デート・ア・ライブ  ~転生者の物語~   作:息吹

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 へっへへー。

 久し振りに一人称書いてたら多分に三人称の影響が出てしまった。
 なまじ東方の方のssも三人称視点のせいか影響が大きいことこの上ありません。書きながら違和感しかありませんでした。
 あえて間が開いたことには触れません。ええ。いつものです。

 それではどうぞー。


第83話

 十月二十九日、日曜日。

 五河家の中は今、騒然としていた。

 

「シドー! おなかがすいたぞ、シドー!」

「あ、あの……しどうさん……」

「ちょっと、まな! それわたしのチュッパチャップスじゃないの!」

「む、これはしつれい。でもひとつぐらいいいじゃねーですか」

「シドー! ごはんがたべたいぞ。シドー!」

「かえしなさいよー!」

「すでにくちにしていやがりますので、かえせませんねー」

「う……っ、うぇぇぇぇぇ……」

『ああっ、ほら、だいじょーぶ、だいじょーぶ』

 

 実質的な家の主、五河士道の周りで騒ぐ少女、もとい幼女達。

 

「ななみ、まだせつめいぶそくよ。そうきゅうなせつめい、さらにこのじたいのかいけつを」

「だーりーん! だーりーん!」

「くく、つかれているようだな。まあしかたあるまい。かようなちいさきもののあいてをしているのではな」

「ぼうぜん。かぐや、それはじぶんにもあてはまるのでは」

「あらあら、うふふ」

「あーっ! くるみ、なにしれっとななみのひざのうえにすわっているのよ!」

「けいかい。ゆだんならないあいてです」

「だーりーん! だーりーん!」

「ななみ。せつめいとかいけつ。はやく」

 

 こっちもこっちでわいのわいのと大騒ぎ。

 計九人に及ぶリトルモンスター達。

 いやまあ、それ自体は別にいいんだ。確かに甲高い声は頭に響くし、各々が好き勝手に暴れまわる所為で収拾はつかないけれど、このくらいの子供なんてそんなもんだろう。

 問題は別の所にある。

 その件の幼女達が皆、見覚えのあるを通り越して生まれ変わりかと思うほどにある少女達と瓜二つという点。

 しかし、そんなことは当たり前だ。だって何しろ、この子鬼達は正真正銘、彼女達本人なのだから。

 

「はっ。これはわたしがだーりんのひざのうえにすわってそのうえにくるみさんがすわれば、ぜんいんがとくするさいぜんさくでは……!?」

「頼むから落ち着いてくれ」

 

 美九や琴里等を除けば、精霊達に過去の姿があったのかは定かではない。能力を使えば何か掴めるかもしれないが、今の所その必要性は感じていない。

 だから、彼女達がこうして幼い姿になってしまったのは、時間遡行のような類ではなく、ある精霊による『変身』能力だ。

 その精霊というのが、

 

「七罪……」

 

 士道がポツリと零す。

 その呟きに意味はないだろうし、小さくてこの騒がしい空間では俺以外の耳にも届いていない。

 数日前に七罪と勝負し、見事勝利を収めた士道だが、その後七罪は行方を眩ました。

 幼い姿になった精霊達を残して。

 結果、その日からずっと、五河家及び俺の家は簡易託児所と化したのだ。

 今こうして集まっているのは、俺の監視と皆の把握がしやすいから。まあその分、騒がしさは数倍になっているが。

 

「……お邪魔するよ」

 

 学級崩壊したクラスの担任のような調子で俺と士道が困り果てていると、不意にリビングの扉が開いた。

 そうして入ってくるのは、目の下の隈と、胸ポケットに収まった縫い跡だらけのクマのぬいぐるみが特徴的な女性、村雨令音。

 

「令音さん!」

「……大変そうだね、シン、ナナ」

 

 そして室内の状況を把握するようにリビングを見渡すと、手始めに琴里から逃げ回る真那の首根っこを掴んで捕まえた。

 

「のぶっ」

 

 珍妙な呻き声を上げると、令音さんは膝をつき、小さくなった真那と目線を合わせた。

 頭に手を置き、諭すように、優しく言い聞かせる。

 

「……真那、人の物を勝手に取ってはいけないよ。君も自分のお菓子を勝手に取られては嫌だろう?」

「む、すみません。すこしちょうしにのりました」

「……よし、では琴里に謝ろう」

 

 あんなに騒がしかったというのに、いとも簡単に大人しくなる二人。真那の方も悪乗りが過ぎたと思っているのか素直に謝罪するし、琴里も負い目を感じているのか自分からも悪かったと言い出す。

 俺や士道は半ば諦めの境地に達していたというのに、見事な手際である。

 そのまま令音さんは次々と騒いでいた皆を宥め、説得し、静かにさせていく。

 その姿はまるで、そう、

 

「……すごいですね、令音さん。まるでお母さんみたいだ」

 

 似たような思考だったのか、殆ど同じ感想を士道が溢す。

 ああ、あの姿を表すのならその言葉が一番適切だとは俺も思うよ。思わず呟いちまったのも頷ける。

 けどなあ、未婚の女性に対して使う言葉では流石に無いと思うぜ。勿論士道に他意なんてないだろうし、純粋に尊敬の意味を込めて言ったんだろうけれど……。つか、令音さんて未婚だよな?なんか結構前にそんな話をした気がする。

 士道も自分の発言があまり褒められたものではないと気付いたのか、慌てたように手を振った。

 

「す、すいません。違うんです。そういう意味じゃなくて……」

「……いや、構わないよ」

 

 いつも通りの寝ぼけ眼の所為で表情は読み取りづらいが、実際令音さんはあまり気にしていないようだった。そもそも気にしているかどうかがどうにも分からないので明確なことは言えないけれども。

 

「そう言えば、令音さん。まだ七罪は見つけれそうにないんですか?」

「ああ。やはり彼女は霊力を隠蔽できるのだろうね。観測機に反応はない。……無論、既に隣界に消失したという可能性もあるがね」

「それならそれでこの状態を俺が解除して終わるんですが……」

 

 俺は既に七罪の霊力に関しては理解している。つまり、創造も消失も反動を考えなければ自由自在だ。

 だからやろうと思えば今すぐにでも耶俱矢や夕弦達の変身を解くことはできることにはできるのだ。

 では何故、今なおこうして彼女達は幼い姿のまま元気にはしゃいでいるのか。

 

「解除しても片っ端から変身させられているし、下手に七罪の霊力を枯渇させてしまって消失でもされてはそれこそ手が出せなくなる。今も現界しているとは限らないが、可能性は潰しておいた方がいい……だっけ」

「そそ。だから解除してわざと霊力を使わせて探知するって方法も取れねえ。長期戦になっちまうなあ」

「……仕方ないだろう。こちらとしても、君に能力は使ってほしくない。これ以上勝手な行動を取られても困る」

 

 俺は今、ちょっとした監視状態にある。

 原因はまあ分かり切っている。誰に相談するでもなく、一切の説明なく七罪と繋がっていたことだ。

 下手に七罪以外の誰か……つまりは士道及び容疑者と協力者に打ち明けることは出来なかったということは理解してもらえたが、だからといって何か変わるわけでもない。

 本来ならば〈フラクシナス〉の特別収監室にて、七罪との騒動が収まるまでは監禁されていてもおかしくはなかった。だが、その騒動の内容が精霊達の幼体化では、俺も手伝わざるを得ない。何より、耶俱矢や夕弦、狂三、美九は俺が居なくては精神的に不安定になると判断された。精神的にも若干影響が出ているみたいだしな。

 だから、すっごく譲歩されて、俺は士道かクルーの誰かと必ず行動すること、という条件の元こうして外出できているという訳だ。

 と言っても、俺が能力を使ったかどうかなんて肉眼だろうかカメラ越しだろうが分からない時は分からないものなので、あまり効果は期待されていないらしい。本当に、変な動きをしないかどうか、程度の監視目的でしかないのだろう。

 基本的には士道か令音さんと一緒に行動。お陰で最近は食事が賑やかなことこの上ない。最近の主な生活圏は五河家である。

 

「それにしても、なんで七罪はこんなことをしたんでしょうね?」

「ん……まあ、色々と理由は想像できるが……」

 

 令音さんは指を一本立てると、

 

「……単なる嫌がらせ、ではないかな」

 

 それを聞いた士道は、言葉に表せないとても微妙そうな表情をしていた。

 

 

 

 

     ◇◆◇◆

 

 

 

 翌日。

 どれほど異常な事態であろうと、それは俺達だけで、世間一般的に見れば日曜日の次の日は月曜日で、つまりは平日な訳で、要は普通に学校がある。

 士道と一緒にさえいれば、学校には行っていいとの許可も貰ってあるが、しばらくはこの騒動に追われ士道共々欠席していた。

 だが、あまり休んでいても不審に思われるかもしれないし、殿町や山吹達三人組の様子も気になる。

 一応メディカルチェックの結果は異状なしとあったけれど、一度くらい実際に見ておきたいという気持ちはある。

 

「―――っつー訳で、今日から学校に顔出しくらいはしてくるよ。昼前には士道と一緒に早退するつもりだが、耶俱矢と夕弦が起きたら説明しといてくれ。まだ寝てるみたいだし」

「りょうかいしましたわ。おまかせくださいまし」

「いってらっしゃい、だーりん!」

 

 くしゃくしゃと二人の頭を撫で、甲高い声を背に学校へと向かう。

 外で待たせてしまった士道に軽く謝罪し、並んで通学路を歩く。

 

「……ふう。悪いな。俺の都合で部屋まで借りて」

「いや、良くも悪くも十香達は小さくなってるし、部屋も一応余ってるから。手伝ってもらって助かっている所もあるし」

「そう言ってもらえるのは有難いが、ここは文句の一つでも言うべきところだぜい?」

 

 お人好しも、過ぎれば悪徳だぜ? まあ俺が人の内面の良し悪しをどうこう言えるような奴ではないことは理解しているさ。

 けれど、俺の監視という名目がある以上俺を自宅に戻すことは難しい。令音さんやクルーだって、四六時中一緒にいる訳にもいかない。それならば、精霊達を一箇所に集めておいた方が何かと対処しやすくもあるのだろうから、俺は暫く五河家でお世話になっている。いくら幼女ばかりとはいえ、あれだけの人数になれば流石に少々狭く感じなくもないが、そもそも皆にくっつかれてろくに動けない俺らにはあまり関係無いようにも思える。それに日中は自分の家に戻っていることもあるし。

 気持ち悪い視線を感じながら、なるべく気にしないよう努める。

 

「そうは言うけどな……一応、七海の言い分も理解はできるんだ。俺だって、同じ状況だったとしたらその手段を取らないとは断言できないし」

「そんなことはないさ。あれは俺みたいな奴じゃないとやらねえだろうよ」

「でも、一番『起こらない方が良い』可能性を考慮しての行動だろ? なら、俺からは強くは言わないって」

 

 まあでも、ちょっとくらい文句は言わせてもらうけどな? と士道はニヤリと笑う。その声色から、本当に怒っている訳ではないと理解できてしまう。

 俺が七罪と接触した主な理由は、俺と言う存在がためだ。

 原作にはいなかった俺と言う存在が今起きている事態にどう作用するか分からなかった。だから、俺が無理矢理原作になるべく近付けた。差異を少なくした。

 幸い原作の記憶はそれなりに残っていたし、皆の行動もそれなりの精度で予測はできた。

 だから、俺がなるべく本来の流れに戻そうとしたのだ。

 七罪との協力関係を築くためにも誰かに相談や連絡はできなかったし、結果として皆を苦しめたこともきちんと理解している。勿論、あの後落ち着いた時に全員に謝罪しに行ったさ。流石に殿町達のような事情を知らない者達には何もできなかったが。

 だから、まあ。皆のためと言えば聞こえはいいが、結局はただの自己満足なだけで。

 ……あまり、庇われるとこちらの立つ瀬もないんだよう。

 

「もうこの話題はいいだろ? 早く学校に行こうぜ」

「……あいよ。そうだな。遅刻する訳にもいかねえ」

 

 その後も、学校早退後の予定や、夕食の献立の相談等、他愛ない雑談をしながら俺達は歩を進めた。

 脅威は刻一刻と、迫っていた。




 東方の方が文字数多めの所為か、こちらを平均文字数に合わせるとすっごく短く感じます。

 とりあえずはここまで。あまり原作の内容書いても冗長になるだけのような気もしたので、恐らくはカットですかね。服解けたりとか、僕だけの動物園とか。
 狂三は狐のような気もするんですが、他真那と万由里は何になるでしょうかね。万由里は獅子とか?
 それと補足説明を。
 十香のような封印された精霊ではなく、八舞姉妹のような封印されていない精霊には七罪の変身能力は効かないのでは? という点について。
 正直変な理由考えるより幼女たまには書きたいから、って言いたいところなんですが、無理矢理理由付けすることにします。
 と言っても大仰なものではなく、普通の精霊にも七罪の能力は効く、というだけです。耐性はあるとは思いますが、別に無効化するほどのものではない、と。
 他にも急なことで反応できなかったとかでもいいんですが、流石に薄いかなと。上のも大概ですが。

 それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。
  
 色々と物足りないけど、なんか疲れた……

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