デート・ア・ライブ  ~転生者の物語~   作:息吹

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 すごい、もう次話投稿できるなんて。

 生活リズムの乱れに頭を悩ませている振りをしている息吹です。
 本当に生活リズムを気にしてるならこんな時間に投稿しませんよね。

 それはそうと、私の大学ではミールカードというものがあるのですが(無い方は調べてみれば分かるかと)、あれってよくできた制度ですよね。
 だってどう転んでも販売者の方にお金が余分に入るようになっているんですから。

 それではどうぞ。


第78話

 その日の朝はいつも通りであった。

 いつもの様に朝起きて、いつもの様に顔を洗い、着替え、朝食の用意をし、変わらぬ日常の筈であった。

 それが非日常へと変わった切っ掛けは、一本の電話からだった。

 

「士道、電話よ。七海から」

「っとと。七海から? こんな朝早くからどうしたんだろ……」

 

 七罪探しの最中だからか、朝から司令官モードの琴里から携帯電話を受け取り、その相手が本当に七海であることを確認してから電話に出た。

 こんな時間に電話を掛けるということはそれだけの急な用事があるということだろう。急ぎの用でないのならそのうちどうせ会うのだし、なんならもっと前にこの家に来てからでもいいのだ。

 なのに七海は電話を使った。それはつまり、ここに来る時間すら惜しんだということに他ならない。

 

「もしもし?」

『士道だな!?』

「ああ、そうだけど……どうしたんだ?」

 

 ひどく焦った声の七海に少々戸惑う士道。

 士道の言葉に多少落ち着きを取り戻したのか、七海は一つ深呼吸を挟んだようだった。

 

『すう……はあ……、えと、可能性は限りなく低いだろうが一縷の望みを賭けて訊いておく』

「お、おう」

『そっちに夕弦は来てないか?』

「夕弦? いや、来てないけど」

 

 士道のその答えに七海は電話越しに大きく溜息を吐いた。

 

『ああ、そうだろうとは思ったよ。夕弦が耶俱矢を置いて一人で士道の所に行く理由が無いしな』

 

 七海は半ば士道の答えを予想していたようで、その溜息も、落胆というよりは自らの推測通りであったことへのやるせなさのように聞こえた。

 しかし、夕弦がどうかしたのだろうか?

 

「なあ、夕弦がどうか――――」

「シドー!」

 

 その疑問を七海に問い掛けようとしたところで玄関先から聞き慣れた声が届いた。

 隣のマンションの住人、夜刀神十香その人である。

 しかし普段なら空腹によるものなのかもう少し大人しいのだが、今日はやけに焦っているような……?

 それこそ、先の七海の声にも似た。

 

『十香か』

「ああ、悪い、ちょっと様子を見てきてもいいか?」

『いや、一度この電話を切ろう。すぐに俺もそっちに行く。多分、十香も俺と同じ要件だと思うぞ』

「は? それはどういう……」

 

 士道が訊き終える前に電話は切られてしまった。

 釈然としない思いをしていると、激しく狼狽した様子の十香と、先に玄関に十香を迎えに行っていた琴里がリビングへと入ってきた。

 琴里もまた神妙な顔付きをしており、十香の様子も相まって、得体の知れない不安感が士道を襲う。

 直観的に告げている。ああ、これは、

 

「士道、話があるわ」

「……どうしたんだ?」

 

 ごくりと生唾を飲み込んで、ようやく声を絞り出す。

 

「――四糸乃がいなくなったわ」

 

 今この瞬間から、七罪の本物探しは大きく動き出したのだ。

 

 

  

   ◇◆◇◆

 

 

 

 あの後家にやってきた七海と一緒に、近くの公園へと足を運んでいた。

 家にいては誰かに話を聞かれる可能性があったし、自分達も、情報を整理するという建前で、少し落ち着ける時間が欲しかった。

 突然の事態に考えが纏まっていない士道に対し、七海はやけに落ち着いていた。一度二人になろうと言い出したのも七海からであった。

 聞くところによると、夕弦もまた今朝から姿が見えないらしく、家中を隈なく探した上で見つからなかった為に士道へと電話を掛けてきたらしい。

 

「……七海は、この事態を予想していたのか?」

「……予想はしていた。だが、俺が予想していた内容と大分差異が出てる」

「……どうして」

 

 士道はベンチに座って俯いていた顔を上げ、近くでコーヒーを飲んでいた七海の顔を覗き込んだ。

 

「どうして、教えてくれなかったんだ?」

 

 七海にも七海なりの考えがあったことは重々承知している。

 しかし、この事態に陥る可能性があることをあらかじめ言ってもらえれば、何かしら対策が出来たかもしれないのだ。

 七海しか知らないからこそ、そういう情報について七海自身が色々と抱え込みがちなのも分かってはいる。

 それでも、士道達には七海が見ているものが分からなくても、それを一人で抱え込むようなことはしてほしくないのである。

 非難するつもりはない。だが、これを機に自分達にも少しぐらい頼ってほしい。

 

「悪い……要らぬ心配は掛けたくなかったし、下手に教えて変な方向に動くのも避けたかったんだ」

「変な方向?」

「ああ。言ったろ、予想はしてたって。言ってしまえば、まだ予想の範囲内で済んでるってことなんだ。これが予想外の方向に転がってしまったら、それこそ俺もどう動けばいいか分からなくなる」

「あ……」

 

 七海は決して自分達を蔑ろにしている訳ではなかった。

 寧ろ、自分達の負担にならないようにしてくれていたのだ。

 分かっていたことの筈なのに、改めて認識させられる。

 

「だけど、それでも完璧に俺の予想通りだった訳じゃない。俺も俺で動いてみるから、お前はこの後の琴里とのデートのことを考えておくといい」

「これから起こり得ることも予想しているのか?」

「一応、な。だけど今この状況じゃ、あんまり当てにはならなさそうだけど」

 

 はあ、と七海は溜息を吐いた。

 がしがしと頭を掻くその姿は、どこか超然としているように感じた七海も、今この状況にやはり憔悴しているようで。

 当然だ。七海だって夕弦がいなくなって不安や焦りを感じない筈がないのだ。

 

「それと、」

 

 しばらくして七海が口を開いた。

 

「耶俱矢を頼む」

「耶俱矢を?」

「俺からも最大限フォローはするが、あの双子は特別仲が良かったからな。俺じゃどうしても出来ないことがあるかもしれない。だから、士道からもあいつを慰めてやってくれ」

 

 こっちからも、十香達のフォローはしてみるから、と。

 七海はそれだけ言って、すっかり冷えてしまった缶コーヒーを飲み干した。

 

 

    ◇◆◇◆

 

 

 琴里に綺麗に右ストレートを決められた士道は、頬を赤く腫らし、噴き出した鼻血を止めるためにティッシュを鼻に詰めた状態で次のデート場所へと来ていた。

 次の相手は耶俱矢。場所はボウリング場である。

 数時間前の七海との件もあり、若干身構えてしまうが、それを見透かされたのか令音には普段通りやればいいと言われてしまった。

 曰く、変に色々考えるより、自分の信じたことをやるのが最善とのこと。

 

「……士道、なんだ御主、その顔は……」

「いや……ちょっと来がけに辻ボクサーに襲われてな」

「そ、そうか……」

 

 明らかに納得していない顔の耶俱矢だったが、なんとなく事情を察してくれたのか、それ以上追及はしてこなかった。

 

「しかし今朝の一件は驚いたぞ。検査ならば検査と前もって申しておくが筋であろうに」

「悪いな。ちょっと行き違いがあったみたいでさ」

 

 無駄に格好いいポーズを取りながら耶俱矢はフッ、と前髪をかき上げる。

 耶俱矢は七海と令音から、夕弦は検査のために一時的に〈ラタトスク〉本部に行ってもらっている、という説明を受けたらしい。

 なかなか苦しい言い訳であったが……どうやら信じてくれているらしかった。

 

「なんか……思ったより元気そうですね、耶俱矢のやつ」

『……ならばいいのだが』

 

 士道が息を吐きながら言うと、インカムから令音の難しげな声が聞こえてきた。

 

「え?」

 

 士道が訊き返そうとするも、その言葉は耶俱矢の不満そうな声に掻き消された。

 

「おい、聞いておるのか士道。我が言葉を聞き漏らすは瀆神ぞ。そのような不心得者は全身を業火に灼かれ、深淵に堕ちると識れ」

「ああ……悪い悪い。今後気を付けてもらうよう言っておくよ」

「応。そうするがよいぞ。――――確か、帰ってくるのは約一週間程度との話であったな」

「え? あ、あー……本部って話だからな。そんぐらいは……」

 

 一週間。

 七海から聞いていたのであろうその期間は、現状考えられる七罪探しのタイムリミットである。

 七海がどういう意図でその期間を提示したのかは不明だが、少なくとも、それまでに何としてでも七罪を見付け、夕弦を助け出すという思いは間違っていない筈だ。

 無意識に、士道は拳を握った。

 

「……ふーん」

 

 士道の返答に耶俱矢はつまらなさそうに顔を歪めると、小さな声でそう言った。

 だがすぐに咳払いをすると、またもキメ角度で士道に視線を送ってくる。

 

「くく、それはまた随分と悠長なことだ。我が飽かぬよう、精々祈るがよいわ」

「おう……そうだな。出来るだけ早く済ませるようお願いしておくよ」

「うむ、大儀である。――して、士道よ」

 

 耶俱矢は頷くと、その場で華麗にターンをして、ビシッ!と自分の背後のボウリング場を指差した。

 

「突然何かと思えば、我と勝負がしたいというではないか」

「いや、別に勝負がしたい訳じゃ……」

「くく、その度胸は買うが、些か蛮勇が過ぎるのではないか? 我は颶風の御子、八舞耶俱矢! 御主の勝ちの目なぞありはせぬぞ!」

 

 士道が頬を掻きながら言うも、耶俱矢は聞いていないらしかった。またも妙に格好いいポーズを取りながら言ってくる。夕弦相手でなくとも、彼女の勝負好きは健在らしかった。

 まあ、それで夕弦のいない寂しさが少しでも紛れるのなら構うまい。七海にも任せられているし、否、任せられていなくとも、それが彼女のためならば構わない。

 士道は息を吐き、耶俱矢と共にボウリング場へ入っていった。

 そしてカウンターでシューズとボールを借り、指定されたレーンに入っていく。

 さていざゲームを始めようという所で、耶俱矢が利き手に見慣れない道具を装着していることに気付いた。

 視線に気付いたのか、耶俱矢が不敵な笑みを浮かべて、装着している物を見せつけるようなポーズを取る。

 どうやらそれは、よくプロボウラーが利き手に着けている、やたらと格好いいプロテクターであるらしかった。

 

「ほう、これに気付くとは中々の慧眼よの」

 

 ババッ! とまたしても無駄に格好いいポーズを取り、耶俱矢は興奮気味に口を開く。

 

「これこそは伝説の煉獄手甲(フェーゲフォイア・ガントレット)! 神代より言い伝えられしこの神具は、この世の遍く全てを灼き祓う業火を以て、我に勝利をもたらすものである!」

「お、おう……」

 

 正直言っていることの大半はあまり理解できなかったが、並々ならぬ思い入れがあるのだけは伝わった。

 さらに話を聞くところによると、どうやら以前に七海や夕弦の三人で来たことがあるらしく、その時に一目惚れして購入を即断したのだとか。

 厳密には七海が買ってあげたらしいのだが、まあ今は細かいことはいいだろう。

 ちなみに、その時の結果は一度だけミスをした耶俱矢が三位で、パーフェクトゲームをし続けて結局勝敗の付かなかった夕弦と七海が同率一位であったらしい。

 はて、あのプロテクターは勝利をもたらすのではなかったのか。

 

「かかっ。残念よの士道。初めから見えた勝負が、さらなる圧倒的な差を生んでしまって」

 

 耶俱矢はそう言うと、プロテクターを着けた腕を構えてみせた。余程そのプロテクターを自慢したかったのだろうか。

 

「さあ、始めようではないか。特別に先手は譲ってくれる。くく、精々足掻くのだな!」

「言ったな……見てろよ?」

 

 そして士道は、ピンのセットされたレーンへと歩みを進めた。

 

 

 

    ◇◆◇◆

 

 

 

『七海、ちょっといい?』

 

 夜、七海の部屋の扉がコンコン、と控え目にノックされた。

 七海はフラクシナスから送られてきた情報等を整理する為に開いていたパソコンをスリープ状態にし、声を掛けながら扉を開く。

 そこには寝間着姿の耶俱矢が待っていた。

 

「耶俱矢? 別にいいけど――どうしたんだ、こんな時間に」

「ん、ちょっとね」

 

 時刻は日付が変わる三十分程前。

 何か話があるならと、リビングに行くことを提案するが、耶俱矢は首を振ってここでいい、と言った。

 彼の自室にはソファや座布団の類は無いので、ベッドかデスクチェアを選んで腰掛けてもらうしかない。今回、耶俱矢はベッドに腰掛けた。

 七海の方がデスクチェアに座り、耶俱矢を見据える。

 

「あっと……七海もさ、ベッドに座りなよ」

「え? いや、俺はこっちでいいよ」

「いいから!」

「お、おう……?」

 

 妙な気迫に気圧されて七海は耶俱矢と半人分間を開けてベッドに座る。

 七海にとってはベッドにわざわざ移動する理由が分からないのだが、まあデスクチェアに座り続ける意味も無いのも確かではあった。

 

「ちょっと、膝借りるから」

「はい?」

 

 言うや否や、耶俱矢はそのまま横に倒れて、七海の太腿の上に頭を乗せた。

 そしてもぞもぞと動いて収まりの良い体勢になる。七海はくすぐったいのを我慢して不動の状態である。

 所謂膝枕というものだ。

 七海は手持無沙汰であったため、なんとなく手を耶俱矢の頭に乗せて髪を梳いてみる。

 

「…………」

「…………」

 

 しばらく無言が続く。聞こえるのは、髪を梳く時に鳴る微かな音のみ。

 

「……がーっ!」

 

 突然、耶俱矢が叫んだかと思うと、俯せになって七海の体に腕を回してきた。

 そのまま七海が動かない耶俱矢の頭を撫でていると、しばらくして、

 

「……っぅ、ぅぁ……っ」

 

 耶俱矢が、小さな啜り泣きを漏らし始めた。

 

「……っっく、ぅ、ぅ、……っ…………夕弦……、ゆづる……っ」

 

 耶俱矢は気付いているのだ。夕弦が見つかっていないことを。

 心配にならない筈がない。不安にならない筈がない。――――寂しくない、筈がない。

 だが耶俱矢は今日を普段通りに過ごした。皆に心配を掛けまいとしたのかどうなのか、真意は不明だが、彼女は今日一日その寂しさに耐えてみせたのだ。

 七海は、申し訳無さそうに声を掛ける。

 

「悪い。お前に負担を掛けちまって……」

「大丈夫、じゃないけど、大丈夫。このぐらい何ともないし。馬鹿にすんなし」

「……ああ、そうだな」

 

 七海は出掛かった言葉を呑み込む。流石に指摘する空気ではない。

 でも、と耶俱矢は続ける。

 

「……私は、何も知らないままの方がいいんでしょ……なら、信じる。あの時、私達が笑える未来をくれたのは、七海だから……」

「耶俱矢……」

「だから……お願い。夕弦を……夕弦、を――」

「…………」

 

 七海は一度長く息を吐き、任せろ、とでも言うように耶俱矢の頭を優しく撫でた。




 ようやく七罪編も動き始めました。

 どうしても七海側の精霊とのデートの時に原作リークが多くなってしまいがちです。もっとオリジナリティが欲しい。
 目下最大の悩みは美九と狂三とのデート。
 狂三は前回も言いましたが、問題は美九です。
 原作では士道ラブだからこそあんな内容になりますが、この作品においては七海ラブ勢なので、どうしても原作通りにはならないんですよね。
 解決策としては、原作の内容をフラットに改変するか、そもそものデート内容を変えるか。
 選択肢としてだしておきながら実質答えは前者一択という。
 狂三も狂三でどのタイミングで入れるかですね。折紙の分を狂三に回せばいいのかな?

 それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。

 そういえば、いつか言っていた東方ssを書き始めました。詳しくは作者ページみたいなものから飛んでください。
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