魔法少女リリカルなのはVivid〜深緑の輝きは癒しと未来を創る光〜 作:グリューン
タイトル通り、このサイト限定の番外編です。
結構シリアスな話になっています。
ニールside
―それは、ヴィヴィオたちがアインハルトに出会う1年前の夏で起きたこと。
俺は仕事の合間がなかなか取れずヴィヴィオとすれ違いになった時期があった。
「パパの馬鹿あ!!」
今日も家で遊ぶ約束をしていたことを思い出したものの、時既に遅し。家に帰って夕食を食べ終わったところを見計らって謝ったのだが、ずっと我慢していたヴィヴィオも流石に怒りの一言をぶつけて二階へ上がってしまった。
本当なら追い掛けたいところだが、以前も約束して許してもらった経緯があり、流石に通用しないだろうと諦めて追い掛けるのを止めた。
「何やってんだ、俺は。」
「……ニール。」
呆れ交じりに右手で目を覆いながら椅子に凭れ掛かる俺に、食器を洗い終わったなのはがテーブルを挟んで俺と向かい側の椅子に座る。その眼から俺を心配していることが解る。
「ああ、大丈夫だ。」
「嘘、さっきの呟きは聞こえてたからね。」
心配させまいして言った一言が、逆になのはからジト目で見られる羽目になってしまった。
「ははっ、悪い。」
「もう、人の事言えないよ?」
既に6年の付き合い、結婚生活も3年目を迎えているため、なのはも俺の事をすっかり解るようになっていた。
解りすぎて恐い時もあるのは内緒だ。
「それで、さっきのってやっぱりヴィヴィオとの約束が守れないってこと?」
「……ああ。本当ならヴィータに変わってもらえないかと思ったんだが、どうも俺じゃないと駄目みたいなんだ。」
それは、今日の教導中のことだった。イノベイターの能力の一つである脳量子波で偶然、訓練中の女性魔導師の深層意識を拾ってしまった。
俺は人の意識をあまり拾わないように、ケルディムに脳量子波を制限するフィルタープログラムを創ってもらった。だが、ケルディム曰く俺の能力には未知数で安定しない部分も多く、脳量子波が一定時間強くなる時があるそうだ。だから、今回のように何らかの原因で力が発動して、他人の意識を読んでしまう時があるのだ。
その女性魔導師から拾ったのは、ジェイル・スカリエッティへの憎しみの感情だった。ただし、その憎しみは大きく、ナンバーズ、ルーテシア、サーシェス、そして捕まって利用されたヴィヴィオにも向けられていた。
アギト、ゼストに関しては知らないようだ。
「確かに、ニールがどうにかしたい気持ちは解るよ。私が教導しててもどうにかしたい。でも、ヴィヴィオのこともどうにかしないといけないよ?」
以前にもあったため理解は示すものの、母として娘を心配する立場もあって、なのはから厳しい言葉をぶつけられる。……いや、これでも控えた方だな。
だが、今回は何度も約束を破ってしまった経緯があり、さっきの言い訳は弁解にもならない。
それでも……
「ヴィヴィオとの約束は俺だってどうにかしたい。この問題を見逃せば、後にヴィヴィオにも働いているナンバーズ直接影響を与えてしまうんだ。」
正に板挟みな状況に思わず、苦渋を交えた声色で話してしまった。
なのはが気にするのを解っているのに。妊娠が発覚して育児休暇中でどうにもできないのに。
「……ごめんねニール、本当なら変わりに解決してあげたいけど……。」
気にしたなのはの表情は悲しみに沈む。一番なのはにさせたくない表情にさせてしまった。
これじゃあ、甘えているだけじゃねえか!
何て、情けねえ。
「いや、良いんだ。俺も悪かった。だから、今受け持っている隊の教導も明日で最後だし、早く解決するようにする。」
なのはの悲しい顔をどうにかしたい一心で抱き寄せる。甘い匂いが鼻孔をくすぐる。
「うん。」
俺の背中に手を回すなのは。その表情は既に悲しみから悩ましげに変わっていた。
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次の日の夕方、教導と受け持った武装隊への訓練結果の報告が終わり、問題の女性魔導師を探そうと教導官専用の事務室を出たら、その彼女、ミラ・シュトルツが自動ドアの入口で待ち構えていた。
姿は黒いロングヘアーでポニーテール、掛けている眼鏡楕円の縁なしでフレームが赤色で、皺の無い武装隊の青い制服姿だ。顔立ちは美麗で眼つきは鋭い、というより少し眉間に皺が寄っていて近寄りがたい雰囲気を漂わせている。年齢は21だが、眉間の皺のせいで年齢より少し上に見えてしまう。性格は、苗字のシュトルツ(ドイツ語で誇りという意味)とは違い、周りにきつい印象を持たれるぐらいに冷徹。
実は今日、彼女は射撃魔法の訓練中に誤ってフレンドリーファイアをやりかけたことがあった。そのことにすぐ気付いた俺が注意することで事なきを得たが、彼女は何も謝罪をせずに訓練に戻ってしまった。それを見ていた彼女の同僚と言える男の魔導師が「数年前まではあんなに酷い性格じゃなかった。」と終わった後に言われたばかりだ。
「ん、どうした?もう今回の教導について何か質問があるのか?」
時空管理局という名前であっても武装隊は軍と変わらないため、教導官として表に出るときは普段より厳しめな喋り方にしている。理由は、時空管理局は女性も多くいて、緩い雰囲気になりがちなため、その対策として喋り方を変えている。そして、何より……なのはを裏切らないために。
「はい。一つディランディ教導官にお尋ねしたいことがありまして。」
敬礼して返事するミラから決意と憎悪の二つの感情が読み取れる。
「ふむ……長くなりそうなら、場所を変えようか?」
わざと口調を普段通りに変えて気を遣ってみても彼女の様子は変わらない。
「いえ、お構いなく。」
目を瞑り首を振って断る彼女が目を開けると、内に秘めた憎悪を剥き出しにして俺を睨む。
「ディランディ教導官は何故、聖王のクローンを養子に迎え、スカリエッティが造った戦闘機人をかばうのですか!?」
ミラは叫ぶのを押し殺しながら、訴える。
その言葉は脳量子波で拾った通り、JS事件で何かしら被害を被った事から出る憎しみだった。
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「高町教導官も何であんな危険な子どもを養子にしたのか信じられません!」
俺となのはの決断など知らない他人にとってどうでもいいことだ。
[何て事を言うのでしょうか……マスターやなのはの決断をやってはいけなかったかのように……!!]
<落ち着けケルディム、ここで爆発したら何にもならない。>
[解っています。解っていますけど、悔しいです。]
<いいから!!>
[ごめんなさい、一番苦しいのはマスターでした……。]
念話で憤るケルディムを諌める俺だが、俺も今すぐにでも張り倒したい気分だ。
だが、子を持つ親として、ヴィヴィオやなのはに憎しみが向けられない為に、この女性がこれ以上憎しみに囚われないようにする為に我慢する。
復讐をこの世界で完全に決着を着けることが出来た俺にしか出来ないことだ。
心の中で深呼吸をして落ち着かせる。
よし、冷静だ。
「……そこまで言うということは、JS事件の時に何かあったということか?」
「当然です!あの戦いで、私の兄さん、ジーク・シュトルツが殺されたんですから!!」
ここでミラの抱く憎しみの奥底から失った悲しみが湧き出てきた。
……その名前は、はやてがスローネアインを撃墜する時に一緒に戦ったっていうクレメンス隊の隊員か?
「兄さんは、私の目標だったのに……。」
なるほど、あのフレンドリーファイア未遂は目標を見失って自分の殻に閉じこもって、他人を突き放していたから起こった結果で、視野が狭まっていたということか。
この考えに至った俺の頭は完全に冷えていった。
[マスター、確かはやてさんがジークというクレメンス隊の方が疑似太陽炉を1つ破壊してくれなかったらスローネアインを倒せなかったと言ってましたね?]
〈ああ、確かに言ってたな。〉
ケルディムの念話で俺もはやてが過去に話していたことを思い出した。
事件後、はやてはクレメンス隊と親交があった俺に皆の最後を教えてくれた。
皆、疑似太陽炉のビームに怯まずに戦ってくれたこと、特にクレメンス隊長と最後に残ったジークが奮戦したと言っていた。そして、はやてに好きだと告白して散って逝ったことも……。
「兄さんは、私の誇りだったのに……あんな死に方、酷いよ、酷いよ、酷いよお!!」
遂には涙を流しながら叫ぶミラ。
だが、この一言でミラの憎しみとジークの望みが合致してないことが解った。
俺が兄なら、今の彼女を見て悲しむだろう、前を向いて生きて欲しいと願うだろう。
ならば、言うべきことは決まった。
「ミラ・シュトルツ、俺がジーク・シュトルツだったら今のお前を見て悲しむだろう。」
「貴方に何が解るのよ!!家族を失った悲しみを、」
案の定罵倒されるが、そんなのは関係ない。
「解るさ!……俺にも妹がいたんだからな。」
「!?」
「俺の妹は両親と一緒にテロ組織の自爆テロに巻き込まれて死んだ。」
思い出したいとは思わないが、思い出さないと救えない。
「え……?」
「何で妹が、両親が先に死んじまうんだって思った。理不尽だって思った。そんな世界が、テロが憎かった時もあった。世界を変えようと戦ったりもした。けど、失った悲しみを復讐で消すことなんて出来ないんだ!」
それは紛れもない俺の本心、俺が味わった苦しみ、俺が感じた怒り。
「そんな俺が死にそうになったことがあった。そこで思ったのは仲間と生き残った弟の未来だった。」
「…………。」
ミラはいつの間にか黙って聴き入っている。
「俺が入っていた機動六課の部隊長、八神 はやて二佐がジークと共に戦ったことを聞いたんだが、彼は命を賭けて自分より強い相手に致命的なダメージを与えた。……自分が好きな女を守り、お前を守り、管理局が勝てるようにする為に。」
「まさか兄さんは八神二佐を……。」
ミラの問いに首肯で返す。
「告白された八神二佐は普段表には出さなかったが、話をした時に泣きながら言ったんだ。『せめて、自分を好きになったジークさんのためにも胸張って生きよう。』と。
だから、ジークもきっとミラに憎しみに囚われず、前を向いて生きて欲しいと望んでいるはずだ。」
我ながら感情的になりすぎたかと反省したが、ミラは立ったまま下を向いている。
「でも、この憎しみは忘れられません……。」
弱弱しく呟くミラの頭に手を乗せて撫でる。少しでも癒されれば……。
「忘れろとは言わない。時間を掛けて折り合いを着ければ良いんだ。俺たちは、生きているんだからな。」
「……うあっ、うああっ、うああああああああああああああああああああああああああああああ……兄さん、兄さああああああああああああああん!!」
抱え込んでいた苦しみを吐き出すように、ミラは俺に抱きついて声を押し殺しながら兄を想い、泣き続けた。
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二日後 AM 7:00
教導が無く昨日と今日で休みだったのだが、生憎昨日はヴィヴィオの方が授業でいなかった。更に寂しいことに、今日まで口を聞いてくれない。
だが、今日は祝日。俺もヴィヴィオも休み、誘うチャンスだ。因みに、俺の姿はフォレストグリーンの半袖のメッシュのTシャツ、茶色でボアの入ったベスト、茶色の皮手袋、青のジーンズと武力介入時に着ていた服装に近い出で立ちだ。
「ヴィヴィオ、おはよう。俺、今日休み取れたから一緒に遊びに行かないか?」
ヴィヴィオの部屋の前でノックがてら誘いを掛けるが、反応が返って来ない。
「ヴィヴィオ、俺が悪かった。ヴィヴィオのことを大事に思っていても、努力が足らなかったって反省している。だから、期限を直してくれ!」
情けないことだと自分では分かっているけど、ここでちゃんと謝らないといけない。でないと、いつまで経っても戻らない。
「……じゃあパパ、今欲しいぬいぐるみあるんだけど買ってくれる?」
ドア越しにヴィヴィオから返答が来る。
正直、安いのはともかく、高いのとなると節約しなくてはならない。が、そんな選択肢は今の俺にない。
「分かった。だから、出てきてくれ。」
ああ、今の俺の状態を袋小路と言うんだろうな。
「わ~い、ありがとうパパ!」
部屋のドアが開き、ヴィヴィオが薄いピンクのワンピースの姿で出てきた。……最初から出掛けるつもりだったのか。ヴィヴィオ、上手いところで甘えてきたな。
「ははは、準備出来たことだし行くか。」
「は~い!」
「行くのは良いけど、まずはご飯だよ~?」
「「おう!(は~い!)」」
因みに、この後財布がピンチになるぐらいに色々とヴィヴィオが買いたかったものを買った……。
俺だけしばらく節約生活だったのは言うまでもない。
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はやてside
残暑残る夏の終わり頃の夕方、ジークさんの妹のミラさんが家まで訪ねて来ました。
事前にニールさんから話を聞いていたので、おもてなしの準備は済ませていました。残念ながらザフィーラ含め全員遅くなるということでいないけど。
ミラさんは、お兄さんが好きだった女性がどんな人か一度会ってみたかったということで訪ねてきたようです。
その後すぐに美人だと言われてかなり照れていたのは内緒です。
でもミラさんは、ニールさんから聞いていた彼女の人物像とは違い、女の私でも見惚れるぐらい微笑むと絵になるぐらいの美人さんです。
夕食を食べながらジークさんのことについて話を交える私。
子供の頃やんちゃだけど正義感溢れる男の子だったこと、クレメンスさんに挑んで負けたこと、でもそこから管理局に入る切っ掛けになったこと、そんなジークさんの姿を見て憧れを抱いてミラさんも管理局に入った事と話は尽きませんでした。
でも夕食を食べ終わった頃になって、ミラさんがニールさんに言われたことを聞いて目頭が熱くなってしまいました。だってそれは、ニールさんが実際経験して、サーシェスに決着を着けて得た答えなのだから。
ニールさん、やっぱりお話するのは大事やね。
そしてジークさん、私は前を向いて生きてます。貴方が愛してくれた女だって誇って生きていきます。
空で、見ててください。
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前作見た人は知っていると思いますが、スローネアインに大きなダメージを与えたオリキャラのジークです。年齢は、24歳です。フルネームはジーク・シュトルツです。
何でこれを書いたかというと、マブラヴやエクシリア2をやっていてシリアスな話を書きたくなったことが一番の理由です。
まあ、その二つのゲームをやっていてシリアスな話書きたいと溜めこんでしまったせいと、仕事で疲れてすぐ寝てしまうことがあったため更新が遅れてしまった訳です。
しかし、どっちのゲームも感動しました。ルドガー幸薄すぎ!ミュゼがビッチ可愛い!ミラは違う可愛さもあってどっちも良い!
マブラヴは現在オルタネイティヴをやってます。好きな女の子は冥夜、彩峰、純夏、真那さん、晴子です。本当は悠陽殿下入れたいけどオルタをまだクリアしてないので入れません。
(追記)言い忘れてましたが、今回のテーマはタイトル通り「親としての責任」ですが、「憎しみを子どもに向けさせても受け継がせてもいけない」というのが責任の中身としてのテーマです。
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