新生活が始まりました息吹でございます。
高校時代に比べ次話投稿が早い!うれしい!
単に今は大学が始まったばかりですることも少ないからですけど。これから先も続けられるかは微妙です。
そして乱れに乱れる食生活。高校時代の名残か、起床時間だけは変わらないんですけどねえ。
それでは、どうぞ。
今日は牛肉が安いらしい。
「なら鋤焼きにでもするか……?」
一緒にその他具材も買い物かごに入れつつもう少し店内を物色する。
七海はと言うと、取り敢えず見える範囲にはいない。
少し散策してみるとお菓子類が並んでいるコーナーで商品と睨めっこしている七海の姿があった。
「何してんだ?」
「ああ、耶俱矢や夕弦用にな」
成程。
買い物かごをまるまる一つ埋めそうなまでの物量は二人……と、誰か遊びに来た用か。
「ちょっと油断しててな。普段なら切らすことはないんだが、気が付いたら大分減ってたんだよ」
たはは、と疲れた笑いを零した七海。
七海も確かに嗜好品は割と口にしているのを見掛けるが、餌付けなのかなんなのか、あの双子はさらに頻度が高かったような気もする。
その大半がクラスの誰かからの貰い物だったりするが、そりゃ自分達で持ってくる分もあるだろう。
七海は悪い顔をして見るからに酸っぱそうなお菓子と辛そうなお菓子を籠に入れて立ち上がる。
「悪いな、付き合わせちまって」
「いや、お陰で料理のレパートリーが増えたし、お相子ってことで」
互いにニッと笑うと、それぞれ空いているレジへと別れ、店の外で合流する。
流石に肌寒くなったこの頃、制服だけでは少々心許ないと感じる。そろそろ秋仕様から冬仕様の服へと衣替えするべきかもしれない。
今度の週末にでも引っ張り出してくるかな等と考えつつ、なんとなく二人でぶらぶらと歩く。
「――――さて」
七海が漏らした言葉に、自然と身に力が籠もる。
「何か訊きたいことがあるんだろ? 俺も現状を知りたいし、そこの公園で情報共有といこうか」
◇◆◇◆
現状動きは無し。
十香、四糸乃、殿町、夕弦の四人と会ってみて、違和感は感じなかった。
向こうの動きもないが、こちらもどう動けばいいか分からない。
……驚くほどに情報がない。
七海の方は、どこで七罪がこちらの動向を見張っているか分からないので、無闇に能力を明かすような発言や士道が七海を容疑者から外していると思われないような言動をするためにあまり情報を出すことは控えていた。
しかし必要な情報はそれとなく渡してくれた。
曰く、亜衣麻衣美衣と狂三は、恐らく、ではあるが七罪ではないだろうとのこと。
後日会って話してみる必要はあるだろうが、それだけで気が楽になる。……あまり、女性と会うのにこういうことは言わない方がいいのだろうが。
二人は設置されているベンチへと座り、途中で買った缶コーヒーで冷え気味の手と体を温めながら話していた。
「進展は無し、か……どんな形であれ、何かアクションを起こさないといけないか?」
「もしくは向こうが何か仕掛けてくるのを待つか、だな。
「でもこっちからはどう動けばいいのか分かんないし、そっちの方が確率は高そうなのがなあ……」
最初に写真を七海と一緒に見ている以上、少しは事情を知っているという体でなくてはならない。
逆に言えば、直接的に問題解決に関わるような発言等さえしないならば、ある程度は今回のことについて話しても不思議ではない。
それが七海の見解だった。
令音もそれには賛成なようで、情報こそ命な今回の件については、七海となるべく情報の共有や協力はするべきだと言っていた。
「ああ、そう言えば、俺が俺である確認もしなくちゃな」
「あ、忘れてた。言われてみればそうだな」
「まあ気持ちは分かるさ。無意識にしろ意識的にしろ、俺を容疑者から外している以上そう考えちまう……考えないでいちまう?まあ、そうなるのに理解は示すよ。だが、油断とは言いたくないが、気を付けろよ?」
七海はそれだけ言うと、自分の眼帯に手を掛けた。
「前言った通り、俺の眼の色で判断してくれ。ここでアレをする訳にはいかないし。ここで眼の色がもしバレたとして、既に七罪が誰かに化けているのなら問題はないだろうし」
了解の意を込めて頷くと、七海は近くに人がいないことを――――おそらく視界まで使って――――確認してから眼帯を外した。
その下にあるのは闇と真紅。
普段は前髪を伸ばし、下ろすことで眼帯すら目立たせないようにしているが、一度その奥を見れば誰もがその眼を疑う。
自分の眼も。相手の眼も。
七海の右目は異常である。
周りが黒で中が赤の、よく創作では聞く配色ではあるものの、実際に見ると格好良さよりも不気味さが先立ってしまう眼。
本人は代償だとか証だとか言って詳しくは話そうとしないしあまり気にしていないようだが……、
「もういいだろ? あんまりジロジロ見るのは止してくれ」
「あ、ああ、悪い」
いいよいいよと手を振り、照れくさそうに笑いながら七海は直ぐに眼帯を戻した。
本人としても、やはり堂々と隠さないでいるつもりもないらしい。
「やっぱお前は七海なんだな」
「信じて貰えてなによりだよ」
そこで七海は冷え切ったベンチから立ち上がり、軽く伸びをした。そして空になった缶をゴミ箱へと投擲。
綺麗な放物線を描き、缶はすっぽりとゴミ箱へと吸い込まれて甲高い音を響かせた。
「ナイスショット」
士道の言葉に七海はブイサインを返すと、次は士道だと言外に伝えてきた。
そう挑戦的な目で見られては士道も黙ってはいられない。
一息にほんの少し残っていたコーヒーを飲み干し、勢いをつけて七海と同じように立ち上がった。
軽い準備運動を兼ねて少し伸びをし、投擲の狙いをゴミ箱へと定める。
一呼吸挟んで、
「それ」
士道の手を離れた空き缶は、七海とほぼ同じ軌道を描いき始めた。
しかしそれは最初の方だけで、次第に右へとずれ――――
ゴミ箱の縁に当たり、空き缶はゴミ箱の外へと落ちてしまった。
「……」
「……」
「……ふ」
「ようしもう一度挑戦だな!」
その後通算2投目にして士道は無事目的を達成した。
誰だって、効率より感情を優先しなければならないと思える時があるのだ。
◇◆◇◆
夕飯も終え、多めに買っておいた牛肉の大半が十香の胃へと消え去り、まったりとした時間を過ごす。
本当ならこうやって過ごすのではなく、まだデートをしていない誰かと会わなくてはいけないのだが、今日は七海と同じように士道を誘った人物がもう一人いるのだ。
その人物というのが、
「ふっふっふ! 大口叩いていた割には大したことねーですね!」
「はあ!? まだ残機ある上に通算で見れば私の方が勝率高いじゃない!」
「勝負とは最初の一手で勝敗が決しやがります。この一度の敗北の前ではそれまでの勝負など無意味!」
「なら最初の勝負で私に負けた以上それ以降の勝利なんて貴方には無意味わよねえ!?」
向かって右には赤の龍。
向かって左には青の虎。
有名な多人数向け格ゲーを前に二人は互いを互いに蹴落としあっていた。
そして、
「ん、私の勝ち」
「「あーーー!?」」
一緒に同じゲームで遊び、二人が互いに貶めあっている隙に一人勝ちする万由里の姿。
有り体に言えば。
真那、万由里、琴里の3人と同時にデートしているのである。
内容は内容ではあるが。
心無しドヤ顔の万由里に歯噛みする二人。
「もう一度よ!」
「リベンジでやがります!」
「望むところ」
「次は私もやるぞ!」
「あの、その、私も……」
『ダメだよ四糸乃! もっとぐいぐい行かないと特に琴里ちゃんと真那ちゃんの熱意に流されちゃうよ!』
際限なくヒートアップする琴里と真那とは対照的に涼しげな表情の万由里。
士道は後ろでその三人の様子を見ながらくすりと笑みを溢した。
今繰り広げてられているゲーム対戦というのも、当初の予定では士道と真那と琴里の三人だけだったのである。
七海との買い物から帰宅し、さて夕飯の準備を始めようかという時に五河家へと来訪した真那。
これといった要件は無かったようだが、時間も時間だった上に、真那もあの写真の中にいたので、急遽令音と相談しそのまま夕飯へと誘ったのである。
琴里と一悶着あったものの、それもまた心地よい喧噪だと感じながらの食事を経て、真那が目を付けたのは出しっぱなしになっていたTVゲームであった。夕飯前まで十香や四糸乃が対戦していてそのままであったのだ。
その後の流れは早かった。
十香を筆頭に夕飯前の再戦の流れとなり、真那が琴里を挑発し、琴里が真那を煽り、士道に片付けが済んだ後の合流を取り付けての第何次になるか分からない妹決定戦勃発。
そこにさらに混沌を振り撒いたのが万由里である。
途中で五河家へとやってきた万由里はあれよこれよという間に琴里と真那の妹決定戦に何故か参戦。
そして参戦したその初戦で優勝してしまったのである。
なんでも、
『七海と夕弦に比べたらまだ簡単』
とのこと。
その言葉に士道は、少し前に五河家で開いたゲーム大会にてその二人は決勝を争ったのを思い出した。
成程。その二人と並べるとまだ琴里達は易しい筈だ。勿論、琴里達が弱いということではないのだが。
そこからは互いに負けられない琴里と真那と、意外と負けず嫌いな万由里との激闘が繰り広げられ続けている、ということだ。
一応十香や四糸乃も参戦してはいるが、如何せん力量差があった。
士道はというと飲み物の用意だけしてすっかり観戦モードである。
(見た感じ、三人におかしな所は無いな……令音さんは万由里は可能性が薄いとは言っていたけど)
曰く、万由里は出生が特殊だから、七罪が何かを仕掛けるには多かれ少なかれリスクを伴うだろうとのこと。
その事を七罪が知っているかは定かではないが、仕掛けられたなら仕掛けられたで万由里自身が何かしらの動きを見せる筈だろうとも言っていた。
注意する必要はあるが、七海を除いて最も可能性が低いと思われるのもまた確かだった。
となると真那か琴里であるが……
「ちょっと万由里! 邪魔しないでくれるかしら!?」
「万由里さん! 絶妙なタイミングで真那達を落としにかかるのやめてもらえねーですかね!?」
「ふふ」
この熱意が七罪の演技だとはどうしても思えなかった。
一応十香と四糸乃にも注意を払ってはいるが、この二人は昨日デートしたばかりであるし、その時に違和感は感じなかったから取り敢えず選択肢から外しておこう。
しかし、七罪のしたいことが見えない。
今のところ実害がない以上、士道に嫌がらせをしたいという訳でもないだろう。もしそうならより効果的なやり方がある筈だ。
士道以外の誰かに化けて何かメリットがるか?
正直なところ、動きがないということは、つまり表面上は今まで通りということは何か利益を欲していたという訳でもあるまい。もしその日常の中に欲しているものがあるのなら、わざわざ宣戦布告のような真似事をしなくてもいい筈なのだ。
……やはり、答えが見つからない。
ここは一つ、風呂にでも入って心身ともにスッキリするべきか。
ちらりと時計を確認すると、丁度いい時間であるし。
「大分遅くなってるけど、風呂どうするんだ?」
「今手が離せないから、先に入ってきてもいいわよ」
「そんなに大事な戦いなのか……」
琴里以外の皆は自分の部屋で済ませるだろうし、ならばここはお言葉に甘えるとしよう。
いつの間にか空になってる皆のグラスにジュースを注ぎ、士道はソファから立ち上がった。
そんな悠長にしてる時間がないと知ったのは、明日の朝のことだった。
選択必修科目を受講者調整で二つも落とす。
これが後期も同じような目にあって一年次の選択必須を受講できないとかになったら流石にキレます。私の運の無さに。
ということで七海、真那、万由里のデート回です。デート回と言ったらデート回なんです。
色々とこじつけてデートそのものの内容が殆ど書かれてないのは決して錯覚ではない。
残っているのは狂三かあ……どんな内容にしましょ……。
それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。
七海の立ち位置がめんどくさすぎてむしろ動かしにくい。