デート・ア・ライブ  ~転生者の物語~   作:息吹

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 活動報告にもありました通り、今日、ifを、凍結として再投稿しました。
 数ヶ月は更新が無いということですが、よろしくお願いします。

 先に言います。今回、美九はあまり出てきません。
 といより、この話は『繋ぎ』みたいな役割なので、あまり本編に関わらなかったりもするんですよね……。

 それではどうぞ。


第24話

 途中からは耶倶矢と夕弦に案内を頼み、俺だけは別の道を行った。

 人目のない所を探し、裏路地へと入る。

 さてと、多分こっちにも観測機は回ってるだろうし、と。

「見ているなら応答を頼む」

 ポケットからインカムを取り出し、右耳に装着。

 インカムは、一応、ということで渡されていたのだ。

 しばしの間があり、

『ん、聞こえてるかい?』

「あれ、令音さんですか?」

 ああ、と返事をする声は、ラタトスクの解析官、村雨令音さんの声だった。

 ということはつまり、琴里はいないのか?

 いや、俺はこれを初めて使ったわけだから、俺に対しては令音さんが出るってことになってるのかもしれない。

『そうだが、いいタイミングだった。丁度、そちらに連絡をとろうと思っていたところでね』

 そうなのか?そしてまた、どうして?

「とりあえず、俺をフラクシナスに転送してくれないか。頼みがあるんですが」

『わかった。では、少し待っていてくれ』

 言われた通り少し待つと、浮遊感が俺を襲った。

 

「それで、頼みとはなんだい?」

「ちょっと、傷の治療をしてほしいんですが」

「……ああ、あの時の」

 あの時?俺の傷を知っているのか?

 いや、観測機が回っていた可能性がある以上、真那との戦闘だって見られている可能性もあるのか。他にも、美九との会話だって。

「では、ちょっと付いてきてくれ」

 そう言って、令音さんは歩き出す。おそらくだが、医務室的な場所に連れて行ってくれるのだろう。

 通路を幾度も曲がって、ある扉の前へと辿り着いた。

 ふむ、ここが医務室なのかな?

 随分と遠かったが、意外と、俺に道を覚えさせないためっていう線も考えられるぞ。考えすぎか。

 特に何も言わず、中へと入る。

「そこのベッドにでも腰掛けていてくれ」

 示されたベッドに座り、色々と準備をしている令音さんを待つ。

 まあ、傷がバレている以上、何を用意したらいいのかも分かるからか。

「……ん、一応、傷を見せてくれないか」

 用意を終えたらしい令音さんが言ってくる。

 だが、女性の前で下を脱ぐのは憚れる。

 ……あ、そうだ。

「……っ」

 俺は、小振りのナイフを創り出し、傷があるのであろう箇所を適当に切り裂いた。

 皮膚には触れないよう気をつけたつもりだが、冷たい感触が傷口付近に触れ、微かな痛みを得る。終わったら消す。

「えっと、これですね」

「これは……」

 表情は動かないが、多分驚いているのであろう令音さん。

 彼女に傷口を見せると、言葉を失った。

「……痛みはないのかい?」

「ええ、まあ。あんまり」

「……おかしいな……これ程の傷なら、普通、痛みで立つことも出来ない筈なんだが……」

 な、なにかぼそぼそ言ってる。

 令音さんは、考え事をするように何事かを呟いていたが、待っていると意識をこちらに戻してくれた。

「この傷なら、傷跡が残らないように治療することも可能だろう。どうする?今すぐやるかい?」

「どのくらい時間がかかりますかね?」

「ふむ……傷口を塞ぐだけなら、夕飯の時間には間に合う筈だ」

 傷を見ながら、令音さんはそう告げる。

 夕飯までには、か。

 食材は冷蔵庫にあったと思うし、もし間に合わなかったら、耶倶矢と夕弦に頼むとして……。

 あ、それじゃあ。

「それじゃあ、傷口を塞いだ後に、傷跡が残らないようにするっていうのは可能?」

「ああ、大丈夫だと思う」

 それなら、

「よろしくお願いします」

「ん、わかった。ナナは寝ていても構わないよ。こちらの用件は、また後日でもいい」

 そう?ならお休みなさい。流石に疲れたんだ。

 腰掛けていたベッドに横になると、自分で思っている以上に疲労が溜まっていたのか、すぐに意識が遠のいていく。

 そうして眠りに落ちる直前、一つの疑問が生じた。

 ……ナナって、まさか、俺……?

 

「……んにゅ」

 やべ、変な声出た。

 あれから何時間経っただろうか。俺は目が覚めた。

 まだ重い頭を上げて、周りを見渡す。

 えーっと、確か……。

「医務室、か」

 正式名称は知らないがな。案外、合ってるかもしれん。

 ん?あれは何だろうか?

 辺りを見渡す身のすぐ下。小さなテーブルに、一つの置手紙が置いてあった。

 書かれていた内容は、

『ナナへ。

 もう傷は塞いである。起きても大丈夫だ。

 先程、八舞姉妹から連絡があってね、早く戻って来いとのことらしい』

 どうやら令音さんらしい。書き方で判断するが。

 後は、それ程重要な内容ではなかった。戻るときは、司令室に一度寄って、戻る旨を伝えておけってことぐらいかな。

 しかし、もう塞がったのか。流石ラタトスクの科学力。

 あと、耶倶矢と夕弦が怖い。先程って、いつだよ……?

 でもまあ、あの二人の他に、狂三や美九も置いてきてしまったしな……。

「んじゃあ、戻るか」

 呟きながら、ベッドから起き上がる。

 ズボンはそのままだが、まあ、創るか。

 ……よし、戻した。これで元通り。

 ……って、俺、

「司令室までの行き方なんて分からないんだが……」

 よし、適当に歩こう。

 そう思い、俺は医務室を出た。

 

 なんとか家に戻って来たのは、もうすぐ七時も半ばを過ぎる頃だった。

 家の扉の前で深呼吸。心を落ち着かせる。

 さて、入ると同時に何て言う?常識的に「ただいま」が妥当か?いや、入りはそれでいい。問題はその後。リビングなんかに入る時だ。ここを考えるんだ。やはり「ただいま」か、それともいきなり「すまん!」と謝るか。他には……。

 うーんと唸って考えるが、答えが決まらないので、その場その場で乗り切ろうという結論に。

 ということで、解錠して、扉を開ける。

「ただいま~……」

 あー、情けない声になっちまったー……。

 何故か忍び足で足音を立てないようにしながら、やけに大人しいリビングのドアを開ける。

「た、ただい……!?」

 バタン!と、静かに開けていた扉を力任せに開ける。

 なにしろ、俺の目に映っていたのは、

「耶、耶倶矢!?夕弦!?どうしたんだ!?」

 床に敷いたカーペットに俯けで倒れる、二人の姿だったのだ。

 急いで駆け寄り、手前にいた夕弦を抱え上げ、耶倶矢にも声をかける俺に、頭上から声がかかる。

「あら、お帰りなさいませ、七海さん」

「く、狂三……!?お前は、大丈夫なのか?」

「ふふ、一体、何のことを言っていますの?」

 あまりの光景に周りが見えていなかったらしい。後ろにはソファに座った狂三がいた。

 しかし、何で狂三だけ倒れていないんだ?それに、美九は……?

「一緒にいた声の綺麗な方は、つい先程帰られましたわ」

 声の綺麗な方……美九か。

「じ、じゃあ、この二人には何があったんだ?」

 焦るように狂三に問いかけるも、彼女は微かな笑みを浮かべるのみ。

 ったく、どうしたんだっていうんだよ?

 部屋は多少散らかっているものの、荒れているわけではないので、戦闘があったわけではないだろう。

 なら、一体何があった……?

 ここで狂三が何かしたという考えが浮かばないのは、俺が精霊に甘いってことかな。

 心のどこかでそう思いながら考える眼下、

「確……認。七海、ですか……?」

 夕弦が起きた。

「あ、ああ、七海だ!夕弦、一体何があった?」

「うぐ……煩いぞ、七海よ。我らが静寂を望んでいることを察さぬか……」

 耶倶矢も起きたか!静寂の使い方を間違っている気がするぞ。

「で、どうしてこんなことに?」

「要求。七海、あの女性はもう、夕弦たちに近付けないでください」

「あの女性って、美九か?またどうして?」

「説明。実は……」

「ふむふむ」

 

「要は、美九の『愛情』表現に付き合わされ、あんなことやこんなことをやらされて、結果、美九が帰った後に疲れて倒れていた、と。そういうこと?」

「ふ……大方正解だ」

「……確かに、愛でさせて、とか言ってた気がするなあ……」

 何をやらされたのか詳しいことは教えてくれなかったが、大体のことは把握した。ちなみに狂三は、いつの間にかいなくなっていたらしい。

 あの時微笑するだけだったのも、詳しくは知らないのを隠すためだったのかな。

 あれから十数分。もうすぐ八時になるな。

「して七海よ。何故こんなに遅い?相応の理由があるのだろうな?」

「あ、ああ。ちょっとフラクシナスに行って、傷の治療をしてもらってたんだ」

「心配。では、もう傷は……」

「今度また行かないと行けないだろうが、とりあえずは大丈夫だ」

 まあ、時間があれば向こうから呼び出されるだろ。

「じゃあ、そろそろ夕飯の支度をするか。勿論、狂三も食っていくよな?」

「え?わたくしもよろしいんですの?」

「当たり前だろ。何を言ってやがる」

 目を丸くして驚いていた狂三だが、俺がそう言うと、表情を微笑に変えた。

「ふふ、では頂くことにいたしますわ」

「おお。そうしろそうしろ」

 さて、冷蔵庫には何があったけなあ?

 別に三人も四人も手間は大して変わらないんだが、材料が足りるかどうかだな。基本三人分で買ってるし。

 俺は別に大食いというわけでもない、むしろ普通の高校生男子より小食だと思うんだが、耶倶矢と夕弦が意外と食うんだよな。こっちの世界に来ての新発見。

 あ、そういや前の世界で、「東雲くんって、あんまり食べないんだね。ほら、私たちと同じくらい」とか女子に言われたことあったな。あれはつまり、俺が女子と変わらないってことなのか。

 ……今はそれはどうでもいい。

「えー……俺がいつもよりやや少なめにすれば、何とか足りるよな……?」

 冷蔵庫の中身を思い出しつつ、黒色のエプロンをつけて手を洗う。

 いっそのこと鍋系にするか?鋤焼(すきや)きとか。あれ?これって鍋になるよな?

 でも狂三の味の好みとか知らないしなあ……。

「……豚肉あるし、生姜焼きでもすっか」

 そうと決まれば早速調理開始だ。投げやり気味だったのは気にしない。

 豚肉に下味を揉み込ませ、玉葱(たまねぎ)を五ミリほどにスライス。同時に、砂糖や味醂(みりん)、すりおろした生姜などの調味料も混ぜておく。

 熱したフライパンに油をひかないで、小麦粉をまぶした豚肉を先に焼き、火が通ったら玉葱を加えて炒める。

 玉葱が少し透き通ったところで混ぜておいた調味料を絡めながらさらに焼く。

 そんなこんなで時間も経って……。

「ほい、完成」

 テーブルの上を片付けさせ、出来た料理を並べる。

 献立は、キャベツやミニトマトを合わせた豚の生姜焼き、味噌汁、白飯、あと一緒に作っておいた肉じゃがなど。

 おお、と目を輝かせる耶倶矢や、感嘆といった表情の狂三などの食器も並べ、

「んじゃ、いただきます」

 手を合わせ、斉唱。

 そうして、平和に食事が始まった。

 

 その後も、特に問題は起きず、狂三を無理矢理泊めさせて、今は夜。

 それぞれが風呂も終え、客間に狂三用の布団を敷いて、俺は自室にいる。

 耶倶矢と夕弦はもう寝ただろうが、狂三は起きてそうだなあ。

 ……狂三。

 分かっているだけでも一万人以上を殺し、それ以上の人間を喰らい尽くした、『最悪の精霊』。

 のはずだ。

 だが、今日知ったことは、

「……殺した数は数百人、多くても四桁はいかない、か」

 あと、『最悪』ではない、『悪しき』精霊、か。

「……どういうことだ……?」

 原作と違う、その情報。

 それは本来、有り得ない筈の差異。

「……今度、琴里に訊いてみるか」

 呟いて、俺は横になった。

 扉の外の気配に、情報に、あえて気づかない振りをしながら。




 れ、令音さんの口調がわからん……!
 はい、ということで前書きの通り、美九が出てきませんでした。残念。
 前回の後書きでは、あと数話で盛り上がる。はず。とか書きましたが、このままで大丈夫でしょうか。普通に倍以上かかりそうな気がしてきました。

 早くアンコール3が読みたいです。金欠なので、お年玉貰った後でしょうが。

 それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。

 勉強なんてやってられっかーーーー!!!!(現実逃避)
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