ペルソナ 神器になった少年   作:織田

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七話 別れ

ヒーローの如く現れたアイギスの登場により、自分達には時間ができた。

 

 

最後の別れの時間が。

 

 

 

「ヒ、ヒカル、だ、だいじょうぶ?。ちが・・・ちが、とまらないよ」

 

ヒカルは薄れ掛けていく意識の中、ショウタが目の前でペルソナでディアラマを使っているのが分かった。ディアラマは中級回復魔法で腹が貫かれた傷を完全ではないにしても、止血や回復することが可能だろう。だが、ショウタの回復魔法がヒカルの傷口には効いていなかった。

 

「デス」という死を司るシャドウの力の強大であるのか、その死を司る特質が回復を阻害しているのかヒカルには分析する余裕がない。ただ一つだけ分かることは自分がこの場で死ぬということだった。

 

「ぺ・る・そ・な。なおせーーーディアラマ!!!!」

 

ショウタは、ガンガーのペルソナを使い再びディアラマでヒカルの傷を治そうとする。何度も、何度も。ショウタの顔には焦りがあった。ショウタは研究所で人体実験を受けていた中、唯一生き残ったペルソナ使いだ。何度も人体実験を経験して、何度も同じ実験で死んでゆく被験者の姿を見た。だからこそ分かるのだ、目の前でヒカルが、死んでゆくことが。

 

ヒカルは、死にゆく自分の体を客観的に分析しながら理解しつつもその場で最も気になったのは、ショウタの初めて見る泣きそうな顔だった。ショウタは人体実験の被験者として物心がついた頃から過ごし、環境に適応する為か自分が死ぬかもしれない実験でも弱音を吐く方法や悲しむという方法を知らなかった。研究者達からモルモットとして扱われても悪意に対して憎しみをぶつけるという方法を知らなかった。

 

実際初めて会った当初から、憐れみを感じてしまう程に優しさを知らなく、負の感情を持ちえなかった少年が、そんなショウタが泣いている。

 

多分人として当たり前の感情、それを持ってくれた。その意味が分からないヒカルではなかった。

 

(・・・覚悟を、決めろということかしらね)

 

ヒカルはショウタの泣き顔を見ながら覚悟を決める。本来ならショウタが一人でも暮らせるようになり、他の手段が見つからなかった時の最終手段を取ることを決める。死に行く自分の命を利用してこの子に対して贈り物をしよう。

 

「ハァ、ハァ、泣くな。ショウタ」

 

「だって、ヒカルが」

 

ショウタは叫ぶように声を出す。年相応の顔を見せるんだなという感想を抱きながら、ヒカルはその泣き顔をあやしながらポケットに入っている準備していた錠剤の一つを飲む。

 

「ああ・・・多分私は死ぬな」

 

「!!!」

 

ヒカルは、ショウタが言い詰まっていた自分の死を宣告する。ヒカルは錠剤の力で持って、自分のペルソナ能力が強制覚醒されるのを感じる。通常強制覚醒された人工ペルソナ使いは過去の記憶を失ってしまい、制御剤を飲まなければ自分のペルソナに襲われかねないというリスクを負う。けれどこの覚醒剤はヒカルが自分自身の為に作ったものであるため、、記憶の混濁は起こりえないし錠剤を飲んでしまった以上、長く生きるつもりはない。ただ自分の目的さえ達成できれば十分だ。

 

「だから、今から言うのは、ハァ、ハァ、最後の言葉だ。よく聞け」

 

ヒカルは腹の痛みに耐えながら、ペルソナの強制覚醒に耐えながら言葉を紡ぐ。ショウタは死ぬという言葉を聞き俯いたままだ。けれど最後の言葉と聞いて感情が爆発した。

 

「さいご・・・!さいごってなに!!!やくそくしたじゃないか。けんきゅうじょから、でたら、たのしいことや、うれしいことをおしえてくれるって!!!うそつき!!うそつき!!」

 

多分ショウタ自身、自分の言動がこの場で間違っていることぐらい分かっている。だが最初で最後の泣いてのわがままだった。ただ生きてくれと、訴えるわがままだった。

 

子供らしいわがままな態度に好ましく思いつつも自分の時間がないことも重なって

 

ドンッ!! と

 

ヒカルは取りあえず頭突きで黙らせた。威力の無い頭突きだが、黙らせるには十分だった。

 

「聞け、ショウタ。今から、私のペルソナ能力をお前に渡す。安定した形のペルソナではないが、お前に生命力を渡すには十分だ」

 

ペルソナ能力で自分の生命力を渡す能力を他者へ移すことのできる能力者は確かに存在する。けれど、ヒカルはそもそもペルソナ能力者ではないし、生命力を他者へ渡す能力などない。けれども、ペルソナ能力そのものを他者へ植えつける実験は幾度となく繰り広げられた為、もう一つの錠剤の力を使って強制覚醒したペルソナ能力そのものを移すことはできるのだ。ペルソナ能力全ての移譲は生命力の移譲の効果もあり、ショウタの失われた寿命を回復することができる。

・・・命を引き換えにすることと引き換えに。

 

「・・・・ァァ・・」

 

ショウタは目に涙を浮かべ、現実を直視できないでいる。けれど目を離してはいけないと、必死に理解しようとする。ヒカルはもう一つの錠剤を口に飲み込みながら話す。

 

「・・・・余り、湿っぽい事は嫌いなんだ。だから私が伝えたい事はただ一つだ」

 

ヒカルはショウタを手繰り寄せ、抱きしめながら最後の言葉を繋いだ。

 

 

 

「ショウタ。前を向いて生きな、最後の瞬間までな。愛してるよ」

 

 

 

ヒカルの体から光の様なものが、出てきてショウタの体の中に入る。

 

「ああああああああぁぁぁっぁ!!」

 

ヒカルは死んだ。

 

ショウタは叫び声が影時間に響き渡る。

 

人間の負の部分を持つようになった少年は、この瞬間に確かに人間になったのだろう。

 

・・・・・確かに芽生えた、強い憎しみとと共に。

 

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