俺はゲームに目がない。ダンジョンや魔王が出てくる冒険譚RPGや銃撃戦がメインのFPS、プレイヤーの好みで読むスピードを決められるノベルゲーム、ありとあらゆるジャンルのゲームが生み出されていっている。そのため今の時代、室内でも遊ぶことができる。いい時代になったと思う。けど、ゲームをこの先もしていくにはゲームの運営会社に金が必要だ。神ゲーを作り出すには潤沢な資金が必要だ。だから俺はゲームの運営会社に感謝の意味を込めて課金をする。そのせいか俺の手元にある金はすぐに尽きてしまう。だから、この金払いがいい仕事を俺はいつまでたってもやめる事が出来ない。だって俺にとって課金は生命維持に必要な呼吸と一緒だから。けど、今日ばかりはそんな過去の俺を呪う。だって今日は俺史上最低で最悪な出来事があったから。
数刻前、京都府立呪術高等専門学校学長室にて
「渋谷に、ですか?」
「うむ、どうやら呪詛師どもが渋谷に三重にも渡る帳を下したそうでな」
「それはまた、面妖な」
「だからこそ、お主を派遣するのじゃ。学生時代、結界術の分野で京都・東京の呪術高専合わして上位の成績を納めたお主をな」
「買い被りじゃないですか?自分よりももっと上の者たちだっていましたし。五条とか」
「確かにお主よりも優秀な成績を修めた者もいた。五条もその一人じゃ。しかしお主は知っておるかの?イカロスの逸話を」
「確か、父ダイダロスとともに牢屋から脱出するために用意した蝋の翼で、脱出できたのはいいもの、高揚感に煽られ、太陽に近づきすぎたため、結果的に蝋の翼が溶けて、海で溺れ死んだっていう」
「そうじゃ、傲慢は人を滅ぼす。五条悟は確かに強い。呪力の流れを視認できる六眼に最強の盾となる無下限呪術、まさしく当代最強と言っても過言なかろう。しかしのう、最強の力を持ったクソガキをいつまでも自由にしていくほどわしは優しくない」
(あ~、なるほどね。五条のお目付け役もかねて渋谷に派遣されるってことね。まぁ、俺とあいつがぶつかっても千日手だもんな。その間に何か策を弄するって寸法ね。金くれんのなら別に理由なんてなんでもいいんだけど。なんか捨て石にされている気分。でもそっかぁ、渋谷かぁ。任務終わったらどこに行こうかな。夢が広がるなぁ。)
実際、渋谷には前々からある種の憧れがあった。何せ渋谷にはあの超一大ブームを生み出した某馬っ娘育成ゲームを作り出した会社があったから。最近はアニメにも力を入れ、話題になっている。そんなゲームの神々がいる土地に俺は行きたかった。最初は楽厳寺学長から東京での任務を言い渡されたときは、内心踊り狂っていたよ。同伴するのがこいつらじゃなかったらもっとうきうきのルンルンだったよ。
現時刻
プルルルル
『ただいま、電車が通過します。黄色い線のうち側までお下がりください』
駅員のアナウンスがホームに行き渡る中、俺は隣の高身長のゴリラに問いを投げた
「なぁ」
「なんだ」
「なんで居んの」
「フっ、愚問だな。勿論マイブラザーこと虎杖悠仁に会いに行くためだ」
「そうか」
つかの間の静寂。またもや駅員のアナウンスが発せられ、俺の目の前を電車が通り過ぎていった。
「なぁ」
「なんだ」
「その虎杖、悠仁君?に会いに行くのって今日じゃないとダメ?」
「フっ、これは異なこと言う。マイティーチャー信太山。思い立ったが吉日というだろう」
「うんそっか。そうだよな」
そろそろ限界だ。こいつ何を言っているのかさっぱりわからない。何?マイブラザー虎杖悠仁って。お前兄弟いないだろ。百歩譲って生き別れの兄弟ってのがその虎杖悠、ってああもう面倒くさい!虎杖君って言うわ。その虎杖君に会いに行く理由が諺?まじでなんなの、こいつ?
「なぁ」
「なんだ」
「とりあえず、お前の言動すべて聞かなかったこと見なかったことにするから、俺と離れて歩いてくれへんか?」
「なぜだ?非効率にもほどがある。俺はまだ学生の身。こんな時間に歩いていては職質されてしまう。そうなると困るミスター信太山あなた方教師陣だ」
「うん、そうなんだけどね、もっと世間一般の常識をね」
「東堂先輩ーーーー!!」
遠くから金髪小僧が走ってくる姿見えた。確か、一年の新田っていう
「大変なんです!さっき、駅の改札口を通ったら、これが落ちてきて」
新田一年生が何かを見せてくる。なんだろ、円形で木材で作られ、メカ丸っぽいデザイン。こんなのメカ丸いたっけ?
『信太山までいるのか。丁度いい、お前も聞け。俺はメカ丸の本体、与幸吉が残したメカ丸だ。単刀直入に言う。五条悟が封印された」
『単刀直入に言う。五条悟が封印された』
俺命名ミニメカ丸の言葉が頭の中で反芻する。封印?あの五条悟が?天上天下唯我独尊を地で行くあのウルトラスーパークソガキイケメンの五条悟だぞ。あいつに封印なんて効くのか?いったい誰が?何故殺すのではなく封印?いやそれよりもメカ丸に聞くことがある。
「五条悟が封印されたと言ったな?」
「ああ」
「封印に使われた用法は分かるか」
「連中は獄門疆と呼んでいた」
獄門疆、確か平安時代中期の僧侶源信の成れの果てと言われる特級呪物か。なるほど確かにそれならば、五条悟を封印できる。江戸時代末期、維新のどさくさに紛れて行方知れずになったと言われていたが、まさか呪詛師に流れていたとは。
「獄門疆を解く方法は後で考えるとして、誰が五条悟を封印した。あいつは腐っても最強の呪術師、封印されるまでおとなしくしているとは到底思えない」
「封印したのは夏油傑」
「ッ……」
そんなバカな。奴は去年のクリスマスで五条に始末されたはずだ。五条が夏油の死を隠蔽した?いやそれならば、夏油が五条を封印する理由が分からない。どうなっている。
「混乱するのも無理はない。俺とて奴にあった時は半信半疑だった。だが、奴はクリスマスの事件を明瞭に答えて見せた。まぎれもなく奴は夏油傑本人だ」
「考えても仕方がない。ミスター信太山」
「そうですよ!先生!これは一大事ですよ!」
東堂と新田君が両脇から話し込んでくる。俺たちが今何をすべきなのか、こうしている間にも五条奪還は難しくなっていく。ならば腹は決まった。
「メカ丸」
「なんだ?」
「敵の構成と術式、それと五条が封印された場所を詳しく電車の中で教えてくれ」
「了解した」
「東堂と新田君」
「ん?」
「はい」
「予定変更だ、俺たちはすぐに東京に向かう。そこで東京校の連中と合流する。合流後は分散して敵を各個撃破、または無力化しろ。特に東堂、お前の術式は応用が利く。自由に動け。新田君は東堂についていきなさい」
「了解だ。ミスター信太山」
「はい!」
二人に指示を出した直後に電車が止まる。席に座った後、俺はスケジュール帳を取り出した。今日から二日後の日程に書かれているのは新作ゲームの発売日だ。こんな事になるのなら、通販で頼んでおけばよかったと思い、その日を×で消した。