ポケモンの無い世界に迷い込んだポケモン界の女性 作:メリルメリルメリル
牧場で行われたイベントから1週間後。
早い集合ではあるが連絡先を交換したメンバーで集まることになり全員が参加をするとすぐに返事をした事により、ペットがポケモン化するという現象の大きさを誰も軽視していないのだと皆が皆感じ取る。
例外としてモコモコポテトは中1だからかポケモンかわいい格好いいという気持ちが先に来ている様子なので不安等は感じてないだろうなというのが保護者を含めメンバー内での認識となっている。
集合場所は自然溢れる大きな公園。
ここは時期によっては人で溢れる事で有名なのだが現在は時期から外れているため人が少ない。
それも活動場所と決めた地点には特にオブジェや遊具等がなく、人が集まる時期にレジャーシート等が広げられるだけのスペースとなれば人がいないのでポケモンを出していても問題にはならないだろう。
イワークの人こと『オレオサス』さんを除いて。
「おはようございます」
「おはようございます……って、あれ?その子、オレオサスさんのポケモンですか?」
「あぁ。コイツにアクセサリーを盗まれてな……」
二足歩行している青い肌の恐竜っぽいポケモンがオレオサスさんに並んで来たので詳しく聞いてみると今の仕事現場で暮らしていたポケモンなのだが光り物が好きみたいでアクセサリーを盗まれて激しい攻防を繰り広げたらしい。
盗まれたアクセサリーが数万と結構なお値段したモノらしく、なんとかして取り返そうとするも近寄ればすぐに気付き警戒する。
イワークに隙を作ってもらおうとするもタイプ相性が悪いらしく作る間もなくぶっ飛ばされる。
コレには困り果ててしまいなんとかならないかと考えた結果、物々交換で取り返せないかと方向を変える。
その事に気付けたのは職場の先輩に愚痴をこぼしたら「光り物が好きなのであって盗んだ物の値段まではわからないんじゃないか?」と言われたのがきっかけ。
安くてキラキラしてるものと考え、古い文房具店に売られている謎のビー玉袋を購入し渡そうとしても駄目。
次にホテルなんかで売られているキンキラで龍が巻かれた剣の形をした謎アクセサリーとかなら安いと気付き、複数種類を大量に購入して交渉したらすんなり交換が成立した。
そして懐かれたらしい。
「まだカミラさんから名前教わってないから職場の仲間と付けた仮名で青鴉って呼んでる」
「でかいカラスっすね」
ジャラジャラとアクセサリーを付けウインディと戯れている青鴉を見つめていたら、見られていると気が付くと胸を張りキンキラ剣を自慢してくる。
昔こんな感じの事するやつ同じクラスに居た気がする。
「それにしても、3時間早く来たのにもういるって事はやっぱり?」
「同じ感じだよね。こっちはほら、ココロはちょっと速すぎるから、朝早くなら人いないかなって」
「こっちもイワーク出してやりたくてなぁ……」
「あのデカさは難しいよなぁ〜」
「でも怪獣も恐竜もロマンだよな」
「わかる」
「だというのに最近のティラノサウルスときたら……いや、アレはアレで味があって良いんだけどさぁ……」
「……わかる、鳥だもんね」
「鳥だよなぁ……」
このような雑談をしているとエモンガの人である『サンカク丸』さんが来て、次にカクレオンの人こと『工学姉貴』さん、ミミロルの人こと『ウサギ先輩』さんという順番で到着した。
女性であるサンカク丸さんに「確かに普通は駄目かもしれないけど、ここ広いし何か言われてからイワークをしまえばいいし、それまでは出してても良いんじゃないの?」と言われたのだが、サンカク丸さんからするイワークに触りたそうなオーラが凄かったので出しておく事になった。
出してみたところ後から来た2人の目印になったくらいで人通りが少ない事もあって騒ぎになるという事は特になかったし結果的に良かった。
ちなみにメンバーそれぞれの性別と職業は
オレオサス、男性、土木工事関係
サンカク丸、女性、大学2年生
工学姉貴、女性、ひみつ工学
ウサギ先輩、男性、フリーター
と、性別が丁度半々になっている。
皆が集まって少しして、本来の集合時間の1時間前くらいになった頃にモコモコポテトさんからメッセージが届く。
「なんかモコポテちゃんからポケモンが駄々こねて電車にもタクシーにも乗れないって文章の節々から悲しそうな雰囲気なのが届いたんだけどどうする?」
「え?そんな駄々こねる感じの子いたっけ?」
「前は借りてきた猫状態だったんじゃね?」
「ヌオーが???」
「工学姉ちゃん、ヌオーの他にもインコと白黒猫がいたからたぶんそっちだよ。
確かインコがイキリンコのサンバ君と、真っ黒だったのに白黒猫になったアブソルのマックロちゃんって名前だった気があ~………アブソル?」
「アブソル?………アブソル!?」
この瞬間気付いてしまったのは赤司とサンカク丸の2人のみ。
『その子はアブソルだね。
あくタイプのポケモンなのだけど……アブソルかぁ~。
語りたい事は多々あるけどアブソルと言えばやっぱりこれだよね。
アブソルはほんの15~20年くらい前までは災いポケモンなんて別名で呼ばれる方が圧倒的に多くてね、アブソルが災いを持ってくるなんて本気で信じられていたんだよ。
というより今でも田舎のじっちゃんばっちゃんはアブソルこそが諸悪の根源なんて信じて疑わないくらいだしこの話題はかなり根深いんだよね。
本当のところはアブソルは他の生物と比べても飛び抜けて危険を感知する能力に優れていて災いが来るから逃げろと伝えに来てくれていたんだよね』
カミラが配信で語った事が頭に浮かぶ。
2人がその動画内容を覚えていたのは偶然自分のポケモンに関しての事を語ってくれたのと近かった為に自然と頭に入っていたからというのが大きかった。
大事そうな内容は1つでも多く覚えておこうと努力していた結果でもあるが。
『ウチが思うに、アブソルが嫌われていた一番の原因は彼等が優しくて、人間のスケールを理解していなかった事だね。
アブソルは自分にとって危険な災が訪れる時にのみ知らせてくれて、ポケモンの中でも高いポテンシャルを持つ種族と人間じゃ危険に対しての基準が同じ訳がないんだよね。
人間はアブソルの言葉が理解できないから、必死に訴えかけるその姿がまるで怒っているように見えたのかもしれない。
そうなれば人類の目線では怒ったアブソルによってこの災がもたらされたのだと思うのはとても自然な流れじゃないかなというのがウチの考察ね』
気付いてしまった2人は急いでアブソルについての動画を探し、親切な事にカミラさんが自分で切り抜きを用意してくれていたので簡単に見つけることができた。
そして切り抜きを見返した事でアブソル基準の良くないことが起こるかもしれないという事を全員認識してしまう。
「えっと、これ災いが地震だとして人間基準でヤバイ地震って震度4くらいからかな?」
「ならアブソルだと震度8?」
「はいはい!私とりあえずこの事モコポテちゃんのお母さんに伝えます!」
「なら戻る際に非常食なんか買えれば買っといた方が良いと伝えた方が良いと思う」
「SNSで皆に拡散した方が良い?」
「わからない」
「とりあえず何が起こるかわからないからすぐに帰ろう。
それで各々家族やらに連絡やら災害の備えをして、帰る際もできるだけ纏まって帰るようにした方が良いと思うてれど異論はある?」
不安そうな顔をしながらも皆で思い付いた事を口にしあい、一番年上のウサギ先輩が纏めて行動に移すことになる。
そして空から黒い波が訪れる。
オレオサスと工学姉貴は逆方向だったがそれ以外のメンバーは一度大きな駅に行き乗り換える必要があった。
その大きな駅は正に災いの中心部と呼べるような状況に陥り、運が良いのか悪いのか、電車内に閉じ込められるよりは遥かにマシではあるが1つ前の駅で電車は止まり、その位置からでも災の大きさを十分過ぎるほど見て取れる。
「エモ!エモンガ!」
その光景に唖然とし遠くからただ傍観していると唐突にサンカク丸さんのボールからエモンガのトビくんが出て来て訴えかけてくる。
「………え?ちょっと、トビくん?危ないよ?」
「エモ!エモ!」
「わん!わんわん!」
エモンガに続きウインディも出て同じように訴えかけ、ウインディに関しては赤司の服を咥え引っ張り行こうと伝えてくる。
「……どうしても行きたいのか?」
「わん!」
「え!?レッフラくん行く気!?」
「ちょっとそれは流石に……落ち着こうレッドフラットさ……」
「ミミー!」
ウサギ先輩が柔らかい声色で落ち着くよう促そうとした時、ボールからミミロルのキャラメリゼちゃんが飛び出し誰がどう見ても危険地帯な場所へと突撃していく。
本当に唐突の出来事で「あっ」と言う間にキャラメリゼちゃんは離れていき、鳥ポケモンを二度蹴りで蹴散らし走っていく。
「お、落ち、落ち着け、落ち着こう」
「ウサギパイセン落ち着いて!!!」
「行こう」
「わん!」
「本気!?って、流石にキャラメリゼちゃんだけでも………うぅ~っ!トビくん行ける!?」
「エモ!」
こうしてミミロルを追いかけ進む事になる。
鳥ポケモン達はこちらのポケモンよりもレベルが低い。
そして統率が取れており目的がハッキリと定まっている故に狙ってくる理由が鳥ポケモン達には薄く、せいぜい足止めの為に何グループかを向けられるくらいの対処にされていた事が幸いした。
向けられる数が少なく、何よりもこの鳥ポケモン達はポケモンのタイプ相性と言うものを知らなかった。
目的を達成させるという意味合いでは支障はないのだが、足止めだけなら十分な数を送っているはずなのに予想を超える消耗の速さに多少の動揺を見せる。
対してエモンガの方は一騎当千と言える無双っぷりを見せる。
鞭のように伸びてしなる電撃に当たらないように距離を取り思うように近づけない。
被弾してしまえばかなりのダメージを受けるのか即離脱、あるいは体を小さくして目に見えない大きさになり回復へ専念するのどちらかだ。
それでもフォーメーションを組み被弾覚悟で人工物を破壊し少しでも足の進みを遅らせようとするがあまり効果が無い。
この予想以上の結果により一番弱腰だったサンカク丸は調子付き、ミミロルに追い付いた時点で避難誘導に協力しようと提案した。
その提案を出したのは追いつくまでの間に自分達の他にもポケモンを連れ退避しながらも攻撃を行い近付けさせないようにしている人達を何度か目にしていたからだ。
どうするにしても方針を定めなければならないという事でガラスを破壊されボロボロになったコンビニの裏方に入り10分程の休憩を取る事にした。
商品をいくつか取り、当然のように店員が誰もいないのでその分の代金をレジの側に置いておく。
ここで各々役に立つかはさておき護身用の武器の調達もしておく。
赤司とサンカク丸はカッターナイフだけであり、それ以上は怖くて持てないという理由で控えめなのだが、ウサギ先輩はそれだけでなくスプレー缶とライターで簡易火炎放射器として運用すると口にし2人を驚愕させた。
「リアルFPSゲームってこんな感じかな……」
「そうですけど戦場と言うよりは地球防衛軍?」
「それだ」
「なにそれ?モンハンの親戚? 私音ゲーしかしないからわかんないや」
「あ、ゲームやるんだ意外かも」
「こう見えて近所じゃかなりのハイスコアだよ~」
ここまで来るのに、最初に空を覆う鳥ポケモン達を見て連想したショッキングな、R-18G的グロテスクな光景を目撃しなかった事が幸いし軽口を叩ける余裕があるとお互いに共有でき、固くはあるが笑顔が漏れる。
「まあ何をするにも先ずはコレをトビくんに食べさせて」
「さくらんぼ……じゃないよね、なにその果物?」
「ヒメリのみ。カミラさん情報で消耗したポケパワーを回復させることができるらしいから集めてた。
俺の目から見てもけっこう消耗しているように見えるからトビくんは多めに食べて」
「あ……気付かなかった。もらうね。
トビくんありがとう、もうちょっと頑張ろうね」
「エモ!」
皆でヒメリのみを分け合い話し合いに入る。
そこで鳥ポケモン達は積極的に戦う姿勢を見せていたエモンガに対する数よりも逃げる人達を追い回す数の方が多い気がしたとウサギ先輩が証言する。
次にこんなにも大きな事件が起きていて転倒した事による怪我をしている人は見たものの、それ以外に大きな怪我をした人を見たか?という問いが出て皆首を横に振る。
そして今いるコンビニの有様を見直して全員が思う。そんな事がありえるのか?
あの鳥ポケモン達は強さにばらつきがあるものの、羽から出した衝撃波でアスファルトに大きな切り傷を残す事だってしていたのに。
まあ、こちらのミミロルはその飛ぶ斬撃っぽいのを耳ではじき飛ばすなんて事を平然としていたのでポケモン基準では普通の事なのだろう。
しかし人間に向けられればどうなるか、それこそグロテスクな光景が出来上がってしまうと簡単に想像できてしまう。
では何が目的なのかという話になり、彼等にとって必要な何かがこの周辺にあるのではないかと話したところでソレは起きた。
「ッ!?え?何今の!?」
「………もしかしなくても銃声じゃないかな?」
「え?もっとバキューンって感じじゃ?」
「どっちかって言うとリレーとかのスタートで使われるアレと似たような感じの音だと思う、詳しくは知らないけれど……って、レッドフラットさん!?」
立ち上がったウインディの目を見ただけでどうしたいのか察した赤司はウインディと同時に駆け出した。
コンビニを出ると同時にウインディの背中に飛び乗り向かえばすぐにその場所へと辿り着く。
「ココロ、火炎放射」
練度が低いため火炎放射を放つには数秒時間がかかるのでウインディから降り目を凝らしタイミングを逃さないよう気を張りながら撃つべき標的を指差す。
目の前の異様な数の鳥ポケモン達を見て心臓の音が喧しい程になっているというのに、不思議なくらい頭は冷静であった。
ウインディの火炎放射が放たれ、鳥ポケモン達の目がこちらに向いたタイミングで「火炎車」と指示を出し背中を押し、共に駆け出す。
「コッチです!早く逃げて!」
そう叫び、誘導した先にサンカク丸さんとウサギ先輩さんの姿がある事を確認した赤司は逃げる事をせず、ウインディと鳥ポケモンのボスとの激突にのみ目を向ける。