アサルトリリィ「船田怒編 -The Lily Hills-」   作:アイナll

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もう花の名前は諦めました。

あと、今回は少し長いです。
字数にして9000字を超えていますが、よろしくお願いします。


4話 御台場迎撃戦ー開幕

「ネスト発生!」

 

「かなりデカいな…」

 

 轟音、地響きと共に突如開いたネスト。

 雷鳴に見えるマギのほとばしりが、この場のリリィにプレッシャーを与える。

 

「…情報が届きました!グンタイアリ種です!」

 

 「「「「“あの”ケイブか!!」」」」

 

 防衛軍と連絡をとっていたリリィが叫ぶ。

 そして、元船田予備隊のメンバーは過去の戦闘を思い出す。

 

「でもあの時はそこまで大きくなかったわ」

 

「防衛軍から続報!ケイブからはラージ級や…ギガント級も確認されています!」

 

 マジかよ。

 この場にいる全リリィが思ったに違いない。

 

「ガーデンに判断を待つべきよ」

「だめ!それじゃ遅過ぎる」

「グンタイアリはとにかく数が多いヒュージだ。早く手を打たないと被害が拡大する」

「迎え撃つって言うの?この場には実践経験の少ないリリィも多いのよ!」

「それでも何かやらなきゃ…」

 

 場が混乱し始めた。

 現在、主戦力となる2年生の多くは幕張奪還へ向かっている。さらに、この場には実践経験の少ないリリィも数多くいる。いきなり戦闘するには敵が強大過ぎる。

 御台場には光壁システムというヒュージを食い止める機構がある。しかし、それを使ったとしてもどれだけ耐えられるか分からない。

 この場にいる誰もが焦りとプレッシャーで押しつぶされそうになった時、

 

 

 

「みんなー!聞けーーー!!!」

 

 

 

 1人のリリィが叫ぶ。

 

「この場には強いリリィがこーんなにいる!私達が団結すれば、必ず勝てる!」

 

 根拠の全く無い自信だが、これこそ近藤貞花という人なのだろう。

 彼女の曇りない笑顔がこの場の不安を吹き飛ばした。

 

「よし!ではこの場でチームを5つに分けよう」

 

 この場を仕切る竹腰千華が貞花に便乗する形で50名余りのリリィを5つのチームに分ける。

 北と南のケイブを討滅を担う第一、第五部隊。その間に市民の避難誘導を行う第二、第三部隊。そして各隊のバックアップを行う第四部隊。

 この場にいるリリィの個性や適正、相性を一瞬で見極めチーム分けされる。私は第三部隊へ振られた。

 

「各隊、時間は少ないが作戦会議をしてくれ」

 

 こうして束の間の作戦会議が行われた。各隊、その場で集まり簡単な自己紹介と与えられた役割に対してどう動くべきかを話し合い始めた。

 

 私達第三部隊は百合ヶ丘女学院から青木夏帆、番匠谷依奈、明石愛華、渡邉茜、多田紫恵楽。御台場女学校から横山梓、藤田槿、菱田治。イルマ女子美術高校から西川御巴留。エレンスゲ女学園から芹沢千香瑠の総勢11名の部隊となった。丁度レギオンくらいだ。

 戦力としては戦線維持能力と臨機応変な対応に適したメンバーが揃っており不足な事態を想定したメンバーと言える。AZ、TZ、BZで戦えるアタッカーと司令塔になれるリリィが複数人いるのがその証拠だ。

 私としても約半数のリリィと共闘した経験があるので非常に戦いやすいメンバーと言える。

 

「リーダーは…そうね…依奈に任せましょうか」

 

「えぇ?!私?リーダーはこの中で連携の要になる怒がやるべきよ!」

 

「いやいや、私は動くのが仕事なので。依奈なら状況と仲間をよく見て、臨機応変な作戦を練れるよ。ってことで任せたから」

 

 こんな感じでリーダーを依奈に押しつk、任せた。

 腑に落ちてないようだったので多数決を取ると、アールヴヘイムでの活躍を知る人も多いせいか依奈以外満場一致だった。

 

 後は陣形を相談していた時だった。

 

 

 

 (ドクンッ!!)

 

 

 

 いつか感じた“何か”を再び感じた。

 間も無く、轟音と共に怪物が姿を見せる。

 

「嘘…あれは…アルトラ級?!」

 

 その巨体を見て誰が呟いただろうか。誰が想像できただろうか。

 ヒュージの中で最上級の規模を誇るアルトラ級が姿を現したなんて。

 

「クラウドにデータが無い…まさか…“巣なしのアルトラ”?!」

 

 巣なしのアルトラ。授業で習ったことがある。

 ヒュージが出現するワープホールがケイブ。ケイブからは基本的にギガント級までしか現れず、アルトラ級はケイブを固定化しネストへと進化させる存在。ネストとなってしまえばアルトラ級ヒュージが攻撃してくる他出現するヒュージの数も力も上がる厄介なものとなる。

 今回の状況から、グンタイアリのケイブに巣なしが引き寄せられたのだろう。

 

「…状況が変わった。討滅を諦め、避難と撤退を優先させるべきだ」

 

 とあるリリィが意見を述べる。ギガント級ならどうにかなったかもしれないが、アルトラ級では話が変わる。市民を守るのであれば、撤退も一つの手だろう。その後、東京エリアが未曾有の厄災が降りかかろうとも。

 

「あぁ状況が変わった。巣なしを討滅できるのは“今”をおいて他にない!」

 

「現在、巣なしのアルトラはヒュージにマギを供給しながら巣作りに集中しているようです。ケイブがネストになるまでしばらく時間があります。その間に、私たちのノインヴェルトを叩き込めば!」

 

「アルトラ級…討滅できる…?!」

 

 逆転の発想。今ならば討滅できる可能性が最も高い。

 

 敵を見つけ、撤退するか、討滅するか。

 この二択は甲州を思い出す。もう、迷わない。

 

「やるぞ。アルトラ級討滅ッ!」

 

 

 

「それでは各隊、出撃!!」

 

 千華の号令で全部隊が作戦行動に出る。

 第一、第五部隊は作戦通りグンタイアリの大ケイブ・擬似ネストの討滅へ走り、その後を追う形で第二、第三部隊は民間人の避難誘導に当たった。

 

「私たち第三部隊は、豊洲方面へ避難誘導へ行くわ!」

 

「了解!第二部隊は有明方面へ向かう!」

 

 情報によると突如開いたケイブに防衛軍が火力兵器で応戦しているようだが、足を鈍らせる程度で足止めにはほど遠いそうだ。さらにはケイブ側から人が流れ込んだ影響で現場も混乱し始めているそうだ。

 リリィの急行が求められている。

 

 

 

「皆さんもう大丈夫!なぜって…私達が来たっ!」

 

 防衛軍がとグンタイアリ種が抗戦している間に着地し、大ぶりな一撃でヒュージを斬り裂く。

 

「リリィだ…」

「助かるのか…」

「ありがとう!」

 

「ふっ、決まった…」

 

 市民の声が力となり身体中にほとばしるぜ!

 

「言ってる場合かしら」ドンッ!

 

「ぁぶなっ!」

 

 背後から依奈の手厳しいツッコミが入る。

 

「言いたかっただけでしょ」

 

「怖いって!」

 

 さらには槿の呆れたと言わんばかりの斬撃も飛んでくる。

 私をよく知る人は呆れ、今回初めて戦う人は何か納得したような表情だった。「あぁ。こういう人か…」という心の声が漏れて聞こえるようだった。

 

「ヒュージは私達で請け負います。皆さんは、防衛軍の指示で落ち着いて避難して下さい」

 

「はい!」

「リリィの皆さん、任せました」

 

 依奈は豊洲の指揮を取っていた人へ簡単な挨拶と避難経路を伝え、ヒュージ殲滅へ参加する。

 グンタイアリ種は数が多い割に一体の戦力はスモール級と大したことはない。十分な人数と地形の有利で、落ち着いて対処できればそこまで怖くはない。

 私たちは戦線を維持しながら、紫恵楽が市民の避難誘導をしている。

 こちらは御台場のお膝元だけあって避難は順調に進んでいった。

 

 

 

 

 こちらの避難誘導に終わりの目星がついた頃。

 

 

 

 ドーンッ!!!

 

 

 

 海岸側。ケイブの方角で轟音と共に爆発が起こった。

 

「今のは、ノインヴェルト?!」

 

「作戦より早いわ。もしかして何か不測の事態が…!」

 

 おそらく第五部隊だろう。作戦では第一部隊と合流してノインヴェルトを放つはずだったのだが、単独で、それも作戦を繰り上げて放ったようだ。

 

「近くの第二部隊に連絡してみましょう!」

 

 依奈が通信機で有明にいる第二部隊へ連絡を取る。

 

『こちら…第二部隊… アルテア…アレッサンドリーニ…』

 

 通信のノイズが酷い。巣なしのアルトラの影響だろうか。そこまで距離は離れていないのを考えると、各隊での通信も難しいだろう。

 

「…了解したわ」

 

 なんとか依奈と第二部隊の通信が終わったようだ。

 端的に言うと、状況は悪化した。ケイブからラージ級やギガント級も出現し、グンタイアリも数がさらに増えたそうだ。

 先ほどのノインヴェルトは第五部隊が放ったものでギガント級1体を倒せたものの、続々と現れているようだ。

 通信が困難な状況に関しては第二部隊の貞花が第四部隊と合流して連絡を取り、第四部隊から第一部隊に連絡を取る形になるそうだ。

 

「私達第三部隊は東雲方面へ向かい、避難完了の目処が立ち次第、第五部隊の救援へ向かいます」

 

 当然、今すぐ駆け出したい気持ちは誰にだってあった。しかし、今救援に向かえば残された市民が危険に晒されてしまう。幸い第五部隊は地力の強いリリィが多い。陣形や陣地を工夫して立ち回っているに違いない。

 私たちはこの気持ちを足に込め、1秒でも早く駆けつけるのだ。

 

 

 

「人が多い分、避難が少し遅れそうね」

 

 治が呟く。

 私達第三部隊は東雲へ到着したが、避難者が多い上に細々としたケイブが開きグンタイアリが際限なく出現している。

 

「こちら第三部隊の番匠谷依奈。第五部隊、聞こえる?」

 

『こちら…第五部隊… 野口志奈乃…若洲橋前に…ケイブが発生。後退しながら…新辰巳橋で…食い止めているわ…』

 

「了解。東雲の避難が完了次第、救援に向かうわ。しばらくの間持ち堪えて!」

 

『了解!』

 

 元気はあった。しかし、何か逼迫した状況が伝わってくる。

 早くしなければ手遅れになってしまう。

 御台場最後の任務。戦場で孤独の辛さは誰よりも知っている。だからこそ一体でも多くヒュージを斬り、一秒でも早く救助へ向かわなければ!

 

 

 

「後は防衛軍にお任せします」

 

「了解。早く第五部隊の応援に行ってやってくれ」

 

 避難の目処が立ち、ケイブも粗方討滅した。しばらくは安全だろう。後は防衛軍の人に任せて、私達は、走るっ!

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…そろそろ…やばいかもぉ…」

 

 川端蛍は剣を地面に突き刺す。戦闘中、円環の御手に覚醒したのも束の間、マギも体力ももう尽きてしまった。

 

「下がって休んでこい!ここは梅達が食い止めるゾ!」

 

 同じ第五部隊に所属する梅も仲間を鼓舞しているが、本音はもう限界が近かった。

 蛍はふらついた足取りで後方へ後退しようとするものの、足の力が不意に抜けてしまい地面へ倒れる。

 

「しまっ、」

 

 そこへ一体のヒュージが弾幕の包囲網を抜けて突進する。

 CHARMを握る手に力が入らない蛍は諦めかけた。

 

 

「「「「蛍ぅー!!」」」」

 

 懐かしく感じる声をたどり、振り返ると背後から親友達の姿があった。

 

「槿」

 

「壊さないでよ」

 

 怒は槿のCHARM ヨートゥンシュベルトを握り、友に襲いかかるヒュージへ投げる。

 凄まじいスピードでヒュージへ突き刺さり、投擲と同時に地面を蹴った治がヒュージを真っ二つに斬る。

 

「梅、少し休んでな」

 

「怒…」

 

 新辰巳橋に到着した第三部隊は、第五部隊に変わって橋のヒュージを倒していく。

 

「っ?!ギガント級よ!隊長、弾丸(バレット)を!」

 

「分かったわ!スタートは任せたわよ千香瑠!」

 

「はい!」

 

 最後列で敵の観測をしていた千香瑠がギガント級を発見。依奈から渡された特殊弾から魔法球を生み出し、パスを出す。

 第三部隊でヒュージを倒しながらパスを回し、最後に受け取った梓がフィニッシュショットを放った。鎧型のギガント級に命中、周囲のヒュージを巻き込みながら爆発した。間を空けず残ったヒュージを第三部隊で討伐し、新辰巳橋は静けさを取り戻した。

 

「もうヒュージは来ないようね」

 

 ヒュージの消えた橋を見つめて愛華が呟く。

 

「でも…ギガント級の群れを通しちゃった…」

 

 蛍は悔しさを口にする。

 第五部隊は敵を足止めし、第一部隊と合流して本陣を叩く。はずだったが、敵の戦力を軽視した結果ケイブが急成長し計4体のギガント級が流れ出てしまった。

 グンタイアリギガント級、つがいのギガント級、重力干渉型ギガント級、蛇型ギガント級。

 

「この事態は隊長の私の責任よ。お願い。ギガント級追撃に加えてもらえないかしら」

 

「ふーん…チームメイトはそう思って無いようだけど…」

 

「え?」

 

 野口志奈乃はチームメイトを見渡した。

 傷つきながら、疲弊しながらも、その瞳は諦めはなかった。勇気が灯っていた。

 

「私たちも、戦う」

「負けたままなんて性に合わないもん」

「梅もまだまだ戦えるゾ」

 

「みんな…」

 

 煌椋、蛍、梅は立ち上がった。戦闘で消耗しているのは確かだが、まだ戦える状態だった。

 

「決まりましたわね。4体のギガント級はどちらへ向かいましたの?」

 

「つがいと重力干渉型は豊洲方面、残りの2体は有明方面へ向かった」

 

 第五部隊の遠野捺輝は指を指し伝えてくれる。彼女はマギ切れを起こし、戦線離脱することにした。

 

「…では我々第三部隊、改め追撃部隊は豊洲向かったつがいと重力干渉型を追います。有明方面の2体は第二部隊に追ってもらいましょう。捺輝達は防衛軍のガンシップで御台場女学校に撤退して」

 

 捺輝達から得た情報で作戦を組み立てる依奈。司令塔としての才能が光っている。

 

 

 

「よし。まずは私、槿、御巴留の3人で先行偵察してくる」

 

 私達3人は隊から先行して東雲から豊洲へ向かった。

 

「ちょっと怒!走るの早いわよ!」

 

「ごめんごめん。久しぶりの御台場で張り切り過ぎたわ」

 

 どうやら私が少し走るのが早かったらしい。

 なぜだろう。御台場に来てから体もマギもすこぶる快調だ。

 

「…あれが2体のギガント級ね」

 

 御巴留が指した先には2体のギガント級と無数のグンタイアリが暴れ回っていた。その先には地面からせり出た防壁で足止めしながら火力兵器で抵抗している防衛軍がいた。

 

「…2人は急いで隊のみんなを連れて来て。私は防衛軍のアシストしてくる。あ、なるはやで。ね!」

 

 ブルガトリングを展開し、ブレードモードで軍人に襲いかかるグンタイアリを斬り裂く。

 

「リリィか!」

 

「助太刀に来ました。足止めお願いします」

 

 何か、何かが溢れてくる。目の前の敵を斬りたいという欲求が心の底から沸いてくるようだ。

 一心不乱に暴れ回り、せめてグンタイアリの数だけでも減らす。この後のギガント級戦のためにレアスキルは温存して戦っているが、なぜか体がすこぶる快調だ。今ならギガント級も倒せそ、

 

「怒!重力干渉型から仕留めます!」

 

 後方から千香瑠の声と共に魔法球が飛んでくる。

 

 受け取ったと同時だろうか。突如、空間が歪み体が重たくなる。

 

「これが…重力干渉型の…力かぁ!」

 

 私は負のマギに耐性があるためなんとか身動きが取れているが、チームメイトは重力により身動きが取れない状態になっていた。

 ギガント級の射程外にまで影響が出ているのは間違いなく、アルトラ級の影響。

 

 ギガント級達は防壁へ何度も体当たりし、いずれ崩壊した。2体は勢いそのままに豊洲方面へ向かう。

 

「いけない…!ギガント級が東京エリアに入る…!」

 

 重力に抗いながら治が叫ぶ。

 ケイブが開き、ヒュージが東京エリア内に侵入するのを防ぐべく光壁システムが作動している。光壁システムではスモール級からギガント級までの進行を防ぐことができるが、一度展開されてしまえば解除されるまで避難民も通ることができない。

 豊洲方面はまだ避難が完了できていないためバリアが展開されていないため、もし2体のギガント級がバリアの内側に入ってしまえば………

 

「なんとしても迎撃するわよ!」

 

 夏帆の一喝で全員根性で走り出す。一歩ごとにごっそり体力を削られるが、ヒュージを逃す大惨事に比べれば痛くも無い。

 

「一番槍、いただきます!」

 

 他より負のマギに耐性がある怒が1人飛び出てギガント級を斬りにかかるが、

 

  『GYUUUUUU?!』

 

 ヒュージは予想外にも眩い()()に弾かれる。

 

「そんな…」

「光壁が降りてる」

「しかもこれ、フルアドミッションモードじゃないか…」

 

 ヒュージの行手を阻んだのは光壁システム。いくつかレベルがある中の最上級レベルのフルアドミッションモードだった。

 

「…御台場女学校(アキラ先生)から連絡よ。“ギガント級が侵入する可能性に備えて光壁システムを展開。取り残された市民を非難させるためにも、いち早くギガント級を討伐されたし”だそうよ」

 

「なかなかハードになったわね…」

 

 御台場女学校と連絡をとった依奈から光壁システムについて聞かされる。データより強くなったギガント級を早急に倒せという無茶振りじみたミッションに蛍が弱音を吐く。レギオンメンバーもどこかで思ったのか俯く。

 

「…なぁに、元々倒すつもりの相手に時間制限がついただけでしょ。私達がやることは変わらないわ。制限以内に倒すわよ」

 

「そっか…そうだね!」

 

 怒の発した言葉でムードを作り、再び上を向いたメンバー達。

 手始めに、眼前のつがいのギガント級から討伐することとした。

 

 つがいのギガント級とは名の通り2体で1体を構成しているギガント級ヒュージ。巨大な植物のような外見で、木の根のような触手が特徴。頭には花が咲いており、常に2体同時に動く。

 つがいのギガント級は“結界領域”と呼ばれる空間を作り出す効果を持っていた。これにより、追撃部隊の一斉射撃も結界に入った瞬間に躱されてしまう。

 

 ヒュージが分散し周囲の建物を手当たり次第に破壊して回っている光景を目の当たりにし、避難民が集まる豊洲市場までの距離が縮まっているのを受けて、焦りが射撃精度を鈍らせる。

 

「もう!なんで当たんないのよ!」

 

 槿は焦りのあまり声を荒立てる。

 

「落ちつきましょう!あれだけの結界です。何かタネがあるに違いありません!」

 

 千香瑠による機転の効いた発言へ「植物だけに?」と言いたい気持ちをグッと堪えて、依奈とアイコンタクトをとる。

 依奈は不適な笑みを浮かべ、

 

「千香瑠の言うとおりよ!どこかに結界を展開させる器官があるはずよ!それを見つけて叩きましょう!」

 

「ならその役目、私が引き受ける!」

 

 一足先に抜けたのは治だった。彼女はCHARMと自身のマギを共鳴させて身体能力を底上げする“神宿り”を発動。

 強烈な一撃がつがいに命中する。神宿りを介して放たれた一撃は相当痛手だったようで、ギガント級が奇声な悲鳴を上げる。

 二撃目を繰り出す治だが、つがいは攻撃に合わせて結界を収縮・シールドにして防いだ。

 

「見つけた…!あの花よ!」

 

 マギの流れに敏感になった治は、シールドを展開される時に、起点として動いた花の器官を発見した。

 

「第三部隊の皆さん、助太刀します!」

 

「昴?!」

 

 治が花の器官見つけたと同時に、御台場の旧友 井草昴が駆けつける。彼女は元船田予備隊のメンバーで現在は御台場障壁防衛隊に入っているはずだ。

 

「昴!二隊で仕留めるわよ!」

 

 槿は昴へ投げかける。この時には既に魔法球は装填されていた。

 

「「ダブルノインヴェルト戦術、開始!」」

 

 第三部隊と障壁防衛隊の二隊による同時ノインヴェルト戦術が始まる。2つの魔法球が戦場を飛び回る。

 つがいは大きな触手で妨害しようとするが、

 

「させるかぁー!」

 

 襲いくる触手を第五部隊のメンバーが防ぎ、パスは順調に回る。最後は治、昴に渡り、フィニッシュショットを命中させる。

 2つの魔法球はつがいの頭部に命中し、爆発して討滅に成功した。

 

 

 

「よし!まずは一体撃破〜!l

 

 蛍は明るい表情でハイタッチを…したそうだった。

 つがいのギガント級は討滅できたものの、まだ重力干渉型が残っている上に、無数のヒュージが散らばっている。

 

「急いで重力干渉型を倒さないと…」

 

「ですが、このままでは避難所にもヒュージが到達しかねません」

 

「防衛軍に連絡して防衛態勢を強化してもらいましょう」

 

 私たちはこのギガント級の討滅、グンタイアリの討滅、避難所の防衛強化の3つを達成しなければいけない。どれかを障壁防衛隊に任せたとしてもまだ足りない。

 

「ギガント級はおそらく光壁を目指すでしょう。なので我々障壁防衛隊が引き受けます」

 

 昴が依奈へ進言する。

 

「…なら、私たちで避難所を防衛するわ。みんなはヒュージに専念して」

 

 続いて治が言う。

 

「私、梓、御巴留、海七で避難所を守るわ」

 

「了解したわ。もしギガント級がそっちへ行ったら連絡をください」

 

 依奈は治の提案をすんなり受け入れた。と言うより悩む時間が無かったのか。

 二隊は3チームに分かれ、それぞれの役割を遂行するべく、散らばる。

 

 

 

「グンタイアリ…発見ッ!」

 

 豊洲方面にやってきた第三、第五混成部隊。そこからさらに散らばり、グンタイアリを各個撃破することとなった。

 グンタイアリは広く散っているが一個体では視界に入り次第斬る。

 ついでに逃げ遅れた民間人がいないかを探して進む。

 

「怒!そっちの首尾はどう?」

 

「私の方はヒュージを全部斬ったよ」

 

 粗方片付いた頃、近くにいた茜が話かけてくれる。アールヴヘイムのメンバーでもある彼女。わざわざ首尾を聞くまでもない。

 

「よし、他のメンバーのフォローをしながら集合しよう」

 

 とは言ったものの、他の面々も心配するまでもなくヒュージを倒した。流石です。

 

 

 

「っ!おーい!みーんなー!」

 

 ヒュージを討滅し、避難民がいないことを確認した私たちは無事合流。

 合流と同時に蛍から重力干渉型ギガントを討伐したという知らせが入る。私達はひとまず、彼女らがいる晴海大橋付近へ移動した。

 到着すると蛍が満遍の笑みで手を振って迎えてくれる。

 

「蛍…無事で良かった」

 

「まぁ、この蛍様にかかればチョチョイのチョイのチョイですよ!」

 

「さっきまで寝ておいてよく言うわ…」

 

「槿!それは言わないお約束でしょ!」

 

 表には出さないが、流石の蛍も連戦続きで疲労が来ているらしい。

 それでも戦えているのは…御台場で過ごした訓練の日々があってこそだろう。純お姉ちゃんのためにも、まだまだ気張る必要がありそうだ。

 

「皆さん。先ほど治から避難民も含めて無事と連絡が届きました。ですが…防衛軍の報告では治が富士見橋を落とした。とも上がってきています」

 

「治が?!」

 

 富士見橋。

 豊洲と有明を繋ぐ橋で、現状唯一残っていた橋でもあった。おそらく避難民を守るためだとは思うのだが…まだ有明エリアには御台場女学校の中等部のリリィや避難民が残っていただろう。

 

「それで、有明の方は大丈夫なのカ?」

 

「そっちは近くに来ていた第二部隊が上手くしてくれたみたい。後でお礼言わないとね」

 

 梅の不安そうな質問に蛍は明るく返した。

 事態はともかく、これでギガント級とグンタイアリを討滅できたので光壁システムを解除できる。多くの避難民を救うことができるだろう。

 しかし、あの治が富士見橋を落とすなんて…。

 

「でも…側から見れば治が避難民を見捨てたって映るわよ。それって…あまりにも…」

 

 リーダーである依奈は仲間がこの先非難されることを良く思わなかった。依奈に限らず、それはこの場にいるリリィ誰もが思っていたことだった。

 

「…それも、全て覚悟の上だよ」

 

「治?!」

 

 声がした方向を見れば、治達4人が集合していた。避難民の無事が確保され、光壁解除の連絡が入ったので、合流しに来たのだろう。

 

「治、まだ闘える?」

 

「大丈夫。問題無いわ」

 

 私の問いかけに、治は力強く返してくれた。

 苦渋の決断をして治だが、その目にはまだ闘志が宿っていた。




今回、御台場迎撃戦を書くにあたって、最大の資料となったのがアサルトリリィ ヴンダーです。
盗作にならないように細心の注意を払いましたが、万が一ダメだったら消します。

ちなみに、これを書いているあたりで電ホビが復活しました。本を開く手間が減って助かった。
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