アサルトリリィ「船田怒編 -The Lily Hills-」   作:アイナll

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舞い、咲く。
蝶と花のように。

お待たせしました。最新話です。


7話 御台場迎撃戦ー舞咲

「ここは…どこ…?」

 

 暗く光のない場所。

 

 気がついたら、私はここでうずくまっていた。

 

 記憶がモヤがかかっているみたいだ。麻嶺と入れ替わるように第二部隊に入隊して、ガンシップから降下したことは覚えている。でもそこからは…何かを斬ったのは覚えてる…けどいまいち思い出せない…。

 

 上も下も、右も左も真っ暗。自分が立っているのか逆さなのか、浮いているのか落ちているのか分からない。

 何も分からないのは怖いけど、立っていては何も始まらない。

 

「よし。最初の第一歩!!」

 

 真っ黒の空間なのに目を瞑って踏み出した。

 

 ゆっくり目を開いて…何も無いことを確認。

 振り向いても、何もない…。

 

「何がどうなっ、、ってわぁ!キモッ」

 

 何も無い、前を向くと出目金を彷彿とさせる大きな目玉がそこにはあった。

 そんな目玉と目が合うと…この何も無い空間がうごめく。

 

 どこからか伸びてきた触手に腕を絡められる。

 これは暗い空間ではなく

 

「これ全部…触手?!」

 

 そうこうしている間に、抵抗虚しく腕と脚を絡められる。泥のような冷たい感触が、皮膚を透過し血管を伝って心臓へ向かって這い寄ってくる。

 指が意思と反して動く。このままいけば、体が乗っ取られる…。

 

 抵抗する力も出なくなった頃、暗く光の無い空間に一閃の光が突き刺さる。

 

 

 

「はぁ…。まったく世話の焼ける妹ですわ」

「手、貸しましょうか?」

 

 

 

 幻聴かな?なんか、半年ぶりに聞いた気がする。

 さっきの攻撃で片腕の触手がちぎれた。が、まだ身動きがうまくとれない。

 

 正直、助けて欲しい。

 だってあのお姉ちゃん達だもん。こんな訳の分からないバケモノなんて一瞬で消し飛ばすに決まってる。

 純お姉ちゃんと一緒に戦いたい。

 初姉さんに甘えたい。

 御台場にいた時みたいに。毎日楽しく・厳しく過ごしたい。

 ダメだ。立ち向かいたいのに、動けない。

 

「姉さ、」

 

 

 

『『いい加減目を覚ませ!船田怒ーッ!!』』

 

 

 

 この声は…。そうか。

 

「初姉さん。純お姉ちゃん。ありがたいけど、手助けはいりません!」

 

 腕一本動けば十分だ。こんなキッショい目ん玉をぶん殴るには。

 全体重を乗せたパンチは目ん玉を潰し、巻き付いていた触手は動きが止まる。

 

 黒い空間は剥がれ、一面の草原が広がる。

 

「私、今は百合ヶ丘女学院でアールヴヘイムっていうレギオンに所属してます。クセが強いメンバーとがんばってます。あと、友達もいっぱいできました。姉さん達に紹介したいです。でも、それは今じゃないよね」

 

 背後から暖かい日と共に姉の気配を感じる。

 

「だから、見ていて下さい。姉ちゃん達が帰ってくる場所は、御台場は私達が守ります!!」

 

 この言葉は姉と自分に刻む。

 御台場を甲州のようにはさせない。

 もう二度とあんな後悔をしたくはない。

 

「では、行ってきます!」

 

 地面に置いている無名のCHARMを握る。

 

 

 

「貴女は何処にいても、誰といても、この船田姉妹の末っ子ですわ」

「巣無しのアルトラ級がどうだと言うの?私達の妹の敵ではないでしょう?」

 

「「行ってらっしゃい」」

 

 

 

 振り向かない。涙を拭いて、前へ走る。

 後ろには姉さん(過去)しかいない。私の目の前には私と並んで戦う、仲間()がいる。

 今はただ、目の前の敵をぶっ飛ばして、御台場と仲間達を守る。

 

 

 

 

 


 

 

 

「「いい加減目を覚ませ!船田怒ーッ!!」」

 

 貞花、天葉と暴走した怒のCHARMがぶつかる。そして貞花のマギクリスタルから光が溢れて周辺を包む。

 

「GYUUUUUUU?!」

「グアアアァァァァァ……」

 

「な、何なの…?」

 

 光の空間に包まれた怒とヒュージは苦しみだし、反してリリィは力が湧き上がる。

 

「これは、カリスマ?」

 

「いや私のカリスマとも別物よ」

 

 怒の消耗すると同時に若洲グランドから上がってきた混成部隊。貞花の作った空間によりヒュージが弱っているので消耗は少ない。と言うか撤退前よりも好調になった。

 

「これが…私のレアスキル??」

 

 貞花自身も不思議そうだった。彼女は自身のレアスキルを知らない。

 似たものでカリスマがあるが、カリスマとは原理が異なるようだ。

 

「あ…うあ…」

 

 先ほどまで暴れていた怒は大人しくなり、マギが空になった体に正のマギが流れ込む。

 

「う…貞花…天葉…」

 

「怒!?目が覚めたの?」

 

 しばらく横になっていた怒が目を覚ました。

 

「みんな…私、どうしヒエッ、」

 

 目覚めたばかりで状況の整理がついていない怒。そこへ、上がってきたアルテアがCHARMの先端を向ける。

 向けられたCHARMに驚き、後ずさると前髪が切先に触れて切れてしまった。それだけ至近距離で構えたのだ。

 

「その様子を見るに、正気に戻ったようで何よりだ。暴走していた時の話はこの際よそう。私が聞きたいことはたった一つ。戦えるか」

 

 怒の反応から暴走は収まったと判断するアルテア。

 暴走状態の傍若無人ぶりについてはこの場での言及を控え、単純な問いと手を差し出す。

 

「もちろん!何やらやらかしたっぽいけど…あのデカブツ(アルトラ級)を倒せば許してくれる?」

 

「考えよう」

 

 怒の答えに笑みをこぼすアルテア。

 失った信頼は簡単には戻らないが、それでも新しい関係を築き始めたのだ。

 

「はい、怒」

 

 天葉が怒のCHARMを手渡す。

 貰った時は真新しかったが、今ではかなり消耗している。それでもまだやれる!と言うようにマギクリスタルコアは輝きを放っている。

 

「よし…全体聴けっ!色々あったが、巣無しのアルトラ級は片腕を失い、貞花のおかげで今が最も弱っている!ここが正念場だ!必ず討伐するぞ!」

 

 おおおおぉぉぉぉー!

 

「第二部隊!」「第三部隊!」「第五部隊!」

「「「三隊合同ノインヴェルト戦術、開始!」」」

 

 アルテアを含めた隊長達の号令で三隊が同時に動く。

 

 当初とは形が変わったものの作戦の骨子は変わらない。

 第二部隊が巣無しを引き付け、その間に第三、第五部隊で雑兵狩りをしながらノインヴェルト魔法球を育てるもの。

 違う点としては貞花のいつまで続くか分からないフィールドにより、リリィは強化されヒュージは弱化している点。そして、船田怒という不安要素を抱えている点。一度パスカットしたため、無意識的に怒を避けてパス回しをしている。

 体力的にも、マギ残量的にも、メンタル的にも、これが最後の魔法球になる。それぞれがマギと共に想いを乗せて魔法球は渡っていく。

 

 

 

「やぁ。さっきは世話になったね」

 

「GYU、GYUUUUU」

 

 後方でパスを回している間、怒は再び巣無しのアルトラ級と対峙する。

 それを見る第二部隊にはアルトラ級とは別物の緊張が走る。

 

「さぁ、始めようか!」

 

「GYUAAAAAA」

 

 怒は抜刀しブレードでアルトラ級を斬る。

 暴走は、していない。

 

「みんな、怒に続け!」

 

 第二部隊は再びアルトラ級との戦闘を始める。

 AZ、TZのメンバーが気を引き、巨大な掌の攻撃を誘う。TZ、BZのメンバーは掌が振り下ろされた間に攻撃する。AZメンバーも隙をついて攻撃に参加する。

 一撃は小さいものの、確実にダメージは入っていた。

 この戦術をする上でやはり怒が片腕を落としたことが大きい。これによりアルトラ級の手数が事実上半減したため、攻めやすい上に守りやすい。

 

 こまめに削っている中、その時が来た。

 

「アルテア、任せたよ!」

 

「ふん。皆の想い、受け取った!」

 

 麻嶺からアルテアに魔法球。18人の想いが乗ったその魔法球を、椛が提唱したゼロトップ戦術でフィニッシュショットの隙を伺う。

 アルトラ級も魔法球を警戒し、慎重かつ守備的な立ち回りに変わる。

 そこへ、都々里と貞花の連携攻撃により、ガードが剥がれる。

 

「今です!」

 

 タイミングを見計らっていた椛がアルテアにパスを出し、ショットフォームに入る。

 

「これで終わりだ!」

 

(ッ!あれはマズイ!)

 

 アルテアのフィニッシュショットと同時に駆ける怒。

 

「なっ?!」「船田怒…!」

 

 本日2度目となるパスカットを行った。

 

「…私には分かるよ。これは負けまいとするアルトラ級の抵抗だって」

 

 怒の目線はアルトラ級…ではなく、その切断された腕に向いていた。

 次の瞬間、腕が手榴弾のように爆破し、黒い磁場のような物が広がる。掌の能力である負のマギを生成する能力を暴走させ、ノインヴェルト魔法球を飲み込もうとしたのだ。

 負のマギの磁場に飲み込まれれば魔法球は威力を失い、アルトラ級討滅には届かなかっただろう。

 

「だから、お前の勝ち筋を断たせてもらう。…レアスキル〈ルナティック・トランサー〉!!!」

 

 CHARMを納刀と共に狂化のレアスキルを発動させる。

 発動と共に怒の髪は本紫色白色が混じり淡藤色に変色。目は赤色緑色が混じり黄色く輝く。

 

「あれは…羽?」

 

 そして背中から蝶の羽のような形の白と黒が混入マギが放出されている。二つのマギは混ざり合うことを拒絶し、荒れ狂いながらも断固たる理性でコントロールされている。

 

 その場にいる全員が、彼女の放つ圧倒的な“格”の差に息を呑んだ。彼女に近しい御台場の面々はその背中に蝶と花を重ねる。

 

 ルナティックトランサーはその性質上周囲に負のマギを撒いてしまう。そこをサブスキル〈カリスマ〉を合わせ持つ怒は放出される負のマギを正のマギへ変換することでマギの浄化を図ったのだ。

 さらに暴走時にもあったアルトラ級との共感現象により、ケイブからマギを奪い出力の底上げ。今の体で扱える最大量のマギを刃に込める。

 

「喰らえーーーーー!!!!!!!」

 

 暴走状態さながらの斬撃にマギスフィアを込めて放つ。

 

 カリスマによるマギの転換は魔法球にも適応される。魔法球のマギにルナティックトランサーから生まれた負のマギを混入させることで、放たれた魔法球は負のマギの磁場の影響を受けても十分な出力を保ち、炸裂した。

 

 負のマギを発生させる磁場はこれで消えたものの、魔法球は無くなってしまった。

 

 もうアルトラ級を討滅する手段はない…

 

 誰もがそう思った。

 

「持ってるんでしょう?梅ッ!」

 

 

 

「まったく、梅使いが荒いルームメイトだナ!天葉!」

 

 

 

 後方もさらに後方。

 ヒュージの亡骸と崩れたビルに身を潜めていた梅が、魔法球を持って急上昇。縮地で加速された高速ロングパスを天葉はガッチリと受け取り、そのままBZからAZへ駆け上がる。フィニッシュショットを打ち込むショットフォームに入る。

 アルトラ級は残された腕を上げ、天葉を迎え討とうとするが、

 

「私から目を逸らすなよ。あれだけ熱くヤり合った仲だろ?」

 

 怒の大剣から放たれる斬撃により、腕を損傷。

 天葉のアルトラ級との間に障害物は消えた。

 

「これで終わりよ!巣無しのアルトラ!」

 

 放たれた魔法球は、音を置き去りにして眩い光と共に破裂した。

 

 

 

 

 

《rh》

 

 

 

 

 

「っ、怒…?」

 

 そんな言葉を船田純は呟いた。

 彼女は現在御台場を離れ、西国へ遊学している真っ最中だった。

 

「こんな時にどうしたの?純」

 

「いえ…今頃、怒は無事か急に不安になりまして…」

 

 山道を歩む2人。

 月明かりがあるとはいえ、影の闇から吹く風が不安を煽る。

 

「はぁ〜…お姉ちゃん心配だわ」

 

「お姉様も…。やはり、怒りも連れてくるべきだったのでしょうか」

 

 あの時、自分の失態で怪我をした妹を残して来てしまった。

 それを今になって後悔して来たのだ。

 

「いいえ純。私が心配しているのはあなたの事よ」

 

「え?」

 

 初の意外な発言で純は驚きの声を上げる。

 

「怒は私たち船田姉妹の末っ子ですわ。どんな逆境が襲いかかったとしても、あの子なら迎え撃てますわ。それができる強い子ですもの。純はそんなことも忘れてしまったの?」

 

「姉様…」

 

 姉の信頼。それを聞いて純は思い出す。

 ガーデンを去る前に一度、怒を連れていくかを初と話し合った。その時も「怒は連れていきません」「あの子はきっと、私達がいなくても仲間と強くなるわ」「私達には無い強さを持っている子ですもの」そう断言した。

 彼女は遠い地でピンチかもしれない妹より、今不安に揺れている妹を心配しているのだ。

 

「そうね…目が覚めましたわ。心配はいりませんよね。怒は強いもの」

 

 それを長年、間近で見てきたのだ。

 帰った時、怒の抜かれないためにもこの留学を糧に強くならねば。

 あの子が持っている強さを、私たちも見つけなくては。

 

「人型のヒュージが最後に目撃されたのはこの辺りよ」

 

「さて、あの子に負けないためにも、討伐しますわよ」




怒がルナトラを使うシーン。文字では1・2行ですが、カラーコードを記入したのでパソコンで4行あります。少しごちゃごちゃしましたが、色のイメージはこんな感じです。

僕が考える最強のリリィ(暴走を超えてモノにしたver)
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