神薙の軌跡   作:檜山アキラ

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 お久し振りです、檜山アキラです。
 活動報告にも掲載させて頂きましたが、先月に手術を受けてきまして、その治療痕がようやく治まってまいりました。
 ということで、本編再開! と行こうと思いましたが、ちょっとリハビリを兼ねて小ネタ集でもやってみようかと思います。

 小ネタ集では、本編『神薙の軌跡』の人物・関係性・世界観など似て異なる設定でございます。つまりは、なんでもありということで。
 まぁ、作者の妄想が皆様に多少なりと楽しんでいただければ幸いです。


小ネタ集
小ネタ集1


小ネタ集1、という名のNG集

 

 

+特別オリエンテーリングより+

 

「礼儀正しい良い子ね。さて……積もる話はあるけど、あんた達も下に降りてちょうだい」

 もちろんあんたもよ、とサラが未だぶら下がったままのフィーを見咎める。

「えー」

 と渋るフィーだったが、サラが投擲したナイフによりワイヤーを切断され――ることはなく、ナイフが立てる乾いた金属音だけが、辺りに響くだけだった。

『……………………』

 沈黙が空間を支配する。

 いったい、どれだけの時間が流れたことだろうか。

 ようやく重い静寂を破り、フィーが言葉を紡ぐ。

「Take2」

「…………」

 顔を俯かせたまま頷くサラの表情は窺えないが、その両耳は真っ赤に染まっていたが、それを言及できる猛者はいなかった。

 

 ~東方の言葉に『猿も木から落ちる』というものがあります。サラさん、あまり気にしてはいけませんよ~

 

 

+特別オリエンテーリング(後編)より+

 

「あれは……!?」

 その魔獣の背後、地上から5アージュ以上はある位置にリューネの姿があった。

 身体を弓形にそった彼女の両手は力強く組まれており、その両手を闘気のような輝く何かが覆っていた。

 彼女は全身のバネを利用し、組まれた両手を魔獣の背面へと叩きつける。

「――メテオハンマー!!」

 視界を奪われた上での背後からの強襲。それをまともに受けた魔獣が、物凄い勢いで地面へと墜ちてくる。

「あ」

 魔獣の軌道を見て、リューネがしまったという表情を浮かべた。

 本来であれば魔獣が叩きつけられるのはもう少し手前のはずだった。

 だが幾分、力を込め過ぎてしまった。

 そのせいで、魔獣が予定以上に吹っ飛んでしまった。

 そして、その先にいるのは――マキアスだ。

「どわっ」

 マキアスは寸での所で飛び退き、魔獣の下敷きになるのを回避した。

「すみません! 大丈夫ですか!?」

「あ、ああ」

 あの巨体の下敷きになると、大怪我は間違いなかったのだが、心底申し訳なさそうに謝ってくるリューネに、マキアスは強く出ることを控えた。

 ――彼女だってワザとやったわけではないのだしな。

「ん?」

 そこでふと、マキアスは視界が歪んでいることに気付いた。

 まさか怪我でもしたか、と思ったが、理由はすぐに理解できた。

 先程の緊急回避の際、メガネを落としてしまったらしい。

 霞む視界の中、ようやく見つけ出したそれは――

「――――ッ!!!??」

 魔獣の下敷きとなり、無残に砕けた姿をしていた。

 

 ~マキアスさんのメガネは身代わりマペットかなにかなのでしょうか?~

 

 

+私のしたいことより+

 

 1つの推論に辿り着いたとき、目の前で感情を露にしていたエミナが立ち上がり、こちらへと詰め寄ってくる。

 そして、怒りを通り越し、憎しみすら感じさせる声を浴びせてきた。

『――私に、お父さんを……えっと、ヤレって言うの!!?』

『ちょっとそれだと意味違いすぎないか?』

 

 ~殺れなのか演れなのか、それとも犯れなの……コホン、なんでもありません~

 

 

+私のしたいことより2+

 

「そんじゃあ――よーく見とけよ」

 すると、コインを親指で弾き上げる。リューネとリィンは自然とその行く先を視線で追った。回転しながら宙を舞うコイン。上昇する力が失われ、中空で一瞬の停滞を経て、地面目掛けて落ちてくる。

 先輩は腕を交差させた瞬間にそれを掴み取ったようで、握り拳のまま両手を突き出してくる。

 チャリン――

 だが、その後に響いた音で先輩の表情が硬直する。

 リィン達が音の出所を探ると、足元。そこに先程先輩に渡したはずの50ミラコインが落ちていた。

「………………まあ、あれだ。世の中そう上手く行かねぇってことだな」

「クロウ」

「…………はい」

「Take2」

「はい」

 

 ~この後アンゼリカさんに弄られるのが目に浮かびますね~

 

 

+副委員長の悩みより+

 

「さっきの言葉だけど、どう解釈するのもマキアスの自由だからね」

 そう言ってエミナは夕飯の買い物をして帰ると、この場を去ろうとした。

「ま、待ってくれ!」

 マキアスは慌てて立ち上がり、エミナを引き止めようとした。

 だが、勢い良く立ち上がったことで、足をテーブルにぶつけてしまう。

「うわっ!?」

 バランスを崩してしまい、体を支えるためにテーブルに手をつくマキアスだったが、手を置いた場所があまりにも縁過ぎた。

 マキアスの体重が加わったことで、テーブルは抗うすべもなく、盛大に引っ繰り返ってしまった。

「ちょっと、大丈夫?」

 エミナが呆れたような吐息と共に駆け寄ってくる。

「すまない。大丈夫だ」

 そう言って立ち上がろうとしたマキアスだったが、周りのものがぼやけていることに気付いた。

 ――またメガネを落としてしまったようだな……

「すまないエミナ君、僕のメガネがその辺に」

「え、なに?」

 パキッ――!

「……………………」

「……………………」

「あ~……ごめんね?」

「――――ッ!!!!」

 

 ~マキアスさんのメガネは2度割れる……何かの作品名にも聞こえますね~

 

 

+夕暮れに集うより+

 

「え?」

 リューネの視界にこちらへ急接近するエミナが映った。それも見たこともない形相である。

 ――な、なに!?

 疑問に思うも答えはなく、その姿は瞬く間に近付いてくる。

 そして、背後からも同距離に気配を感じた。

 ――これは、お兄ちゃん!?

 何故2人が凄まじい速度でこちらに迫っているのかが分からなかった。

 混乱する頭で状況を把握しようとするが、2人の速度がその時間を与えなかった。

 リューネに出来たのは目の前の光景を見守ることだけだった。

 レイルの腕がリィンの首を刈り取るように、上段から斜めの軌跡を描いて振り抜かれる。

 それと同じタイミングでエミナの拳がリィンの腹部を下方から突き上げる。

 見事なまでのコンビネーション。

 そして、物理法則が生み出した奇跡が、リィンの身体を上空へと跳ね上がらせた。

 だが、上空にて綺麗な円を描いていたリィンの体は、徐々に軌道が逸れて行き、遂には橋から外側へと飛び出してしまった。

 叩きつけられた水音の後には、立ち上る水飛沫。

 それを見送った後、リューネ達は欄干から顔を覗かせる。

 視線を橋下の川へと移すと――

「……………………」

 力なくうつ伏せで流されるリィンの姿があった。

 

 ~この後、たまたま近くにいたケネスさんの釣りテクによりリィンさんは救助されました~

 

 

+剣士問答より+

 

「確かに一時期は老師に師事していたこともあった。だが、剣の道に限界を感じて老師から修行を打ち切られた身なんだ」

 

「俺はただの初伝止まり……誤解させたのならすまない」

 

 告げられた瞬間、ラウラの表情に様々な感情が浮かび上がるのを、レイルは見逃さなかった。

 それは、怒り。あるいは、落胆。失望。

 恐らく、ラウラの中でそれらの感情が暴れ回り、彼女の心を掻き乱しているのだろう。

 拳を堅く握り締めた彼女が胸中の想いをぶちまけようと口を開く――前に、レイルの拳がリィンの横っ面を捉えていた。

 無防備だったリィンは、まともに衝撃を受けて3アージュを越える距離を吹き飛ばされた。

「ぐっ!?」

 そして、後頭部を街路樹に強かに打ちつけて沈黙してしまった。

「……………………」

「……………………」

 ぴくりともしないリィンに、感情を殺したような顔でレイルが彼に近付く。

 そして首筋に指を添えて、脈を測ってみて、一言。

「…………おい。どういうことだ? こいつ……死んでるじゃねーかよ!?」

「衛生兵!!」

「勝手に殺すな!」

 

 ~どういうこともなにも、貴方のせいかと~

 

 

+ルナリア自然公園より+

 

「悪いがお前達の相手をしている余裕はないみたいだ」

 バックステップで距離を取り、2体を射程圏内へと納める。

 太刀を上段に構え、その刀身へと力を注ぐ。

 力は変質し、渦巻く炎へと姿を変える。

 螺旋を描く炎が刀身を包み込み、鍔元を基点、刀身を軸として広がっていく。

 その形は東国に伝わる扇を連想させるもの。

 その形状を保ち、規模を膨れ上げさせ、魔獣諸共地面へと叩き付ける。

「神薙流剣術火の型・奥義、業火せ――ハックショイッ!!」

 地を焼き、魔獣達を包み込む紅蓮の扇――が、突然のクシャミにより制御を失い、暴発する。

 森林を焼くまいと抑制されていた力が、無慈悲にも解き放たれ、周囲を火の海へと変えていく。

 群生する木々を伝って火の勢いは瞬く間に拡がっていく。

 これが、後の世で語られるヴェスティア大火災の真相であった。

「いやいやいやいや」

 

 ~スタッフ一同で消火にあたりました~

 

 




 1度やってみたかったんです、こういうの。

 


 また話数が溜まったらやろうかなぁ……

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