魔法少女リリカルなのはVivid〜深緑の輝きは癒しと未来を創る光〜   作:グリューン

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この話の主役は、噛ませと言われたあの人が主役です。


番外編D-1 憐れなるイノベイターの再生

 

 

―真っ黒に染まった空間、私はそこにいた。

 

俺は、何の為に生きてきた?

 

俺は、何の為に戦ってきた?

 

俺は、何で…イノベイターになった?

 

こんな結末、こんな死に方、望んじゃいなかった。

 

あんな化物に機体ごと取り込まれ、奴らの叫びに耐えられずに精神が先に死んだ。

 

こんなことになるなら…イノベイターになんてなりたくなかった。

 

……そんなこと考えるとは俺も堕ちたものだ。

 

はは、もう、疲れた…。

 

もう何もかも……

 

 

 

忘れてしまいたい。

 

 

 

だが、何だこの纏わりつく感じは。まるで水の中のよう……。いいさ、もう溺れるだけ……。

 

……誰かが泳いで来ている?女のようだが一体……?

 

その姿をはっきり見る前に私の意識は息苦しさと共に失われていった……。

 

 

.

 

 

はやてside

 

ミッドチルダ 海上

 

それは、アインハルトと出会う1年前のことやった。

 

「よっし、今日はのんびり帰れそうやな、リイン。」

 

「はいです、司令。」

 

その日は海上警備部捜査司令としてLS級艦船『ヴォルフラム』に乗艦してヴァイゼンでの強盗犯の検挙をしてました。

 

でも、犯人がご丁寧に盗んだ札束を逃げ道で落としたお蔭で、思いの他早く捕まえることが出来ました。

 

まあ、リインがチビ呼ばわりされて怒って犯人を氷漬けにしてしまったせいで、捕まえた犯人運ぶのに時間掛けてしまったけど…。

 

でもいつもこんな感じで早く仕事が終わることはないので、ヴァイゼン都市部で買い物しようかなと思っていたら…

 

「!?」

 

突然の悪寒。

 

この魔力は……まさか……

 

嫌な予感が的中し、前方に突然、巨大な戦艦みたいなマシーンが現れた。色は赤味の強い紫で物々しい印象が強い。全体的な形での印象は簡単に言うと、逆さにしたカブトガニが角生やして逆さにして進んでいる名付けて『逆さツノカブトガニ』!

 

「はや…八神司令、センスのないネーミング付けてないで集中してください!」

 

…リインに怒られた。

 

「八神艦長!前方よりアンノウン出現!!大きさは、小型輸送艦クラスです!擬似GN粒子の反応有り!」

 

CICの報告で巨体を|呆然として見ていた意識(ボウゼントイウナノボケ)を戻し、頭の中で目の前の巨体を分析する。大きさはまさに、ヴォルフラムを半分にした大きさ。その図体からオレンジ色の粒子が漏れ出ている。

 

私が感じた直感に間違いが無ければ……

 

「魔力は?」

 

「ダ……SSクラスです……。そして、擬似GNドライヴの反応は、7!」

 

「SSの疑似7つやて!?」

 

CICは真っ青な顔で報告をする。無理も無いか。擬似GNドライヴ7つなんて、一機で一個軍隊に喧嘩を売る気でなければ造れない。

 

案の定、うちのランクに近いレベル。しかも、魔力と擬似GN粒子は反発が起こりやすいのにここまでのランクとなると余程相性が良いと見ていい。そんなものが非殺傷無しで砲撃なんて出そうものなら……このヴォルフラムは障壁も役に立たず塵も残らん。アルカンシェルに迫る威力になるのは想像に難(かた)くない。だからと言って、うちとシャマルとザフィーラと魔導師数人が出ても止められるか怪しい。せめてヴィータかシグナムがいてくれれば打つ手があっただろうけど……。

 

これは、死ぬのを覚悟し、唇を噛んでいたら……

 

「待ってください!魔力反応が段々小さくなっています。いえ、これは……!」

 

見る見るうちに、巨大なカブトガニが透明になっていき、中心からMG-Xの大元となったGN-Xと似た姿へと変わっていく。

 

「まさか、あれ全身装甲やったんか!?」

 

そして、GN-Xと似た姿からピッチリとしたボディスーツを着た白髪の男性が真っ逆様になって海へと落ちていく。

 

「あかん、気絶しとるから早く助けないと溺れ死んでしまう!航空魔導師出撃、私も出る!!」

 

急がな本当に溺れてしまうと思った私は、走って降下口へと向かう。

 

 

.

 

 

その後は、艦体底部のハッチから出て、なんとか海に沈もうとしていた男性を回収、ヴォルフラムの医務室で検査と治療をシャマルたちにやってもらった。

 

私は休暇を返上して半日懸けて一連の出来事を本部に報告。とはいえ検査がどうしても時間が掛かるため、身柄については保留にさせてもらった。なお、男性の所有物らしい赤紫で六角形のデバイスらしきものが発見され、現在ヴォルフラム内でデータを読み込んでいる。あんなでかいものを格納するなんて、何て容量の大きいデバイスや!

 

で今はさっき終わった検査の結果を執務室に来たシャマルの報告を聞いている。

 

「特殊な脳波?」

 

「ええ、それも採取した血液の中にGN粒子の反応があったの。おそらくニールさんが言っていた脳量子波よ。そうなると彼は二ールさんと同じ……」

 

脳量子波は念話とは別で、その能力が使える人だけが相手の思考を読める。JS事件以後に隊長陣がニールさんに悉く戦法を読まれて適わなかった時期があり、その時に知った。

 

「革新者(イノべイター)やな。」

 

革新した二ールさんの魔力は今、Sランクに到達。JS事件直後にはAAAランクだったのだから恐れ入る。

 

「とにかく、目が覚めたらここに来た経緯と処遇を決めないとね。」

 

「せやな。」

 

 

.

 

 

????side

 

「…はっ!?」

 

目を開ければ、白い天井と蛍光灯が目に映った。

 

左右に首を動かせば、ベッドにスライド式のドア、そして窓から見える砂浜と景色だった。

 

「ここは…何処だ?」

 

この景色は、ヨーロッパのイギリスやフランスだろうか?

 

いや、空にはいくつもの衛星や惑星が見えることから別世界、或いは…死後の世界かもしれない。

 

いくら革新者(イノベイター)になったこの身でも死後の世界などがどんな所か分かる訳がないのだ。

 

ましてや別世界、あの化物がいる世界など想像したくもない。

 

……化物?どういう奴なのか、名前、特徴、能力などの情報が何故か頭からすっぽり抜けていた。

 

「気が付いた?」

 

いつの間にか茶髪でセミロングを少し伸ばした女がスライド式のドアから入ってきていた。

 

…何だこの女は。感じられる脳量子波が一般人と同じだが、それとは別に大きな力を感じる。

 

「貴方は?」

 

思考から目の前の女に意識を向ける。

 

「私は八神 はやて、はやてでええよ。」

 

随分穏やかそうだが、狸のように喰えない女だな。だが、私をモルモットのように扱っていた連中より大分信頼出来る。とりあえず、様子見はするか。

 

「デカルト・シャーマン。」

 

私の不遜な態度に、はやては眉を吊り下げる。不信感を抱かれていることは脳量子波で読まなくともすぐに解った。だが、誰かに似ているという声は一体?

 

「…ではデカルトさん、まずは私達の世界について話します。」

 

それでも、説明はちゃんとするようだ。

 

「世界?私のいた世界と違う世界と、いうことですか。」

 

私の質問に頷く八神はやて。

 

「そうなります。では、まずは……。」

 

 

.

 

そこからミッドチルダという世界と時空管理局という組織、更に魔力がエネルギー、魔法がこの世界の文明の中心だということまで説明された。だが、その説明の後の言葉に私は驚かされた。

 

「で、実はデカルトさんがいた世界にGN粒子とGNドライヴが存在していると思うやけど、この世界でも存在しているんよ。」

 

「!?つまり、私がイノベイタ―だということは…!」

 

もしそうなら、ここでもモルモットにされる可能性がある!

 

自然に目に力が入っていく。が当の彼女は手を振って慌てて誤解だとアピールする。

 

「それは知ってるけど、実験体とかそういう風にはせえへん。信じて!!」

 

脳量子波を読むだけでなく彼女の目を見る。

 

嘘は付いてない。それどころか、私をしばらく自宅に迎え入れる、だと?

 

「……信じますが、見ず知らずの男を自分の家に住まわせるとか正気ですか?」

 

と私の言葉に頬を膨らませてそっぽを向く。どうやら、思考を読まれたことが不満だったようだ。

 

「女の子の中を覗き込むなんてセクハラやっ!」

 

「いや、何故そこで『頭の』を付けないのですか。卑猥に聞こえますよ。」

 

「私は彼氏いない歴23年や!そっちこそデカ○ンとか卑猥な名前してからに!!!……あ。」

 

「ふふっ、ははははははははははは!!!」

 

「ぷっ、あははははは!!!」

 

今のやりとりがあまりにも面白く、この女のついイノベイタ―になってから出来なくなっていた心からの笑いをこの時は出来ていた。

 

「でも、良かった。さっきまで何ていうか、睨んでいたけどどこか無気力で人のことを信じてない感じがしていたから。」

 

この女を見て、私に階級待遇をするように言伝してくれたカティ・マネキン准将を思い出す。あの人のお蔭で短いが自由に動くことが出来た。

 

「モルモットにされればそうなるのは当たり前ですよ。軍人でイノベイタ―の方が優れているのに酷い扱いを受け続ければ腐りもします。たとえ世界がそういうものばかりでなくとも、自分がそうなったら嫌気も差します。」

 

だからこそ、敢えてこの女を試す。

 

私の言葉に眉尻が下がるが、すぐに笑顔に直す。

 

「せやな。こっちにも、そういう酷いこともあるな。でも、どんなに優れたって無茶をすれば怪我もする、死にもする。それに、世界が酷いものが多いなら正すことが出来る!デカルトさん、私は信じているんよ。世界には信じられることも守りたいものもあるって。そして、デカルトさんには今その信じられなくなったことをもう一度信じるチャンスを与えられているんや。だから、まずは私と一緒に暮らしてもっと人も世界も信じられるようになろう。その上で、生きよう。」

 

試そうとしたその女の言葉の答えは私の想像の上を越えていた。その言葉には、私が感じられなかった慈愛が込められていた。

 

自然と、涙が頬を伝う。

 

 

.

 

そっぽを向き、涙を拭き取る。流石に年下の女性の胸に飛び込むのは気恥ずかしさと男してのプライドで抑えた。

 

「ふふん、ええ顔が見れた!」

 

歯を見せて意地の悪い笑顔を見せる女。

 

「貴方も性格が悪いですね。」

 

「うーん、チビ狸とか言われることあるからそうかも。」

 

私の仕返しの突っ込みも自分から欠点を言うことでかわされてしまう。どうやら、イノベイタ―になっても口喧嘩で叶わないこともあるようだ。

 

「で、どうや?」

 

そんなのは、既に答えを決めている。

 

「その話、受けさせていただきます。」

 

私の方から手を出すが、何故か手を出さない。

 

「そうと決まったなら、まずは敬語は無し。そんで、私の名前を呼んで。」

 

「ああ、そうで……そうだった。よろしく頼む、はやて。」

 

「よろしく、デカルトさん。」

 

こうして、私はこの世界で生きていくことを決めたのだった。

 

 

 

To be continued...




次回からがまだ続きの出てない完全新作となります。

サイトで先行で公開してますが、あっちも中途半端なのでこちらでの投稿はしばらくお待ちください。
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