艦これ2 〜蒼い海で〜   作:蒼海 輪斗

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影浦の正体…影浦はかつての旧海軍の×××であり、蒼海輪斗とは遠い××でもある。影の艦隊建造計画を指揮した人物でもあり、×××でkdsnoifw80r34−dmsin
(解読不能)



第六話 絶望への刻限

 許せない。俺はこの国を。この世界を。なぜ人々は争い合う?憎み合う?命を奪い合う?それになんの意味がある?

 …そんなことに意味はない。俺は影の艦隊の総司令官だ。役目を果たすのだ。戦争の種子を叩き潰さねばならない。それが敵対国でも、艦娘たちでも、それがかつての母国でも…

 

 

 

 

 

 影浦は立ち上がり、軍刀を引き抜いた。そして冷たい瞳を見開き、声を上げた。

 

 「全富嶽爆撃隊、突撃開始!!奴らを海の藻屑へと変えろッ!!」

 

 影浦の号令とともに富嶽爆撃隊が一斉に出撃した。爆弾倉内部に影の桜花、影の回天を搭載した影の富嶽は轟音とともに大空へと消えていった。

 

 

 「(俺はもうあの頃には戻れない。親しかった仲間も家族も、俺の艦隊も皆失った。俺に残されたのは、この道だけだ。)」

 

 影浦は瞳を閉じ、軍帽を深々と被った。

 

 

 

 影浦流星。かつて彼は平和を求めていた軍人だった。影の艦隊建造計画が始まった頃も、戦争に対する抑止力だと彼は信じていた。特に十六型駆逐艦一番艦、十六夜には大きな希望を感じた。駆逐艦とは思えない大きな船体。島風に匹敵する速力。重圧な装甲。駆逐艦としては規格外の15.5cm三連装砲。新型の試製六連装酸素魚雷。

 まさに日本海軍の最高技術が集結した傑作艦となった十六夜に、影浦は大きな希望を持っていた。

 

 

 しかし、彼の期待を裏切り太平洋戦争は始まった。

 

 

 

 戦線が南太平洋に伸びるたびに出る沈没と戦死者。影浦の仲間も多くが艦と運命を共にした。本土防衛用だった影の艦隊からも一部艦艇が駆り出されるほど戦局が悪化してきた1945年の4月。

 

 影浦は影の艦隊司令長官として、沖縄特攻に向かう戦艦大和の護衛を十六夜に乗艦して陰ながら行った。この時が十六夜の初陣だった。襲い掛かる敵機を難なくあしらい、米軍を震撼させた。

 これが十六夜にとって、最初で最後の戦闘だった。

 

 

 それから数か月後、日本は無条件降伏をした。影浦は戦争を生き延びたが、多くのものを失い、自身も大きな心の傷を負った。そんな彼にさらなる不幸が降り注いだ。

 

 影の艦隊の海没処分作戦、滅影作戦だ。

 

 当時、米軍とソ連は日本の持つ科学力とその力を用いた艦艇に関心を持っていた。特にソ連は影の艦隊の存在をかぎつけようとしていた。そのため、ソ連に見つかる前に影の艦隊に用いられた技術を隠ぺいするために、海没処分を決定したのだ。

 夜間において強力な力をふるった二十型軽巡洋艦も。巡洋戦艦に匹敵する火力を持った二十一型重巡洋艦も。破格の航空機運用能力を持った十一型航空母艦も。世界最強の大和を超える巨大戦艦、百十型戦艦も。そして、影浦にとって希望そのものだった十六夜も海没処分を言い渡された。

 

 

 全ての艦艇は機密性の高い、鉄底海峡や呉鎮守府沖の海域に沈められた。ついに十六夜の番が迫ってきた。影浦は何としてでも十六型駆逐艦の処分は避けようと、上層部に訴えた。しかし、ソ連の勢力拡大を恐れる政府と軍部はその訴えを跳ね返した。

 

 海没処分の時、影浦は十六夜の艦長室に閉じこもったまま最期の時を待った。放たれた魚雷が命中し、爆炎が十六夜を包み込んだ。そしてその船体を呉鎮守府沖へと影浦とともに姿を消した。

 

 

 「(お前たちはかつて俺から大切な全てを奪った。今度は俺が、何もかも奪ってやる。)」

 

 

 

 

 

 富嶽爆撃隊は爆弾槽を開放し、次々と影の桜花を射出していく。それに対して十六夜たち艦娘は対空砲火で応戦する。影の桜花は凄まじい速度で突っ込んでくる。

 

 「影の桜花接近!短SAM続けて撃て!!一発も当てさせるな!!」

 

 イージス艦隊から次々と艦対空ミサイルが発射されていく。対空ミサイルは影の桜花に命中していき、爆発が巻き起こっていく。

 しかし、防空を掻い潜った一発の影の桜花が遂にイージス艦こんごうに急接近する。CIWSが射撃を開始するが、すでに迎撃不能の距離に達していた。

 

 「総員、衝撃に備えろ!!」

 

 艦長の怒号とほぼ同時に影の桜花はこんごうに直撃した。艦の中央部で大爆発が起きる。

 

 「うわああああああああああああああ!!!!」

 

 乗組員たちの絶叫があたりにこだます。そして黒煙を上げながらこんごうは火災が発生する。

 

 「こんごう被弾!!火災が発生した模様。」

 

 影の桜花の直撃を受けたものの、こんごうは沈没には至らなかった。しかし炎は烈火の如く燃え広がっている。

 

 「まずいな…。そろそろ防空戦闘も限界か…」

 

 やまとの艦橋から元帥は燃えるこんごうと消火活動に当たる乗組員を凝視し、口を開いた。提督もこれには少し焦りを感じ始めた。対空ミサイルやCIWSがあるとはいえ、数で押されると厳しい。すでにこんごうが行動不能状態となっている。

 

 「第三艦隊は戦闘海域から離脱。イージス艦こんごうの護衛及び曳航を指示する!」

 

 提督は無線機を使用し、第二艦隊構成艦隊の第三艦隊旗艦の長門に連絡を入れる。

 

 「了解しました。しかし、戦力の方は…」

 

 長門がそう返事をすると、提督はすぐに答えた。

 

 「大丈夫だ。影浦の潜伏地点まであと少しだ。長門たちはそのままこんごうを護衛し…」

 

 提督が言い終わらないうちに真横で爆発音が響く。やまとのすぐ横を航行していた海軍のイージス駆逐艦「太刀風」が影の桜花の攻撃を受けたのだ。

 

 「太刀風被弾!!艦橋壊滅、指揮機能損失!!」

 

 やまとの艦橋で通信員たちが声を上げる。提督が太刀風をみると艦橋が火の海となっていた。焼ける艦橋から火だるまの乗組員が海へと飛び込む姿が目に入った。

 

 「っ…!!」

 

 さらに今度は後方から爆発音が響いた。海上自衛隊の空母「いずも」が影の桜花を飛行甲板に受けたのだ。甲板には大穴が空き、艦載機の発着艦は不可能となった。

 

 「海自より入電!いずも戦闘続行不能!!」

 

 やまとの艦橋でまたしても戦闘不能艦艇の情報が入ってくる。それと同時に響き渡る爆発音。艦艇が被弾していき、防空能力が減少しているため影の富嶽を迎撃するための火力が不足しているのだ。

 

 「全艦輪形陣に陣地変更!!損傷艦の護衛を優先せよ!!」

 

 元帥が無線機を介して艦隊に命令を出す。すると目の前に火だるまの富嶽がやまとの前方へと墜ちてきた。海面に激突し、水しぶきがやまとに降り注ぐ。破片がやまとの艦橋に勢いよく降り注ぐ。すると、通信員の悲痛な叫び声が聞こえた。

 

 「SPYレーダー機能停止!!対空ミサイル誘導不能!!」

 

 なんとやまとのSPYレーダーが破片により故障したのだ。これでは対空戦闘だけでなく対戦戦闘も不能になる。

 

 「これはまずいぞ…!」

 

 元帥が叫ぶ。そこに栗林が声をかけた。

 

 「元帥!やまとはSPYレーダー故障時の対策として艦内に予備電源があります!それを稼働させれば一時的ですがレーダーを再起動できます!!」

 

 それに提督が返した。

 

 「でもここから予備電源まで遠いぞ!!それにもし起動中に攻撃を受けたら…!」

 

 その時、一人の男性が言い放った。

 

 「私が行きますッ!!」

 

 それは元帥の部下の田中だった。

 

 「田中!?だが…」

 

 「元帥、今は非常事態です。それに私は機械工学も習得済みです。安心してください。」

 

 元帥は一瞬ためらったが、すぐに田中の方を向き力強く言った。

 

 「田中、頼んだぞ。」

 

 田中は敬礼を返し、颯爽と廊下に飛び出していった。

 

 

 

 艦内は大混乱に陥っていた。被弾箇所の応急修理に追われる乗組員たちを通り過ぎながら、火花が散り撒く艦内を走っていき艦底付近の電源室に飛び込む。

 

 「これは…」

 

 なんと電源室には海水が入り込み、浸水が始まっていたのだ。度重なる影の桜花の攻撃により、船体にもダメージが入っていたのだ。

 

 「予備電源は…!」

 

 田中が電気回路の扉を開けると、幸い予備電源は濡れることなく起動可能になっていた。田中が素早く電源装置のレバーを下げ、暗証番号を打ち込む。電源が起動した音が響く。

 

 「予備電源起動確認!SPYレーダーを再起動します‼」

 

 CICではSPYレーダーの再起動が開始された。田中は一安心して息をつきながら廊下に出た。

 

 その時、艦に強い衝撃が加わった。激しい揺れが起きた途端、廊下に出た田中目がけて大量の海水が流れ込んできた。

 

 「!?」

 

 田中はそのまま海水に飲み込まれ、廊下を流れていった。

 

 

 

 「艦底第三区画浸水!!影の回天が命中した模様!!」

 

 「総員、左舷に12t注水!!復元開始!!」

 

 艦橋に様々な怒号が飛び交う。影の富嶽が投下された特攻兵器「影の回天」がやまとの右舷に命中したのだ。艦内にブザーが鳴り響く。電灯は非常用電灯へと切り替えられ、艦内が赤く照らし出される。

 

 「防空戦闘は続行中!前衛艦娘たちに被害殺到中!!」

 

 CICでも各機器から火花が散り、壊滅的な状況に陥っていた。

 

 

 

 それは前線の艦娘たちも同じだった。

 

 旗艦大和は初撃で影の回天の攻撃を受け小破の損傷を受けた。さらに矢矧、蒼永が被弾し中破。さらに機動部隊から出撃していた防空部隊も影の烈風後期型、影の橘花の猛攻により壊滅。三四三空は残弾が尽き、鹿屋へと撤退している。

 ついに影の艦隊本隊と会敵したものの、前列には戦艦、後方には影姫が控えている。激しい砲火の中、一人、また一人が傷ついていく。

 

 「このままだとまずいッ!」

 

 十六夜も対空砲火を構成しながら、襲いかかる駆逐十六型後期型へ15.5cm三連装砲で攻撃を行う。駆逐十六型後期型は頭部を撃ち抜かれて沈んでいく。

 出羽も51cm連装砲を全力斉射する。放たれた砲弾は重巡二十一型後期型に命中。重巡二十一型後期型はそのまま爆沈し、逸れた砲弾が影浦の周りに至近弾として跳弾した。

 

 「影浦提督、ここももうじき危険になります。」

 

 司令影姫が影浦をかばうように前に立って言う。それに影浦は軍刀を握りしめながら返す。

 

 「問題ない。最後はあの提督とやり合うことになるだろう。お前たち影姫も戦闘に参加しろ。これで全て終わらせる。」

 

 影浦の光のない虚ろな目が光る。その目は一体、何を見つめているのか…。

 

 

 

 

 

 前衛戦闘に影姫が参加したことにより、艦娘たちはまさに満身創痍となって戦っていた。恐ろしい対空砲火を行う軽巡影姫。強力な砲撃と雷撃で艦娘たちを蹂躙する重巡影姫。圧倒的な火力で砲撃を行う戦艦影姫。艦娘たちは海面に叩きつけられ、血を流していく。

 

 「はああああああああああ!!!!」

 

 頭から流血しているにも関わらず大和は叫びながら46cm三連装砲を射撃する。砲弾は戦艦影姫に命中。しかし、僅かな損傷を与えただけだった。

 

 「くっ…」

 

 戦艦影姫は重巡影姫とともに射撃を行う。出羽も被弾し、中破の損傷を受ける。大破の艦娘はすでに海面に片足を沈めている者もいる。しかし状況的に助けることはできない。

 

 「くっ…」

 

 十六夜はひたすら駆逐十六型後期型を撃沈していきながら前に進んでいく。この先に影浦がいるはず。しかしそれを影姫たちが阻む。残弾も少なくなり、疲労が目立ってくる。

 

 「…こんなもんか、今の日本は。…もういい、これで終わりだ。」

 

 影浦が勝利を確信した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時、前衛の戦艦影姫が大爆発を起こした。

 

 「ぎゃあああああああああああああああああああああああ!!?」

 

 戦艦影姫の断末魔が響き渡る。さらに続いて戦艦影姫に凄まじい速度で何かが突っ込んでいく。

 

 「!?」

 

 十六夜は何が起きたのか理解できなかった。やまと艦橋の提督と元帥も理由がわからなかった。

 しかし栗林が笑みをこぼしてつぶやいた。

 

 「間に合ったみたいですね。」

 

 その時、上空を凄まじい爆音が通り過ぎていった。提督と元帥が見上げると、それは戦闘攻撃機F/A-18ホーネットだった。しかし日本国防軍の機体ではない。

 

 「あれは、白い星の国籍マーク…。まさか…!」

 

 元帥がそう言ったのと同時に通信員が駆け込んできた。

 

 「元帥!入電です!!『我、アメリカ太平洋艦隊空母ジョージ・ワシントン。これより戦闘に参加する。』とのことです!」

 

 「続いてロシア海軍空母アドミラル・クズネツォフから入電!『影の艦隊は我々に任せろ!』です!」

 

 なんと多国籍軍が集結していたのだ。さらにアメリカ、ロシアのみならず、イギリス、フランス、中国、その他国連構成国が総力を上げて来たのだ。

 

 「Battle ship Iowa, weigh anchor!」

 

 アメリカ海軍所属艦娘、アイオワが多数の海外艦娘を引き連れている。

 

 「まさか、栗林。お前が…」

 

 「はい。間に合って良かったです。」

 

 元帥は驚いていたものの、すぐに笑顔になった。そして提督は全艦隊に指示する。

 

 「さぁ!反撃開始だ!!」

 

 

 

 

 

次回   希望への道筋




多国籍軍…20XX年に深海棲艦出現時に編成された大規模部隊。第二次坊ノ岬沖海戦前は待機状態だったが、栗林の求めに応じて出撃。海外艦娘と空母、イージス艦で構成されている。
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