バイト先の可愛すぎるアラサー店長について 作:社畜マークII
今日は、待ちに待った虹夏ちゃんと山田の、初ライブ当日だ。ずっと応援してきた2人なので、バイトは休みなのだが、僕も今日は早めにSTARRYに赴き、準備の手伝いなどをしていた。
ただ、何やらトラブルが起きたようで、虹夏ちゃんが慌てた様子で僕の前に現れた。はて、どうしたんだろうか。
「喜多ちゃんが、逃げた!」
「え」
喜多ちゃんって、あの言ってたギターボーカルの子か?そういえば、一度も練習来てなかったし、顔も見た事なかったな。
いや、でもそうなるとライブはどうなるんだ?ベースとドラムだけでも出来なくもないだろうけど、初めてのライブだし、ギターがいない不完全なままではやりたくないだろうし。
「全然連絡もつかなくて、どうしよ!…い、いまからどっかにギター弾ける人探しに…あ!涼介くん、今日だけでも私達のバンドに入ってよ!なんか奢るから!」
「いやいやいや、僕、演奏どころかコード練習してるような超絶初心者状態なんだけど!スタートラインにすら立ててないのに、そんな無責任にステージに立てないって!」
「そ、そっか…ごめん」
しゅん…っと、している虹夏ちゃんを見ると悪い事をしてしまったような気持ちになる。でも、僕が出る事で、初ライブが苦い思い出で終わるのは、罪悪感で僕が潰されてしまう、何より虹夏ちゃん達が可哀想だ。
……いや、でも、このままじゃ、その
「とりあえず私は、ギター弾ける人探してくる!お姉ちゃんにもそう言っといて!」
「待って、虹夏ちゃん」
声をかけた僕を、走ろうとした虹夏ちゃんが急ブレーキをかけて、振り返って見てくる、急いでるのに呼び止めてしまったのは申し訳ないが、許して欲しい。
「な、なに?すぐ行かないと…」
「僕も探しに行く、星歌さんには今メッセージ入れたから。待ってくれるはずだよ」
「…いいの?正直めちゃくちゃ助かるけど」
「もちろん、とりあえず二手に分かれて、ギター弾ける人が見つかったら、また連絡して」
「うん!本当にありがとうー!」
僕達はそう言って、STARRYから走り出した。ライブまではあと2時間か…30分で見つければ、まだ何とかなるか?
そう思っていた僕だったが、そこで、結束バンドにとって運命の出会いをするとは、この時は予想もしてなかった。
「とりあえず楽器屋まで来たけど、言ってすぐにギター弾いてくれそうな人はいるかな…」
キョロキョロと楽器屋を見回すが、だいたい3〜4人で来てる人達が多く、1人で暇そうな人間というのはあまり居ない。
…まぁ、楽器屋って友達と来て、高い楽器を見てはしゃいだりとか、ピックをお揃いで買うみたいなノリも多いからな、高校生とか特に。
「うーん…ピックは、ついついいろんな種類のもの買っちゃうのよね…」
お、1人で来てる人発見。虹夏ちゃんや山田と同じくらいの年代だし、もう蜘蛛の糸を掴むような気持ちで、僕はその人に話しかけたのだった。
「あの」
「うぇっ!?な、なに!?」
うお、すごいびっくりさせてしまった。ツインテールでパンクなファッションで、しかも可愛い顔してるから、多少は声かけられるのも慣れているのかと思って、無遠慮に声をかけてしまった。いやまぁ、確かに身長180くらいの前髪が重い男に、いきなり声掛けられたらそりゃ驚くか。
「すいません、ナンパとかじゃなくって。ちょっと、いきなりな話になるんですけど…」
「え、ええ。な、なに?」
すっかり怯えさせてしまったが、こっちもかなり余裕が無いので、いきなり本題に入るとしよう。
「ここからずっと行ったところに、STARRYっていうライブハウスがあって、そこで僕の友達のバンドが今日ライブをやるんですけど。ギターの子が、当日に逃げちゃって…」
「ふぅん…それは気の毒な話ね」
「それで、今ギターを弾ける人を探してて」
「!、まさか、私に代理ギターをしてほしいって?」
「ええ、ダメなら断ってもらっても全然大丈夫です。けど、もし出てもらえるなら、ちゃんとお礼はさせていただきますので」
そう言うと、悩むそぶりを見せるツインテールさん。そう言えば名前すら聞いてなかった。今からでも、自己紹介しといたほうが良いだろうか。
そう思っていると、いきなりブルブル…と頭を振り始めた。どうしたんだろ、やっぱりダメだったのかな。
「ライブは何時からあるの?」
「えっと、2時間後くらいです」
「…2時間か、…ごめんなさい。私も今日バンドメンバーと合わせの練習があって、もうすぐ行かないといけないから、どうしても無理なの」
マジかぁ…、本当にどうしようか。虹夏ちゃんも見つけられなかった場合、やっぱり僕が出るしかないのだろうか。僕の稚拙な演奏で、どうにかできるとは思わないが、やるとなったらしっかりとやろう。
しかし、いきなりツインテールさんは僕にビシッ!と、指を指した。
「その代わり!…ここで時間いっぱいまで、代わりのギターを探す手伝いをしてあげる。…知らない人と話すのはめちゃくちゃ苦手だけど」
「えっ、良いんですか」
「別に良いわよ。バンドメンバーに逃げられた時の焦る気持ちは、私もわかるもの」
そう言うと、彼女は少し切なそうな顔をした。なんか、色々あったんだろうな…。まぁ、とりあえず、協力してもらえるというなら、願っても無いことだ。
「ありがとうございます。あと今更ですけど、僕、永岡涼介っていいます」
「私は大槻ヨヨコよ。ところでだけど…あなた、何歳?」
「16です」
「同い年ね。貴方もタメ口で良いわよ」
「あ、うん。わかった」
初対面の僕にこんなに優しくしてくれるんだから、とても良い人なんだろう。さっきから、全然目を合わせてくれないけど。
「じゃ、行きましょう。時間もないし」
そう言って、颯爽とスタスタ歩いていくヨヨコさんだが、いきなり売り場と売り場の間の段差につまづいて「ふぎゃ!」とか言いながら、盛大にこけ、スカートの中が丸見えになった。
幸いなことに、スパッツを履いているようなので、パンツは見えなかったが、こけた本人は半泣きになりこちらを睨みつけている。
「だ、大丈夫?」
「うぅう、恥ずかしい…」
唸りながらもちゃんと立ち上がる。なんか、ポメラニアンとかチワワとか見てる気分だ。気性の荒い小動物って感じがする。この人、結構面白い人なのかもしれない。
「気持ち切り替えて行くわよ!もう!」
「うん、ありがとう。ヨヨコさん」
改めて僕達は店内にいる、比較的に話を受けてくれそうなバンドマン何名かに聞いてみたが、やはり当日で今からとなると難しそうだ。当たり前だけど、その場でどのように演奏するかを覚えないといけないし、ハードルの高い話だろう。
「見つからないわね…」
「そうだね…どうしよっかな…」
そろそろ、ヨヨコさんも行かなければならない時間だ。結構時間をかけたが、誰一人捕まらなかったので、ヨヨコさんに無駄足を使わせてしまったことになる。
「あと、もう一回だけ『prrrr』…電話、きてるわよ」
「あっ、すいません」
画面を見ると『伊地知虹夏』と表示されており、急いで電話に出た。ギター弾いてくれる人が見たかったんだろうか、もしそうなら僕も安心なのだが。
「もしもし!涼介くん?ギター弾いてくれる子見つかったよー!!」
「え、ほんとに?良かった…。今どこ?間に合いそう?」
「うん!もうちょっとでSTARRYに着くよ!涼介くんも、もう帰ってきてくれて大丈夫だよ、本当にありがとー!」
良かった良かった、見つかったようだ。僕は一安心し、ほっと一息つく。虹夏ちゃんも安心したようで、少し元気を取り戻していたようだし、あとはそのギターを弾いてくれる人と、どれだけこの短時間で合わせられるかだな。
「全然いいよ、じゃあすぐ戻るね」
「うん、じゃあまた後で!」
そう言い電話を切った瞬間、ヨヨコさんと目が合う。彼女もどこか安心したような顔をしていた。言い方とか態度はキツいところもあるけど、本当に面倒見が良くて良い人だな、この人。
「見つかったみたいね、良かったじゃない」
「ありがとう、でもなんか無駄な時間を過ごさせちゃったみたいで、ごめんね…」
「別に良いわよ、約束の時間までは暇だったし」
「そう言ってくれると助かるよ」
でも、なんかこのままこの人と、はいさよならって感じで別れるのも、薄情な感じがするな。…あ、そうだ、連絡交換しとこう。あと、お礼はどうしようかな。個人的にご飯とか奢るとか?
でも、今日初対面の男から、いきなりご飯の誘いとかしたら警戒されるかな。まぁ、ヨヨコさんにも聞いてないとわからないかこれは。
「あの、ヨヨコさん。連絡先交換しない?」
「うぇ!?れ、連絡先交換?えーっと…い、いいわよ!ら、L◯NEでいい…?」
「うん、なんでも大丈夫だよ」
と、友達追加ってどこだったかしら…?という、悲しい呟きは聞かなかった事にし、少し手間取ったがヨヨコさんの連絡先をゲットした。
とりあえず、前に虹夏ちゃんに貰った、可愛いチワワのスタンプでも送っておこう。
「は、初めて、父親以外の男の人の連絡先を手に入れたわ…」
「またなんか奢るよ、今日のお礼に」
「べ、別に奢りはいいわよ。私がしたいからしただけだし…でも、今度普通にご飯は行きましょ」
「それじゃあ、また」と言って彼女は去って言った。最後までかっこいい子だったな。彼女とは良い友達になれそうな気がする。
そう思いつつ、僕はSTARRYに向けて、走って帰るのであった。
「おかえり、涼介」
「あっ、星歌さん。すいません、いきなり出て行って」
「良いよ、別に。先に連絡してくれてたし」
星歌さんはそう言いながら、少しソワソワとしている。まぁ、妹の初ライブで落ち着かないのだろう。虹夏ちゃんの大事な日になると、いつもこんなふうになっているところを見るので、微笑ましく感じる。
そう思っていると、星歌さんは微妙な表情をしつつ、僕に独り言のように話しかけてきた。
「今回のライブは正式なライブとは言えない。いわば、身内贔屓のコネで枠を作ったみたいなもんだ」
「まぁ、それはなんとなくわかってましたけど」
「このライブがアイツらの経験値になれば良いと思ってる。自分達がどれだけ足りてないのかを認識する、良い機会だ」
「…そうっすね」
星歌さんは、音楽に自分の全てを捧げてきた人だからこそ、その残酷さや不条理さを知っている。今回は、その一端を虹夏ちゃんに知ってもらいたいと思ったんだろうな。
「けど、涼介は何も考えずに応援してあげれば良いと思ってる。幼馴染としてな」
「えぇ、僕は虹夏ちゃん達のためなら、1人でも応援しますよ」
「…やっぱデキてるのか?虹夏とお前」
「デキてねぇっすよ!」
ツッコミを入れつつ、2人で結束バンドの出番を待つ。2人とも集中してるだろうし、控え室には行かないでおこう。ちょっと、代わりで来てくれたギターの人がどんな人なのかは見たかったけど。
「おっ、結束バンドの番ですね」
「おう」
僕はそう言いつつステージを見る、緊張した面持ちの虹夏ちゃん、いつも通りのように見えて少し表情が固い山田。あと、マンゴーのダンボール。
ん?なんか変なのがいる気が。幻覚でも見てるのか?僕は。
いや、幻覚でも見間違えでも無い、なんかいる。完熟マンゴーと書かれたダンボールの化け物がそこに。いや、どうしてそうなった?
「結束バンドです、はじめましてー!今日はみんなも知ってる曲も何曲かやるので聴いてください!」
いや、そのダンボールの化け物については何の説明もないんかい。
昨日は忘年会でした(毎日投稿失敗)
ヨヨコ先輩は友達くらいの距離感が1番好き❤️あと、主人公の名前なんですけど一応元ネタはあって、漢字は違うんですけど検索したら出てくると思います。