ポケモンの無い世界に迷い込んだポケモン界の女性   作:メリルメリルメリル

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大きく変わる

 

 世界が変化した。

 

 あの謎の光の説明通りなら今ウチらのいる小さな花畑の島も別の世界から持ち込まれた場所なのだろう。

 ウチがフィールドワークで調査していた海底洞窟もたぶん似たように移動してきたのだろう。

 日記に書くほどの事でも無いと思って書かなかったものの小さいながら不自然揺れが起きたことを覚えている。おそらくその時だろう。

 

 けれどそんなことはもうどうでも良い。

 

「うわあ、うわぁ……人の耳無くなってるツルツル………というよりもフッサフサだなぁ……………」

 

 氷鏡越しのウチは今朝と同じでYシャツに黒ズボンのスーツ姿。

 今日は初めから役所に行く予定だったからビシッと社会人スタイルで向かったからこの格好なのだけれど、今はビシッとしてなくてダボダボだよお。

 身長が下がりすぎてYシャツが少々丈の短いワンピースやネグリジェみたいになっている。

 

 髪を掻き分け、本来目の横の位置にあるだろう人間の耳を確認しようとしたけれど耳の位置も髪の毛が生えていて目視では確認できず指を突っ込んで探すも耳らしい物に触れる事はなくふわもこだよ。

 うわぁ、根っこの部分から髪が白くなっているよ。

 そして髪の毛先の一部が赤くなっている部分があって、よ~く見るとかすかに赤と白の境界線と、後ろ髪の毛先にウチ本来の金髪部分があって派手というかなんというか凄い事になっている。

 

「(青かった目が黄色になっちゃった……)う~ん、触られてるのがわかる………」

 

 青かった瞳がお月様みたいな黄色になっている。

 なっているが、頭のてっぺんで強い主張をしている獣の耳と比べると地味だね。

 試しに耳に触れると神経が通っているのか触られているとわかるし、試しに動かそうとしてみれば予想よりも簡単に耳を動かせパタンと閉じる事ができた。

 たぶん服装とかから判断したのかもしれないけど、よく今のウチを「カミラさん?」って聞けたよね。ここまで変わると別人?人なの?ポケモン?わかんないなぁ………

 

「………あっ」

 

 Yシャツを抑えながらしゃがみ、ズボンを掴んで立ち上がりながら直す。

 ベルトを限界まで締めるもまだ緩く、尻尾が邪魔をしてズボンを上げきれずYシャツの後もデローンと垂れている。

 

「(何でこう、お金って無い時に限って出費がこうも重なるんだろうねぇ……こうもブカブカだと仕立て直すとか以前の話だし、新しいの買うとしても尻尾の事考えてけっきょく仕立て直しが必要になるの普通に困る………)ふわふわ、でもないね。若干固い?」

 

 尻尾も思い通り動かせる事に気が付いてギュッと抱き締め軽めの現実逃避をし始めたころだった。

 

「ドリュウ!ドリュ!ドリューッズ!!!」

 

 ドリュウズが暴れ出した。

 それをドンカラス達が必死に宥めようと説得に入るが、その表情は何とも言えない、暴れているドリュウズと同じ気持ちなのだと物語っている。

 

「…………そうだったのか、やっとわかった」

 

 自分がこの姿になって野性的直感が増したからなのか、或いはただ肉体が変化したから気付けただけなのかハッキリとわからないのだけど、彼らから感じた違和感の正体に気が付いた。

 何故こんなにも人間を危険視するのか、どうしてそんなにも強い覚悟を持ち、一致団結し、観察し、学習してあんな手段を行ったのか理解した。

 

「(あの子達は元々この世界にいた普通の野生動物だったんだね。

 それがポケモンとして進化して、知能を得て、野生動物だった頃の記憶を持つからこそここまで徹底して………)」

 

 カミラは思い出す。

 初めて空からこの世界を見て野生のポケモンの生活圏があまりにも少なすぎて唖然とした時の事を。

 自分に心配できたのはポケモンの事だけで、野生動物の事まで考えていなかった。

 

 彼等は動物だった頃から、とっくの昔に追い込まれていたからあのような手段に出たというのに、少し待てばあんな危険な真似をせずとも世界が広がった。

 それも今後もこの現象は起こり世界が倍の大きさになるという。

 

 人間の危険性をどんなポケモン達よりも強く理解している彼等だからこそ叫ばずにはいられないかったのだろう。

 

「………ドサイドン、ダイケンキ。

 悪いのだけど、花畑を踏み潰さないよう気をつけながらあの子達が疲れ切るまで暴れるのに付き合ってあげて。

 そうすれば、ほんの少しでも気が紛れると思う」

 

『それくらいしかしてあげられる事がなさそうだから』と、口にはしなかったが、この2人とランクルスはウチのメンバーの中でも特に面倒見の良い性格なので同じように思っていた。

 ランクルスもウチと同じように「任せた」と2人に伝え「任せろ」と心強い言葉が返ってきたのを見届けウチは自分の体の異変を再確認することにした。

 

「(それにしてもウチのこの耳、アローラのロコンに似てるような気がするけれど尻尾は全然違う。

 尻尾はイーブイのに近い形だけど毛の感触が違う。

 あ、歯も変わってる。なんか人間のモノをベースに裂肉歯を取り入れた感じになっている。

 これで舌噛んじゃうような事になったら大変だろうなぁ……

 ふむふむ、この尻尾と似たような毛の質を触った事があるようなないような………いや、それよりも何かの文献でこんな特徴を持っているポケモンがいたような気がする。

 人間が死後ポケモン化した事例は少なくないからけっこう読み込んでいたおかげで必要以上に混乱せずに済んで助かったけれど、肝心などこの地方で何の本を読んだっけか?アローラ?シンオウ?ジョウト………う~ん、文章だけだったのだけれど確実に目にした事があるというところで引っかかって出てこない。

 何だったっけなあ~……そもそも文献というよりも実体験を元にした怪談か研究の纏めた感じの小説のどちらかで目にしたような気がする。

 ううむ……ここまで出かかってるのに少し気持ち悪いねこの感じ。

 音色。……いや、これはメロエッタの話か。花の楽園?蠢く砂?雪月花?終末にて天使は微笑む?歯車、鈴の塔、新月の山脈、暗雲の龍、蜘蛛の糸、英雄国家の滅亡、無限氷道、青い鳥、氷洞………今掠った気がする。

 氷洞……違うな、新月の山脈、無限氷道。うん、無限氷道だね。

 確か現在のイッシュ地方とシンオウ地方がその名を持つよりも遥か前の昔、これらの地方は陸続きであったという内容だったのだけれど………)………うひぃっ!?な、なにするのさ!」

「グレシィ」

 

 いきなり首筋に冷気を注がれて驚いて体が跳ねた。

 あとちょっとで何か掴めそうだったのにちょっと怒り気味にグレイシアに振り向けば顔を動かし「そっち見てみ」と促されるのでそちらを見る。

 

「あ。……もしかして無視していた?………ゴメンね?」 

「あ~、いや、流石に体がそんなに変わっちゃったら無理もないかなって思うし、ね!」

 

 この場にいる女性はウチを含めて4人しかいない。

 男性と勘違いしていたのは悪いと思うのだけどサンカク丸さんの事はエモンガの事を聞いてきたり、ウインディの事やら配信内で口にした伝承でウチの見解を聞いてくれたりとやり取りが多くて親しい関係である。

 

 そんなサンカク丸さんが「なんともなかったよね」と周囲の人に投げ、同調してくれて「問題無かった」という言葉を引き出してくれたのを見てほんの少し優しさが痛いよう。

 

「それで、ウチみたいに体に異変が起きている人はいるかい?変わっちゃった人手ぇー上げてー!」

「変わった人はいないけどポケモンの姿が変わった人がいて、これって進化?」

 

 ルガルガンの真昼の姿がそこにいた。

 進化前の姿であるイワンコの画像を見せたら合っていたので今回の出来事で成長し進化したようで一安心だよ。

 近い内にイワンコは別の姿になるって説明のショート動画作って上げないと……

 

 ウチのように尻尾が付いて身長が凄く下がったとかは無かったのだけれど、元々腕に古傷があったらしいのだが綺麗に消えたって人がいたので目では確認できないけれど皆何かしらの変化をしている可能性はあるかもという確認が取れた。

 

「後は陸に戻れば一応解決かな?

 お役所さん達はやる事が山積みすぎるという事は置いておくとして……っと、ウチもやることあったや。

 ピジョット、オーダイル。

 ピジョットはオーダイルを誘導して湖が海に繋がっているかのルート確認。

 オーダイルは救助船の障害になりそうなポケモンがいないかの確認。

 ギャラドスとサメハダー、あとミガルーサなんかがいたら現状のポケモン科学技術では今回の船での救助活動は不可能と割り切るから戻ってきて。

 それと船が通れそうになくても2人の判断で多少強引な手段を使えば通れるだけの道を作れそうならその開拓をお願い」

 

 流石にこの大人数を運ぶのにウチのポケモン達だけじゃ厳しい。

 ピジョットは高速での飛行をしたばかりだし、リザードンは最大戦力だから遠くへは行かせられないのとヤミカラス達の氷を溶かす仕事がある。

 なのでここはピジョットにサポートしてもらいオーダイルに仕事をしてもらう。

 ウチがオーダイルを水中等でのライドポケモンとして選んでいる理由が水中で大岩を退かしたり、ロープを持たせて器用に作業させたりと色々できるからで今回の事には適任だろうね。

 

「警察の人はいますか?」

「はい!私です」

「良かった。今この湖が安全か確認をしているので結果が出るまでの間に移動手段をすぐに持ってこれる準備をしてもらえるように連絡を取ってもらえませんか?

 結果が出たら船かヘリのどちらかに向こう側まで運んでえ~………それ以前に電波はあります?」

「はい、電波は通じてるのでそう連絡してみます」

「ではお願いします」

 

 電波が届かないようなら一度ピジョットに戻ってもらい警察である彼を運んでもらい報告してもらった方がスムーズだという考えが浮かんだのだけど体力の温存ができて助かった。

 オーダイルもダイケンキも1人運ぶのでも大変なのでできれば船がほしい。

 無理ならヘリコプターになるのだけどヘリとなると順番待ちが発生して精神的によろしくないから、やっぱり理想は船だね。お願いだから船に突撃してくる感じのポケモンがいないで。

 突撃してくるポケモンがいる時点で船は当然、湖の一部を凍らせてその上を歩いて進むって手段も使えなくなるから。

 

「次は……リザードン、加減したねっぷうで氷を溶かすのとヤミカラス達を暖めてあげて。

 ギャロップとランクルスはそのサポートをお願い」

 

 元気に返事をしすぐに行動に移ったリザードン達のおかげで目で見える程の早さでこおり状態から回復し、へたり込んだり、ドンカラス達の方へと飛んで行くなどを次々とヤミカラス達が動き出していく。

 

 それからしばらく指示を出したり、外傷はなさそうだけれどメンタル面が気になったので1人1人声かけをしたり、今回の事でポケモンをどう思うようになったのかという本音の色を聞き出す事を目的とした軽い雑談を交えて少しでも多く言葉を発するように誘導し可能なら心のケアをしていく。

 せっかくポケモンをパートナーにし、まだまだ旅に出るのも不安になるひよっことはいえポケモン達と一緒に戦おうと選んでくれた人達だ。

 今回の事でポケモン恐怖症になったら本人もポケモンもそれは大きな悲劇と言えるとウチは考える。

 

「ん?人間が沢山いるから何かと思えば、お前ずいぶん久しぶりに見たでしゅね」

 

 という感じにいろいろしていると聞き慣れない高い声色がした。

 

「え、………シェイミ?」

「何お前お目々まん丸にして変な顔してるでしゅか?」

 

 うわ!うっわあ!シェイミだあぁ!ウチの目の前に幻のポケモンがいる!!!

 

「グレ!」

「いった!………ありがとうグレイシア」

「グレイ」

 

 グレイシアに股の辺り強めに甘噛みされて痛かったけど助かった。

 危うくまた思考が暴走列車みたいに爆走して行方不明になったあげく遠くで爆発するところだったよ。

 

「はいはーい。ポケモンが喋っていて凄いのはわかるけど、シェイミってポケモンはそんなに凄いポケモンなの?」

 

 おおっと!サンカク丸さんが燃料として石炭どころかガソリン突っ込んできたよ!

 ウチの中でブレーキが折れる音が聞こえた気がする!

 

「凄いも何も!シェイミは今では幻のポケモンと呼ばれる程のポケモンでね、その頭の花から汚染された空気を吸い浄化し、それによって生成された衝撃波によって荒れた大地を花畑に変えたという伝承が残っているそれはもう凄いポケモンなんだよ!」

「ふふん、私達に感謝するでしゅ」

「シェイミはグラシデアの花と強い関係があるんじゃないかというのが学会ではわりと共通認識なのだけれど残念なことに幻と呼ばれるだけあって滅多にお目にかかれるポケモンじゃなくて、姿を変えて空を移動する姿も目撃されていて、その姿の事はスカイフォルムと呼ばれているんだよ。

 シェイミが幻のポケモンでありながら有名な理由はなんと言っても親愛なる友へ花束をという小説がヒットしポケウッドで加速して世界的で知られることになったんだ。

 それと……」

 

 シェイミがいるならと軽く花畑を確認する。

 多種多様な花が咲き乱れる中で確かにグラシデアの花が存在していた。

 

「そこに咲いているグラシデアの花を感謝の気持ちとして、または誕生日などの記念日に贈る風習が世界的に広がったのもこの映画による影響がとても大きいんだよ。

 広がりすぎて少々意味合いが変わってチョコを一緒に渡すとかの文化もできて最近のこの文化は少しゴチャゴチャとしているのが少し残念……いや、当然の事なのだけれどウチは別に今の文化を否定するつもりじゃ無いんだよ?

 実際友達同士でお菓子の交換とかしてウチも楽しかったし。

 けれど感謝を伝えるという意味合いが少々薄れ気味になっているというのと、企業事業に力強く利用され金儲けに使われている光景を見るのはオリジンを探求する考古学者としては思うところが……」

「感謝を利用する!?ヒドイ人間がいるでしゅね!」

「あ~、うん、バレンタインデーみたいな感じ?

 ねえ、そこのグラシデアの花1本貰っても良い?」

「ちゃんと感謝の心を込めるなら良いでしゅよ~」

「なら大丈夫だね。どうしても感謝を伝えたい人がいるから渡したいんだ」

 

 そう言ってサンカク丸は花畑に近付き護身用として持っていたカッターナイフでグラシデアの花を1つ取り満足げに眺めると「うわ!ビックリした!」と驚きで体を少し跳ねさせる。

 

「どうしたんだい?」

「シェイミがこっちにもいたから、こんなに近くにいたのに凄い擬態で気付かなくてビックリしちゃったよ」

「え?……………え??????」

 

 サンカク丸さんの隣に行き花畑を確認してみると多種多様な花が咲き乱れる中でシェイミが2、3、4、5………5ぉ!?!?!?

 

 パァンと音が響く。

 

「えぇっ!?」

「……いきなりどうしたでしゅ?」

「気合いを入れ直しただけですのでお気になさらず」

「いや無茶だって」

 

 花畑に擬態しながらこちらを見ている他のシェイミ達を見つけてまた意識が暴走してしまいそうだったので両手で自分の頬を強くはたいて気合いを入れ直し、懐からペンとメモを取り出しペンからインクを少し抜く。

 

「あの、良ければインク付けて足跡をここに付けてもらっても良いですか?一枚で良いので。あ、オヤツ食べます?ポロックっていう人間がポケモン向けに作った木の実を使ったお菓子なんですけど」

「さっきも思ったけどまた急に早口になってなんなんだおまえ!さっきからこのゾロアどうなってるんでしゅ!?」

「え?ゾロア?カミラさんやっぱりポケモンに……」

 

 サンカク丸さんが驚きの表情でそんなことを呟いているけれど、それ以上にウチの頭の中で綺麗にパズルのピースがはまる音がして脳内で無限氷道のとあるページが浮かび上がる。

 

「そうだ………ゾロア。この特徴、ヒスイ時代のシンオウに取り残されたゾロアだ」

 

 そうだよこの特徴ゾロアだよスッキリした。

 シンオウ地方がある場所、その昔、ヒスイ地方になるよりもずっと前の昔、氷河期によって現在のイッシュ地方の位置とシンオウ地方は氷によって陸続きになっていてシンオウとイッシュに分かれて生活していたら氷が溶けてしまい完全に取り残され別々の進化をする事になる。

 ウチのこの特徴、現在じゃ絶滅しているとも言われているヒスイ地方のゾロアの特徴にそっくりなんだ。

 

「つまり今のウチはゾロア!?」

「ちょっと違う気がするけど他に何があるでしゅ?

 確かに白いのは久しぶりに見たでしゅが、お前達はどうでしゅ?」

「ミーも久々に見たでしゅ。ちょっと違うしかなり変な奴な気がしましゅが」

「それよりそのポロックってくれるでしゅ?足跡付けてやるから僕に感謝してポロックを食べさせるでしゅ」

「や……ヤッター!ありがとうございます!!!」

「そんなに嬉しいでしゅか!?」

「できれば表紙にも付けてほしいので2カ所くださいお願いします!」

「仕方ないでしゅね、特別にいいでしゅよ」

 

 ディアルガ様をこの目で見れたしシェイミの足跡を表紙とメモ内に1つずつ納めたし最高の1日だね!

 夢でも見ているみたいだよ!

 ウチはこれからこのページの反対側にもシェイミのスケッチなんかも添えたりしてこのメモが値段の付けられない価値にするんだよお!

 

「グレシィ!」

「あいたーっ!!!」

 

 痛いってば!わかってる!悪いかもしれないのはウチかもしれないけれどそんな強く肩を噛む必要無くない!?

 悪いかもしれないのは確かだけどここにシェイミが5……

 

「もっと沢山いた!?」

「グレシィーッ!!!」

「ちょッ危なッ!カントー人じゃないんだからアイアンテールなんてされたら怪我してしまうよ!」

「グレ、グレシィ、グレグレ、グレイシー!」

「あ、はい。ごめんなさい」

 

『ボクたちの命はいくらでもかける。けど関係無い他人を巻き込むな』って、末っ子にそこまで言わせてしまえばいくら暴走一歩手前だろうが流石に戻ってこれた。

 

「カミラさん、グレイシアちゃんなんて言ったの?」

「……ふふ、な~いしょ」

 

 その後、ちゃんと約束を守ってシェイミ達にポロックを渡し、

 ドンカラス達はどうしても無償だと安心できないだろうと判断し、銃を返して貰う条件に追わないと約束をすると不満そうではあるものの銃を警察へ返しどこかへ飛んで行った。

 それらが済んだ頃船に激突しそうなポケモンはおらず十分船を通すことができると調査報告が届いて一安心した。

 

 安全が確認できたので船で皆が帰るのを見送り島に残ろうとしたのだけれど、流石に駄目だった。

 まず警察側のお偉いさんがウチからどうしても話しを聞きたいと言ってきたのでできれば付いてきてほしいと言われた。

 正直コッチはどうでもよかったから島の生態系の調査とか言って逃げようとした。

 

 けれどいったいいつ頃なのかか、実際にサンカク丸さんに出会ってずいぶんと懐かれてしまっていた。

 

 対面したのは初めてなのだけれど、サンカク丸さんとはやはり話しの趣味が合うので船を待つ時間でポケモン歴史から派生する雑学なんかをかなり話していたのだけれど、まさか警察の人にお断りの言葉を口にしている最中、ウチの手を両手で掴んで「側にいてくれませんか?」と、一緒にいない事を不安に思ってもらえるくらいの信頼を得ていたとは思わなかった。

 島にいる間サンカク丸さんが一番元気だったし、掴んでくるその手や表情、呼吸や気配から奥深くまで読み取ろうもしてもポケモンが怖いと思っている様子ではなく、単純にウチがどこかへ行ってしまう。不安ではなく心配の気配。こうやって側にいるのが最後かもしれないという事に軽い不安を覚えているのだと感じた。

 

「……うん、わかった。ウチも乗るとするよ」

 

 ウチは昔から人間の友達を作るのはド下手くそだったけれど、気付いた時には信頼できるライバルで親友ができていたなと思い至り、彼女がこの世界で初めてのそういった存在なのかと思った。

 だからウチは知的好奇心よりもこの世界で初めての友人を、少し年齢が離れてはいるが損得感情抜きに僅かに芽生えた目の前の友の可能性を選ぶことにした。

 






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