ。と同時に、影時間補正を受けていたショウタの能力の《透明な帽子(インヴィジブル・ハット)》の効果が不安定になり解除される。

 

「何!?まさかあのシャドウを中心に影時間を発生させていたの?」

 

予定より一時間早い影時間の発生、それが「デス」のシャドウの仕業である事をヒカルは見抜く。驚く時間もなくすぐに、現実世界から影時間へと世界は逆戻りするかのように戻っていく。

 

そして其れが意味することは「デス」に接近されているということだ。

 

「GYAAA■■■■■■」 

 

今度は、接近するだけでなく逃がさないとばかりに体の一部を伸ばす。

 

後ろから高速で伸びてきた細い黒い槍のようなモノはショウタへと迫り、ヒカルの腹へと突き刺さった。

 

「ガッ!」

 

「ヒカル!!!」

 

ヒカルはショウタを担いだまま地面に倒れる。服が血で染まっていくのを感じる。明らかに重症といえる様なキズだ。

 

だがそれよりも大事なことにある。

 

(ショウタが捕まれば終わりだ!!!)

 

ヒカルは必死に腹の痛みに耐えながらショウタを逃がそうとする。だがショウタが今まで見たことのない悲しい顔で自分を心配していて、迫りくる「デス」に気づくのが遅れる。ショウタが「デス」に対して反応するにも時間が足りない。

 

世界は終わるそんなイメージが漂う最悪の事態を。

 

「デス」の進撃を止めたのは。

 

 

 

 

 

 

銃声だった。

 

 

 

 

 

「ペルソナ。パラディオン」

 

「デス」の進撃上に立ち、立ちはだかるのは金髪色の髪を持つ美少女だった。

機械を思わせる風貌のペルソナは、「デス」に打撃を加えてヒカルやショウタから距離を取らせる。

 

鋼鉄の乙女は月の異様に輝く影時間の中、宣言する。

 

 

「対シャドウ特別制圧兵装七式アイギス、シャドウを殲滅するであります」

 

 

 

 

 




ペルソナ
アルプ
《透明な帽子(インヴィジブル・ハット)》
視覚的に姿を消すことができるのみだけではなく一時的にペルソナ能力の感知を妨げる効果がある。
北欧神話の妖精の国アールヴヘイムに住む光の妖精アルヴと同一視される存在であり、アルプが持っていたとされる透明になれる帽子を顕現する権能である。
ただし権能の使用中は他の攻撃を仕掛けることはできない。

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