クトゥルフ神話TRPGリプレイ風小説   作:水無月家

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『果てにて』 ~キャラメイク~

 十二月のとある日、ネットの片隅に三名のTRPG好きが集まっていた。

 ベテランKP(キーパー。ゲームの進行役)さんと初心者二名のオンラインセッションである。

 

 

KP「今回は初心者さん二名ということで、低ロストの簡単なシナリオをやっていこうと思います。それでは自己紹介をどうぞ」

 

プレイヤーA「初心者Aです。ソード・ワールドのリプレイ集を読んだり、配信サイトでクトゥルフの動画を見たりしたことがあるけど実際にプレイするのは初めてです。ついにTRPG初参加なのでがんばろうと思います」

 

プレイヤーB「初心者Bです。友人に誘われて何回かクトゥルフはプレイしたことがありますが、そんなに経験はないのでお手柔らかにお願いします」

 

 

 今回のセッションはベテランKPさんによる初心者Aを優しくTRPG沼に落とそうという策略である。

 ※ただしAは自分から全速力で沼に飛び込んでいくものとする。

 

 

KP「Aさんはクトゥルフ神話TRPGをプレイするのが初めてなので、まず簡単に説明しますね」

 

KP「“クトゥルフ神話TRPG”とは『探索者(プレイヤーキャラ)』と呼ばれる一般人が、クトゥルフ神話の神秘と恐怖の世界に放り込まれ、必死に脅威に立ち向かっていくTRPGです。

 

 探索者の目的は異変の解決、あるいは元の日常への回帰ですが、一般人の貴方たちがクトゥルフ神話の『神話生物』とまともに戦えるはずがありません。

 シナリオ探索を通して謎を解明し、なるべく戦闘を回避しながらシナリオのクリアを目指すというのが基本的なシステムになります。

 

 神話生物との直接戦闘を選んだ場合、ほとんどの場合は探索者の死という結末を迎えるでしょう。

 また、シナリオの謎を解き明かすことが出来なかった場合も、多くの場合はバッドエンドを迎えます。探索者に不幸が降りかかったり、そのまま全滅したり、よくない結果が起こるでしょう。

 

 グッドエンディングを迎えられるかどうかは全て貴方たちの手に委ねられているのです」

 

A「人間は、弱い……」

 

KP「そうです。神話生物と比べると、人間はあまりに弱い。簡単に死んだり発狂するので慎重にプレイすることをお勧めします」

 

KP「ただ、これはゲームです。必ずしもグッドエンディングを迎えないといけないというわけでもありません」

 

KP「プレイヤーの皆さんとKPの私が一緒に遊んで、楽しい時間を過ごすことが最大の目的です」

 

 

 プレイの結果、探索者が全滅したとしても参加者が『今回のセッション面白かったー!』と言えばそれで成功。

 参加者全員で楽しくゲームを遊べるように協力していこう。

 その気持ちがTRPGを遊ぶ上で大事なのだ。

 

 

KP「それでは皆さんの分身となる探索者を作っていきますが、どんなキャラを作るか考えてきました?」

 

A「はい! 私のキャラは自称10歳の女の子です。神社に一人暮らししている巫女さんです」

 

KP「自称10歳なのに神社で一人暮らし……。わかりました。オーケーです」

 

 

 ※探索者は基本的に15歳以上というルールがあるが、KPの判断で自由に変更できる。

 

 

B「こっちは31歳の男、刑事をしています。相方もいるけど今回は連れて来ていません」

 

KP「はい、わかりました。ではお二人の考えたキャラに合わせてキャラメイクをしていきましょう」

 

 

 ネットを開き、クトゥルフ神話TRPGのキャラを作れるサイトに誘導する。

 6版(クラシック版・旧版)と7版(新版)があるが、今回作成するのは6版のキャラだ。

 

 

KP「名前や職業の欄を埋めたら、すぐ下の能力値の欄を見てください。

 STRとかCONとか書いてありますね。これが探索者の能力になります。ダイスを振って数値を決めますが、その前に能力値について説明しますね」

 

 

 探索者の基本能力値は8つ。基本は3D6を振って各能力を決定する。数値が大きい方が能力が高い。

 

 

①STR(筋力)

 筋力の強さを表す。物を持ち上げたりしがみつく時にも使用する。

 

KP「STRは筋力に関わる判定の他に、近接攻撃のダメージボーナスにも関係します」

 

B「警察官だしSTRは高めにしたいな」

 

 

②CON(体力)

 健康状態やバイタリティ、毒などへの抵抗、根性や我慢強さも表す。

 

KP「このCONはHPの数値にも関わってきます。あとは持久力などもCONで判定しますよ」

 

A「HPに直結するなら私もBさんもCONが高めの方が良さそうですね」

 

 

③POW(パワー、精神力)

 精神力、意志の強さ。クトゥルフ神話TRPGで重要な正気度(SAN値)にも直結する。また魔術への適性や抵抗力も含む。

 

KP「これが低いと意思が弱く、SAN値が減りやすくなります」

 

A「巫女さんだし高めにしたいなぁ。いつか魔術を使ってみたい」

 

 

④DEX(敏捷性)

 探索者がどのくらい敏捷に動けるか。または肉体をコントロール出来るか。手先の器用さも含む。

 

KP「これは普段の判定の他に、戦闘時の行動順にも関係します。DEXが高いキャラクターから行動可能です」

 

B「RPGによっては敏捷性はAGIにして、器用さをDEXにしているものとかありますよね」

 

KP「クトゥルフ神話TRPGの場合は両方含めてDEXの数値になります」

 

 

⑤APP(外見)

 第一印象、魅力的かどうか。高ければ好印象を、低ければ悪印象を与えやすい。

 

KP「外見とありますが単に美醜という意味ではありません。顔は普通だけど雰囲気イケメンなのでAPPが高いとか、顔はいいのに不潔だからAPPが低いという理由付けも可能です」

 

A「美少女にしたいからAPP18ほしいなー」

 

KP「あ、APPですが有名なニャル様の人間体は基本的にAPP18になります」

 

A「……17狙いにしておきます」

 

 ※ニャル様:ニャルラトホテプ。有名なニャル子さんのあれ。つまり邪神。

 

 

⑥SIZ(体格) ※2d+6で判定

 サイズ。体の大きさ、重さ。背の高さや体重の重さを表すが、筋骨隆々、ヒョロガリ、肥満などは各自で判断する。

 

KP「このSIZとSTR・CONの数値によって近接でのダメージボーナスやHPが決定します」

 

B「警察官なら当然体格は良くしたいな」

 

A「私は小さな女の子だから低めだね」

 

 

⑦INT(知性) ※2d+6で判定

 考察力や学習能力、想像力、分析能力など総合的な頭の良さ。⑧EDU(教育)と混同しがち。

 『興味ポイント』という技能ポイントがINT×10もらえる。

 

KP「INTは知的な行動やアイデア(閃き)ロールに関係します。あと興味ポイントという技能取得にも関係します」

 

A「技能たくさん取りたいから高めを狙おうかなー」

 

 

⑧EDU(教育) ※3d6+3で判定

 探索者がどのくらい教育を受けているか、どのような知識を持っているか。学習や経験で身に着けたもの。⑦INT(知性)と混同されがち。

 『職業ポイント』という技能ポイントがEDU×20もらえる。

 

KP「このEDUの値が高いと職業技能をたくさん覚えることができますよ。知識ロールでも使用します。それと、EDUと年齢を関係付けするルールもありますが、この卓では採用しません」

 

A「つまり自称10歳でも高EDUが可能!」

 

KP「自称なので問題ないですね(笑)」

 

 

⑨その他

 ①~⑧の能力値によって自動的に決定する。

 HP、MP、SAN(正気度)、IDE(アイデア)、幸運、知識など。

 

KP「このサイトだと⑨は自動で計算してくれるので、①~⑧だけダイスを振りましょう」

 

A・B「わかりました」

 

 

⑩技能

 探索者の職業によって決定する『職業ポイント』の技能と、自由に技能を取得できる『興味ポイント』の技能を選択する。

 

KP「技能は高いほどいいです。1D100で技能判定を行い、技能の数値以下だと成功になります」

 

KP「だから技能100だと絶対成功になるんですが、今回は各技能80以下で作成をお願いします」

 

 技能をどこまで取れるかはKPによって変わる。今回は最高80までという指定が入った。

 

B「職業ポイントってどの技能に振ればいいんですか?」

 

KP「お二人の職業はそれぞれ『巫女(宗教家)』と『刑事(警察官)』ですね」

 

 

・宗教家:職業技能:オカルト、聞き耳、経理、心理学、説得、図書館、歴史

 +次の技能から1つ選択:言いくるめ、信用、ほかの言語(漢文、ラテン語など)

 

・警察官:職業技能:言いくるめ、聞き耳、心理学、説得、追跡、法律、目星

 +次の技能から1つ選択:運転(自動車、二輪車)、信用、組みつき、武道(柔道)、日本刀、拳銃、杖

 

 

KP「各職業ごとに『指定技能7種』+『選択技能1種』の8種類の技能があります。職業ポイントはこの技能に使ってください。Bさんは警察官なので選択技能は【拳銃】がおすすめです。強いですよ」

 

B「なるほど。確かに警察官なら拳銃持っていても不思議じゃないですよね」

 

KP「残りの興味ポイントは指定がないので好きな技能を取ってください」

 

A「この『クトゥルフ神話』技能とは……」

 

KP「すみません、それ以外でお願いします!」

 

A「了解です!」

 

 

 KPさんの丁寧な説明で各ステータスを理解し、AとBがそれぞれのイメージにあったキャラを作ろうとする。

 

 

KP「『ランダム』のボタンを押すと①~⑧まで全部振ってくれます。振り直しは何回でもやっていいです。ただ、全能力15以上の万能キャラとかは作らないでほしいです」

 

A「わかりました。今回のシナリオに推奨技能はありますか?」

 

KP「推奨技能はないので好きな技能を取って貰って大丈夫です。あえていうなら戦闘技能かな?」

 

A「なるほど。じゃあ好きに取ってみます。うーん、APP(外見)を高くしたいけど何回振っても15とかばっかり……」

 

KP「それだったら好きな能力値を入れ替えてもいいですよ」

 

A「本当ですか! じゃあ16だけどこれでいきます」

 

 

 振り直し自由、能力値入れ替え自由。KPさんの甘々な裁定で調子に乗るA。

 

 

A「そういえば予習してきた時に特殊ルールみたいなのを見つけて、年少者キャラの場合はSTR(筋力)とSIZ(体格)を減らして代わりに好きな能力値を上昇させるっていうルールがあったんです。それ使ってもいいですか?」

 

KP「いいですよ。ちなみに何の能力値を上げるんですか?」

 

A「APP(外見)とPOW(精神力)を上げます。SIZ小さくしてSTRも下げるので、その分POWにも突っ込みます」

 

KP「なるほどー。OKです」

 

 

 Aは自重せずいろいろと魔改造したキャラを作り出した。

 

 

A「できました!」

 

KP「はい。Bさんの方はどうでしょう?」

 

B「すみません、キャラのデータが行方不明になりました(焦)」

 

KP「え」

 

 

 Aが好き放題している間、いつの間にかBの作ったキャラデータがデータの海に溺れて消えてしまっていた……。

 

 

KP「全然見つからないですね……」

 

B「あ、大丈夫です! 今作り直してくるんで! はいこれでお願いします!」

 

KP「これでいいんですね? ではこのキャラで始めましょう」

 

 

 結局Bの作ったキャラは行方不明になり、新しく作り直しとなってしまった。Bが急いでパパっと作ったため、能力値や技能が少し低めになってしまったことを先に言っておく。

 

 

KP「それでは改めてキャラの紹介をお願いします。まずはプレイヤー1、Aさんのキャラからどうぞ」

 

A改め水無月らいむ「名前は水無月らいむ。年齢は自称10歳の女の子。近所の古びた神社に一人暮らしをしている巫女少女です。見た目は東方の『博麗霊夢』を小さくした感じです」

 

KP「らいむちゃんですね。了解しました」

 

水無月「今回のシナリオに推奨技能はないと聞いたので、技能も好きに取りました。能力値と技能はこんな感じです」

 

 

水無月《みなづき》らいむ 自称10歳・女・巫女

STR11 CON15 POW18 DEX9 APP17 SIZ7 INT16 EDU16

SAN値70/99 HP11 MP18 DB(ダメージボーナス)+0 アイデア 80 幸運 90 知識 80

 

回避68 応急手当50 隠れる50

聞き耳75 図書館75

言いくるめ80 説得40

オカルト75 経理20 心理学75 歴史40

 

 

水無月「STRとSIZを減らしてPOWとAPPに盛りました。あと技能ポイントも多かったので【聞き耳】・【図書館】・【言いくるめ】・【心理学】・【オカルト】を厚めに。探索と対人交渉は任せてください!」

 

KP「大丈夫そうですね。ではBさんもキャラ紹介をお願いします」

 

B改め矢部謙二「名前は矢部謙二。年齢31歳の警察官。見た目はTRICKに出てくる刑事の矢部健三です」

 

 

矢部《やべ》謙二《けんじ》 31歳・男・警察官

STR9 CON11 POW8 DEX8 APP15 SIZ13 INT14 EDU13

SAN値40/99 HP12 MP8 DB+0 アイデア70 幸運40 知識65

 

拳銃50 鍵開け41 聞き耳70 追跡60 目星75

言いくるめ30 説得55

医学55 化学51 法律25

 

 らいむは戦闘技能を取らなかったが、矢部は戦闘をこなせる警察官だ。【拳銃】技能を持っているのが心強い。

 ただ、先ほどの作り直しの影響で実はらいむよりもSTRやCON、POWなどが低くなってしまっていた。

 

 

水無月「SIZが7のらいむと矢部さんのHPが1しか違わないんだけど大丈夫? 振り直しするなら待ちますよ?」

 

矢部「大丈夫や! たぶんなんとかなる!」

 

水無月「矢部さんのSAN値(正気度)も40しかないし怖いよぉ……」

 

 

 ※SAN値(正気度):精神的なダメージにどのくらい耐えられるかという数値。これが少ないと精神的に打たれ弱い。衝撃的な出来事に遭遇することで減っていき、0になると完全に発狂してロストする。基本的にシナリオ中に回復する手段はない。

 

 

KP「では最後に私のキャラをお助けキャラとして一人配置しますね。表颯くん、矢部警部補の後輩で警察官です。優しそうな見た目の好青年です」

 

 

表《おもて》颯《そう》  男・警察官

・KPによるお助けキャラ。【キック】65のキックの鬼。

 

 

表「僕と矢部さんは同じ警察官で先輩後輩という間柄ですね」

 

矢部「せやな。まあそれぞれ相方が別にいるから相棒っちゅうわけでもないけどな」

 

表「矢部さんの相方さんが『大切な人』でしたね。僕の相方も大切な人なんですけど、今回は二人ともお留守番です」

 

矢部「ちょっと署でやらなあかん仕事が溜まっとって、俺ら二人で外回りに出たって感じや」

 

らいむ「(このおじさん二人、仲いいなぁ)」

 

 

 自称10歳の少女と警察官の先輩後輩コンビ。

 これが今回のセッションのメインキャラである(一人はKPのお助けキャラだが)。

 

 

KP「それでは始めていこうと思います。今回のシナリオは『果てにて』。りえこ様作のシナリオです」

 

水無月「ワクワクしてきたー! 私、ファンブルとクリティカルの申し子なんで期待していてくださいね!」

 

矢部「クリティカルはええけどファンブルはイヤやな……」

 

 

 

  ――『果てにて』・セッション開始――

 

 

 

 ※※ 注意 ※※

 

※この小説には『果てにて』のネタバレが含まれます。ネタバレを了承された方だけご覧ください。

 

※『果てにて』は本来二人用のシナリオです。今回はKPさんがお助けキャラを加えて三人用のシナリオに変更しています。

 

※シナリオのネタバレが含まれる感想などを書く際は、未見の方に見られないようにご注意をお願いします。

 

※リプレイ“風”小説なので読みやすく楽しめるように一部修正しています。ただしダイスロール値などは全てそのままです。

 

※本作は、「株式会社アークライト」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

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