アサルトリリィ「船田怒編 -The Lily Hills-」 作:アイナll
せや、サブタイトル変えたろ」
サブタイトルは今の形になりました。
私達の山梨での戦いは、後に「甲州撤退戦」と呼ばれることになった。
突如発生した大ケイブを前に私たちは撤退を選んだ。これはその少し後の話。
「また勝利ですって」
「正式なレギオンになってからの快進撃がすごいね」
「20戦無敗!」
「こりゃ、世界最強になるかもね」
「活躍し過ぎるというのも煩わしいものね」
LGアールヴヘイムの控え室にて、
今やアールヴヘイムはガーデン内で小有名人。食堂でも教室でも、どこかで誰かが噂しているようだ。
悪い気はしないが、良い気もしない。
「高等部に上がって、正式なレギオンになってからより増えたナ」
「そうね…まるで負け知らずのように言われるのは、良い気分でわないわね」
「夢結…」
あれから夢結は笑わない。彼女の心にはいったいどれだけ深い傷が入ったのだろうか。
私たちにも甲州撤退戦は後悔が残る戦いだった。
あの時は亡くなったリリィを弔う余裕が無かったた。遺体も遺品も発見されていないため、百合ヶ丘に設置された墓石の下には何も無い。悲しいことだが、リリィとして戦うとは“これ”を幾度となく感じるだろう。
さらに、後の検証によれば、もしアールヴヘイムが敵のネストに殴り込んでいれば勝っていた可能性が高かったらしい。もし攻めていれば甲州を開放できたのかも……。
そんな後悔が心に突き刺さったままなのだ。
この日、アールヴヘイムは遠征帰りであり、束の間の休養日となっていた。
「落ち着かないのカ?」
寮の部屋でなんとなくベッドで横になる。しかし、いまいちパッとしない。
「梅…そう見える?」
「あぁ。なんか…ずっとソワソワしてるナ」
そうなのか。
「ごめん梅、気が散ったよね。ちょっと外の空気吸ってくるよ」
あの梅が珍しく課題に取り組んでいるのに申し訳ないことをした。
ガーデン内をフラフラ彷徨う。カフェテリアで…とも思ったが気分ではない。
訓練をしてみるも、いまいち集中できない。
「あっれ〜?怒だ〜!帰ってたんだね」
「貞花?ごきげんよう。なにかいい暇つぶしない?」
「うぅ〜ん…あ、そうだ。今から誉の練習会に行くんだ〜!怒もどう?」
「誉か…いいかも。ついてくー!」
たまたま偶然会ったのは
そんな彼女の幼馴染が
「あら。今日は珍しいお客さんがいるようね」
「別にデュエル復古主義じゃないんだけど…誉と練習したくて」
「いい具合に生意気じゃない。久々に腕がなりそうね」
「誉お姉様噛ませっぽいっス!」
「…」ブチッ(怒)
貞花や同級生、下級生が見守る中、突如始まった一騎打ち。
私はフルンティングを構え、誉はアステリオンを構えて向かい合い………斬り結ぶ。
今回の私は姿勢をできる限り低く構えた戦法をとり、足元から一気に斬り上げる。向かい合う誉は綺麗に躱し、長物の長所を活かして中距離から攻めてくる。
長く構えたアステリオンだが、長物の弱点である近場に入られるとキツイ点は変わらない。私はとにかく距離を詰め、とにかく攻め手を発生させない。粘って粘って…相手が守備に回った瞬間に、、、
(ドクッ!!)
「そこまでっ!!」
模擬戦を見守っていた、
「勝者、船田怒!」
勝者になったのは、私だった。
私のヨートゥンシュベルトの刃は、誉の首筋に触れていた。
「さすがは、あの船田姉妹の末っ子ですわね。でも、次は勝ちますわ」
「楽しみにしてる」
私たちの模擬戦は両者による握手によって終わりを迎える。
そして、頭に登った血が急に降りるような脱力感が私を襲う。鼓動を刻む心臓が徐々に落ち着いてゆく。
「すっげぇッスお姉様!!」
見ていた誉のシルト、
「次はあなたよ子羊ちゃん…♪」
その日は基礎訓練とCHARM選びのコツとか豆知識的なコトを話したり…私も学びを得た時間になった。
「ねぇ。気がついた?」
練習会帰り。誉、貞花、都々里の3名が帰っているなか、誉が口を開いた。
「怒は、あの試合で確実に首を斬ってた…。都々里が止めなかったら…私は…」
CHARMを用いた模擬戦では相手のCHARMを叩き落とす、寸止めや峰打ちが定石というより常識だ。
それなのに、先ほどの船田怒は確実に首を落とそうとしていた。誉の首筋には傷こそないものの刃が触れる感覚は確かに残っていた。
まだ1年程しか付き合いは無いが、怒の性格的に人へ刃を向けるような人ではない。同類を探すとしたら暴走したルナティックトランサーに近い感覚。だが悪意や狂気ではない、試合でも実践のように手を抜かない。相手が“
「誉相手に手を抜けなかった。ってことなのかな?手を抜けないからつい、実戦スイッチ入っちゃった的な?」
「そうだと…嬉しいわね」
戦った者なら分かる。怒の攻め手はさほど多くなかった。
手抜きではない。私に“合わせた”動きに変わったのだ。
戦った感覚は、状況に適応する狡猾なヒュージに近かった。粘り強く、敵が見せた一瞬の隙を突いて首を刎ねる。ルナティックトランサーの共感現象で有名な船田姉妹の中でも長女、次女とは何か違うようだった。
「あー!サングリーズルに欲しーなー!!」
貞花は手を組み叫ぶ。自分が理想とするレギオン サングリーズルに欲しいと心から思う。
これは2人も全く同意見だった。
「…私たちは幕張へ行ってきます。貴女は御台場へ行ってきなさい」
その日、船田怒はお世話係に当たる出江史房に呼び出された。
陥落して1年ほど経った幕張を奪還すべく関東中の2、3年生が集まるそうだ。学園の各レギオンとしては、主力となるメンバーが抜ける為下級生は訓練と学習、そして周辺警備に当てられる。
私たちアールヴヘイムは同じく主力が抜けてしまい、訓練の日々から解き放たれる…と思いきや、御台場にて開催される「ノインヴェルト戦技交流会」に参加することとなった。
「………。」
私は苦い顔をするしかなかった。
「貴女のデュエル戦術は極めて高いものがありますが、反してノインヴェルト戦術のようなチームでの作戦を苦手とする傾向があります。この交流会でノインヴェルト戦術を学びなさい」
「しかし…史房様…その…」
私が言おうとすることを察した史房様は頭に手を当て、助言を残して去っていった。
「存分に悩み、見極めなさい」
純お姉ちゃんから生徒会職を継いだ
私は返す言葉が無かった。以前のように姉や仲間達と共に戦いたい。しかし、今の仲間達と高めあいたい。
2つの仲間、2つの故郷で心が揺れ動いている。
「ひっさしぶりのー!御台場ぁーー!」
揺れ動く気持ちを抱えたまま訪れたノインヴェルト戦技交流会。
右を見ても左を見てもリリィ、リリィ、リリィ。東京御三家以外からも数多くのガーデンからリリィが集結した。
「おーい!怒ー!」
聞き馴染みのある声がする。
「ゆずー!久しぶり」
ゆずこと、川村楪が手を振って走ってくる。その後ろには椛、治、槿達、元船田予備隊の面々だった。
みんな、昔からほとんど変わってないように思えた。百合ヶ丘に転校してしまった私を、みんなは昔と変わらないように接してくれた。
「へぇ。これが今の仲間達かぁ〜」
「アールヴヘイムです」
「噂は聞いてるよ〜。すっごい強いんだって?」
「まぁはい。怒も含めて優秀なリリィが多く在籍しているので、私も置いていかれないように頑張ってます」
「へぇ。………もみじぃ〜」
楪は私の近くにいた天葉に絡んでいく。しかし、私の仲間達はウザ絡みにも臆することなく、毅然と対応する。
その態度に、変な絡み方をしたことを後悔したのか、椛へ助け舟を要求する楪。その姿は親に泣きつく子犬のようだった。
「ゆずったら…。うちの子がごめんなさい。天葉さん」
「天葉でいいよ、椛さん。怒の仲間がどんなのか気になったんだよね。仲間想いのリリィで嬉しいよ」
「私も椛でいいですわ天葉。お互い、実りのある交流会にいたしましょう」
うんうん。新たな絆が芽生える瞬間だ。
ガーデンを超えて絆が生まれ、切磋琢磨できるライバルが増えていくのはいい。
「そろそろ時間だから集合場所に行こ。遅刻したら千華様にシゴかれちゃう」
「じゃあ道すがら、苦労話でも聞こうかな〜。怒の扱い難しいでしょ?あの姉に似て」
「あはは…それは…まぁ…ね…」
「え?」
…これが終わったら楪に好物のハンバーガーをプレゼントしよう。
トマト代わりに感謝のタバスコ大盛りで。
「さて、私がこの会を主催した、竹腰千華だ」
十数分後。予定通りに始まったノインヴェルト戦技競技会。
ひとえに東京を守護するガーデンと言っても、戦法・戦術はまるで違う。異文化とも言える他ガーデンの戦術を取り入れて成長できるまたとない機会だ。的なことを言っていた気がする。
なぜ曖昧なのかって?
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
開始間も無く、御台場に鳴り響く地響きと共に悪夢の蓋が開いてしまった。
次回 御台場迎撃戦ー開幕