ポケモンの無い世界に迷い込んだポケモン界の女性   作:メリルメリルメリル

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野生のバトル前編

 

 完全に観光名所扱いをされていた火山は伝説の3鳥の1匹であるファイヤーの住処だった。

 

 最近は日本も森が増えただの廃墟が増えただの湖が増えただのと報告が上がっていて1人では対処しきれなくなった。

そこで住んでいるポケモンの目撃情報から危険なポケモンがいる可能性が浮上してから対処するという形に変えることにした。

 大まかにキテルグマやリングマ、ギャラドスバンギラスにゴーストタイプ全般に繋がりそうなポケモンが目撃されたら調査対象といった感じ。

 

 今まではポケモンで決めていたけれどこの火山はポケモンとか関係無く調査したんだよね。

 だって遠目にもそこら中燃えさかっている火山で川に水の代わりにマグマが流れているんだよ?

 そんな危険地帯素人がポケモンを刺激せずに調査するなんて無理な話で危険なポケモンがいるいないとか関係無しに調査する事にして、その場所に住むポケモン達からヌシがしっかりしてるから平気だろうと判断した。

 ここでヌシに会いに行って変にこじれたら大変だし引き上げようなんてしなければウチは至近距離でファイヤーを見ることができていたと知ってちょっとショック受けている。

 

 そしてファイヤーは逃げた。

 

 …………………………………まあ、わかるよ?

 マグマの川が流れているあの火山での戦闘はマグマによって傷を癒やす事のできるファイヤーからしたら正に無敵のフィールドなのだろうね。

 

 だとしてもあのタフネスオバケに無理矢理3時間近くも喧嘩に付き合わされたらそりゃ嫌になるよ。

 こんなにも長い戦いになったのはおそらくだけど、伝説のポケモンと言われててもやっぱり野生のポケモンだというのが大きかったんだろうね。

 ココゾで確実に沈めるって感じの決定打になり得る技はあっても技術が無い。

 ウチはファンサービスでよく「当たったらじゃない、当てるんじゃ!」と発言するのだけど、言うのは簡単だけど実行するにはまず土台を作り積み上げ積み上げたその先、頂点へ到達してようやく必中になるのであって物凄く大変なんだよ?

 

 それにあのアーマルドにはウチのリザードン、ドサイドン、ダイケンキ、グレイシアとの戦闘経験がある。

 リザードンに容赦なく何もさせてもらえず、

 ドサイドンに純粋にパワー負けし、しかも下手なパワーで打つと逆に利用されて投げられ、

 ダイケンキは完全に指導する形でシザークロスやシェルブレードのキレの良さを叩き込まれ、

 グレイシアには触れる事もできず気付けば氷付けにされる。

 そして負ける度に学習し強くなっていた。

 

 あれだけ戦い続けてウチらの技術を吸収していたのだから今更初手『はかいこうせん』とかされたところで驚きはするだろうけど当たらないから。

 

 そうなってくるとさ、ほら、負けはしないとわかってても面倒くさいじゃん?

 ファイヤーが逃げるのも理解できるよ。

 

「リザードン。ウチはさ、初めて世間的に言う厄介オタクってものの心境を心から理解できたよ」

「グルゥ?」

 

 冷静になればなるほどファイヤーが逃げ出した気持ちがよくわかる。

 でもね?それでもだよ?ちょっと珍しいアーマルドというポケモンにお尻向けて結果的に逃げるファイヤーなんて見たくなかったよウチは。

 いや見れた事は凄く嬉しいし撮影もしたんだけどさ、それでもさ、ねえ!?

 

「それにしても随分と腰の重い感じだったね。いつもなら突撃してきそうなのに」

「グアアァ」

 

 一度火山へ向けて強い闘志を向けたというのにアーマルドは向かってこなかった。

 戦う意思が無い訳ではなく、闘志で返すだけで行動しないだけ。

 少しでも回復しようと動いていない様子なのでこちらから向かう事にし場所が場所なので今回ウチの横に並んでいるのは戦友たるリザードンだ。

 ウチのリザードンは口数の少ないクールな熱血天然イケメンで自慢のエースだからね。

 こんな良い男がすぐ側にいるせいでハードル爆上がりして彼氏ができないんだよなぁ……

 

「グル?」

「ん?いいや、何も。ただ、こうやって2人で歩くのって随分久しぶりだなと思ってさ」

「グオォ……」

 

 2人で周囲の景色を楽しみながらここまで登ってきた。

 あれだけの戦闘があったというのに依然変わりなく秩序立っていて、おそらく支配者であるファイヤーの勝利を疑っていないのだろうね。

 

「……………さて、いたね」

 

 マグマの川にそって歩きとても大きな洞窟に入りしばらく歩いてとても広い空間に出た。

 ここまでの道程を撮影してもらっていたスマホロトムにはこの位置で待機してもらい進む。

 

 広い空間の中で一番目を引くのは奥の方にあるマグマの滝でおそらくこの上がマグマの川の終着点なのだろう。

 この空間は何年前かはしらないが文明的な物があった痕跡があり宗教的な何かがチラホラ見受けられ、彫り込まれ何かが書かれた岩の柱が何本か存在し天井を支えているが天井には所々穴が空いている。

 しかしそのおかげで明かりには困らない。

 最悪の場合はマグマを光源にして戦おうとも考えていたけれどその必要も無さそうだ。

 

 そんな場所の中心で、先程腰の重い感じと表現したのだけれど本当にドッシリと腰の重い感じに座り込んでいるアーマルドがいて、その彼と目が合った。

 

「やっほ~、久しぶりだね。ウチの事わかる?」

「グァ……グルァ、マーガ?」

「……よく初見で見破ったね。確かに小さくなったけど弱くなったつもりは無いよ」

 

 まさか一目見て「小さくなったな……いや、単純な力だけなら上がったか?」なんて見切られるとは思わなかったよ。

 てっきりウチ自身は大したことのない相手だと評価されていておぼろげに認識されているモノだとばかり思っていたのだけれどどうやら違うようだ。

 ならイリュージョンを続けておく意味も無いと今の姿になる。

 

「ねえ、最初に君を回復させたいのだけど良いかな?」

「…………………アーマー」

 

 少し意外だね。てっきり「関係ねえヤルぞ!」とか言い出すと思っていたのに「頼む」なんて素直に言われるとは。

 ウチだけでなくリザードンも意外だったのか珍しく驚いた表情をしていた。

 

 リザードンには待機してもらい手渡しでオボンのみとヒメリのみを渡し……あぁ、そんなヒメリのみを滝のように口の中に流し込んでもうストックそんな無いのに………

 などと考えながら何も言わずかいふくのくすりを使い手当をしていく。

 

 こうやって体に触れるだけで様々な事がわかる。

 今のアーマルドは強い。油断ならない程に。

 野生を捨てたようにも思えるけれど全然、そんなことはない。むしろコレは……

 

「……一応聞くのだけれど、なんでこんな場所に?

 こんな熱い場所、君が生活するにはあまりにも向いていないでしょ?」

 

 リザードンの少し前の位置にまで戻りわかりきった事を口にして聞く。

 それがゴングになるのだとわかっているから。

 

「グルゥ……アーマ――――――!!!

「リザードン!」

グオオオオ!!!

 

 ウチの前へ出たリザードンとアーマルドの咆哮がぶつけ合うとリザードンは『ドラゴンクロー』を、アーマルドは『ブレイククロー』特有の光を纏わせ突撃し、突如『アクアジェット』でリザードンの背後を取る。

 

「ちきゅうなげ」

 

 アーマルドは首辺りを鷲掴みにされ驚愕により一瞬硬直する。

 何せリザードンはアーマルドを見ていない。

 まるで背後にも目があるかのように何の迷いも無く『ドラゴンクロー』を捨て鷲掴み、一瞬の驚愕から捕まれたと認識できたその時には空へと体を持って行かれしっかりと体を拘束される。

 

「っ!?」

 

 この状況、殆どのトレーナーであるならば『かえんほうしゃ』や『ハイドロポンプ』といった噴出する技で少しでもダメージを減らす場面だというのに、なんとアーマルドは『アクアジェット』を使用し加速させリザードンを巻き込む事を選択したのだ。

 

 これまでの戦闘経験の中でそういった戦法を選択するトレーナーも確かにいたが、それはポケモンバトルという競技、チーム戦だったからこそ少しでも敵にダメージを与え次へとバトンを託すといった狙いでの方法だ。

 

 今戦っているアーマルドはカミラの中で「タフネスオバケ」なんてあだ名を付けられるくらいには阿呆みたいと言いたくなる程の耐久力を誇っているとはいえ、こんな選択が取れるだろうか?

 この僅かな攻防、けれど初手のぶつかり合いは頭のネジが1本取れたアーマルドに読み負けたと素直に受け入れすぐさま思考を加速させていく。

 

 歪な形ではあるものの『ちきゅうなげ』を成功させたアーマルドを叩きつけ、爆発する。

 アーマルドによる『ばかぢから』により『ちきゅうなげ』により発生した土煙が消し飛び……

 

「クッ、かえんほうしゃ!」

 

 瓦礫を掴み『なげつける』でウチへ向け瓦礫を投げてきたのを回避する。

 明確な敵意を込められ投げられ今のでウチも倒すべき敵と認識しているのだと予感から決定的なものへと変わった。

 

 リザードンに『かえんほうしゃ』で牽制をさせている中でカミラは僅かに自分が口角を上げていることに自覚する。

 

 今までの君はリザードン達はともかく、ウチの事なんて眼中になかったよね。

 だけど今のは行動そのものがウチの事も好敵手と認めていると言っているようなものじゃないか。

 そうじゃないのにこんな行動していたらリザードンには勝つことはできないと、負けを認めてしまっているようなもの。

 仮にそうだとしても、盛り上がっている最中にそんな手段取らないでしょ?

 どんな心境の変化があったかわからないけれど君は今、ウチがリザードン達と並ぶだけの強者だと認めてくれていてとても嬉しい。

 

 リザードンの『かえんほうしゃ』が命中するも肉を切らせて骨を断つという彼らしい戦術であり『かえんほうしゃ』のその技の性質上死角が出来てしまうのを利用し『つばめがえし』で一気に距離をつめて今度は自分が喉に入れてやるという魂胆であった。

 

「じわれ」

 

 アーマルドはカミラの存在を強者と認めつつもカミラの、ポケモントレーナー厄介さを正確に認識できていない部分が大きく出た。

 カウンターを決めに行く戦術を取るのであれば移動という一手を挟む行動をしてはならなかった。

 

 足に力を入れた瞬間『じわれ』により重心を置いていた足を飲み込むよう大地が割れ、即座に『アクアジェット』で空中に逃げる事に成功するも連続して技の切り替えを行ったことにより十分な力が込められておらず速度も半端な上に途中で技が切れてしまい、一秒程であるが何もできない時間が訪れ、自然と敵へと顔を向けた事により目が合う。

 リザードンの横に並び指を向け必ず貫くという強い闘志を宿すカミラの目と。

 

「ブラストバーン!」

 

 回避不能に追い込まれ必中の『ブラストバーン』がアーマルドの体を飲み込んだ。

 

 ポケモントレーナーの厄介さは複数あるが、カミラというトレーナーの厄介さは常に敵に先手を与えつつも思考を操作し誘導するところにある。

 『ちきゅうなげ』の際に『アクアジェット』という奇策過ぎて読めなかった事は確かではあるが、あの瞬間確実に熱が入ったことによりアーマルドがあのタイミングでガス欠を起こす事まで織り込み済みであり、ここまでのほぼ全てがカミラに作られたリズムとなっていた。

 

「…………」

 

 だからこそまだ終わっていないと確信し油断しない。

 

 両腕をクロスしガードしている姿を見ていた2人はタフネスオバケの頑丈さを理解しているので警戒していると案の定ピンピンしたアーマルドが出てくる。

 むしろ闘争心は先程より増しているように感じる。

 

「第二ラウンドだね。楽しんでいこう」

「グオォ……」

 

 しっかりとアーマルドを見据えているリザードンのコンディションを確認する。

 もう反動による硬直は抜けているが『ブラストバーン』を使用したのだからポケパワーは大きく消耗しているのだから配分ミスをするなど許されない。

 

 正直に言うとここで勝利する事は簡単だ。

 他の子達も出せば本当に何もさせずに終わらせる事も出来るけれど、そんなのはつまらないでしょう?

 

 今、物凄くワクワクしている。

 

 いったいあのアーマルドに何があったのかわからない。

 けれど、技の1つ1つの練度が比べものにならないほど上がっていて、何よりもルールに囚われる公式戦と違い何でもありの野生に特化している戦いのおかげで一瞬の油断で重傷を負わされかねない緊張感が心臓を打ち燃え上がらせてくれている。

 

 本当に良い機会に巡り会う事ができた。

 今はまだ何も起きていないけれど、ディアルガ様が動いているような事態なのだから好都合だ。

 過激な気もするけどこの戦いで感覚を取り戻す。

 

 そう気持ちを入れ直すとアーマルドが動く。

 

 距離がある事を利用し長くタメてからの『アクアジェット』はこれまでのが様子見であったのだというほどの速度であり、尚且つ軌道が読めない。

 破壊することのみを考えているかのような動きはでたらめで洞窟内を破壊していき、石の柱にぶつかる度に全体が震えているのがわかる。

 

「ドラゴンテール」

 

 高速で移動しながらカミラへ向け瓦礫を投げられ、『ドラゴンテール』で落とす。

 アーマルドは『アクアジェット』によりでたらめな動きをしながら『がんせきふうじ』で岩を増やしていき益々軌道がでたらめになっていく中で『がんせきふうじ』の岩を『なげつける』で投げてきた。

 対応するということはそれがそのまま隙となり、『いわなだれ』と一緒に『アクアブレイク』特有の光を両手に纏わせ上から襲いかかってくる。

 

「はあぁ!」

「グァ…」

 

 リザードンの背に乗り迎え撃ってくる事は想定していたのだろう。

 しかしまさかウチが眉間に跳び蹴りかましてくるのは想定外だったようだ。

 逃げれば『いわなだれ』の餌食、向かえば『アクアブレイク』を当てる詰みに持って行くには十分なものだったのは認めるけれどこの戦いは公式戦じゃな。

 先にウチへ向け攻撃をしてきたのだからウチから攻撃される事も想定しておくべきだった。

 

 まったく予想していなかった攻撃は来るとわかっている攻撃よりも大きく反応してしまうものであり、できてしまった隙によりリザードンの『フレアドライブ』が腹に命中し、命中するとほぼ同時にカミラは蹴りに使った足でそのままアーマルドを足場に跳び上がり地面へ落ちるまでの時間を増やす。

 

 そして、この攻防の一瞬の合間にアイコンタクトで「この相手には使うべきだ」とお互いの意思の確認をしていた。

 

 

 

「吹き荒らせ魂の嵐!貫き燃やせェヤ!

 リザードン!メガシンカ!!!」

 

 

 

 高らかに上げた指で天を突き刺しメガシンカを宣言する。

 キーストーンが共鳴しお互いの魂が繋がり合うような感覚の中…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  パキン………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………なっ」

 

 メガシンカ特有のエネルギーの動きは確かに起きた。

 だとういのに、ヒビが入るとあっという間にガラスのように砕け散ってしまいリザードンがメガシンカする事は無かった。

 

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