魔法少女リリカルなのはVivid〜深緑の輝きは癒しと未来を創る光〜 作:グリューン
―ニールside
それは、ヴィヴィオの学校が新学期、つまりはアインハルトとの出会いのすぐ前の話だ。
いつものように夕方に仕事を終わらせ、妊娠中のなのはと毎日ストライクアーツの練習に励んでいるヴィヴィオと夕食を食べ、風呂に入って寝た時のことだった。
ベッドに入り眠りに就いたら次の瞬間、成長した刹那がトレミーのメディカルルームで昏睡状態で寝台に寝かされているのが見えた。
メディカルルームを覗ける窓には成長しショートヘアになったフェルトが心配そうに見つめている。
状況がよく分からないが、少なくともここまで苦しむ刹那の姿を俺は見たことがなかった。
これでは埒が明かないため、普段は使わない脳量子波で刹那の意識を、何故苦しんでいるのかを探ってみる。
刹那の意識に渦巻いているのは、
KPSAに洗脳されていたとはいえ両親を撃ち殺してしまったことへの罪の意識
銃を持ちながらアイルランドの自爆テロで家族を亡くして泣き叫ぶ俺から目をそらす幼い頃の刹那…ソラン・イブラヒム
撃ち貫かれ血の海に沈む刹那と同じ少年兵
道を示すかのように立つマスード・ラフマディー
叫び嘆く武力介入時の刹那
その先にはなのはたちに出会う前の、散ろうとしていた俺
サイボーグ化した右半身が吹き飛ばされて事切れたリヒティ
そのリヒティを背中に大きな破片を指されながら抱えるクリス
俺たちに手を伸ばそうとして届かない刹那の掌は血に染まっていた。
これだけで、刹那がどれだけ苦しんできたのかがよく解る。
そんな刹那に大丈夫か、お前は悪くない、気にするなと声を掛けたくなるが、そんなものが届くはずないし、そんな言葉を求めているはずがない。
だけど、いつまでも苦しんでいても仕方ない。過去は変えられない、でも未来をより良き方向へ持っていくことが出来る。今お前がどんな状況に陥っているのか、どうして倒れているのかは分からない。
だからこそ、俺が出来る精一杯でお前に今一度この言葉を送る。
「言ったはずだぜ刹那
お前は変わるんだ
変われなかった俺の変わりに。」
その世界ではという言葉は省いた。何故なら、その世界では俺は既にいない人物だからだ。
過去の苦しみを今こそ越えて、自分が成すべきことを成し遂げるんだ!!
ふと目が覚める。
日差しが弱い辺り、まだ早朝のようだ。
体を起こし、目に違和感を覚えて手で触れてみると、何故か涙が流れていた。
「ふああ……どうしたの、二ール。」
体を起こしたことで起きてしまったのか、なのはが眠そうに目を擦りながら真上を向いていた顔をこっちに向けてきた。
涙はそんなに出ていなかったため、パジャマの袖で拭って涙が流れていたことを誤魔化す。
「いや、昔の仲間が夢に出てきてな……。」
どちらかというと刹那の夢に入り込んだ(・・・・・・・・・・)というべきだが、ややこしくなるため、言わない。
「それって、刹那っていう男の子?」
……俺の奥さんはどれだけ勘がいいんだ。
もう革新しているんじゃないのかと思うぐらいの鋭さだ。
「ああ、あいつは……。」
「よく突っ込んでは俺がフォローに回って苦労した、でも誰よりも自分のやることを決めていて、がむしゃらにやり通す、でしょ?」
説明しようとしたところで遮られた……。
「何で解ったって顔しているけど、もう2回も同じ話を聞いているんだよ?」
2回話しただけで解ることでもないだろうと突っ込みたくなるが、なのはは理解するのが早いのは今更なので言わない。
「全く、こういうところは最近敵わなくなってきてまいるぜ。」
あまりにどうしようもないので、両手の掌を上に降参の意思を見せる。
「ふふ、やられっぱなしじゃないもん。」
いたずらした時のように舌をチロッと小さく出すなのは。
「分かったから、もう一度寝ようぜ。」
「それなら遠慮なく、お休み……二ール……。」
瞼を閉じて再び眠るなのは。
「お休み、なのは。」
俺も起きていても仕方ないので眠気に身を委ねる。
刹那、お前は生きる意味は見つけられたか?
俺は見つけたぜ。新しい家族と満足するまで幸せでいること、そして幸せにすることだ。
お前にも見つかっているといいな…。
苦しんだ分、お前にもなきゃおかしいってもんだ。
なあ、刹那……。
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刹那side
眠っていたのか、何故かロックオン、二ール・ディランディが金色に輝かせた瞳で俺を見ていた夢を見た。
それは、脳に損傷を受けて昏睡状態だった時もそうだった。何故か生前の、それも右目の眼帯を付けてない状態だったのだ。
とはいえそれは飽くまで夢であり、現実ではない。ロックオン、ニール・ディランディは死んだのだ……。
俺は、クアンタでの対話によりELSの母星で対話をすることになった。今は量子ジャンプを使って移動している。
おそらく途方もなく長い旅になるだろう。20年かもしれないし、50年かもしれない。下手すれば100年かもしれない、そこまで長い旅だ。
しばらくやることがないため、俺は一緒について来たティエリアに話し掛けてみる。
「ティエリア、少し昔の話をしてみよう。」
だが、ティエリアの反応がない。
ターミナルユニットにも反応がなく、ヴェーダも反応しない。
だから、まだそこまで離れてないだろうヴェーダにターミナルユニットを介してアクセス、ティエリアがいるかどうかを確かめてみることにした。
ヴェーダの生体端末であるイノベイドではなく、元々人間である俺にアクセス出来るか不安だったが、どうにかなったようだ。
[ん?君は刹那・F・セイエイか。成る程、君のイノベイターとしての力を使って、ヴェーダのターミナルユニットからこのヴェーダ本体へアクセスしたのか。やはり、人類最初のイノベイターだけのことはある。]
だが繋がったものの、出てきたのはティエリアに似たイノベイドだった。
ティエリアと同じでフォロスクリーンで出てくる。
「お前は一体誰だ?」
[そうか、君とは初対面だったね。僕の名前はリジェネ・レジェッタだ。]
「レジェネ・リジェッタか。」
[リジェネ・レジェッタだ。]
普段人を名前を間違えないのだが、何故間違えたのだろうか?
「そうか、間違えてすまない。」
気にしても仕方ないので謝る。
[いいよ、気にしてない。ところでティエリアがいないようだね。君と共に対話を成功させてみせると意気込んでいたけど、クアンタの中にはいないようだね。]
「その分ではヴェーダ本体にもいないようだな。」
[ああ、僕にとってティエリアは双子の兄弟のようなもの。戻っていればすぐに気付く。]
ティエリアはこういう時いなくなるならいなくなるで必ず報告する、そういう奴だ。
だが、今回は突然いなくなったため、不自然だ。
それに、ELSとの対話の際にはティエリアがいなくてはならない。
ヴェーダを使っての情報制御は俺一人では出来ない。ティエリアの助力なくして対話へ持っていけない。
となれば……
「そうか。なら、対話の前にティエリアを探さなくてはいけない。」
[対話は終わった訳じゃないのかい?]
そうか、ELSの母星へ行くのは知らないのだったな。
「まだ終わってない。むしろ、始まったばかりだ。今はその旅に出たばかりだ。」
[分かった、つまりは今の君とティエリアは先駆者(トレイルブレイザー)という訳だ。]
上手い表現だ。確かに、今俺は誰よりも先にこの未開の宇宙を駆け抜けている。
世界は、互いに分かり合えると信じていれば、こんなにも簡単だということを示すために。
「そうかもしれないな。だがまずはティエリアを見つけないと。」
[そうだね。僕も君に付いて行けたらよかったんだけど、僕にはヴェーダを内部から管理する役目があるから無理なんだ。……ティエリアを頼むよ。]
そう言い残して、リジェネは姿を消した。ヴェーダへ戻ったのだろう。
この男もティエリアを心配しているようだ。声色もそうだが、表情でそういうのが分かる。
広大な宇宙、どこにいるのかは分からないが少しでも脳量子波を感知したら真っ先にその方向へ移動しよう。
こうして生きる意味を持てたのはマリナにロックオン二人、アレルヤにティエリア、トレミーのクルー、のお蔭だ。だから、助けるのが仲間としてやること、やりたいことだ。
そうして俺は対話の前にティエリアを探す旅に出た。
その旅がまさか思わぬ再会と出逢いになるとはこの時、想像することが出来なかった――――――――――――
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