ポケモンの無い世界に迷い込んだポケモン界の女性   作:メリルメリルメリル

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散歩と物足りない訓練

 

 お風呂を済ませてホテルのフロントへ向かう。

 

「お、いたいた。おはようお兄さん、昨日はありがとうね」

「おはようございます。いえ、あまりにもキャンセルが多いのでこちらも助かります」

「そう言ってもらえると助かるよ」

「グーレィ」

 

 本来であれば夏であるこの時期が一番の売上時なのだろうけど、ポケモン……彼等からしたら謎生物の大量発生が原因でホテルの利用客が殆どいないのでしょう。

 

 昨夜ウチはホテルを探し歩き、1件目はグレイシアを見た従業員の態度から交渉する事すら無駄だと後にし、そこから一番近かったのがこのホテルで予想以上に大きなホテルだったから一瞬躊躇ったものの、ダメ元で聞くだけ聞いてみようと入ってみればグレイシアを珍しい小動物か何かみたいに好意のある目で見てくれていたのでこちら側の最低条件はクリア。

 残すは肝心な向う側だったのだけれど予想以上にすんなり通ったから値段は高かったがこのホテルに泊まる事にした。

 

「ところでお兄さん、この子の事どう思う?」

「どう……そうですね、見たことのない生き物ですが美人さんだと思います」

「美人さんだってさ。やったねグレイシア」

「グレシ」

 

 知ってると素っ気なく返すものだからウリウリとなで回してやる事にした。

 まあウチのグレイシアは美人さんとか綺麗とか美しいではなくカッコイイとか派手だとかそういった褒め言葉の方がずっと好きだからね。

 

 間違えた。ウチのグレイシアはじゃなくてウチの子はバトルスタイルの関係もあってみんなしてド派手好きだわ。

 

「この子はね、ポケモンって生き物の部類でね、大雑把に言うとポケモンの中のグレイシアって名前なんだよ」

「ポケモン……ニュースで言っていましたね」

「ん?昨日の今日でもうニュースに出たのかい?」

「5時頃から特番のニュースとして繰り返し同じ内容で放送されていますよ。

 この近辺に生息するポケモン……確かキャモメ、でしたっけ?

 それらの生態等について細かく説明していたのですが昨日の夜にお越しくださったお客様の存在を知らなければいったい何処でそのような事を知ったのだと信じなかったでしょうけどね」

「間違いなく2週間そこいらで知ることは不可能な情報量だろうしね。

 ……うん、やっぱり怖がってない様子だしこの子撫でてみない?」

「え?……よろしいのですか?」

「ただ、この子は氷タイプって言ってね、ポケモンの特徴の一つとして自然を操る力があって氷タイプというだけあってひゃっこいから気を付けるんだよ?」

「今の季節は人気出そうですね」

「この子は冬でもスキー場なんかで引っ張りオクタンなんだよ」

「……オクタンとは?」

「おっきなタコみたいなポケモンのことだよ」

 

 この後グレイシアを撫でてもらって1人撫でたら他の人も撫でに来てこの世界でもイーブイ系列は人気者になれる可能性を感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 グレイシアが撫でられている様子を見て値段は高いもののここが良いと思ったので同じ部屋で宿泊できるか交渉し無事に数日間宿泊させてもらえる事が正式に決まった。

 昨日無理を承知で「なるべく周囲に宿泊客のいない部屋にしてほしいのだけどできる?」と言って要望が通ったあたり夏場に海水浴場が使えないのは大問題なのだろうね。

 やはりトレーナー、それもチャンピオンリーグ出場レベルのトレーナーなんて他にいないだろうからウチがなんとかするしかないか。

 

 現状特に不味いところはサメハダーがあんな浜辺まで来るということで、それはつまり彼等は全く脅威だと感じていないということ。

 このまま調子付かせるとイタズラ感覚ではかいこうせんが飛んできても不思議じゃない。

 反応が見たいのであって殺したいわけじゃないから死人は出ないだろうけどあまりにも悪質だ。

 弱い生き物が混乱しているところを見て楽しむ野生のサメハダーはわりと普通の感性だからそう遠くない未来で絶対に起きてしまう。

 

「とは言えどうしよっか。

 あくタイプだから一番簡単なサイコキネシスで振り回すなんてできないし、めいそうゆきげしきからのふぶきで海を凍らせて力の差をわからせるって手も使えない。何か良い案ある?」

「グレイシ?」

「いや何でって、ここの人達はポケモンの事知らないんだよ?

 あんまり派手にやると怖がられちゃうよ?」

「グレ」

「ウチも思ったけどメンドとか言わない。

 それにしてもライドポケモンがいないからか車がやけに多いね。君もそう思わない?」

「ペリペペッペリィ」

「なんて?」

「グレッグレイシィ!」

「あ~、うん。そう言ってたんだ、ありがとうグレイシア」

 

 ポケモントレーナーの中にはポケモンと会話できるトレーナーが希にいるのだけれど、ウチを含めそういったトレーナーも初めから全てのポケモンと会話できるわけじゃないよ。

 親しくならないとわからないし、親しくなっても相性の問題で中々通じ難かったりもする。

 

 町中でも普通にいるタイプの中だとひこうタイプとくさタイプはどうもウチとの相性が悪いようで何言ってるか理解できないんだよね。

 

 ポケモンと会話できるだけでも確かにレアなのだけど上には上がいる。

 

 チャンピオンになったりなられたりを繰り返してるアイリスちゃんなんてドラゴンタイプ限定とはいえ会話しないで意思疎通が完璧に成立してるんだから。

 だってさぁ、本当に何気ない一瞬の出来事なのなけど「え?あ、ジュース忘れてたありがとうねカイリュー」とか、完全に解散の流れで背後向いてたのに何も言ってないワタルさんのカイリューにジュースを忘れてるって指摘されたかのような反応したんだよ?信じられるかい?

 

「グレイシィ……」

「ん?やっぱり視線が気になるかい?

 すれ違う車殆どこっち、というよりグレイシアの事を見てくるからね」

「グレーグレイシィ?」

「まあそういう目もあるのは確かかもね。2人揃って見世物でお揃いだね」

「グレィ……」

「そうだねぇ……おっと、やあっとスーパー見つけた。ごはん何が良い?」

「グレイシ!」

「力強い超特盛カレーのご注文ありがとうございます!朝から特盛カレー……いや、今からじゃお昼になるね。どちらにしろポロックと魚続きだったし良いかもね」

 

 グレイシアやランクルスのような小さい子だけなら良かったかもしれないけれどポケモン知らない彼らの前でいきなりドサイドンとか出すのは流石に不味いからこうやって買いに来て……って、何処で作ろっか?

 とりあえずホテルに行けば白米は貰えるとして……昨日の砂浜なら人が居ないだろうし見張りもできて都合が良いね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 浜辺についた。

 昨日と変わらず夏の海水浴場とは思えない人の少なさにコレなら問題無いと満足しつつ、メインのボールを全て投げ、ランクルス、ダイケンキ、ココドラ、リザードン、ドサイドンが。

 続けてライドポケモンのボールからギャロップとピジョット、オーダイルが出てくる。

 皆にカレーを作ると伝えたらココドラを置いてけぼりで大喜びなのだけれど、君等そんなにカレー好きだったかな?

 ……まあ、さっきも思ったけど魚と栄養価クソ高ポロック続きだったしそりゃ嬉しいか。ゴメンね本当。でも最初のうちは日持ちしない食材使って豪華だったじゃんフィールドワークめし。

 

「この国の民間で使われる一般的なの通信技術がどのくらいかよくわからないのだけど生配信で繋げられそうかい?」

「それなら大丈夫!今すぐにでも繋げられるロト!」

「なら繋げて」

「了解ロト!」

「………………………」

「………………………もう始まってるロト!」

「んぉ?もう始まっていたんだね。

 おはこんハロチャオ~。

 あなたの目玉にブラストバーン、ナニモンなんじゃ、ナンジャモちゃんのニワカファンのポケモン神話が専攻の考古学者、山口カミラで~す(平坦な声)

 皆の者~、ウチの配信にこんなに集まってくれて(現視聴者数0)嬉しいね。

 これからウチのポケモン達と食べるカレーを作っていくよ。

 ………こんな感じで良いかな?あとは適当にカレー作るところやみんなの様子を流しといて」

「了解ロト!」

 

 ドサイドンのストーンエッジで石を生み出し削りランクルスのサイコキネシスで回収してもらった湿った木材をリザードンの火力で無理やり燃やしてカレーを作る。

 その間に人のいない砂浜で自由に遊ばせているのだけれど、ココドラはまだ赤ちゃんだから面倒見るのが下手なリザードンとドサイドンを除いたメンバーで代わり番こで見る。

 ウチが見てる時はずっと抱っこしていて、48キロ(ココドラの平均体重は約60キロ)とあかちゃんだから少し軽いとはいえ流石に腕が疲れた。

 

 配信の為の説明なんかは特に無し。

 ポケモンの生態の話から広がる脱線話でなら無限に語ったりできるけれどナンジャモちゃんみないなトークは無理だよ。

 あれはそういった技術を磨かないとできない芸当だからね。

 

「う~ん……ウチ別に悪い事はしていないと思うのだけど、良い具合に包囲されてきた気がするなあ〜」

 

 この地方……じゃなくて国のジュンサーさんは対応が早くて優秀だね。

 法律をしらないからたぶんだけど悪い事をしていないのと、ポケモン達をちゃんと従えられているかどうかの確認もあって見張っているだけなのかもしれない。

 せっかくギャラリーも増えてきたし派手に曲芸でも見せようかな。

 

「ふふふ、良いこと思いついた。

 リザードン、ギャラリーもいる事だし食後の運動がてら一月ぶりに一緒に訓練でもしようか」

「ガヴゥッ!」

 

 やる気満々に吠えたリザードンへ勢い良く手を向けると深く集中した状態へと切り替わる。

 向けられている手を突き刺すように凝視し、手を上げると同時に弾けるように天高く飛翔する。

 そこからランダムにハンドサインと暗号文を口にし指示を飛ばし、時に輪っかをつくるように大きくクルリと宙返りさせ、時にドリルのようなローリングを指示した回数連続でさせたりし、徐々に指示を飛ばすまでの時間を縮めていく。

 

 それを5分程行い今度はウチも一緒に飛ぶ。

 親指、人差し指、中指の3本を伸ばしカウントダウンで折り曲げていき、2のタイミングで方向は伝えずウチが駆出し、1のタイミングで大きくジャンプ、0のタイミングでリザードンが滑り込んで速度を落とさずウチを背中に乗せて上昇し先程の5分間と似たようなフライトを2人で行う。

 当然背に乗った状態では行えない動きもあり、その指示を出す度にウチは自ら飛び降り背に乗り直す。

 

 その光景がちょっと過激だったようでいきなり高いところから飛び降りたウチを見て「あぶない!」って下から叫んでいたのを聞いて(んん?やり過ぎたかな?)とも思ったけれど始めたからには最後までやりきる。

 

 今行っている訓練はギャラリー視点それはもう派手な曲芸に見えるかも知れないけれど、これは1度でバトルと突発的なポケ災等への対応の2種類の訓練を行えて実に効率が良いんだよね。

 ポケモンバトルは確かにトレーナーが指示を出すがその指示に則った範囲の行動はポケモンが自分の意思で行う。

 定期的に訓練をしておけば必要な飛行技術を現場の判断で行う事ができるようになりバトルの勝敗に大きく関わる事になる。

 

 ポケ災に関しては、唐突に野生のバンギラスのじしんにより崖が崩落するなんて事だって特別珍しい事ではないし、ウチは自らフィールドワークの為に前回の海底洞窟のような場所に足を訪れる。

 そうなればそんじょそこいらの野生のバンギラス程度片手で一捻りにできてしまう強力なポケモンとの遭遇、あるいは縄張り争いの余波で小規模な地形変動が起きる。はたまた大樹をもなぎ倒す突風で身が投げ出されるような事になるかもしれない。

 

 ウチとリザードンが行っているこの訓練はそういった危機に直面した場合の訓練であり、そういった状況を想定していたとしても素人が見た場合あまりにも危険に見えるかも知れないね。

 けれど実際のところこの訓練はハンドサインや掛け声有りで行っていて、次に何が起こるかわかった上で対応している。

 もし現実的にこれくらいなら起こるだろうというレベルの危機の対応訓練のみをしていた場合、実際に想定通りのレベルの危険だったとしても何の予兆も無くそれが起きた場合まず対応できない。

 だからこそ訓練では想定を超えた過酷な状況への対応を行う必要がある。

 

 メンバーの中でウチを背に乗せて万能飛行が可能なのがリザードンだけなのだからこの子の訓練が一番厳しくなるのは必然で、ウチのわかままでこんなにも厳しい訓練を強いるのだからウチ自身も咄嗟に動けるよう訓練に混ざるのは当然の事だよ。

 それに今回は初見のギャラリーしかいないから大分控えめなんだよね。

 ここにハンドサインでレアコイルに指示出して妨害行為、口頭でリザードンにルートの指示を出すなんて事が加わるから本当に優しい。

 ……いや、これ優しいというよりもぬるいとしか感じられないのだけど少々不味いのでは?

 

 そう感じていたのはリザードンも同じだったようでぬるい分訓練の時間を10分増やしたのに不完全燃焼と言いたげな様子でおでこをグリグリこすりつけてきたのでポロックを与えつつ沢山撫でた。

 不味いな、妨害も無ければ競う相手もいないからこのままじゃリザードンの飛行技術がなまってしまう。

 ピジョットはリザードンが万が一飛べなくなった時に最速の飛行で離脱する事しか想定していないからこんな万能な飛び方を求める訓練に参加させても逆効果になりかねないし困ったぞ。

 まさかウチのメンタル以外にこんなところにもレアコイルがいない弊害が生じるなんて……

 

 訓練の後に皆とボール遊びしながらそんな事を考えていたらギャラリーがようやく声をかけてくれたので色々あってはかいこうせんを見せることになったのたけど、それを見たギャラリーは慌てて「急ぎ話し合い対応を決めます」と言って帰っていった。

 

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