バイト先の可愛すぎるアラサー店長について   作:社畜マークII

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遅くなりました。小説の書き方を忘れてしまい、これで正解なのかがわからないマンです。


8話

 

「お、おはようございます!!は、本日はお日柄もよく…」

 

「後藤さん後藤さん、丁寧な対応は嬉しいんだけど、僕そんな大層な人間じゃないから」

 

「はひぃ!しゅ、すいません!」

 

今日はバイトの日だが虹夏ちゃんと山田が居ないので、新しくバイトで入ってきた後藤さんと2人だけだ。少し不安だが店長もPAさんもいるし、なんとかなるだろう。

 

「ドリンクの入れ方は教えてもらった?結構覚えることもあって、最初はわかんないよね」

 

「は、はい。あっ、でもドリンクは…」

 

「結構覚えられた感じか」

 

「は、はい。虹夏ちゃんとリョウさんのおかげで…」

 

虹夏ちゃんは大丈夫だろうけど、山田が誰かにちゃんと仕事を教えられるかって言われたら微妙なところがある。大丈夫だろうかほんとに。

 

「まぁ、最初はわからないのが普通だし、なんでも聞いてよ」

 

「あっ、あっ、じゃあ…」

 

遠慮がちに、こちらを伺うようにして言葉を発する後藤さん。

なんかヨヨコが気性の荒い小動物だとすると、後藤さんは小心者の小動物って感じがするな。

案外気が合うんじゃないか2人、どっちもギターやってるし。

 

「手先もめちゃくちゃ不器用ってわけじゃないし、あとは接客が上手くできたら完璧だね」

 

「せ、接客…、私が1番苦手な物…」

 

あ、なんか後藤さんの魂みたいなものが飛んでいった。このまま成仏されても困るので、ちゃんと捕まえて戻しておこう。

 

「ほいっと」

 

「はっ!!?す、すいません…他界他界してました…」

 

「ぶはっ、他界他界って…」

 

僕は変にツボに入ってしまい、笑いを堪えることが出来なかった。

おもしれー女、それが僕の後藤さんに対する印象の最たる物だ。見てるだけで何かを起こしてくれそうな、そんな人。

 

「へ、へへへ…」

 

「はー笑った笑った、後藤さん面白い子だし良い子だから、結束バンドに入ってくれて嬉しいよ。あの2人のことよろしくね」

 

「そ、そんな過分なお言葉です…」

 

照れているのか本気でそう思ってるのか、この様子では後者なんだろうな。容姿も良いし、もう少し自信を持ってもいいと思うんだけど。

 

「そ、そういえば永岡さんはギターを弾かれないんですか…?あっ、いきなりすいません…気になってしまって…へへ…」

 

「あー…まぁ弾くのは弾くよ、最近始めたばっかりなんだけどね」

 

「い、良いですね。イケメンでギターも弾いちゃうなんて…私とは正反対の属性…」

 

ふへへ…、と自分を卑下するように言う後藤さん。彼女のなにがそこまで

卑屈にさせるんだろうか、ちょっと気になってしまうところだ。

 

「でも、もう辞めようか迷ってるんだ」

 

「え」

 

「なんか、本気でやってるみんなを見たら情けなくなっちゃってさ。なにも志も無い僕がやるようなものじゃない気がして」

 

「そ、そんなことないですよ!」

 

大きな声を出すことが慣れていないのか、声のボリュームをミスった後藤さんがアワアワとなっているのを僕は唖然とした顔で見てしまった。

 

「わ、私も最初はギターが弾けたらかっこいいからとか、全人類にチヤホヤされるんじゃないかと思って始めました!じ、実際は全然そんなことなかったですけど…」

 

なんか後藤さんらしいな、と僕はどこか他人事のようにその話を聞いていた。

 

「さ、最初は大概そんなものだと思うので、先に始めた他の人が立派に頑張っているからといって、自分も立派にならなきゃいけないわけじゃないと思います…」

 

わ、私はもっと頑張らないとですけど…、と苦笑いをしながら締めくくる後藤さん。彼女なりに僕のことを励まそうとしてくれているのだろう。

 

「…そうだね、後藤さんの言う通りだ。もう少し続けてみようかな」

 

「ほ、ほんとですか。良かったです」

 

僕はそう言って、嬉しそうな顔をした後藤さんを見て安心したような感情になるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、ボーカル担当どうしよっかなぁ…全然見つからないよ〜!」

 

「私も色々ツテを使って探してるけど、なんともって感じ」

 

山田は過去に他のバンドに入ってた経歴があるから、意外なことにわりと人脈がある。

それを今回は使っているのにも関わらず、あまりピンと来るものが無いということは相当なのだろう。

 

「あ!涼君がギターボーカルするのはどう?声も良いしきっとすぐに歌も上手くなるよ!」

 

「…うん、悪く無い提案」

 

「いやいや」

 

ただでさえギターに関して色々思うことがあるというのに、+αでボーカルなんて出来るわけない。

加えて、ガールズバンドに1人だけ男が入るのは僕としても遠慮しておきたいと思う。

これから先、結束バンドが有名になって行くことを考えれば余計に、ということを簡潔に2人に伝える。

 

「えー、良いアイデアだと思ったのになぁ」

 

「いつでも涼介の席は空けとくよ」

 

「…ありがとね、2人とも」

 

そう言いつつ、眩しく映る2人を直視できない自分が情けなくなる。夢を持ち、志を高く持って仲間と一緒に真っ直ぐに進む、というのは本当に凄いことだ。虹夏ちゃんも山田も、僕にとっては「すごい人達」である。山田はたまに変になるけど。

 

そう考えていると、虹夏ちゃんの携帯が鳴る。メッセージが届いた音だ。

 

「ん?なんかぼっちちゃんから連絡が来た」

 

「後藤さん今日はシフト入ってるし、なんかあったのかな?」

 

「いや、なんかエナドリ片手に踊り狂いながらバイトしててって…」

 

「は?」

 

いや、どゆこと?

 

流石に面白すぎる要望だ。出会ってまだそんなに時間が経っていない相手に頼める内容じゃ無いだろ、どう考えても。

僕は、笑いを堪えて震えそうになる身体を必死に押し留めつつ、何故そんなことを頼んできたのかが気になってしかたなかった。

 

「ん〜…なんかよくわからないけど、とりあえずエナドリ買ってくるね私!!」

 

それでいいのか、虹夏ちゃん。

 

「私はどのダンスをするか考えとく」

 

いや、なんでお前もノリノリなんだよ。

 

そんな2人の様子を見ながら軽くため息をつき、僕は自分の業務に戻ろうと重たい腰を上げる。

 

「僕は掃除しとくよ、まだ途中だったし。おい山田、踊り始めようとするな、埃が舞うだろ」

 

いきなり無駄に軽快なダンスを始めた山田の肩をガッチリと掴み、席に座らせる。いや、今の一瞬で息切れしてるんだけどこいつ。どんだけ体力無いんだよ。

 

「ぜーっ…はーっ…涼介、水ちょうだい…」

 

「余計な仕事増やすな…。待ってて、今入れてきてあげるから」

 

僕はため息をつきながら、水をコップに入れに行く。こいつ、こんなんでよく日常生活送れるな。顔が無駄に良いのと、多方面に渡るありあまる才能でなんとかなってるんだろうが、些か心配になってしまう部分もある。

 

「ふーっ…助かった。涼介は命の恩人」

 

「はいはい、恩は返さなくていいからもう少し落ち着いてね」

 

「そんなことを言いつつも、涼介は私の肢体を舐め回すように見つめ、舌舐めずりをするのであった。恩に託けて、この女をどう調理してやろうかと興奮を隠さずにいる」

 

「変な地の文作るんじゃない、そんなこと1mmたりとも考えてないよ馬鹿」

 

心なしか不満げな顔をする山田。こいつとも付き合いは長いがいまだによくわからない部分が多くある、こういうところもそのうちのひとつだ。本気なのか冗談なのか、揶揄われている気しかしない。

 

「涼介なら別にいいよ」

 

「…一応、女の子なんだからもっと自分を大切にしてな」

 

やっぱり、山田のことはよくわからない。だが、こういう時間も悪くは無いと思ってしまうのも事実だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーっ!!喜多ちゃんギター弾けなかったの!?」

 

「はい…」

 

まさかまさかの展開だった。

 

逃げたギターの喜多さんが後藤さんと共にSTARRYに来たと思ったら、実はギターを弾けないことを言えずにいて、今の今まで音信不通になっていたと判明したのだ。

 

「だから合わせの練習頑なに避けてたんだね」

 

「うぅ…」

 

「納得」

 

気まずそうな喜多さんと後藤さんとは対照的に、虹夏ちゃんも山田も特に何も気にしてなさそうだ。

それよりも、喜多さんの安否が確認できて少し安心してそうにも見える、やっぱり2人とも優しいなぁ。

 

「突然音信不通になったから心配してた」

 

「リョウさん…!」

 

「死んだと思って最近は毎日お線香上げてた」

 

「いや、勝手に殺さないで!?」

 

こいつはほんとに変な事しかしないな、本人に変人と言うと喜ぶから言わないけど。

とりあえず僕は部外者なので、冷蔵庫に飲み物の補充でもしておこう。そう思い、席を立つと喜多さんがチラリとこちらを見てきた。

 

「あ、あの…涼介さん、ですか?」

 

「え、なんで名前知ってるの」

 

「伊地知先輩からお話を聞いていたので…あの、私が逃げた時に代わりのギターの人を探して走り回ってたって…」

 

あー、そんなこともあったなそういえば。

ヨヨコさんに出会ったのもそのときだった。僕は別に気にしてないし、それこそ新たな出会いを得ることができたという意味では感謝しているくらいだ。と、いうようなことを喜多さんに伝える。

 

「…皆さん、怒らないんですか?」

 

「まぁ、あのときはなんとかなったしね!」

 

「そうそう、結果オーライってやつだね」

 

虹夏ちゃんはそう言うと後藤さんに目を合わせる。

やっぱりこういうところを見ると、結束バンドは良いバンドになりそうだと思う。

個性はバラバラだけどお互いの色をしっかりと認め合える、そんなバンドに。

 

「でもそれじゃあ私の気が済みません!!何か罪滅ぼしさせてください!」

 

「そんなこと言われてもな〜」

 

引き下がらない喜多さんに対し、虹夏ちゃんは困ったように思案顔をする。喜多さん、かなり責任を感じてるようだしなにかいい案はないだろうか。

 

「じゃあ、今日1日ライブハウス手伝ってくんない?忙しくなりそうだから」

 

虹夏ちゃん達が考えている中真っ先に意見を出したのは星歌さんだった。

どうやら、傍で話を聞いていたようだ。

なんだかんだ、妹のバンドがどうなっているかを気にしているあたり、この人は本当にツンデレだと思う。

 

「そ、それだけじゃあ」

 

「いや充分助かるよ!よろしくね!」

 

いいアイデアだ、と言わんばかりに虹夏ちゃんがそれに乗っかる。

喜多さんは少し不服そうだったが僕もそこくらいが一番良い落とし所だと思う。実際、今日は忙しくなりそうだったしね。

喜多さんは微妙に納得はしてなさそうだったけど、少し遠慮がちに首を縦に振った。

 

「私で良ければ…」

 

「んじゃあ、ちょっとこれに着替えて」

 

あれ、うちは制服とかないはずだけど、星歌さんは喜多さんに何をさせるつもりなんだ?と、僕は思いながら星歌さんの方を思わず見てしまう。

 

「これ、使うところ無くて困ってたからちょうどいいわ〜」

 

「星歌さん…何故()()()()がライブハウスに…?」

 

「なんかのイベントで山田あたりに着せようと思って、ド◯キで買ってたんだよ。あいつ顔だけは良いから客増えるかと思って」

 

「着てもいいけど、時給アップして欲しい」

 

そう言った山田の言葉をしっかり無視しつつ、星歌さんは喜多さんにメイド服を渡すのだった。

キャラ的に山田はどっちかと言うと執事服の方じゃないかと僕は思うんだけど。まぁ、そんなことはどうでもいいか。

 

「…私、頑張ります!!」

 

「おん、更衣室無いからそこの控室で着替えてね」

 

喜多さんはそれでいいのか?

バイトをするだけならともかく、メイド服はさすがに断っても大丈夫だと思うんだけど。

 

「涼介も、可愛い子のメイド服が見れて良かったなぁ」

 

「いきなりなんですか、星歌さん」

 

少し揶揄うような顔をこちらに見せてくるのだが、あいにく喜多さんは僕のタイプとは外れてる。

良い子だとは思うし、喜多さんも僕にそんな評価をされたくないとは思うけどね。

 

「…星歌さんが着てくれた方が、僕的には嬉しいですよ」

 

「ん?なんか言ったか?」

 

「何も」

 

幸いなことに、反射的に口から出た僕の呟きは星歌さんには聞こえていなかったようだ。

 

「涼介、お前喜多ちゃんにドリンク教えてくれ。あと、接客の対応とかも一緒に」

 

「別に接客は良いですけど、ドリンクは後藤さんに任せた方がいいと思いますよ」

 

「ぼっちちゃんに?なんで?」

 

「人に教えるっていう体験は、自分が教わるよりも仕事の練度が上がりますからね」

 

最近後藤さんに仕事を教えてたけど、ドリンクだけなら他の人に教えられる程度にはなってるだろうし、僕がそばで見てたら問題も無いだろう。

 

「まぁ、それもそっか。良い機会だし、ぼっちちゃんにも頑張ってもらおう」

 

「うす」

 

「なんだよその返事」

 

クスリ、と顔を綻ばせる星歌さん。

やっぱり可愛い、この人が好きだと思ってしまう。伝える気など毛頭無いが、今だけはこの人のこの顔を独り占めしておきたい。

そんな、気持ちの悪い独占欲を覗かせつつ、喜多さんの帰りを待つ僕なのであった。

 

 

 

『…星歌さんが着てくれた方が、僕的には嬉しいですよ』

 

「…聞こえてんだよ、バカ」

 

「?何か言いましたか?」

 

「何もねぇよ、さぁ仕事仕事!」

 

 

星歌さんは何かを誤魔化すように、僕に対してシッシッ、と犬を追い払うような仕草をするのだった。

 

 

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