ポケモンの無い世界に迷い込んだポケモン界の女性 作:メリルメリルメリル
ポケモン達との話し合いから1週間が過ぎた。
あの話し合いの後工場見学をして警察の人達に映像と作成した濾過器の設計図にウチが個人的に感じた彼等の印象等を纏めたメモのコピーを渡してからは鍛練と調査と配信の日々だった。
この1週間日本国内で突如土地が出現する事はあっても運が良いのかポケ災等の問題は無かった。
しかしどこかの国に出現した鉱山から正体不明のエネルギーを宿している鉱石(ウチから見たら普通のタイプジュエル)が見つかったとかでなにやら香ばしい匂いがしてきたのでウチの知らないところでウチの知らない人達がポケモン達に喧嘩売ったらどうなるかの見せしめになってくれることにほんの少し期待しているのが嫌になる。
そしてとうとうウチらの近所にも変化が起こり徒歩10分程の距離、商店街に巨大な森が出現した。
「本当に森ができてる……」
商店街のおばちゃんが差し入れでくれたミネラル麦茶を口にしたイオリがどこか楽しそうにしみじみと見たまんまのことを口にした。
商店街の中間くらいのところを真っ二つに引き裂いて出現したこの巨大な森の入り口はどういう訳か商店街の道なりと同じになっており、ビッパ等がそこいらを歩いているので比較的平和な森なのだということがわかる。
「ねえイオリ、本当に泉の調査の方しちゃ駄目なのかい?」
「はいはい、どうせ調査とか言ってシェイミちゃん達とお話したり岩の文字の解析とか後回しにしても問題無いとこばかりに力入れてるんだからお茶も貰ったしこっち優先しよ」
「むぅ、最近イオリ遠慮無いというかなんというか……」
「控えてほしい?」
「ううん。むしろ嬉しいかな。 さて、君に決めた」
「じゃあ私も、出てきてトビくん!」
「ココ!」「エモ!」
ウチがココドラを出した事が意外だったらしく「ココドラちゃんで平気なの?」なんて聞いてくるけれどビッパがビーダルを連れずに歩けるような平和な場所だから何か起きそうになってからでも大丈夫だと伝え森の奥を目指して歩き始める。
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「カミラ~!ちょっとコッチ来て~!」
森の中を進んでいるとこの森はウチが持っていないきのみや道具なんかが落ちているので手分けして回収しようとなり数分した頃にイオリが大声でウチを呼んでくるのでそちらへ向かう。
「カミラカミラ!コレ何のポケモンがモチーフ!?」
「エモ!エモエモ!」
「これは……ガルーラの石像?」
そこは森の中にある開けた空間で、その中心に本物と遜色無さそうなサイズのガルーラの石像が置かれておりペタペタと興奮した様子で石像に触るイオリと、石像の上に乗り仁王立ちするエモンガのトビくんの姿があった。
「凄いね、まるで生きているみたいな出来映え。…………ガルーラの事聞く?」
「もちろん!」
「コホン、以前ポケモンのタマゴグループに関して説明はしたよね?
その時に少し話したのだけれどメスしか確認されていないポケモンが存在するというのは覚えているかな?」
「もちろん覚えているよ~……って、格好いいのにもしかしてメスしかいないの!?」
「その通り、ガルーラはポケモンの中でも珍しいメスしか確認されていない種族で見ての通り有袋類のカンガルーのように腹部のポケットに子供を入れて育てる愛情深いポケモンなんだよ。
その愛情は自己犠牲の精神を通り越して遺伝子にも刻まれているほどでね、寝返りなどで子供を潰してしまわないように座ったまま眠るという進化をしていてね、ガルーラの子供に対する愛情は同族を越えて他種族にも向けられる物でウチが記憶している限りではカラカラ、ピチュー、ピィ、そして人間であろうと我が子と同じように育てていたという目撃情報が記録として残っているほどだね。
ガルーラの子供は3年ほどで親離れするのだけど………この石像は子供が親離れした後なのか、はたまた何かしらの事故で子供が死んでしまったかで大きく解釈が分かれてしまうね」
「え?いや、いくらなんでもそんな縁起の悪い石像なんて作らないんじゃ?」
話しながら石像を調べていたのだけれど子供が見当たらない事に気が付いて嫌な予感がして口にすると当然の反応が返ってきた。
ガルーラは確かに愛情深いポケモンではあるのだけれど恐れられるポケモンでもあったりする。
「こうやって石像として残っているのだから単純にお祭りなんかの見世物として用意したか、宗教的な信仰心を込めて作り上げたのかのどちらかになると思うのだけどイオリは他に何か思い当たるかい?」
「他に……………あ、墓石って事も……って、そっちのが縁起悪い!ないない!思い当たらない!トビくんそんなとこいちゃ駄目!降りて!」
「エモ?」
「墓石……そっか、その可能性も」
「わー!足下見んな!」
ウチが石像の足下に目線を移せばトビくんを後頭部にくっつけたイオリが割って入り全力で阻止する。
いくらウチが考古学者だからってひっくり返したりしないのに。
「まあ墓石云々は置いといて宗教的な物だと2つのパターンに分かれるんだよ。
1つは今までの話しの通り愛情深さから愛の神獣といったような扱いをされるパターン。
もう1つは情けも容赦も無い破壊の獣の象徴として扱われるパターン」
「えぇ?なにそれ、180度違くない?」
「ガルーラはね、その愛の深さ故に子供を害すモノには本当に容赦無いんだよ。
大人のガルーラの大きさの平均値は2.2って言われていてね、この石像は本物と変わらない大きさで、この巨体から放たれる渾身の右ストレートの威力は小規模なじわれを引き起こす事ができるって言ったらどう?」
「それは……破壊の獣の名に恥じないと思う」
「でしょ~?」
という会話をし石像の撮影などをしてから更に深く森の奥へと足を進めていった。
結果的に森の奥には洋式の一軒家があったくらいでそれも廃墟であり、ゴーストタイプのポケモンが暮らしていたくらいで特に変わったものも見受けられずこの日はこれで帰る事にした。
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更に1週間程が経った。
あの森に訪れた次の日、またその次の日と続けてこの森に訪れた事で面白いことがわかった。
なんとあの森は入るごとに地形が変わっており必ずガルーラの石像に辿り着き廃墟に行き着くという不思議すぎる現象が起きている。
3日目はギャロップの背中に乗り1日で10週してみたが入る度に道が変わっており、道しるべとしてグレイシアに通った道に氷の柱を作らせながら進んだものの1度出てから入り直すと中の氷柱が消滅するという面白い結果となった。
なので試しにボディーガードとしてドサイドン、ランクルス、ダイケンキを付けてイオリには森の途中で氷柱の側で待機してもらい、ウチは出てから入り直すという事をしてみた結果イオリの側にあった氷柱が唐突に消えたらしい。
大まかな消えた時間を教えてもらうとウチが森に入り直した時間とほぼ一緒。
それに消えたというよりも沈んでいった、あるいは飲み込まれたように見えたとイオリがわりと本気で怖がっていたので慰めたりと本当に興味が尽きないよこの森は。
おそらくだけれど飲み込まれたという表現は合っていると思う。
ウチの世界にはポケパワーの吸収実験というのが存在し、イオリの説明を聞く限りでは吸収実験の現象と酷似しているからね。
当然配信もやっていたけれども最近の配信内容は森に関する事柄の経過報告みたいな内容と、生放送で実験の様子を流すだけという内容ばかりだった。
氷柱が消える恐怖体験でイオリが泣きそうになってから生放送はしなくなったけど。
そんな感じで1週間が経ってウチはついに念願の目標を一つ、いや、二つ達成した!
「ただいまー!イオリー!お酒飲むよー!!!」
「おかえりな……え、は?
…………………………………カミラちゃんがカミラさんになってる!?!?」
「ん?そっちかい?」
今のウチの姿は正真正銘腹筋が素晴らしかった人間だった頃のウチだ。
ウチはね、サイゼリヤでお酒を飲めなかったのがね、心底悔しくてね、イオリもあと2ヶ月は19歳だっていうからお酒買えないじゃん?
何度も言うけどウチは26で未成年じゃないけど身分証どころか戸籍すら持っていないのよ。
だから「身分証の提示をお願いします」と言われた時点でお酒を買えなくなってしまう。
しかしこの姿ならスーパーでお酒買い込んでもそんなこと言われない!
「長かった。この体になってから数日くらいなら寝なくても平気なのを良いことにウチは寝る間も惜しんでイリュージョンの練習をしてさ、頑張ったかいがあったよ」
配信のお金が振り込まれて金銭的に余裕が出来たので机の上には豪華につまみを沢山並べて食べながらイリュージョンをここまで使いこなすようになった経緯を力説した。
番組をBGMにしながらウチの話しを聞いてくれていたイオリは頷きながらも「お酒ってそんなに固執するものなの?」という表情を浮かべている。
「まあ気持ちはわかるけれど……」
「いいや!イオリはまだお酒飲んじゃ駄目だからわかっちゃ駄目だよ」
「お酒じゃなくてイリュージョンの方」
そう言いながらイオリが少し離れたところに置いてある箱ティッシュに手を伸ばすと箱ごと浮かびイオリの手に収まる。
そこから1枚引っ張るとコップを持ち上げ底と水たまりの出来ている自分のスペースを軽く拭いた。
「これも鍛えるの楽しいし」
「楽しいのはわかるけれど外で使わないよう気をつけるんだよ?」
「カミラに言われたくないんだけど?」
「ウチは手遅れだから良いの」
イオリのこの力が判明したのは3日前の事だった。
調査が終わり家に帰ってきていつものようにエアコンを付けようとリモコンに手を伸ばした。
すると明らかに届かない位置にあったリモコンが近づけている最中の手に収まり、唐突の出来事に変な顔でフリーズするイオリの姿は今思い出しても中々面白い。
いきなり使えるようになった力に混乱するイオリに対しウチは「それってハンドパワーって奴だよね?この世界でも珍しくないんだし落ち着こうよ」と言ってしまいウチの無知をさらけ出した出来事でもあるのでこの日の事でイオリをからかうと重いカウンターを決められてしまうので突っつくことができない。
一応言い訳させて欲しい。
ウチの世界はさ、ガチ超能力者がいるからさ、手品と超能力は別枠なんだよ。
手品はあくまでも技術を披露するもので努力をすれば誰にでもできるという、一種のスポーツというか、アスリートを見ているような感覚かな?
そして超能力は産まれながら与えられた力であり、後天的に得るのは不可能で成長の途中でどんな力を持っているか後から発見される事例があるくらいで誰もが努力でできるようになるものじゃない。
イオリも今まで気付いていなかっただけで今気付いただけでしょと思っての発言だったのだけれど、この世界に超能力者はいないと言われ、前に配信でこの世界には○○さんという超能力者がいるというコメントを見た事と矛盾するとさっそく調べたらコメントで教わった人は手品師だったというね。
配信中「え?超能力者?いるに決まってるじゃん。超能力者のことをハンドパワーの使い手っていうのは常識ですから恥かかないように覚えておいてください」とか配信始めたばかりな頃にコメントした人絶対に許さない。
鵜呑みにしたウチもウチだけどさ……
原因もわかりきっている事だし「おそろいだね!尻尾を触らせてあげよう!」と言えばあっという間に落ち着いてくれて事なきを得て、現状はランクルスがいるので暴発しないように訓練中。
「そうだイオリ、これ今月の家賃と今まで借りてたお金のあれやこれやの分」
「え?そんなのいいのに」
「これからもお世話になるんだからこういうのはしっかりしておいた方が良いんだよ」
「そういうものなの?……あぁ、カミラさんがカミラちゃんに…………」
「そういうものなの。全身は疲れるからね~。はむ」
「ヒメリのみ、美味しい?」
「正直飽きた。薬みたいなモノと割り切ってる。
それより聞いておくれ。税理士さんのとこにいったらさ~」
お金が入り税理士のところに行って証拠を残してその上で年間の収入から税金がいくら出るかと長い長い戦いをするための土台を作った時の愚痴をこぼすと「晩ご飯私が作ってあげる。漬けてあるんだけど唐揚げで良いよね?」と言って逃げられてしまった。
イオリが唐揚げ作ってくれるのが嬉しいのでウキウキで「食べる!」と返事したけどさ。
・
「はあ~。唐揚げ美味しい~。ポテトも美味しい~。
こんなに美味しいモノを作れるなんて天才だね~」
「ありがとう……え?なに?どうしたのいきなり?褒めても何も出ないよ?
というか、私より数倍カミラの方が美味しいの作れるじゃん。
私が作ったの食べて貰うの初めてだけど……」
「別に見返りなんて求めてないし最近は忙しかったからね。
味の方もさ、なにもせず美味しいものが食べられるなんて最高だよ~」
「ん?ねえカミラ、もしかして誰かが作ってくれたら何でもベタ褒めする感じ?」
「ん~にゃ、誰でもじゃないよ。イオリが作ってくれたから嬉しいんだよ。
友達がウチの為にしてくれて実際に美味しいのなら褒める以外無いでしょ?
ん~!最初量多くてちょっと不安だったけどこのタルタルソースが良い感じだからこれなら全部食べきれそうだね~」
「まあ明日の朝ご飯も兼ねてたつもりだったし多いのも当然というか」
「え?………食べ過ぎちゃったかい?」
「それならそれで問題無いから大丈夫だよ」