ポケモンの無い世界に迷い込んだポケモン界の女性   作:メリルメリルメリル

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野生のバトル後編

 

 

 

 

 パキン………

 

 

 

 

 何かが割れるような音がした。

 いや、耳にそんな音は届いていないのだから実際に音は鳴っていないのだろう。

 けれどウチの中にある何かが確実にそのような音を立てた。

 

 そんな間抜けな音がするのと同時にカミラとリザードンの中にあった繋がりの一つが切れた。

 

 それでもリザードンとの繋がりを感じキーストーンが燃えるように熱い。

 こんなにも熱いというのに、メガシンカを行うのに決定的な何かがカミラとリザードンの間で切れたのだと否応なしに理解できてしまう。

 お互いの中の何かが致命的なまでに噛み合わない。

 

「あっ………」

 

 思考が遙か彼方へ吹き飛んでいた。

 

 その隙に放たれた『ロックブラスト』がウチの目の前にまで迫っていた。

 

「グオオオオオオ!!!」

「リザードン!?」

 

 あまりにも大きな精神的な衝撃によりカミラが思考を止めてしまった事に気が付いたリザードンが自身の体を盾とし『ロックブラスト』を背中で受けながら、完全な人間だった頃よりも小さくなってしまったパートナーを強く抱きしめ全身で守る。

 

 これを好機とみたアーマルドはカミラを抱きしめ墜落したリザードンへ『アクアブレイク』を放ち、即座に立ち上がったリザードンは『ほのおのパンチ』でその両手を掴み取っ組み合いへ持ち込むも体制が悪い。

 

「グルゥ……」

 

 そのような状況にありながら強い意志の籠もった瞳を未だ立ち上がれていないパートナーへと向ける。

 この程度の事で立てなくなるような柔じゃないのはわかっている、共に戦うぞという信頼故に。

 

「リザードン……思考飛んでたゴメン!行けるよ!」

「グオオォ!」

 

 カミラが合図を送り、力の押し合いという状況からいきなり力を抜き後ろへと倒れ……

 

「ブレイズキック!」

 

 リザードンに両手を掴まれ押していた力を利用され引っ張られることで一瞬お互いの体が浮かび上がる時間が生まれ、その僅かな時間を差し込むように鋭い『ブレイズキック』が腹へ突き刺さりアーマルドの巨体を大きく空中へ浮かべる。

 今が攻め時なのだとよく理解しているアーマルドは僅かにひるみながらも逃がさないためラスターカノンよりも遅いが範囲の広い『みずのはどう』を放ち、対してカミラは「一点集中」と小さく口にした。

 

 時間が凝縮されていく。

 パチッパチッ……とウチの脳が音を鳴らしているのがわかる。

 コレがあるからチャンピオンクラスのリーグは命を燃やす戦いなんて言われて、たぶんこのまま集中しすぎると脳の血管が切れたりして本当に死んでしまうんだと思う。

 この音がやかましいけれどそれを無視し、ウチの認識としてはあまりにも遅く、けれど出せる最速の動きで手を持ち上げていきビタッと止める。

 

 燃え上がる意思で居抜き貫き通せるように向けられた指先。

 指し示す場所は『みずのはどう』のその先にいるアーマルドの口。

 

 『ブレイズキック』を受けた事により上昇している最中のアーマルドが2発目の準備をしている口へと狙いを合わせ「りゅうのいぶき!」とカミラの宣言に合わせ力の限り、それでいて貫き通す一点集中の『りゅうのいぶき』が『みずのはどう』を突き破りアーマルドの口に集中していたエネルギーにぶつかり爆発を起こした。

 

「ふぅ、ふぅ、ふぅ………」

 

 10秒にも満たない本当に短い攻防だった。

 だが極限の集中状態による負荷により一気に汗が噴き出し、呼吸すらも忘れていた事に気が付き息をするも荒くなってしまう。

 

「リザードン、まだいける?」

「グアァ」

「(本当なんて頼もしくて格好良いのだろうね……)りゅうのまい」

 

 『りゅうのまい』を行っている最中、爆煙を突き破り墜落したアーマルドが勢いよく立ち上がる。

 その姿はボロボロでもしも公式戦であったのならば審判によってテクニカル判定を受けて強制的に戦闘不能扱いをされてしまう状況なのだがコレは公式戦ではない。

 何よりもそれくらいで止まるような目をしていない。

 

「にほんばれ」

 

 ただでさえ熱い洞窟内に強い日差しが発生する。

 これが最終ラウンドになる。ここから先は殆どリザードンに委ねる事になり、こういう場面では公式戦だろうが野生での戦いだろうが同じだ。

 他の勝ち方も確かにある。

 けれど、ここで他の手段を使う事はチャンピオンがチャレンジャーに対して行う事では無い。

 

 チャンピオンじゃないけれど、今この世界で1番強いトレーナーがウチであるのならば逃げる事はしてはならない。

 でなければ『ポケモン社会の顔』『ポケモン犯罪抑止力』として成立しない。

 本当になんて重いモノなのだろうね、チャンピオンとは。

 

 戦術も作戦もあくまでも試合を有利に進めるためのモノ。

 ここから先指示など殆どできなくなるほど高速化する。

 泥沼化した試合の最後はお互いの純粋な技術と力のぶつかり合いとなり、トレーナーの役目は致命的なミスをしてしまわないように目を光らせ伊座のために待機するのみになる。

 リザードンは『ほのおのパンチ』を、アーマルドは『ブレイククロー』をその手に。

 

 

「力の差を見せつけなさいリザードン!!!」

「グオオオオオオ!!!」

 

 

 ウチの想い全てをエースに託し背中を押し送り出す。

 

 初めと同じように互いに距離を詰めリザードンがその翼で一気に加速し、反射的に振るわれたアーマルドの攻撃をすり抜け岩の柱を足場に跳ね返るように飛び『ブレイズキック』で体勢を崩す。

 

 体勢の崩れたアーマルドが自身の両手を地面に突き刺すと『ストーンエッジ』が放たれリザードンは空中へと誘導され『アクアジェット』で加速したアーマルドが変則的な動きで距離を詰め『ばかぢから』と『フレアドライブ』がぶつかり合い、リザードンが勝り押し返すと『ほのおのパンチ』によるラッシュが入る。

 

 そのラッシュの最中痛みなど感じぬと言いたげに『ブレイククロー』を『ほのおのパンチ』へ差し込み拳を無理矢理止める事に成功するがリザードンの速度はアーマルドを上回る。

 

 アーマルドが止めてやったと笑みを浮かべた瞬間、何の技も込められていない蹴りで胸を押され体勢を崩しそのまま着地に失敗し派手に地面に叩きつけらた。

 逆にリザードンは蹴りにより一瞬だけアーマルドを足場としたことで素早く体勢を整える事に成功し「れんごく!」とカミラの指示が入るだけの余裕が生まれる。

 

 この『れんごく』が決まっていた場合終盤戦でありながらもカミラの戦術が息を吹き返しアーマルドに残された道はカミラに用意された道筋のみであり、行き着く先は当然敗北以外ありはしない。

 それを悟ったからこそアーマルドは脇目も振らず『アクアジェット』で離脱し難を逃れる事に成功する。

 

「近接!」

 

 リザードンとカミラが同時にアーマルドへと距離を詰める。

 終わらせにかかるというのが1番の理由だ単純にリザートンから離れすぎていると判断し駆け出し、リザードンにあえて近接戦を仕掛けさせたの得意な中距離を捨てアーマルドが最も得意な近接戦で勝利する

ことで宣言した通りに力の差を見せつけるのが狙い。

 

「アーマー!!!」

 

 しかしアーマルドは得意な筈の接近戦を捨て『すなあらし』を使った。

 

 

 それを見たカミラは戦いの結末を見て足が止める。

 

 

「(あぁ……そっか。アーマルド、それはしちゃ駄目だよ)」

 

 

 空中にいる状態で至近距離から突如発生した『すなあらし』に体を押されたリザードンは気付かない。

 

 

「(それをしたと言う事は負けを認めたということ。ここでウチが『じしん』を指示すれば何もさせず終わる……)」

 

 

 トントンと足で地面を叩きウチはココだよと教える。

 

 

「(けれどそんな負け方しても認めないだろうし、文句の付けようのない敗北を体に叩き込む)」

 

 

 アーマルドの使った『すなあらし』はあくまでも目眩ましで使われただけで、至近距離にいる相手を弾き飛ばす事にのみ力を込められており天候を奪う程の力は無かった。

 けれどその一瞬さえあれば見失い『あなをほる』を使えるだけの時間が確保できる。

 

 

「(態々目眩ましをしてあなをほるをした時点で逆転の手は一つしか無い……)……リザードン!!!」

 

 

 リザードンを呼びながらカミラが駆け出し最後の指示を出す。

 

 

「ブラストバーン!!!」

 

 

 カミラの背後からアーマルドが飛び出しシザークロスを叩き込もうとした。

 

 

 しかしアーマルドが見たのは、リザードンの方へ飛び込むカミラの姿と、カミラに当たるスレスレの射線で『ブラストバーン』を放つリザードンの姿で………

 

 

「ちょっと待ったー!うひぃ怖すぎ死ぬぅ!!!」

 

 

 突如リザードンとアーマルドの間に入り『シザークロス』と『ブラストバーン』の両方を受けるも『まもる』を使用していたので無傷で済む。

 無事ではあるがひでりブラストバーンの威力は凄まじく岩の地面が抉れており『まもる』を使ってなかったらヤバかったかもとため息が漏れる。

 

「はぁ~……一瞬走馬灯が見えたぜ………」

「あれはまさか……ケルディオ?」

「ん?俺の種族をしっているのか?っと、おっと!いきなり間に入って失礼するぜ!

 知っているようだが俺はケルディオ!いずれ聖騎士でヒーローになる者だ!

 そんで双方やり過ぎだぜ!この勝負は俺が預かる!」

 

 カカッ!とひづめを打ち鳴らし決めポーズを取る。

 急激に闘争の気配が薄くなったこともあり、リンとしたその姿にカミラの目を奪われ思考の波に飲まれそうになるも薄くなっただけでまだ危険な状況だとこらえる。

 

「というかアーマルド!どう見たってお前の負けだぜ!

 ボッコボコにやられてこれ以上やるならライバルとして俺が相手をしてやるぜ!」

 

 えぇ~……あのアーマルドがこんなにも不貞腐れたようにそっぽを向く姿初めて見た。

 

 少し前までアーマルドはウチのポケモン達の事を「強いくせに何自分より弱い生き物に従っているんだよ気持ち悪い」と思っていたのだろうから、これだけ執着してるくせしてそんな素の姿見せてくれなかったのに……

 

 だからこれまでのバトル全てウチの事だけは「ザコが!怪我したくなかったらとっとと消えろ!」と完全無視していて、今回はあきらかに倒すべき敵として認識されて嬉しかったのに、こんな仲良さそうな姿見せられるとちょっと複雑……ん?

 

「え?ライバルなのかい?」

「おう!俺とコイツはライバルで一緒に修行しながら強い奴を探して旅に出たんだがよ、いきなりあんなスゲーのとぶつかるとは思わなかったぜ!

 まさかこの世にコイツよりもタフな奴がいるなんて思いもしなかったぜ!」

「もしかしてファイヤーの事言ってる?」

「ファイヤー?燃えてる鳥ポケモンだったがそんな名前だったのか?」

「うんファイヤーだね。無限に回復しているだけでタフとは少し違うような気もするけど………

 ところで聞きたい事が沢山あるからこのまま話し合いに入りたいのだけれど大丈夫?」

「おう!さっきの戦いの反省会だな!」

「良いね、ソレもしようか」

 

 

 

 

 ポケモンと同じ言語でお話ができる事に興奮を抑えられずとても有意義な時間を過ごすことが出来た。

 しかし話してみると中々恥ずかしい場面を興奮しながら話してくれてなんとも言えない気持ちになる事も多かった。

 

 海に向かってブラストバーンやらいろいろぶっ放したあの日の出来事を見ていたらしく、それを目をキラキラさせながら「すげー闘志でビビっちまったぜ!」と言われていい歳した大人があんな非常識な行動をしてそれを見た子供に懐かれる感じというか、ココが1番恥ずかしかった。

 

 ケルディオがアーマルドと接触したのはウチがフィールドワークで訪れたあの海底洞窟で、そこでお互いの技や技術を見せ合い力を付けて旅に出てさっそくファイヤーに挑むことになった。

 なったのだが強いは強いのだが戦い方が下手くそでいまいち相手にならず泥沼化の果て不完全な終わり方して「逃げんな」とキレていたところでアーマルドが宿敵と決めていたウチらの闘志が飛んできたのでケルディオは見学のため気配を殺し離れて見ていたらしい。

 アーマルドが『アクアジェット』を多用するようになったのはケルディオの速さに付いていくために身に付けたらしく、速くてデカくて力もあるは単純に強力だと再認識できたよ。

 

 いろいろ話したけど、ケルディオ達は今世界で何が起きているのか全く知らなかったらしい。

 説明すると「この火山って元からここにあったんじゃないのか!?」と本当に驚いていたし「この異変を起こした巨悪を打ち倒し俺は世界を救うヒーローになってやるぜ!」等と言いアーマルドを連れて旅に出て行ってしまった。

 

 ただ行ってしまう前にアーマルドの手当てをし、その間ケルディオはダイケンキと剣の技術を見せ合ってもらった。

 殆どダイケンキが教える形になっていたけれど今後結果的にトラブルの鎮圧をしてくれそうなので僅かな時間でも教えて強くなってくれるならこちらも助かるからね。

 

 本当は止めたかったのだけれど止められるだけの理由が見つからなかったのと、この後ウチには報告などの後処理があるので彼等がその後処理の間大人しくしていられるイメージが持てなかったので泣く泣く断念した。

 

 泣く泣くと言えばもう一つ泣きたくなることが……

 こっちに関しては自分が悪いのもあって、アーマルドが強敵だったから仕方ない事なのだけれど、それでもね、それでも悲しい気持ちが時間差で徐々に強まってって……

 

「あぁ……貴重な石柱が………」

「グルゥ……」

 

 散々アーマルドがアクアジェットで体当たりしてくれたおかげで既にボロボロだったとはいえリザードンも石柱を足場にしたから申し訳無さそうに小さく唸るだけで何も言えていない。

 

「ううん。リザードンは良くやってくれた。

 そもそもウチらが来る前からボロボロだったのがもっとボロボロになったというだけだし、ファイヤーとのバトルも激しかったのだろうね」

 

 口に出して無理矢理言い訳を作るも悲しい気持ちが止まない。

 

 これは仕方のない事だったんだよ。

 

 現状起きている神話のポケモンクラスが起こすようなポケ災が、本当に伝説や幻といったポケモンが起こしたのかなんてわからない。

 一般のポケモンだろうと人間にもたらした厄災度合いだと伝説のポケモンを超えているパターンは過去の歴史を見る限りわりと多い。

 

 だからといって備えないなんてありえないし、今回戦ったアーマルドは確かに強かった。

 それでも通常よりも大きくタフなくらいで言ってしまえば色違いと珍しさとしては然程違いは無いだろう。

 全てではなかったにしろそんな存在にポケモントレーナーとしての土台、基礎的な戦い方、純粋な力で勝てないでこの先どうにかできるとは思えなかった。

 

 この場所の歴史的価値はとても高かっただろうけれど、過去を思考する考古学者としてではなく、今を生きるポケモントレーナーとして正しい選択をしたと思う。

 

 何よりもこの世界にはチャンピオンがいない。

 それならウチがチャンピオンの代わりをしなければならないとウチは何度でも言うよ。

 

「………わっ!ちょっと、リザードン?」

 

 柱に触れながら思考し、マイナス方向の色が強くグルグルとしたウチの感情やら決意やらをキーストーン越しに感じたであろうリザードンに抱きしめられヒョイッと持ち上げられてしまう。

 

「………………………そこまでしたら何か言おうよ」

「……………グルゥ」

「ぷっ。ふ、ふふふ……まったく口下手過ぎでしょうよ……

 ありがとう。もう大丈夫だよ、戦友」

 

 こんな事考えたって良い事無いのだからポジティブに行こう。

 

 この場所はボロボロになってしまったけれど、ウチにはケルディオの足跡貰えたという大きな収穫があるのだからそれで満足するべきだ。

 いったいどれだけの人間がケルディオと談笑して足跡をもらえるというのだろうか?

 それだけの価値がこの足跡にはあるんだよ。

 

 

 

 

 火山での出来事は全てスマホロトムを使用してウチのチャンネルで生放送していたから警察関係者への口頭での説明はパパッと済んだのだけれど当然のようにケルディオとはどんなポケモンか、ファイヤーとは何なのか等様々なことをデータに纏めPDF化し、ソレとは別に書類として資料作成してUSBと一緒に提出という手順を行う事になる。

 

 成り行きでホテルに連れて行かれ、生放送を見ていた影響かユイナさんを中心に交流のあった人達に至れり尽くせりのサービスを受け、温泉にも入りスッキリした状態でロビーにある大きく高級感のあるソファーに座り作業をしている最中だった。

 

「カミラさん大変です!」

「え?また?」

「いえ、違います。この辺で起きたのではなく、とにかく一度こちらに来てください!」

 

 そう言われホテル従業員のコウセイさんに裏方へと連れて行かれ、休憩室に置かれているテレビの放送を見ることになる。

 

「あ~……これは駄目だね。ウチがどうこうできる話しじゃないよ」

 

 その放送は1度耳にしたことはあるのだけれど、どの辺にあったかは覚えてないどっかの国の大統領による宣言だった。

 宣言の内容は自国内に出現したポケモンの領域へ軍隊を使って攻撃を仕掛けるという内容であり、本当にウチ1人でどうこうできる内容じゃない。

 

「これは仕事が増えるなぁ……とりあえず今作っている書類はもうすぐ終わるから、終わったら帰るとするよ」 

 

 帰りはリザードンの背中に乗ってゆっくり飛行デートで帰ろうとしていたのにこのせいでまたピジョットで高速飛行しないと時間が勿体ない状態に陥ってしまった。

 そもそも帰らなければ良いと言われれば確かなのだけど、今日のおゆはんはイオリがホワイトシチューを作ってくれる約束だから帰らないという選択肢は無い。

 

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