ポケモンの無い世界に迷い込んだポケモン界の女性 作:メリルメリルメリル
水蒸気爆発により海水の雨が降り注ぎびしょ濡れになった髪をかきあげ、そのままわしゃわしゃと頭を抱える。
「はあ~!やっちゃったなあホンマ!!!
最近の事考えるとやっぱりウチも大人になってたんやなって感じがしてたけどさ、んなこたなかったよ!
無理無理!ウチはやっぱどこまで行こうがポケモンバカのポケモントレーナー!」
「ダイケーン」
「グレイシィ……」
「グルル」
「よ~っす、みんなお帰り。
あとグレイシア、今バカは一生バカだよって言ったの一生忘れてあげんからな~」
「ランクルー」
「でも擁護できなくない?って酷くない!?」
我らが最高火力を間近で見た後だからかみんなして機嫌良さそうにわちゃわちゃと軽口を叩き合う。
けれどまだ仕上げが済んでいない。
1回じゃ何が起こったかキチンと理解できない。理解しようとしない。
だから2回目、これが現実として起きていることだと突きつける必要がある。
「さて、みんな揃った事だし調子乗りすぎるとどんな痛い目に遭うか、しっかり刻まれるよう仕上げと行こうか!」
そう伝えれば和やかな雰囲気が切り替わり整列し一斉射撃の体勢に入る。
ウチの子ではかいこうせんを使えないのはココドラちゃんだけなのだ。
リザードンは2度目のブラストバーンとなると流石に過剰すぎるから今度こそソーラービームを。
そしてドサイドンにはがんせきほうの準備をさせる。
「これが最後の確認だよ!今ならまだウチとリザードンだけ!引き返せる!
ここから先、コレをしてしまった先の道は姿を変え形を変え!今まで歩んできたどんな道よりも確実に過酷な道になる!
それでも!それでもウチに付いてきてくれる!?」
みんな同時に『もちろん!!!』と力強く答えてくれる。
ふふ、バカばっか。本当、愛してるよみんな。
どんなに言い訳したって危険生物を従えている危険人物にしか見えない。
しかし、これで下手に捕まえようなどと考えて兵器による野生ポケモンへの攻撃は躊躇してくれるはず。
我々には、ポケモン達には戦える力がある。
そして、共存できる理性も知性もあるんだって。
しっかりとその目に焼き付けな!!!
「放てェ――――――――――ッ!!!」
大きく腕を振るい指示を出す。
美しく均等に横並びとなった6つのはかいこうせんが
周囲の氷柱針を反射し計算通り何十にも拡散したソーラービームが
全てを押し粒さんとする質量を誇るがんせきほうが
海へと突き刺さり、種類は違えど大きな音を立て2度目の爆発が起きた。
そして痛いほどの静寂に包まれ
波の音しか聞こえない中
闘志を込める。
その闘志は熱を持ちながらも冷たく、研ぎ澄まされた刃物のように鋭く、それでいてどんなモノでも貫く閃光を彷彿とさせる。
さあ、戦いたいのでしょう?暴れたいのでしょう?
どこからでもかかってこい
どんなに数がいようと、その全てを相手してやろう
そうやってプレッシャーを送ることでサメハダー達は……
「ア゛――マ゛ァ――――――――――ッ!!!」
「ヴエェ!?」
海が盛り上がったと思ったらモノすっごい見覚えのある巨大アーマルドが現れた!
そのアーマルドは凶悪な笑みを浮かべ
「オラァ!かかってこいとか言われたら行くしかねぇーよなぁ!!!」
と言いたげに真っ直ぐとこちらに、心底楽しそうに、野生特有の荒々しく、全てを完膚なきまでに破壊し尽くす暴力的な闘志を撒き散らしながら突撃してきた。
その後方でウチらのプレッシャーから解放され一目散に逃げ出すサメハダー達。
「呼んでないよ!来んな!あーもーみんなバカばっか!
迎え撃てドサイドン!ストーンエッジ!」
地面から突き出たストーンエッジでダメージを受けながらもタックルで砕く
砕いた岩を器用に爪をひっかけ、走る動作を止めず一度だけ力強く踏み込み投石
ドサイドンが尻尾で岩を落とし
そのまま遠心力を利用し腕を大きく振り上げアームハンマー
対して下から振り上げるようブレイククローで互いの技がぶつかり合う!
その激しいエネルギーのぶつかり合いにより強力な突風が吹き、砂浜が一瞬波打ったかのような動きをみせる。
「はいはーい。今日はSNSで告知したように重大発表がありまーす」
コメント欄はさぞかし阿鼻叫喚だろうなと思いつつ野生のアーマルドとドサイドンのガチなぶつかり合いをバックに放送しぱなっしのカメラに向けて語りかける。
生配信中に逆凸が来るのは希によくあることってナンジャモちゃんで予習済みだからうろたえない。
「今までリスナーの質問や疑問、ポケモンの説明なんかは国からのあれこれがあるまで無しって事でしたが今日、今日からは質問も全部、答えられる範囲ならジャンジャン答えていきます!
いろいろ考えたんだけどね、この世界にはたぶん、ウチしかポケモントレーナーがいない。
なら、ポケモンの事を何もわかっていない人達にポケモンの事を任せて勝手に決められるなんてウチにはできない。
なぜなら、ウチはチャンピオンリーグにも出場し、競い合い、ベスト4の成績を残した……
トップクラスのポケモントレーナーなのだから
チャンピオンにはなれなかったのは事実ですが、それでもポケモン社会の顔でありポケモン犯罪抑止力たるチャンピオンへの高みへこれほどまでに近づけた存在は本当に一握りです。
そこまで上り詰める程ポケモンに精通し、ポケモンを愛しているのに他人任せになんてできません。
ですのこれからはポケモン教室という形でポケモンについて詳しく説明しますし、先程も言ったように質問も返しますしテレビにも出ていきたいと考えています。イエーイ!パフパフー!」
「グレェグレレ、グレイシィー♪」
「ランクルー♪」
ちょっと後ろが本気でうるさいのだけど予定通りにグレイシアとお兄ちゃんが人間受けしそうな甘ったるい声を出し、てだすけをウチに向け使用しながら画面映えを手伝ってくれる。
本当、言ってることさえわからなければ可愛いのに勿体ない。
「結局やるんか、後で覚えてろよ♪」「今夜は焼き肉♪」だってさ!
ホテルで焼き肉とか無理だから!
「……うん、足踏みつけて決めのインファイトに入ってるしもうすぐ向こうも終わるかね」
音が変わったのでチラッと背後を見ればドサイドンに足を踏みつけられ逃げられないアーマルドが技的にはばかぢからなのだけど形的にはインファイトによるラッシュで殴られ放題になっている。
あのアーマルド、やったらタフだから拳をあと数十発は入れないと倒れないんだよねぇ……
あっ。シザークロスをわざと潰させて何の技も込められていない普通の頭突きで脱出した。
息も絶え絶えだけどお目々ギンギラで闘争心はむしろ増していてもうちっとだけ長引きそう。
なんやかんや成長しているね。
でも万が一何かの間違えで勝てても次にメガシンカから戻ったリザードンが控えていると考えると絶望感凄くて笑えてくるね。
「今回の事でポケモンの脅威度や危険性は十分理解してくれたと思うのだけど、同時に今現在も含めウチやポケモン達との関係性で十分共存が可能だということもわかってもらえると思います。
ですが彼等と共存するにしても知識が必要となりますのでウチはその知識を発信することを目的としています。
それで、今回は脅威度の中の最上位クラスを映してしまいましたが、こういったことはプロ同士のポケモントレーナー同士によるポケモンバトルでは割と日常茶飯事です。
どうせここまで見てしまったのだからポケモンバトルを見ていきましょう、ええ、それが良いと思います!
……っと、その前に凄く気になってずっと答えたかったコメントが1つあるのでそのコメントへ返事を返させて貰います。
ウチのランクルスに対してのコメントなのですが、
『言葉理解してるしお兄さんって事はカミラさんって本当はポケモン?』
って違うに決まってるいるでしょ?
もしかしてウチがゾロアやメタモンにでも見えています?
言葉を理解しているのはそれだけ特別な才能があっただけ。
その才能だって上には上がいます。
ランクルスがお兄ちゃんなのはウチが母親のお腹の中にいた頃からウチの実家のポケモンとして暮らしてたってだけです。
ちなみにダイケンキとグレイシアにココドラもウチが卵から孵した弟と妹ですよ。可愛いでしょ」
「グレィ」
「やっぱりグレイシアが可愛いって言うのは無しで」
おおっとぉ?この場所ちょっと危ない気がする。
トレーナーの直感がそう言ってる。コレは的中率100%の方の直感だ。
「退避ぃ~」
結果から言えば退避する必要は無かった。
ナンジャモちゃんに習って両手を広げ、ウチにあるか知らんが可愛く回避行動に移れば直感通りばかぢからを使うも技でなく技術による投げ技によってウチらがいた場所の上を越え、飛んでいったアーマルドが背中からたたきつけられ……
「おおっとぉ!アーマルド選手しっかり受け流ししていく~!」
以前あんまりにあんまりな落ち方したから上半身、下半身どちらが先に落ちるかの時に使い分ける着地方法を1度だけ教えたのだけれどしっかりと取り入れていて思わず笑みがこぼれる。
ただでさえタフだったのに物凄くタフになっていて素晴らしいね。
ドサイドンもニッコニコだよ。
今のアーマルドなら通常リーグレベルのトレーナーじゃ普通に負けまであるんじゃないかな?
このタフネスオバケめ。
「じゃなくて!どうしても返したかったコメントの答えは返したから今度こそ!
正直未熟だった頃の映像だから恥ずかしいのだけど、皆でコレって決めたポケモンバトルの試合映像を用意してあるからソレを流すよ!
胸をたからせ不屈の魂で踏み出しバトルをしよう!熱きポケモントレーナー達よ!!!」
そして映像は切り替わり、今よりも若い、いや、幼いと呼べる姿のカミラがゲートから現れる。