ポケモンの無い世界に迷い込んだポケモン界の女性 作:メリルメリルメリル
ドンカラス達が起こしたポケ災の日から1ヶ月が経過した。
最近ウチがしていることはポケモントレーナーの育成でね、今までは牧場へ行っていたのだけれど、丁度良くというのも変かもしれないけど広い草原が現われ周囲に住むのもオタチやポッポ等といったとても平和な場所だったから彼等と相談しながらドサイドンにフィールドを作ってもらった。
調査をしなくて良いのかと思われるだろうけれどウチは1人しかいないわけで沖縄と北海道で3日のズレで増えましたとか言われた時は流石に腹を抱えて笑ってしまったよ。
どうしろっていうのさ。
他にも海外からウチを直接連れて行こうとやってきた人達が来たのだけどウチはポケモン犯罪対応許可証の所持者であり執行経験があるというのも事前に配信や番組で開示した筈なのだけれど、あんな危害を加える気満々な気配をダダ漏れにして気付かないわけがない。
日本側も接触してきてボディーガードやらいろいろさせてくれと言ってきたので何かあった時に証拠だけ押さえてくれと言い他は断った。
一度向こう側が乱暴な手段を使用してきた後からは容赦なく手足をへし折る、車のタイヤをパンクさせる等の対処をさせてもらっていたらいつの間にか誰も来なくなったよ。
ポケモン犯罪抑止力であるチャンピオンには至れなかったけど、その頂へとあと少しまで駆け抜けたトレーナーを嘗め過ぎじゃないの?
そんな事があったウチは今何してるかというと。
「ぜえ、ぜえ、ぜえ………何で『こうそくいどう』ができないの…………」
「もっとこう足にオーラを込める感じにバーッ!ってやるんです!」
「ワンワン!」
ウインディなのに未だに生後1年くらいのガーディみたいな声なココロくんとレッドフラットくん事アカシくんのペアに挟まれ感覚的すぎて意味不明な説明を受けながら『こうそくいどう』を使えるよう特訓中である。
ウチの特訓がメインじゃなくてポケモンバトルの訓練の合間、休憩の時間に教わっているのだけど全然わからない。
前にHUNTER×HUNTERという漫画の念能力という能力の原理の説明が出てくる巻だけ見せてもらいソレを元とに説明してくれてね、本人がその漫画を元に使いこなしたなんて言うのだから読むしか無いだろう?
なによりさ、イオリは『ねんりき』アカシくんは『こうそくいどう』が使えてさ。
ゾロアのパーツ生やして人間止めてるのにウチときたら特性だけで何の技も使えていない現状がさ、それはもうもの凄く、すっごく悔しくて悔しくて悔しくてね!!!
何で!?どうして君らそんな軽い感覚で技使えるようになってんのさ!?
イオリはリモコン取ろうとしてリモコンが浮かんだ。
アカシくんはバスに乗り遅れると思って走ったら使えたって使えないウチが尻尾まで生やしてバカみたいじゃん!?
挫折ってモノは沢山してきたけれどさ、こんなスタート地点で躓く経験は無かったからわりとショックだよ。
「さあて、ふ、皆十分休憩は取れたかい?バトルの、ふ、練習続きするよ」
まだ息切れしているがこの程度で落ちる精度じゃないのはこの場にいる40……いや、今日は平日で人数少ないんだった。うん、18人だね。その全員が知っている。
フィールドは5つ存在しており、その全てをダブルバトルで使用している。
一応試合しながらも全てのフィールドに目をかけてはいるけれど、審判としてそれぞれにウチのポケモンに見てもらっているので大丈夫だろう。
今日は人数が少ない為一度に全員バトルができ、1人はウチとのシングルでのバトルになる。
そして今回の勝負の相手はモコモコポテトちゃんことレイちゃんが相手のようだ。
アカシくんもそうだけれど、このバトル訓練常連になりつつあるメンバーの名前は覚えている。
レイちゃんはキャラが濃いし見所も多いから意識しなくても覚えられる。
本当、まさかいきなり尻尾吸われるとは思わなかったよ……悪い子じゃないから良いけど驚くって。
「サンちゃん!どろあそび!」
「お?」
ヌオーが『どろあそび』によって足を取られるようにしたのか。
ウチのココドラちゃんは速度を生かした戦い方するから効果的だし、以前彼女と試合した時に補助技の大切さを教え使い方の例として実演してみせたのが効いているのか彼女なりに考えてさっそく取り入れてきた。
「たたきつける!」
「てっぺき!」
ヌオーの尻尾が光り振り下ろすようにしてココドラへと迫り命中する。
しかしその尻尾はココドラを踏み台にし、勢いを殺せず体格の差もありまるで尻尾を手にして跳び箱でもしているかのようにヌオーの体が浮かび上がる。
「ええっ!?」
「気持ちはわかるけど隙だらけだよ!どろかけ!」
力の限りの『たたきつける』でまさか自分が空中に浮くなんて思っていなくてレイちゃん同様に目をまん丸にしたヌオーの顔めがけて『どろかけ』が炸裂し、顔を拭っている隙に「ボディパージ」を指示してココドラの早さを上げる。
「みずでっぽう!」
ヌオーの口からみずでっぽうが撃ち出される。
以前見た時はタメが長く特殊技全般苦手だと素人でもわかるくらいだったものの今回は及第点あげられるくらいになっていた。同じタメ時間でこれが『ねっとう』や『ハイドロポンプ』といった技なら100点あげられた。
確かに早くなっているけれど想定内の成長なので慌てず手を打ち鳴らす事で指示を出せばココドラは軽く横へ飛んで回避する。
そのまま手を鳴らし続ければリズムに合わせて泥の足場にいるとは思わせない、反復横跳びをするような動きで軽やかにジャンプを繰り返し翻弄する。
「良いステップだよ。そのままスタミナ切れ狙っていこう」
「ココ!」
「それなら連続で冷凍パンチ!氷を沢山作って動きの邪魔して!」
上手い。遠距離からの『れいとうビーム』はたぶん練度不足で使えないだろうから使えて『こごえるかぜ』になるのだろうけれど、せっかく『どろあそび』で作った足場を固めてしまうのを危惧しての『れいとうパンチ』なのだろうね。
ウチは既に足場の悪い場所でのバトルを想定した動きを見せているけれど、その動きをしている時点で行動の制限をさせれれていると伝えているようなもの。
ここで対策されているなら無駄だったと切り捨てるのでなく、更なる負荷を押しつけてくるのは大正解。
自身の負担になっていないのだから捨てるにしても出来る事全部してから捨てるのは悪い手じゃない。
「(ただ、イキリンコはともかく後ろにアブソルがいるのにこの戦い方を選ぶのは公式戦等はともかく野生で複数を相手にする事を想定した場合は考え物かな)
おっと、シャドークローで打ち落として」
泥をすくい上げ力の限りココドラへ向けて投げる。
その泥は『れいとうパンチ』によって堅さとポケパワーが付与されているのでダメージは少なくても痛みに対する抵抗力がまだあまりないココドラの目に入ったりするとそのままフィニッシュまで繋げられると判断し動きを変化させることにした。
「氷に登って上からシャドークロー」
「よし!グロウパン……なあっ!?」
連続で『れいとうパンチ』を使われた結果、障害物であり足場になっている氷が複数できているのでその上にシャドークローを器用に使い登ったココドラはウチが手を打ち鳴らすリズムを変えたのをしっかりと聞いていたので指示通り氷を砕きヌオーの上から氷の破片が降り注ぐ。
事前に指示していた事、それは『モノを壊せ』で、簡単な口頭の指示と打ち鳴らした回数でこの指示を同時に出す。
それにしてもまったく、成長速度が速い。
ジムリーダーがこんなテクニック使うのは普通バッチ3つ目くらいの実力を持ったトレーナーが相手になった時だよ?
同時にこの辺りから壁にぶつかるトレーナーが増えてくるからから頑張って攻略してもらいたい。
「さて、これでほぼほぼ初手の場面に戻ったけれど次は何を見せてくれるかな?それとも検証に入るかい?」
「まだ!もうちょっとだけする!」
「いいね。君達の輝きをもっと見せておくれ」
レイちゃん達とのバトルが続く。
過去に企業と契約取れそうだったからジムリーダーの推薦を蹴った経験があるのだけれど実際にバトルをしこういう可能性もあったのだなと考え、今もジムリーダーとして活躍しているであろうかつての好敵手で親友の姿を思い浮かべると感慨深いものがあるね。
・
レイちゃんとのバトルが終わり検証をしている途中に着信が入る。
今回も報道関係者かと思っていたけれど散々お世話になったホテルの従業員であるユイナさんからだった。
「はいもしも~し。カミラですけどもしかしてアレから何かありました?」
「よかった出てくれた!はい!あります!凄く起きていて!火山が叫んでて!」
「たぶん火山は叫んでないから落ち着いて」
ホテルからバスが出ているけれど徒歩でも行ける距離に浜辺が存在していて、その浜辺に燃えている岩山、火山が現われたという話しを聞いて実際に向かったんだよね。
山を登っていくとマグマが流れていたりとポケモンを連れていない人が足を踏み入れて良いような場所じゃないという事がすぐに判明し、そこに暮らすポケモンもブーバー、マグマッグ、ドガース、マグマラシ、デルビル、ゴルバットとバッチ収集の旅の最後の試練であるチャンピオンロード少し手前くらいの強いポケモンが生息している場所だった。
だというのにこの場所のポケモン達は不思議と秩序立っていたから優先度が低く、何よりもウチはマグマだとかそういったものを何とかする知識を持ち合わせていないのと、国の方で専門家とか何とか集めるという話しを聞いたからその時点で放置する事にしたんだよね。
そんな事があったのが先週くらいで3時間くらいで最低限の調査も終わったから行き帰りの合計時間の方が長かったという印象が強かった。
電話越しから説明を聞くに1時間程前から火山の方から恐竜同士が縄張り争いしているかのような激しい戦いの音が浜辺周辺まで響いていて、時折獣の声が聞こえるそう。
「はい。はい。わかりました。それは何か起きた時のために私がいた方が良いですね。はい、では失礼します。
………はい!申し訳ありませんが緊急で用事が入ってしまったのでここまでです!
ウチはすぐにでも帰って装備整えたらピジョットで飛んでくけどイオリはどうする?」
「ん~……まだ話したりしたいしもう少ししてからタクシーで帰るよ」
「そっか、りょぉ~かい。 またね」
「はい!まーたーねー!!!」
レイちゃんに手を振ればブンブンとちぎれちゃうんじゃと不安になるくらい力の限り手を振ってくれてコレが見たくて手を振ったかいがあったよ。
こういう子が沢山いるなら世の中平和なのに。
………でもそれはちょっと疲れそうだからやっぱり無しで。
・
1時間程して浜辺近くのお土産向け商品が沢山売られている大きな建物へと到着した。
面倒な事になるのを避けてイリュージョンで人間だった頃の姿になったり荷物をしまっていたりして少し時間がかかった。
「お待たせしました。状況はどんな感じです?」
「アレから変化無くずっと戦っている様子です」
「まあ、そうでしょうね」
この火山が現われてから1週間と少しなのだけれど、どうもこの国の人達は危機意識に欠けている。
今いる建物は平常時より人が多いらしい。
理由としては正に今問題になっている火山であり、近付く事は許されないのだが遠目からでも十分すぎるくらいマグマの滝が見えるのだ。
気持ちはわかるが完全に観光名所扱いであり、ウチが火山の方へ目を向けるも人の壁で全体が見えない。
現状は人々の不安な気配が漂う場所になっているけれどほんの数時間前までは完全に観光気分だったのだろうね。……って、激辛火の山ホットドッグ!?もうこんなのまで売られてるの!?地域そのものが観光名物扱いで焚き付けてるじゃないか!?
「っと、ちょっといきなりカメラで撮るの止めてもらえるかな?
撮るならちゃんと言っておくれ。ポーズ取るから」
「あ、すみません……って、良いんですか?」
「良いよ。ただここじゃなくて広いところ行こっか」
「ちょっと待ってください!火山はどうするんです!?」
「もう2時間以上戦っているのですよね?
それならもう30分程様子を見てそれでも変化が無いようなら調査しに行きますね。
ヌシクラスのポケモンの縄張り争いが起きている状態で2時間経つということはそろそろ争いが起きている付近のポケモン達が追い出され、それが波紋のように広がって最後に火山麓のポケモンが町に流れてきてもおかしくないでしょうから、それを対処してから行きます。
30分経っても何もなければそこまでの事は起きないと判断しても問題無いでしょう」
「なるほど……それなら平気ですかね?」
「平気ではありませんがウチ1人で避難誘導等をしても無駄なので出来る事が少ないが正しいです」
「な、なるほど…………」
・
「っ!?」
「えっ、ちょっと……」
ウチとグレイシアがソレに気が付いたのはほぼ同時で撮影者を無視して同時に飛び出す。
気付いたのは単純な話しであり、この位置まで届いていた強い闘志の色に大きな変化があったからだ。
「リフレクター!」
「グレ!」
1枚、2枚、3枚と連続で張られるリフレクターの足場を階段として使い人の壁を飛び越え見渡しの良い位置でその光景を目に収める。
「あれは………」
薄いオレンジ色の体色、赤々と美しく燃える炎の翼・鶏冠・尾羽を持ち羽ばたく度に火の粉を煌めかせるその姿は正に伝説として語り継がれるに相応しい風格を持っている。
あぁ……本当にウチはなんて幸せ者なのだろう…………
「伝説の3鳥、ファイヤーがこんなにも近くに………」
ディアルガ様、シェイミ、ファイヤー。
このどれか1体でも人間の一生の内に1度ですらもお目にかかれない事の方が多い伝説や神話の存在をこんな短期間でこんなにも………
「ア――――マ――――――――!!!!!!」
ウチが感動で震えていると物凄く聞き覚えのあるバカの声に水を差された。
「……え?逃げんな?」
その怒声は間違いなく「逃げんなー!!!」であり、完全に火山から響いてきていて、空から見下ろすファイヤーはおそらくアーマルドがいるだろう位置を見下ろすと、面倒くさそうな顔をして飛び去って………
「逃げるなー!伝説のポケモンがちょっと珍しいポケモンから逃げるなー!!!」
しかもファイヤーってマグマがあるならまず不死身じゃん!?
そりゃ3時間だろうがマグマがあるのだから戦い続けて問題無いだろうけど逆にマグマ無かったらアーマルドが勝ったって事!? 凄く頑張ったじゃん!?