絶対国防圏…捷二号作戦後に設置された影の艦隊を迎撃するための国防ライン。日本の領土、領海の前線を敷いてつくられた。
二月未明 南西諸島
沖縄本島近海
数多くの海上自衛隊の護衛艦、海軍の駆逐艦が展開している。現在沖縄本島の住民の避難作業が日本国防軍、自衛隊を中心にして行われており、影の艦隊の侵攻を最小限に留めている。
しかし、影の艦隊に対して効果的な装備を積んでいない艦艇は攻撃を加えても撃沈することはできず、せいぜい一時的な損傷を与えることしかできなかった。
イージス艦あたご
CIC(戦闘指揮所)
「敵艦三隻確認。駆逐艦二、巡洋艦一。」
「ハープーン攻撃開始します。」
護衛艦あたごのCICでは戦闘員たちがハープーン対艦ミサイルの発射用意を行っていた。砲雷長が命令をだす。
「警報ブザー鳴らせ!!甲板作業員は遮蔽物へ退避!!」
艦内に警報ブザーが鳴り響く。甲板作業員たちは直ちに艦内へと退避していく。ハープーンミサイルの発射装置が開かれる。
「発射弾数二発。…ハープーン、攻撃始め。撃ちー方ー始めっ!!」
「撃ちー方ー始め!!」
砲雷長の号令に合わせ、砲撃員が発射スイッチを押す。発射装置から煙と炎が吹き上がり、ハープーンが発射される。ハープーンは凄まじい速度で飛び去っていった。
イージス艦こんごう
CIC(戦闘指揮所)
「あたご、ハープーン発射。発射弾数二発確認。」
「こちらも攻撃する。艦娘たちが到着するまではなんとか持ちこたえろ。」
護衛艦こんごうの砲雷長があたごが発射したハープーンをモニター越しに見て、ハープーン攻撃を命令する。
「目標、敵戦艦七十型。発射弾数三発。甲板作業員は退避完了です。」
「警報ブザー鳴らせ!!」
艦内に警報ブザーが鳴り響く。発射装置が開かれ、ハープーンが顔を出す。
「CIC指示の目標。ハープーン攻撃始め。撃ちー方ー始めっ!!」
「撃ちー方ー始め!!」
砲撃員がスイッチを押し、ハープーンが発射される。これにより合計五発のハープーンが発射された。
ハープーンは凄まじい速度であっという間に駆逐十六型後期型、重巡二十一型後期型、戦艦七十型後期型の目前に到達する。戦艦七十型後期型たちは弾幕を張りハープーンを撃ち落とそうとするが、それよりも早くハープーンが銛のように命中した。命中した四隻に爆炎が
上がる。
「弾着確認。敵艦に全弾命中!」
「どうだ?少しは効いたか…」
CICでは砲雷長が食い入るようにモニターを見つめた。しばらくすると、黒煙を上げながらも浮かんでいる影の艦隊の姿が映し出された。
「クソっ!!やはりだめか…。」
ハープーンが直撃してもなお四隻の艦艇は健在だった。これで海上自衛隊はミサイル弾数に余裕がなくなってきた。
すると海軍のイージス駆逐艦”やまと”から無線連絡が届いた。
『こちらやまと艦長。よくやってくれた!呉鎮守府の応援部隊が到着した。貴艦隊このまま戦線を離脱し、沖縄本島の避難活動の護衛をお願いする!』
「そうですか!了解しました!あとは頼みます!」
通信を終えると海上自衛隊の艦隊は転身し、全力で沖縄本島へ向かっていった。
「第七艦隊、南西諸島防衛線沖縄本島近海に到着。指示を乞います!」
第七艦隊の旗艦の出羽が無線を通じて呉鎮守府と連絡をとる。そして無線に提督がでる。
「分かった。このさきに影の艦隊の前衛部隊がいる。まずはそこを叩いてくれ。殲滅し次第撤退してくれ。あとその後方には影の艦隊の大規模機動部隊が展開している。上空にも注意しながら戦闘を行ってくれ。」
「了解!!」
出羽が無線を終えると、十六夜が主砲を掲げる。
「よし、今度こそ全部倒すよ。」
「分かってます。空母がいるなら尚更ね。」
十六夜と大永が口を開く。いつもネガティブだった馬見ヶ崎も
「次は絶対沈まないで勝ってみせます!」
やる気に満ち溢れた表情をしている。それには出羽もホッとしていた。立春も曙も真剣な顔つきになっている。
「さぁ、本当のクソ野郎を沈めにいくわよ。」
「そうですね。いなくなった仲間の分も頑張りましょう!!」
呉鎮守府の最精鋭艦隊、第七艦隊は影の艦隊侵攻大艦隊の前衛部隊へと切り込んでいった。
影の艦隊侵攻大艦隊 主力艦隊中心部
多数の駆逐艦、巡洋艦がいる艦隊中心部には、強大な艤装を携えた”戦艦影姫”、おびただしい数の艦載機を操る”空母影姫”、そして影の艦隊の指揮権を持つ”司令影姫”。その中心に一人の男性がいた。
漆黒の第一種軍装、大将の階級章、血の気のない白い肌…。
影の艦隊を統帥し、日本を亡き国にしようと目論む旧日本海軍の亡き亡霊の軍人、”影浦流星”。
「影浦提督、敵の艦艇郡が撤退し、艦娘が接近してきています。」
影浦は深く被った軍帽を少し上げると、静かに言った。
「敵艦隊に”十六型駆逐艦の一番艦”はいるか?」
影浦のその問いかけに、空母影姫が答える。
「艦載機から確認できました。間違いありません。四年前呉鎮守府正面海域で仕留めそこねたあの艦娘です。」
空母影姫の返信に影浦は軍帽を目の見える高さまで上げ、静かにしかし重々しく命令した。
「生かして捕らえろ。しかし絶対に傷つけるな。」
その頃、はるか前方の十六夜たちは影の艦隊前衛部隊と交戦を開始していた。
「全主砲、撃て〜!!」
出羽が全砲塔から全力射撃する。放たれた砲弾は重巡二十一型後期型にめり込み、爆発する。さらに駆逐十六型後期型、軽巡二十型後期型にも命中する。
「全航空隊、発艦!!」
大永は小銃から弾丸を放ち、攻撃隊を発艦させる。弾丸から姿を変えた彗星艦爆隊は上空から次々と爆弾を投下していく。駆逐十六型後期型が口内の13cm砲、頭部の長10cm高角砲で迎撃するが、頭部に爆弾が命中し爆発を起こして轟沈する。
さらに流星艦攻隊が重巡二十一型後期型の左舷側から雷撃を行う。彗星艦爆に気を取られていた重巡二十一型後期型は雷撃をもろに喰らいそのまま弾薬庫に引火。そのまま爆沈した。
負けじと駆逐十六型後期型三隻が十六夜に同時に襲いかかる。しかし十六夜は十六夜型駆逐艦の高速性能を活かして合間を縫って回避する。駆逐十六型後期型は衝突しあい一瞬隙が生まれる。その隙を逃さず十六夜は駆逐艦としては重武装である15.5cm三連装砲で駆逐十六型後期型の頭部を狙って砲撃する。
早速一隻が頭部が砲弾によって砕けれ沈黙。もう一隻は攻撃に気づくまもなく砲撃を受け撃沈。残った駆逐十六型後期型が魚雷を放つが、十六夜にいともたやすく回避される。十六夜も魚雷を近距離で放つ。駆逐十六型後期型が回避行動すらとれずに魚雷が命中。撃沈された。
「よし!あと何隻いるの…?」
十六夜がふぅ、とため息をつきながら前方へ視界を向ける。まだまだ駆逐艦や巡洋艦が残っている。戦艦や空母がいないだけまだマシなほうだ。
「これ少し時間かかるかも。よし、いくか!!」
十六夜は迫りくる影の艦隊へと飛び込んでいった。
佐世保鎮守府
南西諸島迎撃作戦の前線基地となっている佐世保鎮守府には、多くの艦娘や海上自衛隊防衛艦隊が駐屯していた。
「西沢提督!第一艦隊が帰投しました!損傷多数とのことです!!」
本庁舎の廊下で庄内が駆け足で西沢に報告する。西沢も駆け足で報告を聞きながら返事をする。
「分かった!出撃ゲートで待機している第二艦隊に出撃命令を出して!それから予備ドックを全部開けておいて!応急修理に全力で対応するよ!」
「分かりました!!」
そのまま二人は出撃ゲートに向かい、出撃命令をだす。
「一撃加えたら帰ってきて!!帰りは海上自衛隊と海軍で援護するから!」
「分かりました!それでは第二艦隊出撃します!!」
第二艦隊旗艦の酒田は出撃ゲートから出撃する。それと入れ替わるように第一艦隊がゲートに入ってくる。ほとんど全員がボロボロだ。ここまで艦娘たちを護衛していた海軍のイージス駆逐艦も損傷している。
「艦は応急修理ができ次第再出撃する!急ぐぞ!!」
「はいっ!!」
整備兵長が整備員たちに号令を出し、イージス駆逐艦の修理を開始する。影の艦隊の侵攻が遅れているとはいえ、ゆっくり修理をしている暇はない。整備員たちは手際よく迅速に修理を行っていく。
「大破した艦娘たちを優先的に修理させて!修復材もどんどん使って!!」
ドックに移動した西沢は修理の指示をだす。今が使い時ばかりに修復材をどんどん使用していく。
そこへ庄内が無線機を持って走ってきた。
「西沢提督!!入電です!呉鎮守府の応援艦隊が影の艦隊前衛部隊を殲滅しました!!」
「えっ!?それって本当!?」
西沢がぽかんとした顔で庄内をみる。それに庄内は早口で答えた。
「はい!これにより影の艦隊の侵攻が一時的ですが停止しました!!海軍省からも新兵器が完成したとの情報も入りました!!」
「マジで!?分かった!第二艦隊には近海哨戒に作戦を変更させて。まずはここでしっかり修理をしよ!」
呉鎮守府第七艦隊、特に十六夜の驚異的な活躍により影の艦隊の前衛部隊は壊滅。前衛警戒部隊を失った侵攻艦隊は一時的に撤退し、南西諸島の防衛戦は成功したのであった。しかし影浦は撤退の際に、ボソリとこう呟いていたという。
「必ず奪い戻してやる。”十六夜”」と…。
次回 爆ぜる空 〜呉軍港空襲〜
影浦提督と十六夜…生前影浦は影の艦隊の総旗艦を駆逐艦十六夜にしていた。そのため十六夜に対しては異常なほどの執着心があり、影の艦隊の海没処分作戦、”滅影作戦”(めつえいさくせん)では十六夜と運命を共にして死亡した。