『あー体が痛い…』
ガラル国際空港、ここにある一人の少年が降り立った。少年はチェーンについてあるモンスターボールを一つ手に取るとそれを空中に投げた。
『出てこい、イーブイ』
ボールがパカリと開くとそこから一匹の茶色のポケモンが出てきてきれいに着地をした。イーブイと呼ばれたポケモンは少年が片手を差し出すと器用に腕に乗り、肩へと移動した。
『今日からガラルでの生態調査…と休暇だ。全力で楽しむぞ』
「ブイ!」
『さて、まずは荷物検査を受けないとだな…』
少年はイーブイを肩に乗せたまま荷物を持って荷物検査を受けに行った。
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『ま、まさかイーブイとこの子たちしか使えないとは…』
僕はため息を吐きながらボールの中に入っているポケモンたちを見た。僕がいつも使っていたメインパーティーの5匹中3匹がガラル地方に生息していないポケモンだったから生態系を破壊しないためにも使わないようにと言われてしまった。こんなことになるなら事前にちゃんと調べておけばよかったと思う。キャリーケースを引きずり、スマホを見ながらある場所に向かう。
『さすがお坊ちゃま…随分とでかい別荘だこと』
僕の幼なじみに休暇でガラル地方にしばらく滞在すると言ったときに別荘を貸すと言われたけどまさかここまででかいとは思わなかった。あっちで事前に受け取っていた鍵を鍵穴に差し込んで回すとがチャッと音を立てて扉が開く。扉の中に入ると少しホコリを被っているがどれも高そうな家具ばかりが置かれていた。これだけ高いとなると使いづらいので一階部分だけ使わせてもらうことにした。
『まずは掃除だな…やるぞ、イーブイ』
「ブイブイ!」
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「ねえホップ、あそこの家に人いるよ」
「本当だぞ!新しいご近所さんかな?話しかけに行くか?」
「今は忙しそうだからやめておくよ、それに急いで行かなきゃなんじゃなかったっけ?」
「そうだった!急いでユウリのお母さんのところに行くぞ!!」
塀の外から彼のことを見ていた少年と少女、ホップとユウリは仲良く慣れることを期待しながら目的の場所に向かうために走り出した。
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『ふぅ…ガラルに広いな』
ガラルに来てから3週間、僕はヨロイ島やカンムリ雪原でポケモンの調査兼捕獲をしていた。ポケモンを捕まえて生態を観察する、僕の趣味の一つだ。野生じゃなかなか見られないポケモンがそこら中にいたときはかなり驚いたけどかなり強いかった。これだけ厳しい環境にいればそりゃあ強くなるか。空色のマフラーをたなびかせながらハロンタウンに戻ってきた僕は家に帰ってゆっくり寝ようと思いながらふらふらと歩いていた。
「ブイ!ブイ!!」
『イーブイ?急にどうしたの…ってそっちは違うでしょ!?』
イーブイが突然鳴き始めたと思ったら肩から飛び降りて家とは別の方向に走り出した。僕も急いでイーブイの後を追うと誰かの家の中に入っていった。まずい!まだまともにガラル語を話せるわけじゃないのに!!
「ブイ!!」
「わっ!イーブイ!?」
「ここにら辺にイーブイは生息していないはずだぞ?いったいどこから?」
『イーブイ!勝手に人の家に入っちゃだめだろ!?』
「ブイ!ブイブイ!!」
『遊びたいのかもしれないけど今日は帰るよ…』
「?なんて言ってるかわかるかユウリ?」
「んー…わかんない」
『あ』
そうだ、アローラ語で話してたからガラルの人たちにはわからないのか。しかも僕のアローラ語、少し訛が強いから余計わかんないか。僕はまだ単語でしか会話できないけどガラル語で、話しかけてみた。
「ごめん、イーブイ、邪魔して」
「わっ、急にガラル語になったんだぞ!」
「カタコトだね」
「まだ、勉強、初めた、少し」
「そうなのか、聞き取りはできるのか?」
「できる、話す、書く、難しい」
「聞き取りは大丈夫なんだな!なら自己紹介しようぜ、俺はホップ!」
「私はユウリ、よろしくね」
「僕、マサル」
「マサルか!マサルはどこから来たんだ?」
「アローラ、留学、してきた」
「アローラからか!あそこって結構暑い?暖かいらしいけど実際どうなんだ?」
「えーっと、アローラ、暖かい、ラナキラマウンテン、以外」
「ラナキラマウンテン!確かアニキから聞いた話によるとそこにポケモンリーグがあるんだろ?」
ホップはよく知ってるな。アローラのポケモンリーグに関することなんてここ5年くらいの話なのに。関心をしているとホップは更に驚くことを言ってきた。
「アニキが言うにはアローラのチャンピョンはかなり気難しいって言ってたんだぞ」
「…」
「へぇ、ダンデさんはアローラのチャンピョンと会ったことがあるんだ」
「2年前にあったチャンピョン同士のエキシビションマッチで戦ったって言ってたけどポケモンのコンディションも技の構成も予想外で楽しかったって言ってたんだぞ。結局、相殺や相打ちが多くてバトルは途中で終わったって残念そうだったけど」
ふーん、そんなこと言ってたんだ…てかなんでホップはガラルチャンピョンのことをこんなに親しげに話してるんだ?…いや、アニキって言ってたな?
「ホップ、兄、ガラル、チャンピョン?」
「あー言ってなかったな!俺のアニキはガラル地方チャンピョンのダンデなんだ!かっけーだろ?」
「…そうなんだ」
「ンブイ!ブーイ!!」
「!ごめん、帰る、またね、ホップ、ユウリ」
イーブイが服の裾を引っ張ってきたからなにかと思って時間を見たら話し始めてからかなりの時間が経っていたことに気がついて僕は急いで別れを済ませてから自分の住まいに向かった。
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『ちっ、戻れゴン』
色々な場所に飛んで向かうからアローラにいるククイ博士からサブチームのフライゴンのゴンをこっちに送ってもらったから空を飛んで探索していたと思ったらまどろみの森から技が飛んできてそのまままどろみの森に不時着してしまった。ゴンはそのまま戦闘不能に。
『…ゴンはサブチームだとしてもメインチームに並みに育ててる。なのに一撃で瀕死…絶対強いポケモンがいる』
僕は相棒が中にいるハイパーボールを手に持って先に進んだ。何かあったときのためにイーブイはモンスターボールの中に戻している。慎重に進んでいくと対のような2匹見たことないポケモンがいた。その先には気絶したユウリとホップがいた。それにあのポケモンから感じる威圧感…。
『あの3体と一緒か…。出てこい、ドラゴンクロー!!』
ハイパーボールを投げて相棒に技の指令を出す。が、2匹のポケモンには技は当たらずすり抜けた。
「「アオーン!!」」
『っ!待て!!』
2匹が遠吠えをすると霧が濃くなりポケモンの威圧感も薄れていく。その前に捕獲するために2つのハイパーボールをあの2匹に向けて投げたが当たった音はせずそのままポケモンはどこかに消えてしまった。
『今のポケモンたちは…ソルガレオとルナアーラと同じ?』
「メソォォォ…」
「メェェェェェ〜」
「ポケモン…?大丈夫?」
ユウリとホップの近くにいた見たことのないポケモンに近づいて手を差し出すと怖かったのかすぐにすり寄ってきた。まだレベルも低いんだろう、かなり怖かったはずだ。相棒も警戒しているからかなり強いはずだ。ハイパーボールに相棒を戻してから僕は気絶しているユウリとホップを起こす。
「さて、ホップとユウリ、起きて、ここ、危険」
「ん…まさ、る君?」
「そうだよ、大丈夫?」
「あっ!あの大きなポケモンは!?」
2人もあのポケモンを見たのか。ガラルに詳しそうな二人でも知らないとなると本当に伝説のポケモンの可能性が出てきた。しかしガラルには伝説のポケモンに関して伝えられてないのか?
「消えた。今は、ここ抜ける、危険、僕のポケモン、倒された」
「えっ⁉︎じゃあ早く行かないと!」
「待って、まだ、安全、限らない、ガル、護衛、お願い」
「ガルゥ」
「うわっ!ガルーラ⁉︎」
俺は持っていたサブチームとして育てていたガルーラのガルをモンスターボールから出して周りを警戒しながら出口へと進んだ。
「ホップ!ユウリ!」
「あ、アニキ‼︎」
「ダンデさん‼︎」
出口に着く直前、人影が遠くから見えたから警戒していたがどうやらガラル地方のチャンピョンでホップの兄のダンデだったようだ。しかし、2年ぶりに見たけど変わらないな。
「2人が安全で良かった、が君は誰だ?」
「アニキ!コイツは俺らのことを助けてくれた最近引っ越してきたご近所のマサルだぞ」
「初めまして、マサル、です、よろしく、チャンピョン」
大丈夫だ、声を声変わりして低くなったし髪色や目の色も変えてあるし身長を伸びたからバレないはずだ。
「そうかそうか!俺はダンデ、ガラル地方のチャンピョンだ」
「知ってる、ホップ、話してた」
「そうなのか!それにしてもそこにいるガルーラは君のポケモンかい?手入れもされていてかなり懐いている。君のことが大好きなんだな」
ガルにダンデが触れそうになった瞬間、僕はモンスターボールにガルを戻して腰のチェーンホルダーにつけた。
「?」
「安全、取れた、僕、帰る」
「もう行くの?」
「ポケモン、瀕死、回復、ポケモンセンター」
「そうなのか!なら急いで向かったほうがいい」
僕は一礼してから急いでブラッシータウンのポケモンセンターに向かった。ポケモンセンターに到着してジョーイさんにゴンを預ける。ゴンの容態を見てもらうとどうやら急所にあたったようでそれが一撃で瀕死になった原因だったようだ。すぐに回復すると言われて外でしばらく待つことにした。
『それにしてもあのポケモンは…今までに見たことないポケモンだ。ユウリはまだしも、ホップはかなりバトルに詳しいと思うけどあの反応は未確認の可能性が高い…。あのポケモンの捕獲は今は考えないほうが懸命だな』
「おや、マサルくんじゃないか」
「!!ダンデ…さん」
「そういえば君、ポケモンリーグに出てみないか?」
「ポケモン、リーグ?」
ポケモンリーグ、確かガラル地方はアローラ地方と同じで特殊な条件でのみ出場ができる。アローラなら島めぐりの資格を持っている者。ガラルなら…
「ジムリーダー以上の推薦…」
「そうだ、もし出たいなら俺の推薦状を用意しよう」
「…アローラ、チャンピョンの、推薦状、可能?」
「持って、いるのか?」
「うん、行方不明、なる前、伝えた、そしたら、書いてくれた」
そう現在、アローラ地方初代チャンピョンのコウタは行方不明だ。その情報はアローラ全体を揺るがすもので他の地方にも報道されている。
「そう、なのか…。確かに推薦状があれば誰でもポケモンリーグに出れる。まずはエンジンシティを目指すといい」
「どーも」
そう言ってダンデさんはどこかに言ってしまった。…方向音痴なのは相変わらずなようで。
ゴンが元気になったことを確認して回収して俺は肌寒いなと思って黒色のパーカーを買って店を出るとちょうどホップとユウリが目の前にいた。
「マサル!ポケモンはどうだったんだ!?」
「回復、した、心配、ありがとう。2人、どこ、行く?」
「これからマグノリア博士のところに行くんだ。それと私とホップね、ポケモン図鑑をもらったの!」
「いいだろ!」
「僕、出る、ポケモンリーグ、よろしく」
「えっ!?マサルくん出るの!なら応援しなくちゃだね!!」
「うん…」
なんとなく、あの2人と面影が重なってしまった。だけどあの2人は裏切り者だ。僕の、大切な家族を奪った。到底許されるべきではない。僕の信頼を、尊敬を、好意を全て踏みにじった。だからあの2人みたいに裏切られたくない、だから僕はもうポケモンと幼なじみしか信じられない。
『はは……僕に期待させないでね』
「ん?マサル、なにか言ったか?」
「ううん、言ってない」
「なら早くマグノリア博士のところに行こ!」
こうして、俺はガラル地方での調査と休暇はポケモンリーグになって様々な出会いと冒険を体験することになった。
そして、最悪の未来を阻止するために動き回ることになるなんて思いもしなかった。