クトゥルフ神話TRPGリプレイ風小説   作:水無月家

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『果てにて』 ~頼み~

 

  ―― 頼み ――

 

 

 降りしきる雪の中を歩き続け、三人は無事にショッピングセンターに到着した。

 

 

らいむ「さーむーいー」

 

表「らいむちゃん、先輩、これをどうぞ」

 

矢部「お? なんや?」

 

KP「ショッピングセンターの中に入っていた喫茶店に表が入っていき、そこで温かいコーヒーを入れてきました。矢部さんにもカップを差し出します」

 

矢部「泥棒やないかい!! 刑事がなにしとんねん!! ……あ、美味いなこれ」

 

KP「(笑)。では矢部さんにはコーヒーを渡して、らいむちゃんには温かいココアを入れてくれました」

 

らいむ「わーい、お兄さんありがとう! おいしー!」

 

 

 冷えた体を内から暖めてほっと一息ついた一行。

 

 

矢部「コーヒーごっそさん。それじゃあそろそろ探索するで。ショッピングセンターの中に他に生き残っている人がいるか【聞き耳】で判定してええですか?」

 

KP「いいですよ。ダイスどうぞ」

 

矢部「ほな。(コロコロ)無事に成功や」

 

 

矢部 CCB<=70 【聞き耳】 (1D100<=70) > 64 > 成功

 

 

KP「では貴方は刑事の勘で商店街に他の生存者がいないか調べましたが、一人もいないということがわかりました」

 

矢部「あー! 手がかりが手に入らねー!」

 

 

 矢部の叫びがショッピングセンターの中に虚しく響いた。残念ながら三人以外に動くものはないようだ。

 

 

らいむ「うーん、じゃあ私は洋服店で可愛い服でも探そうかな。今まで着れなかったようなお洋服を着れるチャンス!」

 

表「あ、じゃあ僕も冬物がないか探します。寒さのせいかまだ動きにくいので」

 

矢部「だから君たち何しとんの?!」

 

表「先輩の分もちゃんと探すので任せて下さい」

 

矢部「そういう話じゃねええええええ!!」

 

 

 固まった人々を放っていろいろと物色するらいむと表。

 

 

らいむ「寒いからしっかり拠点作った方がいいかなー。誰か【サバイバル】持っている人いる?」

 

矢部「街の中なのに【サバイバル】すんの?!」

 

らいむ「そういえば寒い寒いって言ってるけど、暖かくなったら手足の強張りとか取れた?」

 

矢部「ん? いや、ずっとそのままやで。温めて変わらんな」

 

らいむ「ふーん。やっぱり寒さは関係ないのかな」

 

 

 冬物のコートなどを好き勝手に漁ったところで時間が来る。

 

 

KP「それでは二人とも判定をお願いします。矢部さんは【CON × 4】、らいむちゃんは【CON × 5】です」

 

らいむ「はーい。まあ私は75あるから平気でしょ。(コロコロ)……あああああああああああ!!!!」

 

 

らいむ CCB<=15*5 【CON × 5】 (1D100<=75) > 98 > 致命的失敗

 

 

 らいむ、痛恨のファンブル!!! 二人よりCONが高いからと余裕ぶっていたところにこれである。

 

 

らいむ「ファンブルした! ファンブルした!! 嘘でしょ?! え、このまま死亡?! やらかした?!」

 

KP「えーここでファンブルかぁ……じゃあ、一気に二段階進行します。まだ死亡はしませんよ」

 

らいむ「あ、よ、良かったああああ……。いや、二段階進行って良くないんだけどさあ!」

 

矢部「俺は……(コロコロ)あ。俺も失敗したわ」

 

 

矢部 CCB<=11*4 【CON × 4】 (1D100<=44) > 72 > 失敗

 

表 CCB<=11*3 【CON × 3】 (1D100<=33) > 18 > 成功

 

 

KP「らいむちゃんが致命的失敗、矢部さんが失敗、表が成功ですね。では二人は体を動かす度、痛みを感じるようになります。意識していないと、動作が少し緩慢になってしまうでしょう」

 

らいむ「うわー。一気に二人と並んだなぁ。私も動きにくいー。これやっぱり病気じゃない? 二人に感染させられた~!」

 

矢部「俺なの?! いや、違う、きっと表や!!」

 

表「僕ですか? いや、僕と一緒に住んでいる相方が先に固まっていたので原因はそいつですよ」

 

らいむ「それ相方さんから感染した表さんが原因ってことだよね?」

 

表「い、いや……そうかも?」

 

 

 誰が感染源で盛り上がる三人。

 

 

らいむ「あー、でもこのまま固まっちゃうのかー。今のうちにどういうポーズで固まるか決めておかないとなぁ……」

 

矢部「え、もう固まる覚悟を決めているんか?」

 

らいむ「そりゃあもちろん。素晴らしい美少女の像として永遠に残り続けるつもりですが?」

 

 

 らいむはとうとう異変の解決よりもどういうポーズで固まるかを考え始めた。

 そんな話をしている間にも時間は進んでいく。

 

 

矢部「まだ何の手がかりも掴めてないんよなぁ。どこに行ったら情報が手に入るんやろ」

 

KP「そうですね。インターネットは使えませんが、それ以外で情報が残っている場所があるかもしれません」

 

矢部「あ、そうか! 図書館や! そこなら手がかりがあるに違いない!」

 

らいむ「オーケー。じゃあ次は図書館に行きましょう」

 

 

 矢部を先頭に一行は図書館を目指す。雪はどんどん勢いを増しているようだ。

 

 

KP「図書館に到着しました。何を調べますか」

 

矢部「やっぱり新聞やろ。俺らの記憶にない一ヶ月分の新聞を調べるで」

 

KP「わかりました。すぐに調べられる情報なので判定は不要です。一ヶ月分の新聞を見てみましたが、一週間前に例の怪物が出現するまでは特におかしな点はありません」

 

矢部「なに? 一週間前まで何にも起きてなかったんか?」

 

らいむ「記事の中に人々が固まったって記事や雪が降っているって記事はありますか?」

 

KP「新聞の中にそのような記事はありませんでした」

 

らいむ「ふむふむ。となると人間が固まったのも雪が降り出したのもつい最近なのかな」

 

矢部「うーん、もしかして怪物をどうにかするんか? 新聞で怪物がどこがいるのかわかります?」

 

KP「あちこちフラフラしているようです。現在地はわかりません」

 

矢部「なら違いそうやなぁ」

 

 

 図書館の新聞を調べてみたけれど新しい情報は手に入らず。

 

 

矢部「ヤバい、本当に情報が手に入らん」

 

KP「それではここで【CON × 3】で判定をお願いします」

 

矢部「ああ、もう来た!」

 

らいむ「判定いくよー。(コロコロ)あっ」

 

 

らいむ CCB<=15*3 【CON × 3】 (1D100<=45) > 49 > 失敗

 

矢部 CCB<=11*3 【CON × 3】 (1D100<=33) > 21 > 成功

 

表 CCB<=11*3 【CON × 3】 (1D100<=33) > 70 > 失敗

 

 

らいむ「やべーおじさんだけが成功かー。さっきのファンブルが痛かったなぁ」

 

矢部「やべーおじさんじゃなくて、矢部のおじさんな? な? 違うからな?」

 

 

 らいむと表の体はますます硬くなり、一歩前に踏み出すだけでも、かなりの体力を消耗する。視界も濁ってきたようで、あちこちに白い斑点が浮かんでいた。

 

 

らいむ「視界が? これって目が白く濁ってきているってことですか?」

 

KP「そうなります」

 

らいむ「うわー、目も見えなくなるのかー。やっぱりこのまま全員マネキンコースね」

 

矢部「そんなんイヤやー!」

 

 

 今のところ一人だけ元気な矢部が悲痛な声を上げた。

 

 

表「あ、先輩! あそこを見てください!」

 

矢部「あん? どうした表?」

 

 

 表がらいむの両眼を手で隠しながら、図書館の外を指差した。

 

 そこには何人もの人々が倒れ転がっていた。倒れている人々は皆、頭を砕かれているようで、そこに雪が積もっていなければ、二人は潰された脳を目にすることになっていただろう。

 

 

らいむ「みーえーなーいー」

 

矢部「いや、これは子供の見るもんやないな……」

 

表「確認しますか?」

 

矢部「ああ……」

 

 

 矢部と表が地面の雪を払い、詳しく調べようとする。

 

 

矢部「らいむちゃんは見ない方がええと思うが……」

 

表「僕がこのまま手で隠しておきます?」

 

らいむ「んーん。二人がいるしそっちの確認はお任せするね。私はグロいものを見ないように周りを見てる」

 

 

 らいむが周囲を見渡し、矢部と表は積もった雪を払い、砕かれている部分をよくよく確かめてみた。硬化しているのは表面だけであり、脳や内臓は柔らかいままであったことがわかる。

 

 

KP「はい、それでは猟奇的な光景を目撃したのでSAN値チェックお願いします」

 

矢部「やっぱりなぁ!! そう来ると思ったわ!!」

 

らいむ「警察官って大変だなぁ」

 

 

SAN値チェック (0/1)

 

矢部 1d100<=36 【正気度ロール】 (1D100<=36) > 67 > 失敗

 

表 1d100<=64 【正気度ロール】 (1D100<=64) > 50 > 成功

 

[ 矢部 謙二 ] SAN : 36 → 35

 

 

 長年刑事をしてきた矢部だったがこのような非常識な光景に対する耐性は低かった。少し気分が悪くなる。

 

 

KP「では周囲を見ていたらいむちゃんに声が聞こえてきます」

 

青年「そこに……誰かいるのですか……?」

 

KP「どこから聞こえてきたのか【目星】で判定をお願いします」

 

らいむ「あ~、【目星】か~。(コロコロ)はい、失敗しました!」

 

 

らいむ CCB<=25 【目星】 (1D100<=25) > 80 > 失敗

 

 

KP「らいむちゃんはどこから声が聞こえてきたのかわからなかった。矢部さん、【目星】で判定しますか?」

 

矢部「おう。判定するで。(コロコロ)成功や」

 

表「僕も一応判定を。(コロコロ)こっちも成功です」

 

 

矢部 CCB<=75 【目星】 (1D100<=75) > 55 > 成功

 

表 CCB<=55 【目星】 (1D100<=55) > 42 > 成功

 

 

 矢部と表の刑事コンビが判定に成功し、声の主が近くに立っている茶色のコートを着た男だということがわかった。

 倒れている人々の中に何人かまだ立っている者たちがいて、茶色のコートの男もその一人だった。手にハンマーを構えたまま固まっている。

 

 

青年「茶色のコートを着ている男です。目も見えず、今や口しか動かせません。そこに誰か居るのなら、どうか、どうか助けてください」

 

矢部「お前か! どうしたんや! 助けてくれって何をどうしたらええんや?」

 

青年「僕は間もなく口も利けなくなるでしょう。その前にお願いがあるのです。僕の頭を、ここに居る人たちの頭をこのハンマーで砕いてはくれませんか。僕たちの体が固まってしまっても、脳は死なずに生き続けます。そんな苦しみを味わいたくはありません。僕は死にたい」

 

矢部「はあ?! 何言い出しとるんじゃ! そんなことできるかアホォ!!!」

 

 

 身動き一つできないまま生き続けるのが辛い、どうか殺してくれと懇願する青年の頼みを矢部が一蹴する。

 

 

矢部「こちとら警察官やぞ! 人殺しなんかできるかボケ! それより、この周りの人はお前がやったんか?!」

 

青年「いえ……僕ではありません……ああ、もう動けない……どうか……ころ……て……」

 

 

 最後にそう言い残して青年は完全に固まってしまった。

 

 

KP「青年の頼みを聞いてもいいし、断ってもいい。皆さんはどうしますか?」

 

らいむ「やりたくないからやらない!」

 

矢部「警察官がんなことするわけないやろ!」

 

 

 KPからの質問に即答する二人。死にたいのに死ねず、固まったまま生き続け苦しみ続けるのは可哀そうかもしれない。だが、自分で手を下すことは絶対にしないと言い切った。

 

 

KP「では二人は手を出さず……(コロコロ)表も彼らの頼みを断ったので、これで終わりです。固まった人々を置いて貴方たちは移動しました」

 

矢部「表も警察官やからな! 警察官なら当然や!」

 

らいむ「お~。さすが警察官」

 

らいむ「でも目の前で固まったけど、やっぱりこうやって徐々に固まっていくんだねー」

 

矢部「せやな。単に凍り付いているだけなら熱湯かけたら治りそうなんやけどな」

 

表「効果があるかわかりませんし火傷とか怖いですからね」

 

らいむ「え? 固まった人たち使って実験してみればいいんじゃない? 熱湯とか火炙りとかやってみようよ」

 

 

 どうせそのままだと固まったまま永遠に苦しみ続けるのだ。

 万が一の可能性を信じていろいろと実験台にしても問題ないだろうと、らいむが率先して実験を始める。

 

 

らいむ「溶けないし焼けないなー。カチンコチンのままだ。……ところでこれ、内部はどうなってるんだろうね?」

 

表「表面で熱が遮断されているのか、内部まで火が通っているのかどっちでしょうか」

 

矢部「お前らなぁ……」

 

 

 哀れな犠牲者たちで遊んでいると再び時間がやってきた。

 

 

KP「それではらいむちゃんは【CON × 2】、矢部さんは【CON × 3】で判定を」

 

らいむ「はーい。そろそろ終わりかー」

 

矢部「くうう……」

 

 

CCB<=15*2 【CON × 2】 (1D100<=30) > 65 > 失敗

 

表 颯 - 先週 金曜日 0:53

CCB<=11*2 【CON × 2】 (1D100<=22) > 59 > 失敗

 

矢部 謙二 - 先週 金曜日 0:53

CCB<=11*3 【CON × 3】 (1D100<=33) > 26 > 成功

 

 

KP「矢部さんだけ成功で、二人は失敗ですね。ではまた一段階進行します」

 

 

 体が重い。手足の自由が利かない。その目はただぼんやりとした輪郭を捉えるばかりで、色を識別する力も失われていた。

 

 

らいむ「やべーおじさんは元気だねー。私はそろそろ終の棲家を探すかなー。さすがに道のど真ん中とか嫌だし」

 

矢部「やべーおじさんじゃなくてやべのおじさんや……」

 

 

 らいむと表は限界が近かった。矢部も終わりが近いと感じていた。

 

 

矢部「どうすりゃええんやろなぁ。打つ手なしや」

 

らいむ「手詰まりだねー。KPさん、【アイデア】か【幸運】で振れますか?」

 

KP「何についてですか?」

 

らいむ「この状況を打破できるような何かがないかなーって」

 

KP「うーん、無理ですね」

 

らいむ「なるほど。やっぱり無理かー」

 

 

 太陽は地平線に差し掛かり、空には分厚い雲が立ち込めている。朝からの雪は昼を回って大雪となり、風も出てきて吹雪となっていた。

 体が硬化しているお陰は寒さはそれほど感じないが、吹き荒れる吹雪の影響で視界はどんどん悪化していく。

 動かない体、視界を遮る吹雪、どんどん迫ってくる夜闇。

 

 ふと矢部が顔を上げたその向こうで、何か大きな影が動いた。

 

 

  ―― 頼み・終わり ――

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