「…んっ…」
穴に落ちた光莉は、どうやら気を失っていたらしく、意識を覚醒させ体を起こし、辺りを見回した。辺りは暗闇に包まれている。
「落ちたのか…痛い所が無いって事は、奇跡的に怪我はしなかったんだね…皆~!!!」
光莉は落ちて来ただろう天井を見上げながら叫ぶが、メンバーからの返事は無い。
「そうとう深いみたい…兎に角出口を探さないと…確かカバンに懐中電灯が…」
非常用に持っていた懐中電灯を思い出し、光莉はカバンの中を探る。
「えっと・・・あった!」
暗闇の中、手の感触でカバンから懐中電灯を探し出した。そして灯りを点灯させると…前方に鋭い牙を持った、巨大な生物の姿が見えた。
「みぎゃああ!?!?!?」
あまりの事に変な大声を上げてしまう光莉だが…
「…あれ?」
見えたその巨大生物に、妙な違和感を感じた。
「…絵?」
どうやらその巨大生物は、壁画に書かれた存在だった。
「何だ…あ~ビックリした…あっ…目が慣れてきた…」
懐中電灯の灯りと、暗闇に目が慣れてきた事もあって、光莉は壁画の全体図が確認出来た。
「…亀?」
壁画に書かれた怪獣は、二足歩行をする亀の様な姿をしていた。炎の中を佇むその姿は、何処か勇ましさを感じた。
「亀…かな? でも亀ってあんな鋭い牙無いよね…」
壁画の亀らしき怪獣は、口に巨大な牙を備えていた。
「でも何でこんな所に亀の壁画が…? 上の屋敷はこの壁画を守っていたのかな…? あれ?」
その時光莉は、壁画の前に何かが刺さっているのに気づいた。気になってその刺さっている物に近づいた。
「……剣だ」
刺さっていたのは、西洋風の大きな剣であった。まるで壁画の怪獣を守っている様にも見える。
「何か文字が彫られているけど…」
剣に何かの文字が彫られており、光莉は顔を近付けて見つめる。
「…星の守護神…ガメラ…、司りし者現れし時、蘇らん…」
剣にはそう彫られていたが、読み終わった後に光莉は、ある事に気付いた。
「あれ? 何で僕、この文字読めるの?」
剣に書かれた文字は、日本語処か見たことが無い文字であったが、何故か光莉には解読する事が出来た。
「…ガメラって…あの怪獣…?」
『ガメラ』というのは、壁画に描かれた怪獣ではないかと考える光莉。その手は無意識に剣に触れてしまう。
ボロボロボロ…
「うわっわ!?」
剣に触れた瞬間、剣は跡形も無く崩れてしまった。
「あ~あ…もしかしたら貴重な物だったかも知れないのに…」
過失だが剣を壊してしまった事に、罪悪感を感じてしまう光莉。
「んっ…何だろこれ?」
崩れた剣の残骸の中に、懐中電灯の灯りに反射する物を見つけた。光莉はそれを拾ってみる。
「…えっと確か…勾玉だっけ?」
光莉の手にある曲がった形をした石。それは以前テレビか漫画で見た、勾玉という石に似ていた。
「剣の中に入れられていたのかな…」
「光莉く~ん!」
「!」
その時反対側の方角から、灯莉の声がした。
「灯莉だ! 助けに来てくれたんだ!」
光莉は勾玉を上着のポケットに入れて、声がした方へと走り出した。すると出入口らしきモノを見つけた。
光莉は其処に進もうとした際、一旦振り返って、壁画の怪獣を見つめた。
「…あれ…夢で見た様な…」
そんな不思議な感覚を感じながらも、光莉は灯莉の声がした方へと進んだ。
※ ※
微睡みの中その存在は再び何かを感じた。それは先程よりもはっきりと…
『…そっか…僕を司る人…やっと現れたんだね…』
それは悦びでもあったが、同時に哀しみでもあった。
その存在は、『司る者』が持っている道具を通じて、その者を名を探る。
『…クオン・ヒカリ…』
名が分かるとその存在は微睡みを打ち払い、その者が居るである場所へと向け移動を開始した。