ポケモンの無い世界に迷い込んだポケモン界の女性   作:メリルメリルメリル

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出来る事の確認

 

 一通りの家事を済ませ外に出る前の段階になってスマホを確認する。

 

 しかしSNSの通知は多いものの個人メールの方には1件たりとも連絡が来ていない。

 良いことなのだけれどほんの少し不気味だね。

 

「てっきりもっと頻繁に世界が変化していくのかと思っていたのだけれど、連絡が無いということは案外平和みたいだね」

「え?」

 

 え?ちょっとイオリちゃん?なにその反応?なんなの?

 ヤア~ン、ほんのちょっと不気味だった感じが一変して物凄く嫌な予感してきたよ。

 

「なに今の『え?』って。ウチの記憶違いじゃなければ昨日ニュースでも特にどこかの土地が広がったって報道なんかは無かったよね?」

「SNSじゃトレンド入りするくらいには大ニュースになってたよ?

 海外の2カ国で土地が広がったってそれはもう大いに盛り上がっていたけど……あれ?言われてみれば確かにテレビじゃ放送してなかったような………ん~?なんでぇ???」

「あぁ、そっか。海外か。うん。ポケモン騒動は世界中で起きているんだったね」

 

 そして何故テレビニュースでは放送されず連絡も来なかったか察した。

 ウチが海外へ行ってしまう事を危惧してあえて情報を流してこなかったのか。

 SNSの方は気が向いた時に少し見るくらいだし昨日は完全に休日として割り切っていたから気付かなかった。

 

「ねえイオリ、ウチが産まれたのはイッシュ地方でね、この世界だとアメリカの位置。

 けどね、育ちは日本だから英語は書けるし読めるし聞き取れるけど、殆ど話せないんだよね」

「え?そうなの?かなり意外。てっきり世界中どこにでも飛び回っているのかと思っていた」

「そうでしょ。でもね、その考えも別に間違いでもないんだよね」

「えぇ?………通訳の人を雇っているからとか?」

「そうじゃなくてね、これが意外と通訳無しでもどうとでもなるんだよね。『コレください』『お腹すきました』『コレどこにありますか?』『いいね』『そうですか』『凄いですね』『気になります』『ありがとう』『嫌です』……これ以外ウチはイッシュ語……じゃなくて英語を何も話せないし覚える気も無いよ?」

「え〜?カミラってかなりお喋り好きな印象あるからそれしか喋らないって想像できないなぁ〜」

「だからウチは基本的に日本から出るつもりなんて無いから安心してね」

「んん?………………あっ!?ニュースで放送されなかったのってもしかしてそういう事!?」

「タブンネ~」

 

 流石に全てがそういう理由とは思わないけれど、海外の事情を知ってウチが飛んでいくのを恐れて放送されなかったと言われたら納得できる理由だよね。

 実際に連絡が無いと不審に思ったこの瞬間まで効果があったわけだしね。

 この世界のレーダーがどの程度のスペックか知らないけれど、マッハ2で飛行できる生物を探知できるレーダーが存在するとも思えないし、海面スレスレを飛行すればたぶん探知されないだろうからね。

 その移動手段を知ってしまったからこそ警戒して放送しなかったというのは納得だよ。

 

 実際グレイシアがヤミカラス達を凍らせた光景と手段の説明はニュースで放送されていたけれど、肝心のどうやって東京付近から兵庫までの距離を短時間で移動したかは報道されてない辺り他国へその手段を漏洩しないよう必死なのだろうね。

 

 この国のマスコミは他国の回し者とネットで言われたい放題な時があるくらいには他国を上げ自国を下げる番組を放送する事があるそうなのだけれど、流石に今の事態は重く見ているようだ。

 マスコミが過去に起こした事柄を纏めたサイトを見つけ、そのサイトに記された事件名から複数サイトを調べて内容に齟齬が発生していないのを確認できてしまった時には報道関係者の上層部は全盛期のロケット団みたいな連中なんじゃないかと少し心配になっていた部分もあったから、自国からウチという未知の生物からの防衛手段が他国へ行ってしまうのを防ごうとしている姿勢を実感できて本当に安心した。

 流石にいくら大金積まれようが見えている地雷を踏ませるよう誘導しろとか、底の見えない崖から他人を突き落とせなんて命令は聞かないようで何よりだよ。

 

 

 

 

 川沿いにある人気の無い開けた場所に到着しトレーニングを始める。

 

 ウチも一緒に参加するのは3つ。

 リザードンの万能飛行とピジョットとの高速飛行訓練。

 そしてリフレクターやステルスロック、氷のオブジェ等を使った擬似的なフリーランニング。

 

 ピジョットとの飛行は2日前にしたばかりなのだけれど現在の体でもできるかの確認の為に行った結果、むしろ以前よりも楽になっていた。

 交代で他の子のトレーニング中に休息を取り障害物走をしていよいよリザードンとのトレーニングになる。

 

「よっし」

 

 背中に飛び乗るタイミングは完璧、むしろ姿勢を低くし抵抗を減らし加速するまでがスムーズで実に良い気分だ。

 それはウチだけでなくリザードンも同じようで、これまでの行ってきたトレーニングの中でも一番と言って良い程の一体感を感じる。

 ここまで強い一体感は実戦でしか感じたことがない程だよ。

 

「……………え?」

 

 そんな中、なんとなくリザードンの背中を指で軽く撫で、より強くこの感覚を確かめようとした時だ。

 いったい何をどうミスしたのかわからない。

 自分が全く想定していないタイミングで体が放り出され全身が重力に飲み込まれるような感覚に襲われ頭が真っ白になった。

 

「グルゥ゙?」

「………(う~ん、いつ見てもウチのリザードンはイケメンだね、本当に頼りになる)」

 

 身を投げ出され、その異変に放り出されたウチ自身よりも早く気が付いたリザードンが大きく輪を描くように先回りし、その両手で壊れ物を扱うかのように優しく、ウチに似合うとは思えないけれどお姫様だっこというものをされ、心配そうに顔を覗かれている。

 

「……………………今、ウチは落ちたの?」

 

 このタイミングになってようやく自分が落下するところだった事に気が付いた。

 

 ………は?ふざけているのか?今ウチはいったい何を考えていた?

 たかだかトレーニングとでも考えてたの?

 トレーニングなのだから死ぬ事はないとでも思って落ちたの?馬鹿か?

 何のために本番よりも過激なトレーニングをしてたと思っているんだ?

 いったい何秒思考を停止させた? 1秒もあれば人は簡単に死ぬぞ?

 今、ウチは死んでいたぞ?

 

「ふざッ!!!リザードン!予定変更!感覚を確かめる感じから一番キツイのでいくよ!

 それを今日から一週間欠かさずして徹底的にズレを修正する!」

「グオォ!」

 

 リザードンの肩に手をかけ、それを軸に背中へ乗り直し再会する。

 不甲斐ない自身への怒りの感情にまかせ予定よりも時間を増やして行ったのだが、結果として様々な問題が浮き彫りとなった。

 この体は基本的な身体能力なんかが上昇しているようだが体力の消耗が激しいようだ。

 

「あれ…………?」

 

 再び身を投げ出されてしまう。

 しかし今度は、原因がわからないのにわかるという奇妙な状況だった。

 

 体が急に動かなくなり、それも立っている事すらもできず崩れ落ちるように膝から崩れリザードンの背中から滑り落ちたのだ。

 興奮し過ぎて疲労感を忘れていたとかそういった話しではなく、呼吸のリズムも正常であり本当に何で動かなくなったのか原因がわからず、二回目のお姫様抱っこをされるハメになった。

 

「カミラー!大丈夫ー!?」

「だいじょばないよ~」

「救急車呼ぶ!?」

「やっぱり大丈夫だから落ち着いて」

「ラ~ン」

「なあに?……って、ヒメリのみ?」

 

 思っていたより増えていたギャラリーは無視してとりあえず降ろしてもらい横になろうと考えていたのだが、お兄ちゃんがヒメリのみを食えと差し出してきたので言われるがままに食べたらすんなり立てた。

 

「……あ~、なるほど。これがスタミナ切れか」

 

 ポケモンバトルの公式戦にはダメージ以外にスタミナ切れによる戦闘不能も存在する。

 ポケパワーを消耗しすぎたポケモンが陥る状態であり、バッチ収集の旅で初めてのジム戦で『いわ』タイプや『はがね』タイプのジムに訪れた場合8割以上のトレーナーがスタミナ切れでの戦闘不能を最低1匹、最悪3匹全てが陥るなんて経験をする事になる。

 コレをウチらクラスのトレーナーは風物詩だとか洗礼とそんな風に呼ぶくらいにはありふれたものだったがポケモンじゃなくて自分が経験する日が来るなんて夢にも思わなかった。

 

 今こうやってヒメリのみを味わっている最中でもじわじわと、あるいはチリチリと熱い闘志が残っているというのに自分の意思や覚悟とは関係無く身動き取れなくなる程だったなんて歴史的新発見だね。

 これをレポートに纏めたい衝動があるもののそんな時間が無いのがすごく残念だ。

 

 今回のコレがスタミナ切れだとわかった以上もう失敗はしないし、解決する方法もわかっている。頑張ろう。

 

 

 

 

 帰宅してすぐどうすればポケパワーを扱えるかの会議をする事になったのけど意外にもすぐに提案が出てそれをしてみた結果、案外簡単に体の中にあるポケパワーの存在を認識し、荒すぎるものの自分の意志で操作することができるようになった。

 と言ってもここまですんなり出来たのはウチの功績じゃなくて9割以上お兄ちゃんの功績だけど。

 

「おぉ……こんな感じなのか………」

「ランクル~」

「では早速………おっと、これは不味いね。解除して」

「ラーン」

 

 試しに鉛筆を持ってみようとするも簡単に折れてしまい解除してもらって事なきを得る。

 今やった事は一度ドサイドンを経由してウチにパワースワップを使うという方法で、提案したのも実行するのもランクルスで本当にお兄ちゃんの功績がデカ過ぎる。

 同じような事を毎日繰り返せばそのうち技を使う感覚というのも掴めるだろうね。

 せっかく?人間かどうか怪しくなったというのに、カントー人にもできる技の使用ができないなんて情けなさ過ぎると思わない? ウチは情けないを通り越して悔しくなるよ。

 

 

 

 

 夜も良い時間になった頃、イオリに「配信はしないの?」と聞かれ、資料室は防音室になっているのだから複合機をバックに資料を写さなければ問題無いと言われ、「それならできそうだけどイオリのお父さんに許可を取らないと」「もう許可は取ってるよ。ほら見て、LINEで良いよだってさ」というやり取りがあって配信をする事になった。

 

 そして無事に終わったのは良いのだけど……

 

「お疲れ様です!ねえカミラ、さっそく聞きたい事が……ってあぁ!」

 

 片付け済ませてリビングに行くと配信内容を書いたであろうノートを持ち上げ近付いてきたイオリからランクルスがサイコキネシスでノートを取り上げる。

 お兄ちゃんナイスサイコキネシス。

 

「全く、勉強熱心は良いけれど度が過ぎているよ?

 それとも3徹しそうな悪い子はお姉さんが寝かしつけてあげなきゃ寝れないのかい?」

「えっ………………………………………………」

「………ちょ、ちょっと。沈黙が長いのだけど、どうしたんだい?」

「えっと、一緒に寝てくれるんですか?」

「いったい何をそんなに悩んでいるかわからないのだけれど、そんなに一緒に寝たいの?

 ウチが嫌がると思った?全然構わないけど……あ、もしかしてウチが知らなかっただけで肉親以外と並んで寝るのは宗教的理由かなんかで駄目だったのかい?」

「いや、そうじゃなくて私の中でカミラは凄い人って感じで、そんな事して良いのかなって……」

「えぇ?……もしかして友達って思っていたのはウチだけだったのかい?」

「いえ!友達です!友達が良い!一緒にいて昨日も今日も楽しかった!」

「なら良かった。ウチが思うに友達は過ごした時間じゃなくて質、より良い友好関係だからさ。

 ウチの知らないところで旧友がロケット団やっていてさ、連行されたのを見た時はちょっとショックだったからこそそう思うんだ」

「ロケット団?」

「ポケモンを違法に売買したりする超巨大反社会的勢力って感じかな?………って、自分で話しといてなんだけどさっさと寝るよ」

 

 布団に入り最初は話しかけてきていたのだけれど、当然の事なのだけど疲れが溜まっていたようですぐに寝てしまっていた。

 

 

 

 

 次の日、今日もリザードンの万能飛行トレーニング。

 この飛行方法が一番多様するから宣言通り一週間欠かさずするつもり。

 普段は週に2~3回程度の頻度で行っていて、しない時はフィールドワークとかリーグ期間中とかぐらい。

 

 本当に毎日しているトレーニングは1日最低でも5時間ボールに触れることだね。

 モンスターボールは体の一部、どんな角度、どんな体制からでも投げられるように欠かすわけにはいかない。

 過去に数日触るのを止めた時があったのだけれど、それだけで触れた時に違和感を感じるくらいには欠かしてはならない訓練だ。

 

 飛行訓練が終わってからはウチが技を使用できるようになるための特訓だ。

 自身の中にある新しい感覚、たぶんポケパワーのコントロールをする為の練習をする。

 昨日ある程度掴みを得る事ができたからか、あまり時間を使わず手のひらサイズの変なモヤのようなものを出す事ができた。

 どうせ出すなら『あくのはどう』とか『シャドーボール』を出そうと「ぐぬぬぬぬ」とか唸っていたくせに出てきたのがコレで、出せた喜びと同時に強い落胆が押し寄せてくる。

 

「わたアメ?」

 

 手の上に出てきたのを見たイオリがほぼ反射的に口にした感想に確かにわたアメっぽいなと思った瞬間、そのモヤは既にわたアメっぽい見た目をしているくせに完全にわたアメな見た目に変化した。 わたアメになったソレを指で突こうしたのだけれど、触れる感覚も無くすり抜けた。

 

「なるほど……コレはイリュージョンだね」

「イリュージョン?」

「技とは別にポケモンは特性と言うのを持っていて………」

 

 特性と技の違いを説明しようとした時、ウチの世界の音楽が流れる。

 音の発生源は当然ウチのスマホロトムで、イオリの顔を伺うと「どうぞ」と促してくる。

 

 ただ、この着メロは警察関係者からなんだよね。

 正直出たくない。

 嫌な予感はしないし平気だろうけど、それはそれとして出たくないし聞きたくない………

 自信はあるけれどそれはそれとして合否の通知を開くのが嫌だと感じるのと似た心境だよ。

 

 頼むからシロガネ山みたいな超危険地帯が人が多い場所や国会関連の重要施設付近に現れましたとか気が遠くなるような報告は止めてよねという思いを飲み込むように大きく深呼吸をし、意を決して出る。

 

 そしてウチの予感通り大した問題ではなかった。

 公務員さん達からしたら大問題なんだろうけどさ。

 

「………………どうだった?」

「ん?別に大したことなかったよ?ただちょっと工場地帯がポケモンに占拠されてたみたいでどうすればって電話」

「え?大したことなかったじゃなくないそれ?」

「話し合いでなんとかなりそうな範囲だから大した事ないよ。

 せっかくだしイオリも一緒に様子見に行かない?

 もしかしたらこの辺じゃ珍しい『でんき』タイプの子とかもいるかもよ?」

 

 今回の招集は本当にウチの出番が無さそうだけれど彼等の様子は見たいので行く事にした。

 

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