バイト先の可愛すぎるアラサー店長について   作:社畜マークII

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みなさん、地震は大丈夫でしょうか?僕は親戚が石川県に居るので、元旦早々にバタバタとしていました。まだ、予断を許さない状況ではございますが、皆さんが何も不安な事もなく、ハーメルンで小説を読める日常を取り戻せることを、心より願います。


6話

 

「おはようございます…」

 

「いや、アンタどうしたのよ!?酷い顔色してるわよ!?」

 

待ち合わせ場所に着くと、会って早々にヨヨコさんに心配される。

いやまぁ、あんなことがあったためかどうにも眠りが浅く、朝起きた時から調子が悪い。しかし、誘ってもらっておいてドタキャンするわけにもいかず、今に至るというわけだ。

 

「全然大丈夫。ちょっとお腹空いてるから、そのせいかも」

 

「本当に大丈夫でしょうね…まぁ、最初はご飯行くつもりだったから、ちょうど良いかもね」

 

「やったぁ、どこに行く予定?」

 

「それは、着いてからのお楽しみよ」

 

ヨヨコさんは「ふふん」と得意げに言う。仕草が無自覚にあざとい、顔が可愛いので様になっているが。

そのまま、連れられるままに着いていく。ヨヨコさんはロックが好きで、今の流行りの曲はだいたいわかるし、弾けるとのことらしい。

かといって、フォークロックやグラムロックなどの70年代や80年代の音楽も外しているわけではなく、知識としてしっかり持っているようだ。

 

「その格好は、パンクロックを意識してる感じ?」

 

「まぁ、そうね…ど、どうせ似合ってないわよ!!ふん!」

 

「そんなことないよ、めっちゃ似合ってる。可愛い」

 

「かっ!?!?…こ、この変態!」

 

へ、変態…その言葉は今の僕にとても効く。昨日のことを思い出し、気持ちが沈んでいるとその様子を見かねたのか、ヨヨコさんがアワアワとしだした。

 

「そんなに落ち込まなくても…べ、別に可愛いって言われて嫌なわけじゃ…」

 

「いや、ヨヨコさんのせいで落ち込んでるわけじゃなくて、昨日知り合いの女性にも、同じように変態と言われちゃって」

 

「アンタ、何したのよ!?」

 

驚愕!!と言わんばかりのリアクションをするヨヨコさん。いちいち反応が面白いなこの人。

 

……昨日に関しては、好きな人が同じ屋根の下で寝ている状況で、僕の理性が正常に動く自信が無い、というのが混じり気ない僕の本音だ。しかし、あんなにぶっちゃけるつもりはなかった。ほんとに何をしてるんだ、僕は。

 

「でも、それもまたロックなのかしら…」

 

「それは違うと思う」

 

「…まぁいいわ、そろそろ着くわよ」

 

ヨヨコさんが、「ここよ!」と言ったその場所は、外から見える店内はモダンな雰囲気で、落ち着きのあるものだった。よくこんなとこ知ってるな、結構異性とのデートの経験があったりするのだろうか。と思っていると、ヨヨコさんは自慢げに語りだした。

 

「ここは、ニューヨークの名店仕込みのパスタがランチで格安に食べられるのよ!(って、『男女で出かけるならここ!新宿のランチスポット10選』っていうサイトに載ってたわ!間違いないはず!)」

 

「ほー、久しぶりに外食でパスタ食べるかも、楽しみ」

 

「ふふん!そうでしょう!」

 

そう言うと、スタスタと店内に入って行き、「予約していた大槻ヨヨコです…」と、店員さんに恥ずかしそうに話しかけていた。あざとい、さすがヨヨコさん、あざとい。席に着くと、お冷とメニュー表を渡される。

 

「おすすめは蟹クリームパスタだって。名前の響きだけで、めちゃくちゃ美味しそうってわかるなこれ」

 

「私は、この牡蠣のペスカトーレってやつにしようかしら」

 

2つとも海鮮系のパスタになった。まぁ仕方ないのだ、外に「海鮮は店主が毎朝目利きして卸してます」って書かれてたし。

そこまで言われたら頼まざるを得ない。ああいう、こちらの購買意欲を上げてくる但し書きはついつい見てしまう。

 

「この、バケットもついてくるランチセットBにしようかな」

 

「私は断然デザート付きのCの方よ」

 

ヨヨコさんは、女性らしくデザートに目がないようだ。店員さんを呼び、注文をした後、オシャレな店内に少し落ち着かないのかソワソワとしているヨヨコさんに、少し萌えつつもギターの弾き方について尋ねる。

 

「僕今、ギターを練習してるんだけど、Fコードで躓いてるんだよね。なんかコツとかある?」

 

「へぇ、涼介もギターしてるんだ。月並みな言葉だけど、Fコードは正直コツよりも積み重ねよ。身体に染み込ませるしか無いわ」

 

「やっぱりそっかぁ、指の先が痛くて集中が途切れるんだよね」

 

「私も身に覚えがあるわ、ちゃんと軟膏とか塗ってる?私今持ってるから、使っても良いわよ」

 

うぉぉ、面倒見が良い部分が全面に出てる。会って2回目の人間にここまでするか?普通。僕のことが好きなのかもしれないな…、などと戯言を考えながら、渡された軟膏を塗り始める。

 

「…ちょっと、待ちなさい」

 

「ん?」

 

「アンタ、ギター弾き始めて何ヶ月?」

 

「え?たしか一ヶ月とかかな」

 

「一回の練習で何時間弾く?あと、週に何回?」

 

「んーと、1()()3()()4()()()()()()1()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「バカじゃないの!?何に突き動かされたらそうなるのよ!?」

 

僕の指を掴んでそう叫ぶヨヨコさん。どうしたんだろうか、普通にギターを弾き始めた人って、それぐらい練習する者では無いんだろうか。

 

「指先があり得ないくらいカチカチになってるし割れてるから、嫌な予感がしたら…。涼介アンタ、両親はギターの練習についてなんて言ってるのよ」

 

「あー…、僕一人暮らしでアパートの両側も下も上も誰も入居してないから、一応誰にも迷惑はかけてないとは思ってるんだけど…」

 

「そ、それならまぁ良いのかしら…。でも、ちゃんと外に出たりしないとダメよ。で、出かけるのなら私も付き合うし」

 

「…はは、ありがと。ヨヨコさん」

 

「あっ、あとそのヨヨコさんっていうのやめなさい。似合ってないわよ」

 

「えっと、じゃあヨヨコ様?」

 

僕がそう冗談を言って見せると、ヨヨコさんは怒ったチワワのように吠えたててくる。あまり揶揄うのも良くないと思いつつも、適度にいじりたくなるんだよなこの人。

 

「なんでよ!!呼び捨てってことよ!」

 

「冗談冗談、ごめんね()()()

 

「ふ、ふん!それで良いのよ!」

 

改めて言い直すと、呼び捨てで呼ばれた喜びが隠しきれないのか、口の端がヒクヒクと吊り上がっている。なんだこの萌えキャラ。

 

「まぁ、そういうことならご飯終わった後に行く場所は、尚更ちょうど良かったわね」

 

「ん?ご飯食べた後に行く場所?」

 

「ええ、この後に行くのは、ライブハウス『FOLT』だもの」

 

そう言って、ふふん!と得意げに鼻を鳴らすヨヨコ。新宿のライブハウス…STARRYと何か違うのだろうか。その地域によって、ライブハウスもまた特色があるという話は聞くけど、具体的なことまでは全然知らない。

 

「まぁ、どんなライブハウスかは行ってからのお楽しみよ!」

 

「お待たせしました〜!ランチセットのCのお客様〜!」

 

「あっ、はい、私です…」

 

出鼻をくじかれたようなヨヨコに少し笑いつつも、ひとまず僕らは、美味しいパスタでお腹を満たすのであった。

 

 

 

 

 

 

「銀ちゃん、私ちょっと節酒しようかなって思ってるんだよね〜。一期進展、みたいな?」

 

「廣井、アンタ疲れてるのね。あと、それを言うなら心機一転よ」

 

「そうとも言うね〜。あと、節酒はマジだよ」

 

そう言うと、吉田銀次郎こと銀ちゃんは驚いたように目を開く。ようやく、私がマジだということがわかったらしい。

りょうくんは私に酒をやめろとは言ってないし、それを望まないだろう。しかし、せめてシラフであの子の横に立てるようになりたいのだ。何年かかるかはわからないが。

 

「まぁ、良いんじゃない?このままじゃ、アルコール性肝硬変とかで死ぬと思ってたし」

 

「すごい具体的な死因!?」

 

「それで、何でそうなったの?もちろん理由はあるんでしょう?」

 

そう言われると少し照れてしまう、気になる男のために節酒したいと言えば良いのだが、今までこんなことは無かったので、揶揄われそうで少し言葉が淀んでしまう。

 

「えーっと、あの、さ」

 

「……男ね?」

 

「えっ!何でわかったの!?」

 

「わかるわよ、何年乙女やってると思ってんのよ」

 

オカマ舐めんな、とでも言いたげな顔をする銀ちゃん。まさか言い当てられるとは思っておらず、慌ててしまう。その様子を微笑ましい目で見てくる銀ちゃん。

 

「アンタ今までそんな話一切無かったじゃない。安心したわ、アンタにもそういう相手がいて」

 

「銀ちゃん…」

 

「相手はどんな子なのよ?変な奴だったら、流石に止めるわよ」

 

「えっと、優しくて、ご飯が美味しくて、背が高くて、あと…」

 

「あと?」

 

「…私を、ちゃんと()()()()()()()()()()()()かな」

 

「…ガチ惚れじゃない」

 

しょうがないじゃん?今まで、そんな対応されたことなかったもん。あっさり落ちてしまうのも、仕方のない話だと思う。私は私が思っているよりもチョロかった、それだけの話だ。

 

「年齢は?近いの?」

 

「えーっとね、それは…」

 

まずい、そこだけが懸念点だったのだが、見事に突かれてしまった。高校生にガチ惚れしてるのだった私は。

 

「なによ、10個上とかでも別に引かないわよ。今の時代、それも良いんじゃないの?」

 

「ちがくて、下といいますか…」

 

「20歳とか?意外ね、アンタは年上に行くと思ってたわ」

 

「あっ、えっと、16歳…

 

「ん?なんて?よく聞こえなかったからもう一回言ってくれるかしら」

 

16歳…

 

「…聞き間違いかしら、もう一度言って」

 

「16歳です、高校2年生の男の子にガチで惚れました」

 

そう言うと、苦虫を噛み潰したような顔をする銀ちゃん。反射的に反対しそうになったが、頭ごなしに意見を言うのは良くないと思っている時の顔だ。いや、ほんとに困らせてしまって申し訳ない。

 

そりゃ知り合い、それも友達とも言えるほど親しい仲の25歳アラサー女が、高校生男子にお熱だと聞くとこんな顔にもなるだろう。

 

「…手は、出してないのよね?」

 

「う、うん。この前こっちから腕に抱きついたくらいかな…」

 

「まぁ、それならギリギリセーフかしらね…」

 

「まぁ、お泊まりはしたんだけど」

 

「アウトよ、出頭しなさい」

 

ええ!?と言うこちらに対して、厳しめの目を向けてくる銀ちゃん。いや、頑なにソファで寝ると言って、ほんとにソファで寝ていたりょうくんの、綺麗な寝顔に変な気分になってしまったのは否めないけど!でも、手は出してないから!

 

「何やってんのよアンタ…、せめてお泊まりは相手の子が20歳越えるまでか、付き合うまで待ちなさいよ…」

 

「で、でもほんとに変な事はしてないから!ご飯食べて、テレビ見て、別々の場所で寝ただけだし!」

 

「…とりあえず、今はそれを信じるわ。アタシも素直に祝福したいし。付き合えそうなの?」

 

「わかんない…、嫌われてはないと思うけど」

 

「今の男の子は草食系が多いから、ガンガン行かないと横から掻っ攫われちゃうわよ?」

 

「ま、まさかそんな」

 

そう言って話をしていると、カラカラと扉の開く音がする。お客さんのようだ、この時間から来るのは珍しいな。もしかしたら知ってる人かもしれない。そう思い、音のした方を振り向いた。

 

「へぇー、STARRYとはまた違う雰囲気だな」

 

「まぁ、あっちの正統派なライブハウスに比べたらこっちはアングラな感じがするかもね。あっ!姐さん!来てたんですね!」

 

 

…なんで、大槻ちゃんがりょうくん(私の好きな人)と一緒に居るのカナ?

 

 




今回出てきたパスタ、この前大学の近くの店で食べたやつです。めちゃくちゃ美味しかった。
ヨヨコちゃん難しい…、出来るだけリアルな会話になるように、原作をめちゃくちゃ読み返してて今回は難産になりました。

主人公が暇な時はだいたいギターの練習してます。行間は全部ギターの練習に当ててます。
あと、涼介君は残念ながら、ギターの才能は無いです。まぁこんだけ練習やってFコードで躓いてますからね。
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