オーバーロードは呪い合う   作:トロトロ玉子

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遅れて申し訳ない


廻3

 

 

 

 

 

 

天喜二年 

 

丹波

 

 

 

 

 

 

 

 

ユグドラシルは自由度が高いゲームである。

外装データを用いてプレイヤーの意匠を余すことなくゲームへと反映できるクオリティを有していた。モモンガ自身も骸骨の魔法詠唱者マジックキャスターというロールプレイを基にキャラクリエイトを行った。

そして、その外見の自由度はある一定の完成度を越えると一つの戦略となる。

とあるアニメや他ゲームのキャラクターを再現したキャラクターを作る。

なりきりとしての一面もあっただろうが

それよりも敵に誤情報を与える一面が大きかった。

 

有名なキャラクターを模して印象とは違う種族や職業を選択する。

そうすることで初対面での能力考察を阻害することができたのだ。

 

しかし、その可能性をモモンガは捨てた。

「呪術廻戦」

少なくとも鈴木悟の知る世界で著名な作品ではないはずだ。

2010年代の作品でもある。

 

その漫画のキャラクターを模して上記の効果は期待できないはず。

目の前のプレイヤーの能力は

 

(斬撃系?)

 

そういう思考誘導が目的であるとしたら?

そもそも、あの「呪術廻戦」という漫画は実在するのか

ナザリックに侵入したものが残した自作の漫画ではないのか

両面宿儺というイメージを刷り込ませ、誤った行動をさせるトラップか

しかし、それほど回りくどい方法を取るか

なら単にロールプレイのお誘い?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(コンソールが機能していない?!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サービス終了と同時に転移した衝撃でモモンガの意識外となっていた情報が今、発覚した。

MPやHPを示す数値、この場所の名前、魔法発動のためのコマンドなどゲームとしての必要な物一切

が消えていた。

そして、何よりログアウトができないようになっている。

 

 

 

(え、ちょ、え?バグ?サービス終了でイカれたか?)

 

 

 

「GMコールも機能してないのかよ………」

 

情報の混沌の中、頼みの綱も絶たれた状態

しかし、目の前には二人のプレイヤー?がいた。

 

「……すいません、、、、こんな最後の日にロールプレイに付き合いたいのはやまやまなんですが私のゲーム媒体の方が少し誤差動を起こしてしまったみたいでして、もしよろしければそちら側からもGMコールをお送りしてもらうことできないでしょうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刹那

モモンガに入る現断(リアリティ・スラッシュ)並のダメージ

それが友好的でない証として示されたものだとモモンガは理解した。

 

(クッソォ、こんな時に!異形種だからちょっと親近感あったんだけどぉ!)

 

大きな体格を持つ者が放った今の一撃

モモンガは知っている

呪術廻戦にて披露した斬撃の技

 

「ほう、切った感触はあったんだが。それに屍を操る術式か?」

 

ニタっといった笑みを浮かべる宿儺は面白いおもちゃを見つけた子供のような陽気な勢いで新たな斬撃を放つ。

 

骸骨の壁(ウォール・オブ・スケルトン)!!」

 

形成される人の骨を組み付けて作られた宿儺とモモンガとの間の壁

宿儺自身の詠唱が無い攻撃だったためかそれとも壁全体に衝撃が運良く伝わらなかったかは定かでないがモモンガの作り出した壁は3分の1程度を損壊させ、依然その場にとどまり続けた。

 

 

(表情が細かい!?)

 

 

従来のユグドラシルでは決してあり得ない顔の動作

ユグドラシル2の始動、新しいダウンロードコンテンツ、様々な可能性の泉から浮き出てくる信じがたい現実

 

(転移の魔法も居場所が設定されていない状態に戻っている。……これはやはり)

 

そして、ブラインドとして置いた壁もモモンガの思考する時間を設けるにはもう限界に達していた。

バラバラになった骨たちから突き出してくるのは呪いの王が持つ屈強な四本の腕、笑みを欠かさずその視線はモモンガを捉える。

 

 

(とにかく!この状況でするべきことは!)

 

 

 

 

完全不可知化(パーフェクト・アンノウアブル)!!!」

 

 

 

 

 

音や気配、外見的な情報を隠す魔法を用いてひたすらに走った。

100レベルの魔法詠唱者マジックキャスターなら3分の一で33レベル分の身体能力を得ているがそれが今通用するかは分からない。

しかし、あのまま宿儺らしき存在と矛を交えるのは得策ではないだろう。

当てもないがモモンガは森林の中を駆けた。

 

 

 

 

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「どれぐらい離れたんだ?」

 

マップがないことは普段なら新たな新天地を開拓するワクワクを味わえるが今はそのことも歓迎できない。とりあえずの安全は先ほど敵検知の魔法が反応しないことから手に入れた。

モモンガは落ち着いて今の状況を理解することに挑む。

 

 

(今の状況、可能性として考えられる物はなんだ?

 ただゲームに取り残されただけならナノマシンがいつか切れて解放されるからいい。

 しかし

 今しがた受けたあの攻撃、ゲームコマンドを用いない魔法の発動、感じる風や地面の感覚

 到底、ここがユグドラシルと同じシステムのワールドとは思えない)

 

モモンガは錯綜する思考に疲弊し近くの木に座り込む。

 

「はぁ〜〜」

 

出ることのないため息を吐きながら、人一人には重すぎる現状を抱える。

ギルドメンバーたちが今も残っていたらどれほど心強かったのだろう。

 

(電脳誘拐?あの宿儺は名前を聞いてきた。この転移と関係はないのか?

 同じ被害者の可能性も、、、

 というか)

 

「これは何なんだ?」

 

モモンガは意識していなかったが何か体を取り巻くオーラのような蒼い光

魔力の精髄マナ・エッセンスを使用せずとも感じ取れる力の源

説明のできないそれを理解ができなかった。

 

 

「呪力?、、、なのか?」

 

 

魔法は魔力を用いて発動する。

そんな根底を覆す何かが目の前の力にはこもっているようにモモンガは感じている。

 

 

上位道具創造(クリエイトグレーターアイテム)

 

 

手に鉄製の洋風な剣が生み出される。

特にユグドラシルとの違いはない。

魔力と目の前にある力(仮称 呪力)が同じように消費されたことを除けば

今モモンガが感じる魔力の残量、先ほどから感じる呪力の残量、それが感覚的に同質のものでありユグドラシルとは決定的に変化していることをモモンガは認識した。

 

「どうなってるんだょぉ」

 

弱音は誰もいない森林に投げかけられて、ただただ霧散する。

(ややこしいことは後回しだ。今はとりあえずここを呪術廻戦の世界、時代を宿儺が暴れていた平安と設定して情報収集するか)

 

「となると、、良さげな目的地は」

 

 

【天元】

 

 

呪術廻戦においてほとんどのキャラクターが様をつけて名を言うなど作中内、呪術界を長年支えている存在。判明している中で交渉の余地がある可能性を持つ数少ないうちの一人だ。

どこにいるのか。何をしているのか。

そもそも平安など1000年も前の日本で言葉が通じるのだろうか?

漫画の中でも明かされていない情報を頼りにモモンガは立ち上がる。

 

「まずここがどこかを知らないとな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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播磨(現在の兵庫県)

 

 

平安庶民の朝は早い

日が上がる時には起きて田んぼ作業、日が落ちる時にはすでに寝る支度を始めている。

食事もあわやきびの雑穀を主食に質素なものを一日2回。

育てている農作物も荘園の所有物である以上口にするはないだろう。

もし違反を犯せば田堵が私刑にしかねない。

 

起きて

稲作

寝て

起きて

稲作

寝て

を繰り返す。

そして老いていき病か事故か、運が良ければ力尽きて死ぬ

 

そのはずだった。

 

目の前に現れた「死」は、終わりというものが突然にも訳もわからないまま訪れるものなんだとこの世の無慈悲を表しているような気もする。

 

 

「あの……すみませーん」

 

 

そんな言葉を聞き入れる間もなくそれに立ち会った作人は絶叫と共に逃げ出した。

その作人が落としていった農具のみが今ある中

その「死」が呟く  

 

「え、ちょっと待っ……」

 

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浜辺には二人の男が海を眺めながら佇んでいた。

一人は腰がエビのように曲がり切った白毛の老人

一人は中年で引き締まった強顔を持つ筋肉質の男

優しく風が二人に当たり、青々とした海の色はどこまでも続いていた。

播磨の南、海の近いこの場所に蘆屋道満、蘆屋貞綱の二人以外が訪れることは稀だ。

 

「蘆屋殿!蘆屋殿!」

 

走ってくる門弟の親族は着崩れた衣類に焦りの発汗と怒鳴るような大声で二人の元まで走ってくる。それほどに重要な事柄を伝えたいのだと声に出さずとも理解ができた。

 

「感じられたか!?今しがたの気配を!」

 

おそらく、蘆屋の門弟を除いて播磨内で一二を争う呪力操作能力を持つ目の前の男が、これほどまでに焦燥感を露わにしていることはただ事ではない。

 

「襲来か?」

 

「宿儺ですよ!宿儺!あやつきっと道楽にこの場を!」

 

道満の問いを遮るように貞綱が答える。

その後、顎に手を置きながら道満が言った。

 

 

「貞綱…質いわば性が、ちと違う。両面宿儺とは違う何かだ」

 

 

宿儺と対面したことのある道満

その経験が否定した。

道満によれば宿儺はより人一人が天災と化した恐ろしさがある。

だとすればいま播磨に訪れた気配は誰のものか

 

 

「皆、家に隠せ。貞綱と我が先導し対峙しよう」

 

 

「道満様!行けませぬぞ。貞綱様はまだしもあなたはもうご老体。鞭打ちて戦う必要はないではありませぬか?十二分にこの播磨はあなた方にお助けいただきました。今度こそ私どもをお役立てにと」

 

 

「その道理でありましょう?私の門弟にもシン・陰流を巧みに操るものが多いことはご存知のはずです。師や、私からもどうかその体を大切にと考えている所存でございます」

 

貞綱と男は道満の意見を覆い被せるように否定した。

それほどに道満の存在は播磨にとって本人自身が思う以上に大切で長く重要な存在だと示している。

 

 

 

「はっはっ、安心しなされ。この道満、やわなものでない。培ったこの技術、朽ちさせることはないさ」

 

 

 

増長とも取れるその言葉に不安を隠しきれない貞綱はこれ以上何か言うことも出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

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空はただ闇に覆われる夜へと姿を変えていた。

ここには野宿に適した環境があったわけではなかった。

その中でも常緑広葉樹が多いこの地を選んだのは単に暗闇に身を隠すためだろうか

アンデッドの特性による闇への耐性をモモンガは持っていた。

 

「種族の能力も生きてるのか……ならやっぱり食べ物はなくていいのかな」

 

アイテムボックスに入っているユグドラシル内の食料(ゲーム内ではバフや体力回復の側面があるものだが)を使うことは無さそうだ。

 

「とりあえず今日はここに泊まるか」

 

グリーンシークレットハウス等の拠点制作系のアイテムや魔法を使いたくもあるが目立ってしまうことを懸念していた。

 

「【永続光(コンテニュアル・ライト)】」

 

白い光は辺りを小さな範囲で優しく照らす燈となる。

この程度の明かりならば遠くの敵が察知することはできないだろう。

魔法で作った簡易的な椅子に腰を下ろす。

 

「これからどうなるんだろうか……」

 

今ある目的は天元などこの世界にいるかもしれない呪術師に干渉、あわよくば保護してもらい良好な関係を構築し、さまざまな情報を入手することだ。

しかし、やっと見つけた村人には逃げられてしまった。

アンデッドの姿がダメだったのか?意外とこの姿は不便なのかもれない。

精神、肉体的疲労を感じなかったり食事睡眠が不要という利点ももちろんある。

まぁ、心労が溜まって落ち着こうと休憩を開始したわけだが。

呪術師を見つけた時、自分のセールスポイントはどこだろう。

宿儺との交戦、彼は遊びだったのかもしれないがあの呪いの王の攻撃を一度は耐えたのだ。

受けたダメージは自身の斬撃耐性を考慮すれば破滅的な威力ではなかった。

慢心は万に一つもないと自負してはいるが、宿儺をこの世界の頂点と仮定するならば少しは迫るレベルの実力があるということなのではないのだろうか。

それでもここは可能性があるだけでも呪術廻戦の世界

五条悟のような理不尽の権化みたいなやつがウロウロしているようなものだ。平安時代、呪術全盛期なら尚更。

 

「ギルドメンバーがいたら心強かったのになぁ」

 

百折不撓のたっちみー、イリーガルチックなウルベルト、ナザリック内の諸葛孔明であるぷにっと萌えなど挙げるだけ湧いてくるギルメンたちの思い出がモモンガの心の拠り所になっていたのかもしれない。

 

(あぁ〜!るし★ふぁーさんでもいいから話相手になってくれ!)

 

叶わない夢は時に動力源にもなるかもしれないがそれはただの自分勝手な妄想だとまた違う自分が否定する。何か今、感情が上から強い力で押さえつけられたような不思議な感覚に襲われたが気にしないことにした。

 

「寝れないって意外と違和感があるなー」

 

アンデッドとしての特性、魔法の作用などこの世界に来てからユグドラシルとの違いを色々な観点から学ぶことができているが全て自分にとって良いものばかりではない。

 

 

前かがみになり頭を地面に向けた。

 

 

「とりあえずは、こs、、、」

 

 

 

 

 

敵感知(センス・エネミー)

 

 

 

 

咄嗟の魔法行使

違和感がそうさせた。

先ほどまで風の一つもなく物音一つもない空間

そこにはあるはずもない敵が2体いるという反応

 

 

 

 

 

 

 

「「シン・陰流 簡易領域 夕月!!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

二人の巨匠が不死の支配者へと一刀を叩き込んだ。




平安時代のあれこれは結構適当なので気にしないでください。
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