オーバーロードは呪い合う   作:トロトロ玉子

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蘆屋

 

 

「夜に奇襲ですか?」

 

「左様、目撃からすぐに現れないのであればワシとお前で死角から襲う」

 

「いかにして相手を捕捉するのですか」

 

「おや、蘆屋道満の五感が信用できないのかね?」

 

「いえ、決してそのようなことは……」

 

「夕月にて攻めれば相手もひるもう」

 

「術式ひいては領域の対抗策にもなるシン・陰流を用いれば初撃は確実ということですか」

 

「相手が術式の開示を迫られるならよし。でなくとも次段の挟撃で有利を取る」

 

 

 

 

 

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奇襲は成功だ!

道満様の目論見は間違ってはいなかった。

白い炎で焚き火をしていた標的の姿に驚きはしたが八百万の神がいるようにこの世界にも八百万の術式がある。大して怯えるはずもない。しかし、骸骨の体とは珍しい。呪霊でないことは実体を持つことが否定する。

そして!

相手の反応が間に合う前に道満様との挟み撃ち攻撃

 

「もらったぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

私は怒号と共に骸骨を切った

 

 

はずだ

 

 

予想もしない形でそれは防がれたのである。

 

「中位アンデッド創造 死の騎士(デス・ナイト)

 

骸骨と自分の間に突如として現れた黒鎧でその身を守るまた別の骸骨

 

(式神!?)

 

それは術者とは一回りか二回り大きくその丈を七割五分ほど覆える長方形の盾と左右交互に歪んだ刀を持っていた。

俺がこの黒骸骨の盾に防がれる間、道満様はまた別の対処をされていた。

 

「ブラスティング・スタッフ!!」

 

骸骨は持ち手の曲がった異様な槌?をどこからか持ち出した。

それは道満様の腹へと直撃し兎でも投げたかのような勢いで人一人が投げ飛ばされる。

 

黒い骸骨に私も飛ばされて道満様と同様、骸骨との距離を取られた形になる。

飛んでくるであろう遠距離の攻撃を警戒しながら骸骨に目をやれば、予想を裏切る光景が広がっていた。ただ立ち尽くし私たち二人を眺めているだけではないか

 

「まず、許可なく敷地へと侵入したことを謝罪しよう。そして、私に攻撃の意思がないことを示したい。今、ご老人に当てたのはただ距離を取るための武器だ。ダメージ………威力はほとんど皆無なので安心して欲しい。この死の騎士(デス・ナイト)もただの盾として召喚したに過ぎない」

 

 

「術式の開示か」

 

 

私はすぐにそれを疑った。

しかし、呪力の総量に変化は感じられない。多すぎるあまり増えたことを認識できないのか?それとも、別の恩恵を受ける効果?

 

 

「え、あ、違う」

 

 

「ほぉぅ!それだけの怪しき気を撒きながらよく言ったものだなぁ!」

 

攻撃の意思がないだと?

ただ私たちの実力が想定以上で慌てるだけじゃないのか。

ますます怪しき奴だ

 

「あのホントマジで違うんですけど」

 

 

「まぁまぁ、話だけでも聞いてみる価値はあるのではないか?」

 

道満様が窘める。

交戦の構えを私と同じように解いてはいないが和解の道を探ろうという姿勢が感じられた。

骸骨の言葉が続いた。

 

「私の名前はモモ……いや、『鈴木悟』と言う。ここに来た目的は情報を集めること」

 

 

「うむ、鈴木家………真の名か?」

 

 

「私の本当の名だ。仮の名前を名乗るのは失礼に値すると判断した」

 

 

「はっはっはっ、命知らずよのぉ。そのような礼儀云々の話ではないわい。呪術的にも世渡りのためにも初対面の者に名前は明かさぬものだろう」

 

 

「そうか………これは常識はずれなことをしてしまったようだな。謝罪しよう。しかし、私が貴方達に求めるものは変わらない。もちろん、見合った対価をお渡しすると約束しよう」

 

少しの間の後

 

「ひとつ、聞いておきたいことがある」

 

「なんだ?」

 

道満様の顔が一段と畏まったような気がした。

今からする質問の答え次第でどのような結末にも至れるだろうという気迫が感じられる

 

 

 

 

 

「お前、女の好みは?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また始まってしまった

道満様の悪癖が

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

 

(こ、こいつは何を言っているんだ?)

 

 

全くの意識外

投げかけられた言葉はモモンガの中でとある人物と結びつく

 

東堂葵

 

主人公と相棒?キャラ的な立ち位置であったことを辛うじて覚えていたが彼の印象はその女性の好みを初対面に聞くことにあった。

 

(あぁぁ!!そういえば、東堂葵も師匠の九十九由基もシン陰流を使ってたぁぁ!)

 

しかし、モモンガの中で点と点が線にはなり得なかった。平安と呪術廻戦内の現代、約1000年の歳月がそれを否定する。

 

(まぁ、独特な人物しか初対面で女性の好みなんか聞かなそうだし1000年続いてもおかしくない…のか?)

 

驚愕の影響を道満は長く待ってはくれない。

モモンガはとりあえずの最適解を模索した。

 

(東堂葵での正解は『ケツとタッパのでかい女』もちろん東堂での正解だ。この目の前の老人が彼自身と同じ性癖を答えて気にいるタイプならかなりハードな質問だろう。……素直に答えちゃうか?)

 

取引先のお偉いさんとの対談中、相手の趣味のことを聞かれて地雷を踏まないようにハラハラとした言葉選びと重ねながらモモンガは思考する。『コレ何円だと思う?』なんて言葉で困るのはカップルだけだと思っていた自分を殴りたかった。今は昔、体も時代も異のものとなってしまってはいるが

 

(まぁ、侍というか武士なのか?)

 

平安の世に生きるこの老人がどんな答えを望むかを考えることがこれほど難しいとは。

 

 

………考えるだけ無駄だろうか

 

 

企業勤めの時も自分の意思より相手の気持ちが良くなるような答えを優先する犠牲的な体験は数えられないほどある。相手の好印象を掴むため、険悪な関係を作らないため、自分が生き残るため。それが相手にとってどれほど礼儀に欠けた言葉だったかは分からない。どうでも良い人もいた一方、そうでない人も少なからずいたはずだ。しかし鈴木悟は地雷を避けるの建前を盾に求められていた気持ちを踏み潰していたのかもしれない。そもそも、ただ初めて出会っただけの人物に偽りの配慮なんているだろうか。真をぶつけてただその結果を受け入れることもまた吉のひとつなのではないだろうか

『女の好みは?』なんて質問で真剣に考えることもどうかと思うが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私はーーーーーーーーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前の老人はただ笑った。

 

 

 

 

 

 

 

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あの回答が老人の心を掴んだのかは分からない

しかし、刀を納める判断を下してくれたことには変わりなかった

 

もう暗い

 

私とご老人、その弟子と思われる3人で光の灯された地面を囲んでいた。

 

「お前の術式か?こりゃ大したもんだなぁ」

 

弟子(名前を蘆屋貞綱というらしい)は上位道具創造(グレーター・クイエイト・アイテム)にて作った鉄製の椅子に興味を向けていた。平安時代の日本なら技術も材料も珍しいものに映るのだろう。自分であれば金色に輝くスタッフオブアインズウールゴウンに目がいきそうなものだが相手の詮索はしないという配慮なのか

 

(蘆屋か……どっかで聞いたような)

 

モモンガは呪術廻戦の作中内情報の引き出しからその名前を探したが見当たらない。シン・陰流のことについてそれとなく聞いてみたが門外不出ということで貞綱殿が祖であること以外の収穫はなし。流石に詮索も出来なかった。

そして、モモンガの目的を話すと

 

 

 

「天元様!?天元様に謁見したいと!?」

 

 

 

吐露した内容は道満と貞綱を驚愕させるには充分すぎるものだった。

宗教が平成やモモンガの生きていた現代より幅を利かせるこの時代で天元はより神格化されていることを考慮すべきだったと。

 

「やはり無謀な事だろうか?」

 

「無謀も何もどこにいるのかがわからない。会って何をするんだ?」

 

「うむ……」

 

(うわぁ、やっぱ天元って高貴な存在なのかぁ。でも万が一足元を見られないためにも無知は隠しといた方がいいかな)

 

「申し訳ないが話すことはできない」

 

「そうか……」

 

「関係ないのだがあなた方は私のこの姿を見て驚かないのか?」

 

「初見ではそりゃ驚くさ。しかしこの世には怪異の如き輩がごまんといる。いちいち恐れていられんのよ」

 

「ほぉぅ、たくましいな」

 

「もう暗いだろ。それでは貞綱、儂は寝る。定時に起こせ」

 

「かしこまりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「鈴木さーん、先方から電話ぁ!!!」

 

 

 

「鈴木くんさぁ、こんなん全然ダメ!ノルマ超えてないの分かってるよね!!」

 

 

 

「んんぅ…そちらの商品、アーコロジー内だと需要ないんですよねぇ」

 

 

 

「教職に就いてるとね、やっぱり大学生なんてボンボンばっかなんですよ。モモンガさんーーー」

 

 

 

「悟!小学校どうだった?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鈴木?」

 

気づいた時にはちょっとした時間が過ぎていたのだろう。すでに貞綱の監視の時間が終わり魔法で作られた簡易式のベッドで睡眠をとっている。今は道満が起きていた。

 

「失礼、少し考え事をしていただけだ」

 

「そうかそうか」

 

空を見上げる

 

「………綺麗な星空だ」

 

「?」

 

「とても美しいのだな、星は」

 

「……お前の目にはそう映るか。まぁ、そうかもしれんの」

 

道満も空に顔をを向けた。

道満にはいつもの見慣れた煌びやかな光の数々だったのかもしれないが自分にとってはそうでは無かった。

 

「少し外すぞ」

 

飛行(フライ)

 

「お!?」

 

操作可能な浮力を纏い草木を抜ける。

空には何十何百光年という遠い遠い場所から長い時間をかけ地球に届いた一点たちが蒔かれていた。視界内ほとんどを埋め尽くす白色光の宝石たちは私にユグドラシルでも現実世界でも与えてくれなかった感動を届けてくれていた。22世紀には人類が忘れてしまった空の色をまじまじと見ることができた。それは何よりも変えがたい記憶となるだろう。

 

「ブループラネットさんのもすごかったが、実物はまた違って……」

 

綺麗だ。その感想以外は出てこない。

果てしない宇宙の膨大性、自分という存在がどれほどちっぽけかを教えてくれる。星が満足いくものであったのは語るまでもなかった。

 

「驚かせてしまったこと謝罪しよう」

 

人生初めての天体観望の後

焚き火に戻る。

道満は変わらず座って待っていた。

 

「お主、やはりな」

 

道満は自分を見つめ、少し訝しむ様子を現す。

 

「お前さん、肉体の強化をしていないだろう」

 

「?」

 

「術式を扱う時のみにしか呪力を感じられん」

 

「あぁ、なるほど」

 

「よく生身で夕月をいなせたな」

 

「やり方が分からないと言ったら貴方を驚かせてしまうかな」

 

「なんと!それは本当か?」

 

「恥ずかしながら」

 

「はっはっはっ!興が湧くな!お前のような呪術師が呪力の基礎を知らぬとは!」

 

「驚嘆……と受け取ろう」

 

「指南が必要か」

 

「いいのか?」

 

「ここではやめておこう。里に帰ったらじゃな」

 

「過分な待遇痛み入る」

 

「十分に対価足りうることは理解できた。ご所望の情報とやらも儂の知る範囲なら答えようぞ」

 

「ありがたい、なら遠慮なく」

 

モモンガは思考のプロセスを挟まず本心で燻る疑問を一つぶつけた。

 

「宿儺、両面宿儺とは貴方にとってどのような存在だ?」

 

道満は驚いたようにも分かっていたようにも見える反応で返した後、考えた。三層の皺がある彼の額に手を当てる動作が癖だとモモンガが理解させられるほどに彼は思考した。

 

「そうじゃなぁ、まず一言で表すとするならば……業風だろうな」

 

「業風?」

 

「地獄にて吹く大暴風と言われるが今回は抑えられない悪行が風のように何処へでも現れることを言う」

 

「やはり、傍若無人を体現する人物か」

 

「あぁ、儂の弟子じゃしな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

えぇぇぇぁぁえぇ?!?!

宿儺が弟子?宿儺の師匠?え!?

どういうこーーー

 

 

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東京都立呪術高等専門学校

宿舎 3階

 

 

四月から始まった新学期は恐ろしいほど早く梅雨の六月となり、もうすぐ七月に差し掛かろうとする今日。学生の宿舎と機能するこの歩けばミシミシと音の鳴る木造建築物にて夏油傑は…

 

「ファヒデヒィヒィハカンネー(まじでいみわかんねー)」

 

「悪かったって」

 

「キキホォガヒテンヒャネエヨ(聞き逃してんじゃねぇよ)」

 

「またいつか買ってくるから」 

 

宮城からのお土産として有名な名物、喜久水庵 喜久福

同級生である家入から任務のついでにと買ってくるよう頼まれたのだったが家入が所望した味は抹茶生クリーム 

しかし 

夏油が購入してきたのはずんだ生クリーム味であった。一箱に多数の種類を入れたセットのような商品を選べば良かったと後悔する夏油を前に家入はそのずんだ生クリームを口に頬張っていた。

 

「まぁ今回はこれが美味しかったから不問ね」

 

「はぁ、ありがとうございます」

 

その束の間、部屋にはチャイムが鳴る。所々にノイズが走っているところから察するに長らく使われていなかったのだろうか。夏油も今、久しぶりに聞いた。

 

「(ピン!ポン!パン!パォーン!生徒のお呼び出しでぇぇす。前回の任務で特にやることもなくただただ九十九さんに着いてきただけの夏油傑くーん?先生がお呼び出しでぇす!怒られちゃう?怒られちゃう??まさか怒られち、、あ)」

 

 

マイクの音声が夜蛾学長のものに変わる

 

 

「(夏油、またで悪いが任務だ。宮城に呪術師を迎えに行ってもらう)」

 

「宮城!?」

 

家入が宮城という言葉に反応した。考えていることは誰もが察せるほどに明らかだろう。そんなに欲しいのなら自分で買いにいけよなんて事を夏油は言うはずもなく。




五条「何これ?」
夏油「喜久福」
五条「何味?」
夏油「ずんだ生クリーム」



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