―― 導入 ――
九月のとある日。片納駅の駅前商店街で『片納駅前祭り』という催しが開催されていた。
駅前の商店会が企画しているようで、のぼり旗がありこちに立てられ、屋台や模擬店が並び、商店街の各店では店頭販売も行われている。
その中の一つ、ある八百屋の前に人だかりができていた。
店番をしている10歳くらいの女の子を見て、高校生くらいの女子たちが可愛いと騒ぐ。黒髪に赤い瞳の少女は非常に整った顔立ちをしていて、高校生たちが騒ぐのも無理はなかった。その様子に他の客も足を止めて店の中を覗いていく。
らいむ「いらっしゃいませー! 良かったら買って行ってくださーい! なんでも美味しくて安いですよー!」
元気な少女の声に釣られて次々に客が訪れ、野菜や果物がどんどん売れていく。店の奥から出てきたおばさんは上機嫌な様子で少女に声をかけた。
おばさん「ありがとうねえ、らいむちゃん。あなたのお陰で大繁盛だわ」
らいむ「どういたしまして! 私みたいな美少女が手伝っているんですから当然ですよ!」
おばさん「元気が良くていいわねえ。その調子でもうちょっとだけがんばってちょうだいね」
らいむ「はい! お駄賃の野菜のためにもいっぱい売ります!」
少女はお店のお手伝いする代わりに野菜をもらうをしていた。一人暮らしで何かと物入りの彼女はこうしてたまに商店街の店を手伝ってはお駄賃をもらっていたのだった。
表「へえ、今日は商店街でお祭りなんてやってたんですね」
矢部「ほならちょいと覗いていくか。これもパトロールの一環や」
警察官が二人、たまたま商店街を通りがかったついでに祭りの喧騒の中に入っていく。いつも組んでいる相方が都合が会わず、即席でコンビを組んでパトロールをすることになったのだ。
表「あれ? あの八百屋さん、あんな小さな女の子がいなかったはずですよ。あそこの一家と顔見知りなので間違いないです」
若い方の警察官がふと疑問を抱いた。どう見てもアルバイトには見えない幼い少女が店先で野菜を売っているのだ。店主の家族でもないし、一体どういう関係なのだろう、と。
これがきっかけで、少女『らいむ』と警察官コンビ『矢部』と『表』が出会うのだった。
―― プレイ開始 ――
KP「それでは警察官の二人は<目星>でダイスをお願いします」
矢部「はいよっと。……あ」
矢部 CCB<=75 【目星】 (1D100<=75) > 93 > 失敗
表 CCB<=55 【目星】 (1D100<=55) > 47 > 成功
矢部「えー……。ゴホン。なんや、八百屋か? お、美味そうなもん売っとるな、ちょっと見てくか」
表「いや、そこじゃなくてですね先輩。って、ちょっと待ってください!」
目星に失敗した矢部、らいむをスルー。普通に買い物客として会話を始める。
らいむ「いらっしゃいませー。何かお買い物ですか?」
矢部「おう、何かええもんないかと思うてな。嬢ちゃん、オススメはある?」
らいむ「もちろんありますよ! このお祭りのためにおばさんが用意したこれ!」
らいむ「果物の王様『ドリアン』です!!」
矢部「なんでやねん!? ドリアン置いてんのこの店!?」
異臭騒ぎになっていないので真空パックか何かなのだろう(適当)。残念ながら売れずに残っていた。
らいむ「これが通常価格5000円のところ、なんとお祭り限定価格で4990円! 大変お買い得になっております!」
矢部「あんま安くないなあ! ほな買っとくわ!」
表「え、買うんですか?!」
らいむ「やったー! ようやく売れた! お買い上げありがとうございまーす!」
呪いのドリアンを押し付けることができて喜ぶらいむ。
表「先輩! それを署に持って帰るなら、相方さんには自分で説明してくださいよ!」
矢部「お、おう。せやな。まあ話せばわかるやろ……」
ドリアンを巡って騒いでいる三人のところに、法被を着た男がやってきて声をかけた。
男性「こんにちは! 今このゲームのテスターを募集しているのですが、10分ほどお時間いただけませんでしょうか」
そういって男性が見せてきたのは、この商店街を舞台としたVRゲームのチラシであった。様々な武器でインクを放ち、自らの陣地を広げていく――スプラなんとかのVRゲーム版だ。
KP「あのイカのゲームのパクリみたいですね。一応皆さんが元ネタを知っているか知識で判定をお願いします」
表 CCB<=70 【知識】 (1D100<=70) > 9 > スペシャル
らいむ CCB<=80 【知識】 (1D100<=80) > 63 > 成功
矢部 CCB<=65 【知識】 (1D100<=65) > 51 > 成功
KP「どうやら元ネタのゲームは皆さん知っているようですね。男性が皆さんを熱心に勧誘します」
男性「グラフィックに不具合がないか、正しく機能しているかのテストをお願いしたいんです。ご協力いただければ、2000円分の商品券をプレゼントいたします!」
らいむ「2000円!!!!! もちろんやります! あのゲーム持ってなかったら前から遊んでみたかったんですー!」
商品券と聞いた瞬間、目を¥マークにしてらいむが飛びついた。
矢部「ん~。まあこれもパトロールの一環っちゅうことでええやろ? なあ表?」
表「矢部さんがただ遊びたいだけじゃないんですか?」
矢部「いやいや、これは市民の安全を守る刑事として使命感でな? 決してあのゲームを遊んでみたいなんて不純な動機でやっているわけやないんやで?」
不良刑事たちもモニターに参加することに同意し、男性の案内でトラックの荷台に入る。
荷台の部分が大きく開かれており、中に大画面のモニターや三人分のソファ、パソコンなどが置かれていた。
三人がソファに座ると、男性もパソコンの前に着席しモニターをつける。画面には駅前らしきステージと、キャラクターの選択画面が表示されていた。
男性「では、操作方法をお教えしますね」
▼ ルール
・ 自分の陣地の初期HPは20。
・ 相手の陣地から奪ったHPは吸収できる。
・ 10R制でより多くのHPが残っていたほうが勝ち。
▼ 武器選択
・ ぞうきん:≪DEX*5≫/威力1D3
・ スニーカーモップ:≪キック≫初期値25/威力1D6
・ スポンジ:≪こぶし≫初期値50/威力1D3
・ バケツ:≪投擲≫初期値25/威力1D6
・ 洗浄スプレー:≪拳銃≫初期値20/威力1D10
・ デッキブラシ:≪杖≫初期値25/威力1D8
要するに三人で殴り合い(正確には陣地の塗り合い)をして、一番HPの多い(陣地の大きかった)プレイヤーの勝利というシステムだ。
KP「ゲームのコツとして、戦闘技能があるとそれぞれの武器を上手に使いこなせますよ」
らいむ「ええ! 戦闘技能取ってない!」
矢部「拳銃技能があるけど……せやな、それならデッキブラシを使うわ」 ※杖技能初期値
表「では僕はバケツを使います」 ※投擲技能初期値
らいむ「二人ともありがとう! じゃあ私は<こぶし>でいきます。武器はスポンジを選択!」
KP「はい。では全員の選択が終わったのでゲームを始めますが……これ、泥仕合になりそうだなぁ」
三人とも初期値なのでKPさんは泥仕合になると予想。
だがその予想は最初の1R目で覆されることになる。
矢部「(コロコロ)えーと、攻撃対象はらいむちゃんで攻撃成功、ダメージは……あ」
矢部 攻撃対象:1d2 (1D2) > 1(らいむ)
矢部 攻撃判定:1d100 (1D100) > 24(成功)
矢部 ダメージ:1d8 (1D8) > 7
矢部「すまん、らいむちゃんに7点のダメージだわ」
らいむ「きゃああああああああ!!!!!」
なんと矢部が一撃でらいむのHPの1/3を削り取る。
らいむ「私のHPがー! おじちゃんにやり返してやる!!」
らいむ 攻撃対象:1d2 (1D2) > 1(矢部)
らいむ 攻撃判定:1D100 (1D100) > 23(成功)
らいむ「よし! これでダメージが……ええ!!」
らいむ ダメージ:1d3 (1D3) > 1
矢部「うわー、1も削られたー」
らいむ「完全に遊ばれているー!」
矢部「あ、また攻撃成功した。表からHP4貰うな」
表「うわ、こっちに来た!」
3R目で矢部がらいむからの攻撃をカスダメに抑えると、今度は表からHPを4奪う。
この時点で矢部のHPが30。らいむ・表のHPが15と二倍の差が開いていた。
らいむ「くう、このー! おじさんめ、HPを寄こせ……ああ、またダメージ1!」
矢部「はっはっは。嬢ちゃんの攻撃はくすぐったいのう。おっと表、1HPもらうぞ。」
表「じゃあ僕はらいむちゃんから3HP貰います」
らいむ「みぎゃー!!!!!」
攻撃が当たってもダメージダイスが振るわず、チマチマとカスダメを重ねるらいむだったが、あっさりと矢部と表の攻撃によってHPが削れていく。
その後、最後のターンで表が矢部のHPを削って同点に並び、らいむの一人負け状態でゲームが終了したのだった。
らいむ「おじさん二人にボコボコにされた……! こんな小さい女の子をボコボコにするなんて血も涙もないのね……!」
表「ごめんね、ええと、良かったら飴でも舐める?」
らいむ「あ、知らない人から物を貰ってはいけないって言われているんで」
表「知らない人?! もしかして自己紹介してないの?!」
ゲーム終了後の雑談タイム。そこでまだ自己紹介すらしていなかったという衝撃の事実が判明する。
まあゲームを遊ぶだけなら特に自己紹介とか要らないしな。
らいむ「近くの神社に住んでいる水無月らいむ10歳です! よろしくね、おじさんたち!」
表「あの、僕のことはお兄さんで……」
らいむ「はーい。じゃあよろしく、お兄さん!」
表は矢部と一緒におじさんと呼ばれるのはイヤだったようだ。あとおじさんとお兄さんで分けた方が分かりやすい。
矢部「矢部謙二、警察官や。こっちは後輩の表や」
らいむ「おおー。警察手帳だー。なるほどなるほど」
矢部が懐から警察手帳を取り出しらいむに見せる。身元の証明ならこれで間違いないだろう。
表「これで知らない人じゃなくなったよね。よろしくね、らいむちゃん」
らいむ「はい、よろしくお願いします、表お兄さん! 飴ください!」
表「急に距離感が近いね?!」
らいむ「飴ちゃんウマー」
らいむがまんまと表から飴をせしめていると、法被を着た男性が三人の元にやってきた。
男性「ご協力ありがとうございました! こちらお礼です!」
らいむ「やったー! これでお米買おう!!」
矢部・表「(お米……?)」
三人がお礼の商品券を受け取った。
KP「これで帰宅の予定ですけど皆さんなにかありますか?」
らいむ「おばさんに挨拶してからお米買って家に帰ります!」
矢部「俺らはパトロールして署に戻るだけやなぁ」
表「先輩、ドリアンのこと忘れないでくださいよ」
矢部「お、おう。もちろん覚えとるで……?」
らいむ「お米、お米~♪」
三人がそれぞれ帰路についた。
家に帰り、夕飯を食べ、湯船に浸かる。そうして暖かい布団に潜り込めば、自然と瞼も落ちてくることだろう。
その日の夜は、とても静かな夜だった。
KP「翌朝、あなたは目を覚ます。窓の外では雪が降っていた」
矢部「雪?! まだ九月やったやろ?」
KP「そうですね。ですが確かに雪が降っています。そして窓の外がとても静かなことに気がつきます」
KP「皆さんは朝になると必ずする行動はありますか?」
らいむ「朝になるとすること……水を汲む?」
矢部「そこからなのぉ?!」
KP「ではらいむちゃんが外に出て水を汲もうとしたところで、テレビから何か音声が聞こえてくることに気がつきました。昨日確かに消して寝たはずなのに、いつの間にか電源がついていたようです」
らいむ「あれー? ゴミ捨て場から拾ってきたテレビだからまた調子がおかしいのかな? テレビを確認しに行きます」
矢部「どんな生活しているねん?!」
KP「矢部さんも、いつの間にかテレビがついていることに気がつきました。どうしますか?」
矢部「それならテレビを見に行きます。うーん、消したはずなんやけどなー?」
KP「では、テレビの画面に目を向けたあなたたちは、一層奇怪なものを目にすることになる」
KP「『それは、酷く巨大で、いくつもの目と触手を持ち、ぐにゃり、ぐにゃり、とうねりながら、海の底から這い出てきた。
その蠢く黒の塊は咆哮をあげると、海を割るようにして進み、伸ばした太い触手で人を、町を、島を破壊する。
悍ましく、汚らわしい、絶対的な邪悪さをまとったその怪物は、画面ごしであってもあなたの心に恐怖を植え付ける。』」
KP「はい、ではSAN値チェックをどうぞ♪」
らいむ・矢部「ぎゃああああああああああああああああああああああ!!!!」
クトゥルフ神話の世界へようこそ!!!!!!
―― 導入・終わり ――