ポケモンの無い世界に迷い込んだポケモン界の女性   作:メリルメリルメリル

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広すぎる人間の生活圏

 

 予想通りシャワーが設置されていたので嫌な気分になった事も含め色々と洗い流しているとスマホロトムが異変に気付き騒ぎ出す。

 

「ロトロト!大変ロト!大変ロト!」

「はいはい、どうせシロナさんに繋がらないとかでしょ」

「そうだけど違うロト!」

「えぇ?もしかしてダイゴさんもかい?

 ……って、いやいや。あの人、方向性は違うけど確実に私やシロナさん側の人だよ?

 いつ見るかわからないけどメールで済ませておいて」

「違うロト!」

「それ、シャワー終わるまで待てない案件かい?」

「……………待てるロト」

 

 煮え切らないスマホロトムの様子を疑問に思いながらもシャワーを済ませ、ダイビングスーツ等はビニール袋に入れ服を着る。

 フィールドワークを重ねた結果海に入るのであれば少し大きめで膝付近までのワンピースなら例え板で囲っただけのシャワーの個室でも濡らさず着替えることができて都合が良いと知った。

 趣味とは違うものの便利だと割り切り黒のワンピースをスカートの方から雑に着用していく。

 いつもであればリザードンとランクルスに協力してもらい髪を乾かすところまで済ませるのだけどタオルを被るだけで個室から出る。

 

「なあに?何があったの?」

「ここ!ホウエン地方じゃないロト!」

「……………あぁ~、うん、なるほど。違和感の正体はそれか。納得した。

(言われてみればキャモメの数があきらかに少ない気がするね。

 人がいないのはたぶんサメハダーが大量発生を起こしたからかな?さっき追われたし、あの様子なら普通にその可能性が高そうだけどリーグ協会は何を……って、あぁ。そうだった。

 そろそろPWTが開催する時期だ。当選漏れしたけどもウチもチケット取ろうとしたのに忘れていたよ。ならどの地方のリーグ協会もてんやわんやになっているだろうから頼みはレンジャーやエリートトレーナーになるのだろうけど近場にいなくてそんな数集まらなかったから仕方なくといったところだろうね。

 だとしたらジムリーダーの推薦は蹴ったとはいえ一応ポケモン犯罪対応許可証だけは持っているウチがある程度散らしておいた方が良いかな?密猟者の撃退や捕縛は慣れているのだけれど大量発生という一種の自然現象の対処は初めてだし疲労感もかなりある。

 しかし夏真っ只中な季節に海水浴場が実質閉鎖の状態は周囲の影響が凄そうだし、こればかりは仕方のないことだね。

 まずは近場の協会かポケモンセンターに……)」

「グァゥ」

「ん?なあに?」

「グァ、グゥ、グア」

「うん、確かにその通りだね。

 対処云々よりも先にココがどこか知った方が良いね。

 いつもの悪い癖で思考があっちこっちに行っていたよ、ありがとうダイケンキ。あとついでにこのまま荷物番もよろしくね。

 リザードン!」

 

 ボール投げ、出てきたリザードンが大きく雄叫びを上げやる気満々な様子を見せてくれる。

 中から会話を聞いてくれていたようで話しが早い。

 乗りやすいように姿勢を下げてくれるのに合わせて背中へ飛び乗り「できるだけ高く遠くを見渡せるくらいで」と注文して空へと飛び出し旋回しながら上昇していく。

 真っ直ぐと登るように飛び上がるのではなく、こうやって風を捕まえる感じに滑らかに上昇する事でウチへかかる負担を減らしてくれていて、特にそうしてほしいと言ったわけでもないのに自然と気配りできるウチの子は絶対にモテる。

 

「(それにしても……今の反応は何?リザードンを出したら遠くから見てた人達の反応がおかしかった。この場所がホウエン地方ではなくイッシュ地方のような遠すぎる場所なら見覚えの無いポケモンを見て驚くのも辛うじてわかるのだけれど、10人以上いてその全員がリザードンを知らない?そんなバカな。

 有名なリザードンブリッジに加え、あのチャンピオンダンデの相棒でキョダイマックスを知らないはいくらなんでも無理というものが……

 それにあれは……あの反応は驚くよりももっと純粋でわかりやすい……………)

 …………………そうだ、わかった。恐怖だ、あのカメラマンの人と同じでみんな怖がったんだ」

「グォォ?」

「うん、わからないという事がわかっただけだよ。……リザードン、ストップ」

 

 空高くから見渡す光景は、山と海を除いた、大地全てが人工物だと言っても過言ではないような光景だった。

 

「ここは……どこ……?なにこれ、こんな場所、ポケモン達が住む場所はどこにあるの?」

 

 高度な発展をした街というのは沢山ある。

 しかし今いる高度から見渡して人工物で覆われていない場所が見受けられない程広い街なんてカミラの知るどんな地方にも存在しない。

 現状見渡している街は広すぎる面積のわりに都会と呼ぶにはあまりにも景気を感じさせない。

 これだけ広く生活圏を奪っておいてこの程度の発展しか無いなんて許される事ではない。

 

 ポケモンの歴史を知る度に自分達はポケモン達から共に生きることを許容されているのだと強く実感させられ、そのポケモン達の厚意を踏みにじる目を覆いたくなるようなポケモン犯罪の数々を知ることになってなおポケモンを好きで居続ける事を止めることのできない彼女が、ポケモンの事を一切考慮せず広げられた人間の生活圏に怒りすら感じる。

 

 だからこそ全く知らない土地だというのに、自分の常識をあざ笑うかのようなその光景を見て自分自身の心配よりも野生のポケモン達の心配が勝りそんな言葉が自然と出ていた。

 

「……さっきのカメラマンの人に聞くことができたね」

 

 

 

 

 

 

「おいアレ!!」

「落ちてる!?」

「あれ、こっちに来てない?」

 

 謎の生物を従え海から現れた謎の女性がオレンジ色のドラゴンとしか言い表せない存在を召喚し背中に乗って飛んでいくところも含め撮影を続け、緊急で番組の映像をこちらに繋ぐように局へ連絡をしようとしている最中だった。

 そのドラゴンが墜落するような形で高度を下げ一番最初に気付いたカメラマンが大声を上げた事で準備をしていた者達が手を止めその様子を確認し口々に声を上げた。

 その数秒後、真っ直ぐ向かってきていたドラゴンは軌道を反らし滑空するような形で速度を落として報道陣から遠過ぎず近過ぎない位置に着陸。

 そして出てきた時と同じように唐突に姿を消した。

 

「何なんだ……」

「今のちゃんと撮れてるな?」

「はい、バッチリです」

 

 ドラゴンが姿を消したかと思えば、水色の猫とも犬とも思える生き物と、浮遊する緑色の液体に包まれた宇宙人のような生き物が女性の周りに召喚される。

 それらを召喚した女性がこちらに手を大きく振り「先程はすまなかったね、そちらに向かっても宜しいでしょうか?」と、何処となく癖のあるものの外国人とは思えないとても流暢な日本語で聞いてくる。

 

「良いですよ!!!」

 

 これまでの事で対話が通じ、少なくとも彼女がいれば襲われる心配もないと判断したのか、この場の一番偉い人が他のメンバーに確認も取らず、それも僅かな間もなくそう即答したため他の面々は動揺し、その強硬を察したであろう女性は苦笑しつつ都合が良いのかこちらに歩いてくる。

 しかし浮遊する宇宙人のような生き物だけはその場に留まり続け、口にはしないが疑問に思う者ばかりであった。

 

 疑問に思う報道陣の中で何故動かないのかと気付けたのはカメラマンと「良いですよ」と許可を出した者の2人だけであった。

 女性は振っていた手を下ろす際に確かに手の形を変えハンドサインを送っていた。

 あまりに手慣れた動作で何よりも短いそのサイン意図をキチンと理解し従っている様子を目撃し、彼女から指示がない限りは自分達の身は安全だと再認識するのには十分な情報だった。

 

「初めまして、ウチはポケモンの神話とその神話に関連したポケモン達の生態の変化等を専攻とする考古学者としてシルフカンパニー様が親企業となる場所で雇用させていただいている山口カミラと申します。

 先程は一月かけて行ったフィールドワークの帰りで疲れていたとはいえ失礼なことをして申し訳ありませんでした」

「………ポケモン???」

「シルフカンパニー?」

 

 カメラマンの呟きを合図に報道陣の面々は互いの顔を確認し合う。

 もちろん知っているかという確認であるが当然誰も知らず、視線を女性に戻せば口にはしないものの「嘘でしょ?」と思っていると察するのが簡単すぎる程引きつった笑みへと変化していた。

 

「おいで。……よっと。この子はグレイシア。イーブイが進化した姿なのですがご存知ですか?」

「いえ、初めて見ます」

「そうですか……ありがとうグレイシア」

「グレ~」

「……確認ですがイーブイもですか?」

「見たことも聞いたことも……」

「なるほど……あ、ウチの生まれはイッシュ地方なのですがカントー、ジョウト、シンオウ地方を行ったり来たりする事がぁ~…………ご存知なさそうですね。

 ちなみにここは何シティ……いえ、何地方でしょうか?」

「地方と言いますか……神奈川県です」

「カナガワケン……???

 …………こちらの紙幣に覚えはありますか?」

「……見たことある?」

「さぁ?」

「イタリアの紙幣に似てるかも……?」

「そうなのか?」

「すみません、適当言いまし……大丈夫ですか?」

 

 渡された紙幣を見て口々に感想を述べている最中カミラは両手で顔を覆いしゃがみ込んでしまい「預金1億4千万が紙切れ……」と小さく掠れた声が漏れ出したのだが、「グレっ!グレイシー!」と慰めようと頑張るグレイシアの声に阻まれカミラの呟きは報道陣の面々には届かなかった。

 

「………いえ、なんでもありません。大丈夫です。

 ところで流石プロが使っているカメラだけあって良いカメラですね~おいくら万したのでしょうか?」

「え、ええっと……確か「待った!」600万……どうしました?」

 

 何を嘆いていたかは聞こえなかったものの、いきなり値段を聞いてきたその理由に気付いて止めに入ったが遅かった。

 カミラは業務用カメラの価値を知っており今ので自分の紙幣で購入した時と数字の桁に違いが無いと理解し売れると内心ガッツポーズを取った。

 

「私達の側は当然、海に、山に、空に、どこにだってポケモンがいます。

 そして私達の生活はポケモン無しでは成立しません。

 そんなポケモンの事をご存知ないと仰りましたが空にはポケモンであるキャモメやペリッパー、海にはホエルコ、ラブカス、サニーゴにサメハダーを確認しておりますが本当にご存知ありませんか?……で、あるなら。

 ウチは貴方方が欲しいと感じたポケモンの情報を売りましょう。

 最低価格5千、最高価格10万。

 それ以上の価値がある情報は絶対に話しません。

 ウチが売る情報は秩序を管理している協会が流しても問題無いと判断するだろう情報だけです。

 この子達を連れて歩いていればそういった協会関係者がウチの前に来てくれるでしょうから、後で無料……かどうかはわかりませんが、誰でも入手できるようになる情報を先に買って得るだけですがどうします?」

 

 その交渉に対し上に話を持ち掛けると伝えると「焦らなくて良いですよ。ウチも契約書を用意したりしますので」と言い本当に用意した。

 この後情報を買う事になり、その副産物としてどうやって契約書を用意したかという事も知ることになった。

 全身がプラズマで構成されているロトムというポケモンにパソコンのデータをインクを使わない印刷、電気で燃えないように焼き、焦げ跡で作成したと説明され本来なら驚くところだが、学者というだけあって丁寧でわかりやすく説明されたからこそ他の情報と比べればロトムの内容は比較的マシで驚くには値しなかった。

 

 そしてカミラは80万程の収入を得た。

 





 内容次第かもしれませんが、少なくとも生き物の生態についての細かな詳細の記された論文が10万で売られるなんてあまりにも安すぎるとカミラ本人も思っていますが現状無一文なので仕方なし。
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