ポケモンの無い世界に迷い込んだポケモン界の女性 作:メリルメリルメリル
空から見渡した街の光景には驚かされた。
けれど、この現象を引き起こす事のできる存在についてウチには心当たりがあった。
つい5年程前ウチを除け者にされて行われたギンガ団のリーダーであるアカギによる新たなる世界の創造計画によって二柱がその姿を見せる事になった。
時を司る神ディアルガ、空間を司る神パルキアが実在する事が証明されたのだがウチはその姿を、その神話を見届ける事は叶わなかった………
ウチにできたことと言えば歪み変色した空を眺めるだけだった。
神話の存在が操られ世界の危機だった事は当然理解しているものの、その神話を専攻とし強力なポケモンの生息する危険地帯に行く事を許されるだけの実力を有して現場に赴き神話を解き明かす事ができるのに、あの時、今正に起こっていた神話を見ることができなかった。
その事実が今も尚、胸の奥で燻り続けているという事をウチは自覚している。
「やあ~っと休めるよ」
「2件目で許可取れたのはラッキーだったロト!」
「助かったよロトム、本当にありがとね」
「どういたしましてロト!」
「(本当にスマホロトムにしておいて良かったよ……
もし2年前にスマホロトムにせずそのままだったら普通にネットが使えるなんて気付かないでホテルを探していたよ)
疲れた……もうこのまま寝てお風呂は明日で良いよね」
ベッドにダイブしたら色々と面倒になりそんな事を口にする。
正直に言えば街の光景を見て不安や恐怖を覚えたし、ポケモンの生活圏が見当たらない事に怒ったのも確かだ。
しかし今、空間を司るパルキアにしかできない、仮にパルキアでなくとも同等、あるいはそれすらも上回る未確認のポケモンの力によってここへ来たのではないかと胸が燃えるように熱くなった。
あの時の不安はリーグに初参加した時の熱を思い出させるようなもので、急降下する中で抑えきれなくなって「楽しくなってきたね」とリザードンを力強く抱きしめながら年甲斐もなく叫んだ程だ。
10年以上の付き合いだけあって何に喜んでいるかはわかっていない様子だったけれど、ウチが喜んでいる事だけを純粋に喜んでくれる程の信頼関係があって、それがなんとも頼もしくて、ウチはどこまでもポケモンバカで、そんなバカを愛してくれる恵まれた出会いをしてきたのだと強く、強く、全身が焼け焦げるように強く実感する。
そんな興奮を隠しながら行った交渉なのだけれど、まさかポケモンの存在しない世界なんて今でも信じられない。
けれど知れば知るほどポケモンが唐突に現れたみたいでおかしな事になっている。
ネットでいくらポケモンを調べても謎の生物としてしか出ずに、ポケモンなんて単語は出ないしダンデさんもナンジャモちゃんもポケチューブも出てこない。
ただ、ポケチューブと検索したらポケチューブのパチモンが出てきてしまい別の意味で驚いたよ。
この世界にポケチューブは無いのだからコレがオリジナルなのだと気持ちでは納得できないが頭では無理やり飲み込ませる。
内容の方もポケチューブと同じような感じなので近い内に使うことになるだろうと【考古学者なポケモントレーナー】でアカウントを作成しておいた。
「……ランクルス」
「ラン?」
「お兄ちゃん」
「………ランクルー」
ベッドでうつ伏せから仰向けに寝返り、そのついでに適当に置いてたベルトからボールを取り出しランクルスを出す。
そのランクルス、いえ、兄へと両手を広げて呼び掛けると「仕方ねえな」と寄ってきて抱きしめれば抱き返してきてウチの頭を撫でてくれる。
流石ウチが生まれる前からいて赤ん坊の時から世話してくれてたウチのお兄ちゃんだ。
ウチの事を良くわかってくれている。
「………」
『いやいやおかしいやろそんなん!』
テレビを付けてボリュームを上げる。番組はどこでも良い。ただ無音でなく話してる感じの内容なら何でも良かった。
そしてランクルスを抱きしめたまま枕にタオルを引いて顔を埋め……
「ウ゛チ゛のレアゴイルウ゛ゥウウウウウウウウウッ!!!!!!!!
う゛あ゛ああああああああああ!!!」
爆発させた。
家族は当然、友達は……まあ学問的友人やトレーナーとしてのライバルも含めて良いのならそれなりにいるか。
彼等と会うことは難しい……いや、もう無いと断定しておいた方が後々の精神的負担が軽くなる。
仮にこのポケモン災害だろう事件を解決できたとして……
いや、解決してしまったが最後ウチを含めこの世界に来てしまったポケモン達は帰れなくなると覚悟を決めておいたほうが良いだろうね。
家族に愛されて育った。けれど、10年くらい両親含め年に一度シンオウの父の実家の集まりでしか顔を見ない。
友人も仕事の繋がりみたいなモノで会えないのは悲しいといえば悲しいのだけれども転勤続きだった子供時代の事を思えば……言っては悪いかもしれないけれど、わりと慣れてるから「仕方ないよね」の一言で私の中では片付けられてしまう。
しかしレアコイル。
このレアコイルはコイルの時に、ウチが説得の末に初めて一緒に行くと答えてくれた、初めて自力でゲットした子でリザードンと二ヶ月違いなだけで実質同期であり、間違いなく実の両親よりも長い時間を一緒に過ごしている。
ここにレアコイルがいたならば純粋に両親には会えないという事実に涙を流す事になる結果は変わらないだろうけれど、レアコイルと共に旅をし戦い、時に発見をして、時に危機を乗り越えて、彼がいなければ大怪我したり発見できなかったモノが確かにあって、むしろレアコイルは何かを探すという力に関しては私達のメンバー随一だった。
ココドラのたまごを持ち運ぶ事を考えてじっちゃんの家に預けていなければ……
もしあの時、ダイゴさんからココドラのたまごを貰わなければ……
いけない、この子は何も悪くないからそんな事は考えてはいけない。
そう思ったから全力で泣き叫ぶ事にした。
感情を爆発させて全部吹き飛ばす勢いで泣いて、気付いたら眠っていた。
・
………???
あれ?ここは、ポケモン研究所?
それも大会議室に続く廊下……
あぁ、そういえば今日はフィールドワークの結果の発表だったね。
ふふ、あの海底洞窟で野生のアーマルドとアノプスが普通に暮らしていて電気を動力とした未知の環境保護装置がまだ生きていたなんて経過報告のような内容だとしてもみんな驚くだろうね。
「~~~で、ありまして」
ほら、どうだ!今回に限っては何も言えまい!
そもそもウチもわかっていない事が多すぎるしアーマルドが好戦的だし強いしで弱いトレーナーは連れてこれなくて研究が進み辛すぎるんですよ!
………?
何?この悪寒?
この感じ……トレーナーとしての勘が警報を鳴らしている?
う、うるさい!
さっきから心臓の音がうるさい!
「ふむ、素人質問で恐縮なのじゃが……」
あっ………………
お、オーキド博士えぇーッ!?!?!?!?
・
「うわああああああっ!!!
はぁっ、はぁっ、はぁっ………………凄い怖い夢見た」
これ程とんでもない悪夢を見たのだから伝承通りダークライかいるだろう!
と、言うわけでグレイシア!かぎわける!
……いや、ウチにじゃなくて部屋の何処かにダークライがいるでしょ?
え?何その顔?そんなに臭い?
……………お風呂入ってくる。
イーブイもグレイシアも本来かぎわけるを覚えません。
しかしここはゲームではなく現実なので本人の素質と訓練次第で覚える事が可能です。
人間だって鍛えれば嗅覚だけでワインの違いをある程度把握してしまうらしいですし、元々嗅覚に優れている種族ならかぎわけるくらい使えるでしょう。