アサルトリリィ「船田怒編 -The Lily Hills-」   作:アイナll

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旧サブタイトル「1話 ガーベラ」  花言葉は「前進」・「希望」


1話 転入生ー船田怒

 謎の巨大生物「ヒュージ」。奴らがこの世界に姿を現して半世紀以上の時が過ぎた。

 その間、世界は大きく変化し大国のみならずありとあらゆる場所に影響を及ぼした。その中でも最も大きいのは「リリィ」の存在だろう。

 ヒュージ達は“マギ”と呼ばれる特殊なエネルギーを持っており近代兵器の影響は極めて低い。そんなヒュージに対抗するかのように同じ“マギ”を持って生まれた人間を“戦乙女(リリィ)”と呼ぶ。

 彼女達は主に10代女子で、魔法と兵器の融合とも言えるCHARMを手に持ち対抗したことで世界はなんとか持ち堪えている。

 リリィ達は世界各国にある学園(ガーデン)に所属することで成長すると同時にヒュージ防衛の最前線に立って戦っている。

 

 この少女、『船田(いかり)』もそのリリィの1人である。

 故あって彼女は故郷を追われてしまったが、武のガーデンとも呼ばれる御台場女学校に入学しリリィとしての才能の一端を開花。今は新たな門出として鎌倉府にある別のガーデンへ向かっていた。

 

 

 


 

 

 

「ここが…百合ヶ丘女学院…」

 

 電車の窓から少しだけ見えた校舎に胸を弾ませる。

 

「お姉ちゃん…見ていて下さい」

 

 電車に1時間以上揺られ、何とか鎌倉府に着いた。

 御台場を出発してから鎌倉まで、初姉さんと純お姉ちゃんがくれたネックレスを眺めていた。蝶と花首飾り…姉の髪飾りと同じ柄の装飾が施されている。

 学園を出発してから何度も何度も自問自答を繰り返している私だが、電車の窓から百合ヶ丘女学院を見た時、悩みの全てが吹き飛んだ。

 

「行って来ます…」

 

 ケースから取り出し、身につける。それと同時に電車の扉が開き、私は新たな学舎・百合ヶ丘へ向かう。

 

 駅から歩いて数分。廃墟と化した街並みを地図通りに進んで学園の正門についた。

 正門には盾に百合が描かれた校章がドンッ!と載っていた。恐る恐る門の隙間から校内の様子を覗いてみると、私の全脳細胞に電流が流れる。

 

(り、リリィがCHARMを帯刀していない…だと?!)

 

 御台場ではほぼ全リリィがCHARMを帯刀し、武士のように持ち歩いていた。これは任務だけではなく日常生活も同じだ。しかし、百合ヶ丘のリリィはCHARMを持ち歩かず、あたかもお嬢様の社交界を思わせる上品な振る舞いをしている。

 かろうじて持ち歩いている生徒もいるにはいるが、専用のケースに入っておりギターを持っているような雰囲気を感じた。

 

(なんだあのキャッキャした空間は!?…あの子強そう。え?お姉様?恐ろしく似てない姉妹?百合ヶ丘って何がどうなってるの!?あ、あの子絶対強い)

 

「…はぁ。転入生の案内に来たのですが…不審者の間違いだったようですね」

 

「ち、違いますよ!ただ、ちょぉ〜っと珍しいなぁって」

 

「はぁ。もうちょっとマシな言い訳ができれば満点なのですが…ともあれ、こちらへどうぞ。ようこそ百合ヶ丘女学院へ」

 

 栗色のポニテ女生徒が門で待っていてくれた。

 

「私は出江 史房(いずえ しのぶ)。高等部1年で貴女の指導担当…お世話係くらいに思ってください」

 

 彼女の案内で学園中を回る。

 元は古いお嬢様学校だと説明されていたが、設備に関しては近代的だ。残すべきものは残し、変えるべくは変える。そんな考えが伺える校舎だと感じた。

 訓練設備も御台場と引けを取らない素晴らしいものだった。これなら十分、日々の研鑽が積めるだろう。

 

 

 

「ここで最後です」

 

「ここは…グランド?」

 

「えぇ。最終選考を始めましょう。百由(もゆ)様、お願いします」

 

「はいよー!」

 

 グランドにて。地面に描かれたトラックの真ん中まで案内されると、百由と呼ばれた人は手のひらサイズのボタンを押す。

 ポチッとコミカルな音と同時に三つ足の物体が空から落ちて来た。

 

 丸い胴体に2つの角、ツルハシのような爪が足のように生えている。これは鎌倉周辺で目撃されるルンペルシュティルツヒェン(がたがたの竹馬こぞう)というヒュージの特徴に似ている。

 

「これはメカルンペルシュティルツヒェン!最先端ヒュージ研究と工廠科の技術をフル投入して作った通称ヒュージロイド!諸々本物そっくりだから注意してね〜油断してると怪我するよ〜!」

 

 楽しそーに喋るなー。

 それにしても…へぇ。人造ヒュージか。御台場にはこんなもの作ろうとする人いなかったからなぁ。新鮮だな。

 

「今回は御台場女学校からの推薦…という訳ですが、正直あなたの実力は半信半疑の状態です。この戦いで当校の門をくぐるほどの実力がある、と示して下さい」

 

 なるほど。最終選考…ね。

 聞けば今回の転校はかなり異例なものらしい。学園側も私の実力を図りかねているのだろうか…。

 

「分かりました。あの程度で測れるかは別として、実力を示せと言うなら喜んで」

 

 持って来たブルガトリング…ではなくヨートゥンシュベルトを手に持ち、マギを流す。

 羽毛のように軽くなったチャームを構える。

 

 ヒュージロイドは3つの眼でこちらを見つめ、互いに間合いを伺う。

 

 先に動いたのはヒュージだった。真っ直線に突っ込んで大きな爪を振り上げる単調な動き。

 私は軽く回って交わし、胴と爪の繋がりを切り離そうとする。が、予想以上の硬度で傷をつけるだけになる。

 

「はっはっは!表皮は本物よりも硬いよー!“メカ”だからね」(キラキラ)

 

 楽しそう。けど、もう読めた。

 おそらく距離と立ち位置で行動パターンを作っているのだろう。そのせいでどの距離から詰めても必ず返されてしまう。

 だが、この行動パターンこそが弱点である。距離に応じて行動すると言うなら、常に一定の距離間でヒュージロイドに対していれば行動はワンパターンと化す。

 そしてやつにとって一番の弱点はその爪なのだ。

 もう一度、バックステップで距離を取る事で大振りの攻撃を誘う。今回はギリギリまで避けず、その爪が体に当たる寸前に急接近する。

 降ろされた自分の爪により私を見失ったヒュージロイドは動きが止まって大きな隙が生じる。その隙に、死角の真下から全力でCHARMを振り上げる。

 真っ二つに分かれたヒュージロイドは動きを停止し、私は地面にCHARMを突き刺して余裕のピースサインを見せつける。

 

「あー!!!私のメカルンペルシュティルフヒェンがーーーー!!!」

 

 涙を流しながら良く噛まずに言えるな。

 距離に合った戦法と攻撃の緩急、視線の切り方。これらは先輩達と戦って身につけたデュエル戦法。

 

「流石は『武人の結晶』と言ったところでしょう。問題なく合格です」

 

 問題なかったらしい。

 まぁ、伊達にシゴかれてないからね。ふっ。(ドヤッ!)

 

「制服は後日お届けします。では、寮へ向かいましょう」

 

 この百合ヶ丘女学院には学生寮が存在する。いや、学生寮は御台場にもあったのだ。だが、この学校には独特の制度がある。その名も『ルームメイト制度』!!同級生のリリィとルームメイトになる制度。中にはこのルームメイトと同級生を超えた仲になるとか…?

 

「誰なんですかね!」

 

「それは…お楽しみですね」

 

 ドキドキを抱えながら迎えた寮。階段を登り、部屋の前まで行く。この際だ。ネームプレートが入っているのは確認できたが名前は見ない。深呼吸をして目の前の扉を開く。

 

「ご、ご、ご機嫌よう!船田怒です!」

 

「お?噂の転校生だナ?私は吉村・Thi(ティー)・梅、よろしくだゾ」

 

 サイドに纏めた翡翠色の髪に、同色の瞳。周囲に漂う天性のマイナスイオン的雰囲気がガッチコチに緊張している私を一気に砕いた。

 部屋に足を踏み入れ、軽く握手を交わす。

 

「・・・」

 

「…私の顔に何かついてるカ?」

 

「あ、いや、そうじゃなくて、優しそうな人で安心したな、と」

 

「そうか!私も『武人の結晶』なんて人が来るって聞いたから少し怖かったけど、元気な子で良かったゾ。これからよろしくナ!」

 

「はい!よろしくお願いします」

 

 私のルームメイト。人柄の良さがものの数十秒で伝わり、緊張や不安を一瞬で吹き飛ばす人格者。

 とりあえず、この人となら楽しく過ごせそうだ。

 

「では、軽く挨拶が終わったところで、怒さんの荷物がちゃんと届いているか確認お願いします。漏れがあったら伝えて下さい」

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

「さて、ざっとこんなものでしょう。何か質問はありますか?」

 

 寮を後にし、食堂へ移動した。

 この学校の食堂には様々な茶葉から選び、ティーポットとカップを取れば誰でも自由にお茶を淹れれる。

 今回は出江さんが淹れてくれたが美味い。やっぱ葉が良いのはあるが、元お嬢様学校とだけあって他の生徒もお茶の淹れ方がしっかりしている。

 

「学校については何もありません。私からの質問は1つ。この学園の防衛システムについて教えて下さい」

 

「えぇ。では簡単に話しましょう」

 

 鎌倉府に構える百合ヶ丘女学院。このガーデンは御台場女学校同様に海岸に面してある。

 そしてヒュージはリリィを優先的に襲う習性がある。彼らからすれば、天敵(リリィ)が集まるこの場所(百合ヶ丘)が目障りで仕方ないだろう。

 襲ってきたところを防衛軍の火力兵器で足止めしつつ、周囲を山で囲まれ天然の要塞となったガーデンで討伐する。こうする事で市街地への被害を最低限まで抑えている。

 

「任務は基本的にレギオン単位で行います。正式な入隊は高等部からですが…まぁ、怒さんの実力ならどのレギオンからも引く手数多でしょう。私からはブリュンヒルデラインというレギオンを勧めます」

 

 あれだ。とりあえず自分の所属レギオン勧めてくるタイプだ。悪い所じゃないんだけど…私向きでは…ないと思う。多分。

 

「すでに勧誘してるじゃないですか…レギオンについてはもう少し見てから考えます」

 

 ひとまずは、この新生活に慣れよう。

 そして見極めよう。私をもっと強くしてくれるレギオンを。あの船田予備隊を超えるレギオンを。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ーーーなんて事あったんだよ」

 

『ふふっ、少し心配してましたが、大丈夫そうですね』

 

 日が沈んだ夜。寮のベランダで携帯電話を耳に当てて会話する。

 相手はもちろん椛。

 

「そっちはどう?何か変わった事ある?」

 

『そうね…船田三姉妹がいないだけですごく静かよ』

 

「あはは…それはご迷惑をおかけしてます…」

 

 お姉さまもだが、船田姓のリリィは何かしていないと気が済まない性分なのだ。

 そんな姉妹がいないとなると…さぞや穏やかな学園になっていることだろう。日頃からどれほど多くの人たちに迷惑をかけていたかがうかがえる。

 

 

 

 

 

「どうですか?新入生の子は」

 

「う〜ん…あの子ねぇ。ちょっと不思議なタイプかも」

 

 百合ヶ丘女学院・アーセナル 真島百由の工房にて、破壊されたヒュージロイドから船田怒の戦闘データを読み取り解析していたのだ。

 そしてそれを見つめる出江史房。お世話係として、姉として。怒の事を知るために同行しているのだ。

 

「御台場女学校から送られた報告書…あながち嘘でも無さそうね」

 

「でも、本当にあるんですか?ヒュージとリリィがこんな…」

 

「ここに資料がある以上、無いとは言い切れないわ。もう少し、様子見が必要ね」

 

 真島百由の手には【極秘】と印の押された報告書があった。

 約1ヶ月前に単独でケイブへ向かった任務。この時、船田怒は全身傷だらけになりながら戦い、全身にヒュージの血を浴びている。問題はヒュージの血が傷口から体内に入ったようで・・・

 

 このヒュージロイドはこのまま研究が進み瓜二つにまで作ることが出来れば、同型ヒュージの群の中に紛れ込ませ誘導や撹乱などで利用できる。その為にヒュージロイド内で対象を仲間(ヒュージ)(リリィ)で区別するように設定してある。

 戦闘中、ヒュージロイドは船田怒のことを・・・

 

「リリィに力を与えるのも“マギ”なら、ヒュージに力を与えるのもまた“マギ”。この件はもう少し様子見が必要かもしれないわね〜。場合によってはリリィの未来を左右しそうね」

 

 船田怒にはヒュージが宿っている

 

「…くれぐれも“あの組織”にこのデータが渡らないようにしなければいけませんね」

 

「そうねぇ。こんなモノ(データ)を見せられちゃうと黙ってる研究者はいないもの」

 

 

 

 

 

 

 

 入学から1ヶ月後…

 

 

 

 

 

『甲州に巨大なケイブが発生した!本来ならば前線に立つべきではないが…緊急時につき特例で結成を認める!LGアールヴヘイム!!どうか、市民を守ってくれ!』

 

 私たちはその時、甲州へ遠征に行っていた。

 そんな中、付近で強大なヒュージネストが形成された。周囲のヒュージが活発化する中、私の…そして“仲間達”の運命を大きく左右することになる戦いの幕を開けた。

 

 

 

   甲州撤退戦 開幕




 本日、12月25日は船田姉妹、そしてオリ主である怒の誕生日です。
 それを記念して…というのもありますが、どちらかと言うと「舞台アサルトリリィ新章」を観劇した衝動のまま書いてます。
 本当は前作同様1話にまとめて投稿する予定でしたが、次々と湧いて増え続けるストーリーを1話にまとめるのが難しいと判断し不定期更新という形で投稿することとなりました。


 不定期更新なので次回の更新がいつになるかは未定です。気長にお待ち下さい。
 目標は、8月に公演予定の「舞台アサルトリリィ御台場女学校編第4弾」までには全て投稿したいと思います。



 え?新章の感想?…そうだなぁ。ネタバレを避けて言うなら、
 「モテる女は辛いぜ」「私のために争わないで」
 ですかね。御台場2弾も“そう”ですが…まぁ、ね。
 現場からは以上です。
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